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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第2部】 重なる足跡

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【2-3-3】

「……ラフィエル」


 奥にいた女性が男性の名前を呼んでいる。どうやら先ほどから前面に立っている男性はラフィエルという名前のようだった。女性の呼びかけに対して彼は気にするなといった具合に首を振る。


「確かに秘匿事項ではある。ただこうなっては今一度世間に知らしめる必要があるだろう。我らアヌ教の在り方を」


 ラフィエルの言葉に女性は口をつぐんだ。それを受けて彼は話を続ける。


「君の名前は?」

「……レオナルド、と申します」


 レナードは偽名を名乗る。それにラフィエルは頷く。


「ではレオナルド、君は使徒という存在を理解しているか?」


 使徒の名前はマーニャさん達といた時から出ていた。ただ私は厳密なその意味を理解していない。レナード曰くは、アヌに命を捧げる存在ということだったが。


「ええ。アヌ教徒の一部の方々を指す名称でしょう? アヌ神に選ばれたものだけが使徒を名乗る事ができる」

「その通りだ。そして使徒となった時に、我々は個人としての生を失う。以降は自分の行動の全ては神託によって決められる」


『それこそがアヌ神の意思のもとで生きるという事。それによって我々は死後アヌ神の御許へ還ることが出来る』とラフィエルは恍惚とした表情を浮かべる。その様子は、どこか病的に見えた。


「……使徒のお考えはわかりましたよ。ただそのリーザさんがどう関わってくるのです?」


 ラフィエルの顔が曇る。そしてフルフルと震え始め、彼は突然怒りを露わにした。


「奴も、奴の母親も使徒だ。だがあろう事かアヌ教の教えに背きその在り方を破った! 規範となるべき存在の使徒が、アヌ教を汚したのだ。あってはならない暴挙だ! とても許されるものではない!」


 彼はフゥフゥと呼吸を整える。


「……教えに背いた?」


 彼は嫌悪感を表情に隠さずに話を続ける。


「ああそうだ。神託を破り、更にはアヌ神を貶めるような発言すらあった。悪魔に唆されたんだろう。我らは当然罰を与えようと動いた。母親はすんでのところで捕獲した。リーザは死んだものと思っていたのだ」

「……でも生きていた」


 ラフィエルがうむと頷く。


「そうだ。我々も驚いたぞ。だが僥倖であるとも思えた。生きているのであれば罪は贖える。自らの行いを悔い改める機会をアヌ神が授けて頂いているのだと。ならばこそリーザもまた赦しを乞う事ができる。……はずだった」

「はずだった?」


 再度ラフィエルは身体を震わせ始める。怒りのためかと思ったが、そうではない。彼は突然大粒の涙を流し始めたのだ。


「リーザは事もあろうに、スーニャなどという悪魔そのものと共にいた!! 太古の神々を殺した張本人!! この世界の敵、害。そんなものと共にいてはリーザの魂は贖えないほどに穢されてしまう!! 何より我々の沽券に関わる!」


 そして今度はレナードへの視線が鋭くなる。どこか責めるような意思を感じた。


「……マグシアは何をしていた? 君の国こそスーニャは怨敵であるはずだろうに。この事態を招いた一旦はマグシアにもあると思うがな」

「それは……」


 レナードは口を噤む。何と反論すべきか考えているのだろう。ただその前にはラフィエルが言葉を重ねてきた。


「よい。結局は信じられるのは我ら自身。つまりはアヌ神のみというわけだ。奴を仕留めれば改めて我らの正しさが世間に周知されることだろう」

「……別に貴方の考えは否定はしませんよ。確かにスーニャに対して確たる対策を取れず仕舞いでしたからね」


『そうだろう』とラフィエルは頷く。


「ところで、そのスーニャはどこへ行ってしまったのですかね?」

「ああ。この道までには遭遇しなかった。いくら何でもこれ以上遠くまで進んでいるとも考えづらい。別の道を選んだのかもしれん」


『全くもって歯痒いがな』というその顔は歪み、その悔しさを露わにしていた。


「しかしスーニャはともかくとして、そのリーザさんですか? 今後どうするんです?」

「ふん? そもそもが今はもう生きているかも分からん」

「え。そうなのですか?」


 わざとらしい。レナード自身はリーザが生きている事は知っているだろうに、ただ上手な演技だ。ラフィエルはすうと息を吸う。


「ギィ様直々の裁きを受けた。すでに赦されたと見るべきではあるが、もし生きているのであれば連れ帰るだけだ。そして当分は閉じ込められるだろう。罪を洗い流せるまでな」


 閉じ込められるという意味がよくは分からなかったが、ただ確実に好意的なものではないだろう。


「……仮にリーザさんが戻りたくないと言ったら?」

「ふん。選択の余地などないさ」


『しかし最初からあんな親子受け入れるべきでなかったのだ。所詮は下賤な血筋というわけだ――』などとブツブツと呟いている。


 私は自分の身体の中に胸糞悪いものが広がっていくのを感じた。さっきから少しもリーザを慮る言葉がない。彼女の周りはこんな奴ばかりだったのだろうか。


「生きていたとして仮にまた同じ事があるかも分からん。なら先に死なせてしまった方が、本人の為ではないかとも言ったんだ。ただそれは流石に認められなかったがな」 


 口の中の唾すらも苦く感じる。死なせた方がいいだと? 本気で言っているのか?


「そもそもが不気味な小娘だったよ。かけらも笑いやしない。周りからも気味悪がられていたくらいだ。それに言葉数も少なくてな。喋られないのではないかと勘繰った程だ」  


 その声色は徐々にリーザを嘲るものに変わっていく。……やめろ。そんなこと聞きたくもない。 


「極め付けは、魔法の才能がカケラも無いことだな。つまりはアヌ神の愛を受けずに生まれてきたのだろうさ。そういう意味でもやはり死なせてしまった方が――」


 ラファエルは、ただただ愉快そうに言葉を並べています。私はそれが不快でしかなかった。お前が何を知っている? 何の権利があって彼女を馬鹿にしているんだ?

 

「――もういい」


 その口を閉じろ。これ以上そんな戯言一秒たりとも聞いていたく無い。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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