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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
5章 偏約是正
32/54

イスペリア国家弁務官区

南部動乱(プロメンテ内乱)から3ヵ月が経過した。

現在、我々はキンメリア北部イスペリア国家弁務官区にいる。

挿絵(By みてみん)


北にイシディス海、 東にアマゾニス海に面している巨大な港湾都市で、昔からティファー大陸と交流がありタニア連合王国が成立した後もティファー大陸と交易がある都市である。


植民地という言い方は語弊があるが、もともとこの地域の人間がティファー大陸に渡り、タニア連合王国の原型を作った国である。


海上貿易で栄えていたが、ティレナ(キンメリア港湾都市)にその地位を奪われてから、徐々力を落とすことになる。


周辺諸国からの侵略圧力に対して、逆に強大になっていくタニア連合王国に派兵を頼むことで周辺国からの侵略を防ぐこととし、国家弁務官区として現在を生きている。


プロメンテの農地収奪法案の成立後、食料供給のためタニアへ最初に港を開けたのも、この都市国家になる。タニア連合王国とは関係は非常に良好で タニアのペット などと揶揄されることもある。


キンメリアは多くの都市で多頭政治による自治を行っているが、ここは、執政官の政策決定後にタニタ連合王国の弁務官(国務次官級の官僚)による政策最終決定があり、政策拒否権が発動できる状況である。


もっとも拒否権の発動は、滅多に使われることはないらしいが。

タニアの駐留軍もおり、テッサリア(キンメリアの筆頭)からすると面倒な存在ではある。


もちろん支配に対しては、多大なる恩恵もある。輸出に関しての関税への優遇、渡航に際してもIDカードがあればティファー大陸へ自由に出入りが可能だ。


食料も優先的に回してもらえ、他国からの侵攻に際しては、タニア軍の全面的な支援が得られる。 タニアの港への優先係留権もあり、実質タニア領になる。


そのため、タニアに輸出する際は、イスペリアを経由した方が、安価に輸出できるため、キンメリア大陸の貿易港として賑わっている。


因みにタニア連合王国は、巨大な穀倉地帯と最新テクノロジーを保持している、マールス(火星)随一の超大国になる。


さてそんな、超大国の出先で現在活動中の2名1組。


「アルプ。 ドローンからの情報は?」

『何も引っ掛かりません。一旦情報の整理をされたら如何でしょうか』


「わかった。 機体を回収して戻ってきてくれ」

『了解です』


タツマは、現在アルプとバディを組んで潜入捜査中である。


アルプは屋外で捜査中であり、タツマは安宿の一室でアルプが戻ってくるまで待機中である。


難儀な依頼を受けたものだと、安宿から見えるダウンタウンの街並みを見ながら、タツマは少し後悔している。


                    *


そんなタニアにべったりのイスペリアであっても、近年、タニアの治外法権に関して何かと問題が指摘されるようになってきている。


原因は明確である。タニア民がイスペリアで犯罪を起こしてタニアに帰国して、逮捕できない事例が、ここ数年増加しているからだ。


特に最近ではタニア民の横暴がひどく、治外法権撤廃活動に火を注ぐ結果になっている。

発言の自由は保障されているため、デモが起きても時間を守れば問題なく行える。


故に表面上は、爆発には至っていない。


しかし、反タニアの名のもとに、治外法権撤廃の地下組織ができており、活動が活発化しており、一般市民も彼らの活動に一喜しているのが現実になる。


その活動家の情報をどこで知るか。

タツマが、ここ1~2週間の報道紙を開くことになる。


<タニア通商担当の汚職の解明! >

<タニアからの薬物密輸の阻止! >

<入札に関してのタニア系関連会社の談合摘発! >


等の見出しが(おどって)っている。

どの記事もレジスタンスとの関連を仄めかしている。


このようなメディアを通じて住民にもわかる形での報告が、この地でレジスタンスが認知される所以である。


過激派というより義賊に近い気もしないでもない。

まぁイスペリア……タニアからしたら反抗分子に見えなくもない。


本日の記事は、

<イスペリア通商部タニア部門担当者の遺体の水死体の発見。関係者によると連日の激務より精神が不安定になっていたとのこと、治安局は自殺の線を含めて捜査中>


また随分穏やかでないな。大きな国になると業務も忙しいから色々があるのか。


さて、先ほどの“難儀な依頼”というのは、この反政府組織に関するものである。


依頼者は、親父(ダイゴ)からであり、

“イスペリアの地下組織であるレジスタンスを探し出し支援をして欲しい”

と言うものである。


“頼みごとをするなら、こっちの頼みが先だ!さっさと500億マリベル(5000億円)の金の工面をしろ” と返信したものの結局、引き受けている。


お願いの出所は、あの議員(スキュレス)だろう。

訳の分から無い政治問題に首を突っ込ませるのは、あいつの要望以外ありえない。


今は、イスペリア都市国家の南部ダウンタウンの安宿をキャンプ地として活動している。

情報網から恐らくこの辺の住民ではないかとの情報が手に入ったからだ。


レジスタンスの手がかりとして、暗号っぽい落書きを壁に残しており、魔法陣の様な円形に様々な図形を合わせたような色も複数ある模様だ。


端的に言えば落書き小僧を探し出すことが、最初の業務になる。


レジスタンス関しては、イスペリア治安局も捜査しているようだが未だに発見出来ていないようだ。


とはいえ、当初この落書きにも意味があるのではないかと考えたらしいが、南部ダウンタウンのみの行動であり、イスペリア治安局もメッセージ性もないとの早々に結論づけ捜査を打ち切っている。


我々は、その候補から外れたものを現在追っていることになる。


部屋をドアが、あるテンポでノックされる。


タツマがのぞき窓から表を確認するとローブ姿で仮面をつけたアルプ見える。

安心してドアを開け、アルプを招き入れる。


「あやしまれた? 」


『ここはダウンタウンの治安が悪い地域です。 私の姿に興味を持つものもおりませんし、誰も気には留めていないようでした』


イスペリア地域では、何かとトークンに関して拒否反応がある人が多いらしい。


と言いつつも、周囲の環境にならせる意味合いも兼ねてアルプ(トークン)を難易度が低い作戦で屋外で使用する形にしている。


入室の開口一番アルプが質問してくる。

『何か、分かりました? 』


「何もかも不明だ。今までの画像データも見たけど規則性もメッセージ性もない。色もバラバラ、配置もバラバラだ。重ね合わせても何も見えてこない。まったく分からん」


そして、アルプを屋外に出して、タツマが室内でしていたのは、その落書きの解読である。

『しかし、なんらかの意図があるように推測します』


「それは、同意。この図が水性で描かれているのがとてつもなく気になる。水をかけると図が消えるのは、単なる落書きで済ませられない気もする。 しかし、まったく分からん」


既に安宿に1ヵ月近くいる。労働者の次は、工作員まがいの仕事だ。忘れているかもしれないが、貿易商だよ。我ら。輸送業なのに。


『しかし、タツマは流石ですね。内戦を生き残って、直ぐに次の仕事とは』


「しばらくプロメンテも離れたかったからね。 どうであれ、戦った後は色々思うところもあるさ」


『百戦錬磨のヒルベルト商会でもですか? 』


「そんなカッコいいモノじゃない。 戦いなんて所詮は獣の所業さ。

今回の戦いでも最終的に98人の命が失われていったんだぞ。家族がいる人もいた。


戦いには勝ったが、プロメンテ農耕地区の合同葬儀を見てみろ。あれが戦後の現実だ。

戦勝ムードとはかけ離れていただろう?


いくら“必要な犠牲”だと言いつくろっても、被害者からしたらただの戯れごと。

息子を、主人を、返してくれと思うのが人さ。 それにプロメンテ・シティ地区は更に悲惨な状況だったろ」


あの後は、内戦の後始末、農耕地区の合同葬儀、シティ地区との停戦とビャーネさんの執務を裏方で支える形での業務が、2ヵ月ほど続いていた。


執政官2名は自ら退任。 肝心のヒューリ(執政官)は、執務室で拳銃自殺とのことで幕引きになっている。 


そして死んだヒューリに関しても莫大な国庫の使途不明の流用が認められたていたが、死人に口なしであり、こちらへの保証金も慰謝料ももらえない状況になっている。


結局、向こうの官僚相手にこちらら配下の治安隊と設置することで、まずは手打ちになった。


『ビャーネ氏は、犠牲者に対して手厚い保護を約束していましたね』


「その位しかできないからね。もう仕事で甘い判断もしないさ。文字通り、命を掛けて守られた会社だ」


『因みに、白翼の騎士団がシティ地区に行くことはあるのですか? 』

「あるわけないだろう。奴らが少しでも自分たちの選択に責任を持つことを願った警告だ」


『タツマばかりが貧乏くじを引いているようですが? 』

「ホントだよな。トークンでなく、かわいい異性に癒されたいよ」


一つ目モニターの人型トークンに視線を向ける。


マスター(サナエさん)は、どうです? 』

「うーん。どうだろ? それより今はナーミャンだね」


『年齢が、離れているようですが』

「そう? 特に感じないけど」


『それと衛星電話による接続料金もかなりの金額になっています。 フォボスの宇宙基地に通話をかけすぎでは? 完全に私用でしょう? 』


チッ・チッ・チッとタツマは指を振るう。

「公的な通信だ。成功報酬を約束したんだから、その受け取りの連絡だ。デートを確約してもらわないと」


『エリスの英雄ですよ』

「なら余計に口説きがいがあるね。誰も口説かないから、チャンスもありそうだし」


『相変わらずのメンタルには、感服します』


「まーね。とりあえず、落書き小僧への対応は、今まで落書きがあった場所を確認しに行くか。現場100回の精神」


『了解です。しかし、治安局も調べています。新たな発見がありますかね? そもそもペイントはもうないですよ』


「それでもさ。明日は現場ね」


--- 南部地区 ダウンタウン 落書き場所 

夜はかなり危険な場所になるため、朝早くから宿を立ち、目的に向かう。 

落書きがあった場所はそれなりに数が多い。


カーゴ車両の窓から見える景色からは、路上にマットレスを敷いて寝ている人間。

会話をしているような雰囲気もあるが、相手と目を合わせず話す人々。


中には酔っぱらっているのか、それとも幻覚を見ているのか立ったまま体だけがフラフラ動いている人間がいる。


集団を作っているようで、皆バラバラの方向を向いているそんな感じがある。


『あの足取りが覚束ない者は、薬物による幻覚を見ているかもしれません』

アルプからの解説が入る。


「金が無い都市国家では、なはずだがー―」

『生産性のない地域に投資はしない。 合理的に考えれば当然です』


車両はそんな朝の風景を横目に見ながら、目的地に向かう。


               *


目的地のダウンタウンに到着する。

狭い範囲に低い家が多く、空き家も多く荒れている。


朝というのに周囲に人影はなく、故障した車両が路駐されている。

修理しようとして失敗したのだろうか?


―― ここかー治安は云々の前にそもそも人がいないじゃん。

タツマが、カーゴから降りる。


コンバットスーツと道中合羽姿である。コンバットスーツは、汎用のグレーモデルになる。 得物は、いつものハンドガン。バイザーメットは、外している。


白のコンバットスーツはスマイル号にある、流石にあれは目立ち過ぎるため。一般色での対応になる。


周囲を警戒しながら目的に向かって歩き出す。

地域のギャングに囲まれたら、数によってはこちらがピンチにさえなりかねない。


目的地に到着する。

「ここかー」


壁の落書きは既に消えている。アルプのデータベースにより、落書きがあったであろう場所にデザインを投影する。


―― 全体的に暖色系か


『場所はここで、こんな感じのようです』

しかし、周囲には空き家が多く、周囲にも落書きがチラホラある。


周囲を見渡すがこれといって特徴的なものはない。かなり人寂しい場所でもある。

空き家の窓ガラスに我らの姿が映される。


―― 道中合羽姿も結構目立つな

自分の姿を確認するタツマ。

コンバットスーツはある程度隠れるが、それでも何かと特徴的なスタイルになっている。


『何か閃きましたか? 』


「うーん。 分からん。次だな」

『了解です』


                 *


次の落書き場所へ移動する。


ここも似たような人の気配が少ないエリアだ。

先ほどのエリアと比較して背の高いアパートが多いが、やはり荒れている。


『ここですね』


今回の絵柄は色がカラフルな感じだ。相変わらず分からない。

周囲を見回しても建物が違うだけで雰囲気は同じだ。


背の高いアパートのためか圧迫感がある。


壁に迫られている感じの上ギャングに挟撃されたら、逃げ道が確保できなさそうな場所だ。

長居はしたくないな。


「次だな」

タツマからの言葉で、場所を後にする。


                   *


3番目の場所に到着。ここも同じ。

ここは、背が高めのアパートが多いが、なぜか圧迫感が少ない。


『ここです。 投影しますね』

落書きは消えており、ただの壁だ。


そこにアルプが投影するのは、全体に緑系の模様になる。

「うーん……」


タツマが考え込む、色がカラフルだったり、色がある程度統一されていたりと、あるが何を意味しているのかが不明である。


初めて見た時に色自体の意味を考えても全く規則が見られなかった。 その奇妙な渦のような模様は、何かのまじないと言われれば、信じる程度に意味が不明であり、規則性もなく、奇妙な柄が並んでいた。


空を見上げる。 

ここは前回の場所と同じく空が狭い。


―― そういえば圧迫感がないのはなぜだ? 道が広いとか?

周囲を見回すと、建物のガラスに映る自分と目があう。


――ああ、窓が広めに取ってあるのか? 割れていないだけ多少は治安が、安定している地域なのかね……


『何か分かりましたか? デザインも街の規則性も皆無です』

「……いや次に向かう。 確かめたいことがある」


『了解です』

                    ・

                    ・

                    ・


かれこれ十数件見て回っていると日が傾いてくる。

『タツマ。これ以上の外出は、危険になります。 一旦宿に戻りましょう』

「了解だ」


宿に戻り本日の足で調べた内容を地図に書き込み、落としていく。

模様の色や場所、感じたこと。アナログな作業を行っていく。


一通り落とし込む。 場所も色も一見するとランダムにしか見えない。

『特に規則性も確認できませんね』


AIからの判断は地域別の色や特徴から傾向を見ているのだろう。


「……いや。 落書きの反対側に模様が映る窓ガラスがあった」

しかし、タツマの見方は別だった。


『……?』

「といっても、一定の色に統一されたデザインの時のみだ。そもそも、デザインが暗号とか無理だろ。手書きの落書きで。 恐らく何かしらの場所を示しているんじゃないか? 」


『場所ですか? 』

「そう。一番シンプルな手段だ。場所を示すために落書きを示す。 ここに来いと」


『それと窓ガラスが何か関係でも? 』


窓ガラスの家での集合は、安直すぎる。地図を見る。

魔法陣が掛かれた壁から窓のある建物へ線を引っ張ると教会・墓地・公園など公共施設にたどり着く。


……場所による色やデザインの関係性は?


デザインを主要な色を落とし込むと教会では、青などの寒色系、墓地は赤色の暖色系、公園は緑などの緑色になっている。


「アルプどう思う? 」

『ヒルベルト商会をたたんで、探偵にでもなったらどうです? 』


「あのねー商人だから。 工作員でも探偵でもないです」


何とか手がかりを得られた。 こうなると次の落書き発生を待って、その場所に突入だな。

さて、さて、どうなることやら。


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