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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
10章 四国大戦
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道中 アガニッペ山道


スマイル号を先頭に、後ろにウィード(操舵手)さんの車両が、着くことになる。

車列は廃坑道に入っていく。坑道内はもちろん暗闇になる。


カーゴ車両のヘッドライトが唯一の先導になる。

セレンの目と分析能力を加味して、タツマ班が先頭になっている。


ここのアガニッペ鉱山は、かつてはベースメタルを中心に貴金属も採掘できたようであった。 反対側では、オガネソンが掘削できるため、当時から外れ鉱床エリアであった。


それでもベースメタルが採掘が出来たためそれなりに栄えたが、その鉱脈も徐々に尽きていき、現在ではもぬけの殻になっている。


鉱山エリアと言うこともあり、かつての人が住めるインフラが整備されたが、鉱夫が去った後は、それらインフラに定住する山の民や山賊になるものが出てくる。


特に、こちら側は、都市国家としても利益を生まないとの判断から、行政の手が回っていない状況になる。 つまりは、無法地帯の状況になる。 


結果、密輸ルートとして知る人ぞ知る、危険ルートになっている。


                   *


タツマ達は、そんな危険なルートを通過している。 既に深夜を回っているが、坑道ないということもあり周囲は闇に包まれている。


坑内でヘッドライトが当たれば、コウモリが出てくるのシチュエーションになるが、実際は、それほどいないものである。


「本日はここで一泊だな」

タツマが提案する。


『了解です』

セレンが答え、停止すると後方も車両も停止する。 廃坑内で一泊する。 タツマは、カーゴ車両を出るが、念のためバイザーメットを装備したまま周辺の調査に取り掛かる。


坑道内ゆえ独特の雰囲気がある。


「何か出そうですね」


ケルンも車両から降りて来る。 本当に暗闇であり周囲の閉塞感が、ケルンの恐怖心を煽ってくる。 唯一の車両のヘッドライトが頼りである。


アリエフさんの班も停車し休憩の準備に入っている。


「まだ見ぬ何か……惑星間をウロウロしているが、一度もあったことがないんだけどね」

「ホラー好きなんでしょう? 」


「あれは演技だよ。もっともまだ見ぬ何かには、興味はあるけどね」


坑道の周辺を確認しながら応答する。

―― 有毒ガスの検知はないな。


「セレン。 こっちは大丈夫だ」

『了解です。こちらも有毒ガスの発生もありません。酸素濃度も問題なしです』


バイザーメットを脱ぐと、ジメッとした湿気と土の臭いが鼻腔を付いてくる。

「湿っぽいですね」

「これからしばらくこの生活が続くから慣れておいてくれ」


「了解です」


コンバットスーツであるため、地面に横なっても体温を奪われることもない。バイザーメットを被れば、害虫からの対応も完璧である。


といっても、一日中バイザーメットを被る訳にもいかないので安全な時にはこうして脱ぐことにしている。 まぁ主に毛根的な意味での話だが。


「大型の肉食動物もいるんですよね? 」

「いるな。 そのためのこいつだ」


タツマが、カービン銃を前に出す。


『害獣を見つけたらまずは、関わらない。 もし、気付かれてこちらに向かってきたら容赦なく打ち込んでください』

セレンが、ストレートに指示してくる。


「……」


『作戦までに命を落とされても困りますので』

「きついですね」


「それりゃぁーこれだけの(いくさ)を止める作戦だ。 楽な訳ないだろ? 」

「了解です。 必ず生き残ります」


                   *


坑道は複数存在しており、タルシス三山を貫く形で形成されている。


アガニッペ街道は、鉱石を搬出するために用いられていたが、鉱石が取れなくなったので保守もされず途中から朽ち果てている状況である。


坑道内の道も悪いのでカーゴ車両もそれほどスピードも出せない。

また、所々鉄条網やらトロッコなどの投棄物があるのでそれらを排除して対応している。


今のところ、地底湖や大きな崖などない為、カーゴ車でも進んでいける。


トロッコ線路があるが、崖の壁面に張り付いたような場所や、大きな谷を越える一本道のようなアクション映画のような場面には出くわしていない。


「今どの辺ですかね?」

「パボニス山の裏側ぐらいだろう」


「3日間でまだそこですか! クッソ」

温厚なケルンが、癇癪(かんしゃく)を起こしている。


「歩くより早いと思うけど。 それに少し落ち着かないと」

タツマが諭す。


「そうでした――」

一日中車両に籠りっぱなしでストレスが掛かるのは承知のこと。 とくにケルンには、その耐性がまだ少ない。


「いいさ。イライラもするよね。 でも、そんな時こそ冷静に着実に進めないと失敗する」


「了解です」


ストレスは溜まりつつも、カーゴ車は進んでいく。




            ~~~ 山賊の襲撃 ~~~


『熱感知! 敵です! 』

セレンのセンサーが、外敵を捉える。 突如襲ってくる山賊。


迅速にスマイル号から出て攻撃態勢に移る。


スマイル号を盾にして、タツマ班・アリエフ班、そしてトークン集団が、迎撃をする。

相手もそれなり数で応戦してくる。


≪目的地に着く前にやられちまうぞ! ≫

鄭の愚痴。


≪グズグズ言ってないで! 相手をかく乱してください! ≫

アリエフの激励が飛ぶ。


≪冗談だろ! あいつらの中に飛び込めってか? ≫

≪そのためのコンバットスーツですよ! ≫


『援護を開始します! タツマ! (エンジニア)かく乱を。 トークン部隊を展開させます! 』

セレンからの指示が飛ぶ。


―― ちょっと何故にこっちに飛び火! 


彼の思惑とは別に、セレンのカウントダウンが始まる。

『3……2……1……GO 』

―― くっそ! 


鄭とタツマが、敵前線に飛び出て相手をかく乱する。 布の服とコンバットスーツでは、対弾性能が違い過ぎため、数的不利も装備の性能差で瞬時的にひっくり返していく。


結果、敵の陣形が、一気に崩壊し山賊が周囲に散会したところをアリエフ、セレン隊、ケルンが、射撃で殲滅していく。


戦闘経験のないケルンであっても、コンバットスーツの戦闘プログラムにより一般兵士クラスの銃撃や格闘戦を可能にしている。


アリエフ班と連携しながら発生する問題を排除していく。




          ~~~ 崩落による迂回 ~~~


山賊との死闘もあるがもちろん自然との死闘もある。

入っていた坑道が崩落により埋まっている。


車両は止まり、その光景に頭を抱える一行。 周囲散策班と突破班に分かれて調査を開始する。


≪崩落しているな? どうする? ≫

タツマが自問のような、質問をする。


≪重機はないぞ≫

鄭が答える。


『迂回ですね。 それかロケット弾とその爆薬を用いて瓦礫を発破しますか? 炸薬量と設置場所を調整すれば行けますね』


≪坑道の天井は大丈夫なのか? ≫


『運ですね』

≪……≫


―― AIが運ってなんだよ!


≪因みに迂回は出来るの? ≫


丁度、周囲散策班からの通信が入ってくる。


≪タツマさん! 屋外に迂回ルートがありました≫

ケルンからだ。


≪といっても山の崩落で塞がっていますね。 同じ爆破するのであれば、屋外の方が安全ではないでしょうか? ≫


アリエフさんの提案。


≪どうする? 二代目≫

―― 坑道内も屋外ルートも埋まっているか……


タツマが考え込んでいるが、その間にセレンが回答を導き出す。

『了解です! 屋外の迂回ルートの瓦礫を火力で破壊ですね! 』

―― 何気に火力を使いたいのか?


数回の爆発音が山々に響き渡る。 

ロケット砲が火を噴き、屋外の迂回ルートの瓦礫を吹き飛ばす。


≪……山賊の気づかれるんじゃないか? ≫

―― かんべんしてくれ……


≪あれだけの爆発を響かせているんです。 逆にヤバい奴がいるって証拠にもなりますよ ≫


≪ぜひそうであって欲しいね≫




          ~~ 山岳民族との燃料の交渉 ~~


一行は、名もなき集落に到着する。


「……ダメだー! 何言ってるか分からん! 」

タツマが根を上げる。


ここはアルシア山脈の裏側も山岳民族の集落。 この周辺での交渉は、交渉者が直に交渉を行う必要がある。 


そして今、タツマが乗っている車両の燃料を分けてもらうための交渉を行っているが、言葉がわからない。


惑星暦となってもどこでも統一言語が使えるとは限らない。

「燃料がないとアガニッペからの補給待ちになるぞ! 」


しょんぼりして戻って来たタツマに対して、鄭が言い放つ。 といっても彼自身も交渉が出来る訳もない。


「セレン。 貴方ではダメなのですか? 」

アリエフが、セレンに話しかける。


『一つ目の化け物は、集落に入れるなとのお達しです』

セレンからの返答。


―― いつの時代だよ


「それに顔を見せての会話が、向こうさんへの礼儀だっけ? 」

「そっ。 バイザーメットを外しての対応が必須だ」


「私が、やりましょう」

ケルンが、前に出て交渉に向かう。


溶け込むような、流暢な現地語で話をしている。 時折の笑顔と笑い声が聞こえる。


「なんかすごいですね。彼」

「イスペリアのレジスタンスだったんだろ? 大した人材がいたものだ」


鄭さんとウィードさんがこそこそ話している。 因みに我々は、集落の柵外での待ちぼうけである。


「終わりましたーいいですよー」

ケルンがこちらに合図を送って来る。


「本当ですか! 」

アリエフの意気が上がる。


「ここから先の交渉は、彼にやってもらおうぜ」

鄭さんの楽観的対応。


「なんとかなったー」

タツマの安堵と三者三様の感情が混じる。


                   *


坑道や山岳道を通って、山賊からの襲撃、自然の障害、多くの問題が発生し思うように前進できない。 裏道を通る際の障害の多さを改めて感じさせる。


とはいえ、苦難だけでもない。


山岳地帯の山肌は、人が入っていない為、手つかずの自然が出迎えてくれる。


標高が下がると徐々に針葉樹林帯が多くなり、昼間でも薄暗い雰囲気はある種の神秘性すら感じられる。


僅かな自然への感銘を受けつつ、タツマ一行は、粘り強くアガニッペ街道を南下し一ヵ月が経過する。


このまま、運転だけで終わりにならないだろうかとの僅かな願いも、徐々に現実世界が迫って来る。


人工物が――山岳集落の小屋ではなく、大きな人工物が見えて来る。


―― 激しいピクニックも此処までか……


挿絵(By みてみん)


目的地の“アルシア山麓の集落”が見えて来る。

ついにタルシス三山の裏道を走破し、リアルワールドの戦場に到着する。



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