■第131話:正体不明の化け物・わいら! ……えっ、襲いかかる前に「荷重分散の設計ミス」と「関節炎」の説教ですか?
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【場所:天界・管理室】
「……ん? 輪入道は以前どこかでやったような気がする、だと?」
神ドラマスは、過去の記録をパラパラと見返した。
「記録にはないようだが、あの燃える車輪のインパクトは強烈だからな。他の妖怪と記憶が混同したか、並行世界での出来事かもしれん。……よし、ならば被りのリスクを完全に避けるため、別の『わ』の妖怪を召喚しよう!」
神ドラマスが指を鳴らすと、モニターの中の標的が切り替わった。
「『わ』から始まる謎多き巨獣、わいらだ! 牛やガマ蛙を混ぜたような巨大な体に、前足には鋭く太い『一本の爪』を持ち、下半身は常に草むらに隠れて見えないという正体不明の怪異! その不気味な巨体による圧殺攻撃に、ヒナタのロジックはどう立ち向かうのだ!?」
【場所:人間界・霧深い山の入り口】
「う〜ん、この山は霧が濃くて足元が見えにくいですねぇ」
ヒナタは、四次元リュックを背負って慎重に歩いていた。
ガサガサッ……!! ズシンッ……!!
「ゆ、勇者殿……! 前方の茂みから、山のように巨大な化け物が這い出してきますぞ……!」
宰相セバスチャンが、杖を構えて後ずさった。
『グルルルルッ……!!』
霧の中から姿を現したのは、巨大な不気味な巨獣、「わいら」だった。
その前足には、鋭く巨大な「一本の爪」だけが生えており、ズズズ……と地面を引きずるように這い進んでくる。下半身は重たそうに茂みの中に隠れたままだ。
「ひぃぃぃッ!! で、出たァァッ!! 正体不明のバケモノですぞォォッ!!」
『ガァァァッ!! ぺしゃんこに潰してやるゥゥッ!!』
わいらが、その巨体を持ち上げ、一本爪の前足でヒナタたちにのしかかろうとした、その瞬間。
「ちょっと待って!!!」
ヒナタの、巨獣の咆哮を完全にねじ伏せる「整形外科医&ハードウェア設計者」が響き渡った。
『……ビクッ!?』
わいらは、のしかかるポーズのままピタリと固まった。
ヒナタは、四次元リュックをドンッと置き、鬼の形相でわいらの「前足の一本爪」をビシッと指差した。
「あなた!! その巨大な体重を支える前足の接地面積が『一本の爪だけ』だなんて、ハードウェアの設計(荷重分散)として完全に欠陥品じゃないですか!! 接地面が狭すぎるせいで関節に極限の負荷がかかって、重度の『変形性関節症(関節炎)』を起こしているんですよ!! 下半身を茂みに隠して這いずり回っているのも、ミステリアスな妖怪だからじゃなくて、ただ『膝と腰が痛くて立ち上がれない(筋力不足)』だけでしょうが!!」
『ガ、ガウ……!?(か、関節炎……!? 筋力不足……!?)』
わいらは、自らの恐ろしい正体不明のミステリアスさを「ただの関節痛で寝たきり寸前の肥満体」として医学的に全否定され、一本爪を痛そうにさすった。
「大体、その運動不足の巨体!!」
ヒナタは、わいらのたるんだお腹を指差した。
「動かないで山の中でじっとしているから、体重が増えてさらに関節に負担がかかる『負のスパイラル』に陥ってるんです!! 根本的な構造設計(骨格)に無理があるなら、継続的な運動でコアの筋肉を鍛えてカバーするしかありません!! 日々のトラッキングと運動習慣が完全に欠落しています!!」
『グゥゥ……!?(ふ、負のスパイラル……!? いや、俺は恐ろしい山の主で……)』
わいらは、巨獣としての威厳を「自己管理ができていないメタボ獣」として完膚なきまでに論破され、ポロリと大粒の涙をこぼした。
「今日から、徹底的な『関節の保護』と『長距離ウォーキングによる肉体改造プログラム』を行います!!」
ヒナタは、四次元リュックから、「大容量のグルコサミン&コンドロイチンサプリ」「関節保護用の特注サポーター」、そして「艶消しで非光沢な質感が美しい、衝撃吸収バンパーケース付きの最新型スマートウォッチ」を取り出した。
「ゴズさん、わいらさんが倒れないように下半身を支えて! ヴァレリアさん、その前足の関節にサポーターをガッチリ巻いて!!」
「ブモォッ!(おう! 関節の痛みは俺も年だからわかるぜ、しっかり固定してやる!)」
「ふむ。この巨大な脚に寸分の狂いもなく布を巻く……止血帯の要領だな」
『ナ、何ヲ……!? 俺ノ恐ロシイ圧殺攻撃ガ……!』
「【究極の関節ケア&スマート・ウォーキング習慣化プログラム】です!!」
ヒナタは、わいらの巨大な手首に、マットな質感のバンパーケースで守られたスマートウォッチをカチャリと装着し、手元のスマートフォンと同期させた。
『おおっ……!? サポーターのおかげで、体重をかけても前足が痛くないぞ……! そしてこの腕の機械……光沢のない落ち着いたマットなデザインが、山の景色に馴染んでめちゃくちゃカッコいい……!』
「はい、これからはそのスマートウォッチで毎日の歩数と心拍数を管理します! まずは朝と夕方、数キロの長距離ウォーキングを日課にすること! 家族や仲間と一緒に出かけて、あえてゆっくりとしたペースで歩くのが、関節に負担をかけずに長続きさせるコツです!!」
わいらは、ヒナタの指導のもと、ゴズやヴァレリアと一緒にゆっくりとしたペースで山の小道を歩き始めた。関節の痛みが消えたことで、歩くことの楽しさに目覚めていく。
「そして、ウォーキングの後はこれです!」
ヒナタの指示で、山小屋に立派な「薪ストーブ(ウッドストーブ)」が設置された。
「冷えは関節の最大の敵です! 運動の後は、この薪ストーブの番をしながら体を芯から温めてください。炎の大きさを自分でコントロールし、揺らめく火を静かに眺める時間は、自律神経を整える最高のリラクゼーションになりますよ!」
『ガウゥ……!!(な、なんだこの薪ストーブの極上の温かさは……! 自分で薪をくべて炎を管理する、このたまらない満足感! 芯から体が温まって、関節の痛みが完全に消え去ったぞ……!!)』
わいらは、薪ストーブの前でとろけるような顔になり、幸せそうに喉を鳴らした。
数日後。
そこには、正体不明の不気味な姿で人を襲う巨大な化け物の姿はなかった。
マットな質感のスマートウォッチを着けこなし、朝夕の長距離ウォーキングですっかり引き締まった肉体を持ち、夜は薪ストーブの炎を巧みに操りながら山の仲間たちに温もりを提供する**「王都認定・森の健康ウォーキング・インストラクター(兼・薪ストーブの達人)」**として、二足歩行(!)で爽やかに歩き回る獣の姿があった。
『ガウッ!(今日も朝夕のゆっくりウォーキングで、完璧な活動量を達成したぜ! さあ、薪を割って極上のリラックスタイムだ!)』
元・わいらは、すっかり健康的なスマートライフを満喫していた。
「……ゆ、勇者殿。正体不明のメタボ妖怪が……『マットなスマートウォッチで長距離ウォーキングをこなし、薪ストーブの炎を愛する健康的なインストラクター』になってしまいましたぞ……」
セバスチャンは、パチパチと燃える薪ストーブの心地よい熱を浴びながら、自分もウォーキングを始めようと心に決めていた。
【場所:天界・管理室】
『…………』
神ドラマスは、自らの腕に巻いたスマートウォッチを見つめた。
『わいらが……「一本爪による荷重分散の設計ミス」と「運動不足」を指摘され、関節サポーターを巻かれた……』
『不気味な生態は「ただの関節炎」と全否定され、マットなスマートウォッチでの長距離ウォーキングと薪ストーブの炎で健康的なインストラクターになった……』
ドラマスは、深く、長く息を吐き出すと、もはや「正体不明の山の怪異」すら「関節痛のメタボとハードウェアの設計ミス」として論理的に肉体改造してしまうヒナタに完全降伏し、通販サイトで「艶消しマットのバンパーケース」と「室内用・小型薪ストーブ」をポチり、自らの神殿での生活に極上の温もりと健康管理システムを導入することを固く誓うのだった。
(第131話・差し替え版 完)
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