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異世界転生したら、世界の敵になりました。【続】  作者: 篠原 凛翔
【第1部】 うつろう世界

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【1-9-3】

 大事なものはイメージだと、ジーさんは言っていました。あの時私が想像したのはなんだったでしょうか。自分でもよく分からないのです。ただ相手を倒すというよりは、守ってあげないとと、そう思っていたことは覚えています。


『ほら、リーザちゃん? 貴方のお仲間はやられてしまいます。――私達を魔法で止める他ありませんよ?』

 

 うんともすんとも上手くいかない私を見かねて、ジーさんは強引に事を進めました。いやもしかしたら初めからそうするつもりだったのかもしれません。だって確かにあの場面ではアレが一番効果的だったでしょうから。


『……ほら、もう一回攻撃されてしまいますよ? 今度こそは持ないかもしれません』

 

 リムさんが傷つけられた時、きっと狙い通りに、私の頭は真っ白になりました。私がなんとかしなきゃ。私が上手くやらないと。そうしないともっともっと傷つけられてしまう。私のせいで。


『ダメならいいんですよ? この人が亡くなるだけですから』

 

 出来る事といえば習ったばかりの魔法だけ。私は必死になって身体中の魔素を集めました。さっきまでの石礫みたいな氷じゃ、とてもモノさんを止める事なんて出来ません。もっともっと大きいものでないと。


 でなければ、別の何かでないと。


『ほら、もう間に合わなくなっちゃうよ?』

 

 実際はジーさんもモノさんも、リムさんをどうにかするつもりはなかったはずです。旧知の仲だそうですし、それにリムさんは『傷つけられても回復するから大丈夫大丈夫ー』なんて前に言っていました。


 でも目の前で実際に血が流れてるんです。それで動じないほど私の心臓に毛は生い茂っていません。それにリムさんが傷つけられるくらいなら、私がやられた方がずっとマシです。


『……それでは先ほどと何も変わりませんよ? 貴方の想いはその程度ですか?』


 体中の力を全部総動員しました。魔素と言わず身体の隅々までの力の全てを費やしていました。リムさんを守れるならそれでいいんです。それだけの事を、この人は私に与えてくれました。


 この人がいたから今の私があります。この人がいなければ今の私はありません。だからこの身を捧げてでも、絶対に守ってあげないといけないんです。だってこの人は私にとって命の恩人で、唯一の家族なんですから。


 私は両手で胸元の短剣を握りしめ、目を瞑りその場に跪いていました。まるで神様にお祈りしているかのように。


 今まではこれまで見聞きした魔法を模倣することを基本としていました。炎や氷を魔法で作り、目標へ放つ魔法を見ていたので、それを真似てみたのです。でもダメでした。とてもリムさんを守る程のものは出来ません。どう頑張っても石ころみたいな大きさのものしか作れないんです。

 

 きっとイメージの仕方が間違っていたのでしょう。だって私はやっぱり最初から誰かを傷つけるなんて、ガラじゃありません。私は私の大切な人達に傷ついてほしくない。そう思うのです。


 私はそのイメージを強く心のうちに秘めたままに、前方へと手を伸ばします。そして身体中の魔素を今度こそすべて放出します。


 そうすると今度こそ、私の思い描いた通りに魔法を放つことに成功しました。ジーさんも納得してくれたようで、どうやらモノさんも引いてくれたようです。


 ああ無事に終わったのであれば何よりでした。

 

『これが貴方のイメージなんですね。守りながらに戦う。貴方そのものを表しているのかもしれませんね』


 そんな言葉達と共に『もういいですよ』と言ってくれたので私も魔法を解きます。正直もう限界でした。思わずその場にしゃがみ込んでしまいます。汚れなんて気にしていられません。


『お疲れ様でした。今の感覚、忘れないでくださいね。それと本当に、いざという時だけ。あとは周りに回復魔法が扱える人がいるといいですね。でないと、死んじゃいますからね?』


 ジーさんが何やら言っていますがもはや頭に入ってきません。だって本当に疲れてしまって、もう意識朦朧状態なのです。だから何か言いたいことがあればぜひ意識を取り戻したあとで……。


 そしてこの後に私は意識を失い、起きた頃にはもうジーさんもモノさんもいらっしゃらなかったです。ただリムさんからは『くれぐれも使う事のないようにね? 本当に命に関わるから』と念入りに言われました。


 実際試してみようかとも思ったのですが、少し魔素を使ってみただけで身体がすっごく怠くなるのです。冗談でなく命に関わるかもしれません。なので、本当にピンチになった時のとっておきということで、私も納得している次第です。


「ほらリーザー? 今度こそ甘味を食べに行くんでしょー?」


 そうでした。何故だか分かりませんが少し前の事を思い出していたようです。


 今日はリムさんと約束がありましたので、早く行かないとでした。リムさんはもう外へ出ようとしているので、私は慌ててその背中を追いかけて、お家を後にしました。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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(……でないと、力尽きるかもしれません)


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