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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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【1-9-2】

「――あーほんと残念だったね〜」


 ぶつぶつとリムさんは文句を言いながらに歩いています。それもそのはずで結局私たちはお目当ての甘味を食べることが出来なかったのです。


「材料が入ってこないからーって言ってたよねー?」


 リムさんの言葉にコクリと応じます。店主さんに聞いた話では入荷予定だった荷が届かなかったのだとか。それに最近この手の話が多いみたいです。いえこのお店のものに関してというわけではなくて、色んな物流が滞りがちなのだとか。


「でも結構同じような声が出てるんだねー」


 滞りがちな理由は野盗が増えたという側面もあるらしいのですが、モンスターの影響も強いみたいです。今までフレイさんやガリオンさん達もモンスターに困らされていると言っていましたから、きっと同じ事態が色んなところで起きているんだと思います。


「それに今まで見た事もない攻撃をしてくるモンスターもいるとか言ってたよね? なんなんだろなー」


『ま、どーでもいいんだけどね』なんてリムさんは関係なさそうにしてはいますが、私からすると大問題です。だって、これから先リムさんもそんなモンスターと対峙することがあるかもしれません。


 確かに怪我がすぐに回復することは理解していますが、怪我をしないにこしたことはないでしょう?


「とりあえずさ別のところでも行ってみよっか。変わり映えしないかもだけども」


 私はリムさんに手を引かれて別の場所へと足を向けます。あの噂のお店には行ってはみたかったですが、こうなっては仕方ありません。別のところで我慢するとしましょう。


「……うん。結局こうなるかー」


 あれから幾つか別のお店を巡ったのですが、どこでも欠品が目立ちます。じゃあどうするか、次の店みてみようかーと二人でぐるぐると回って最終的に辿り着いたのはいつもの酒場でした。


「まあ私たちらしいっていえば、らしいんだけどさ」


『大将、いつものー』と頼むともう決まった飲み物を持ってきてくれます。


「はい乾杯ー」


 と二人で杯をカチンと当てます。リムさんは当然お酒ですが私はまだ飲めないので普通の飲み物です。でもこうした方が気分がいいらしいので、いつもこうしています。


「でも残念だったねー。せっかくだったのにさ」


 確かに残念は残念でした。リムさんがこんな事を言うのも珍しいので。


「……まこれから先もいくらでも時間はあるんだから、また適当に行けばいっか」


『大将おかわりー』なんて言ってるリムさんですが、私はその言葉を聞いて何故だか泣きそうな気持ちになりました。勿論嬉しい気持ちが大半で、ただ少しだけ何故だか寂しくなってしまったのです。


「え、あれ? どしたの? なんか変なこと言っちゃったかな?」


 目の前でリムさんがオロオロも狼狽しています。グラスを置きにきた大将が無言で責めるような視線をリムさんに送ると『いや私なにもしてないよ!?』なんて慌てて否定しています。


 その様子を見て私はクスリと笑ってしまいました。二人もまた私の様子を見て不思議そうな表情を浮かべています。側から見たら急に泣きそうになったり、今度は笑顔になったりと怪訝には思う事でしょう。

 

 でも私の中に生まれた少しだけの寂しさももう消えてしまっていました。それよりもこれから先もリムさんとずっと一緒にいられるということの方がずっとずっと重要でした。


「ん? どしたのさ?」


『さっきからなんだか変だよ?』なんて言われてしまいます。でもこれだけは確かめておきたかったのです。


 私はリムさんの手を取り文字を書きます。なんだかこのやり取りは随分と久々で、初めてリムさんと出逢って名前を伝えた時の事を思いだしました。


「ん、なになに。……私は、ずっとここにいていいの?」


 リムさんが驚いたような表情を浮かべます。え、まさかやっぱりご迷惑だったでしょうかと、少し不安になっちゃいます。


「……リーザ?」


 その声は少し不機嫌そうな色合いを含んでいて私はビクッと身体を強張らせてしまいます。


 そしてゆっくりと両手を私の方へと近づけてきて、……私の頬を掴み引っ張りました。


「こら! 今更そんなこと言わないの! こっちはもリーザのこと家族だと思ってるんだから。ダメなんて言うわけないでしょーが!」


 そのすごい剣幕に私は何も抵抗出来ません。ほっぺたが千切れちゃいそうで痛いのですが、それでも今もし抵抗したらそれこそ千切り取られちゃいそうな勢いです。


「ちゃんと分かってんの!?」


 その言葉に私はコクコクと頷きます。というよりそれ以外の選択肢はありませんでした。


『ならよし』とようやく頬が開放されます。痛みからヒリヒリします。少し伸びちゃったんではないかと心配になります。


「大将、もう一杯おかわり!」 


 鬱憤を晴らすようにお酒を飲み干していきます。でもその責任の一端が私にあるので、止めるに止められません。まあ今日くらいは好きに飲ませてあげてもいいでしょう。


 だって、嬉しい言葉を聞く事が出来ました。私にとってもリムさんは家族で、ずっと一緒にいたいと願っていたんです。言葉で直接伝えられないことが、少しもどかしいですが。


 それから頃合いを見て私たちはお店を後にします。リムさんは『もう一杯だけ〜』なんて言ってましたが、もうこれ以上はダメです。酔っ払いを送っていくのも大変なんですよ。


 それに、またいつでも一緒に来たらいいんですから、ね。

 

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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