開戦 プロメンテ
一人の欲望から生み出された暴力による意志の強制手段。そして、それに抗う住民。 幾星霜と見られてきた演目の幕が上がる。
22月某日、プロメンテ農耕地区は、澄み渡る青空が広がっている。
穏やかな雰囲気の早朝に、突如としてけたたましい機械音が周囲に響く。
プロメンテの空輸機による空挺師団の落下傘強襲部隊により開戦の幕が上がる。
落下傘部隊が次々に広大な農業地域に投下される。
広大過ぎる為、主要集落に投下し、集落の治安と運営を掌握しに掛かる。
≪ネス邸に人影はありません≫
≪倉庫クリア≫
≪保管庫クリア≫
次から次へとクリアの報告が上がってくる。
ネス邸の周囲に着地後速やかに周囲を制圧していく。
地上の安全を確保した後に、回転翼機 数機がネス邸の中庭に着陸する。
空挺師団の隊長が降り立つ。
「了解した。 引き続き扇動者の確保を優先せよ。 相手は一般市民だが武装している可能性がある。 警戒を厳として対応せよ」
抵抗がない。当然だろう、農家の住民では、正規軍には勝てない。
となると、ネスも逃げるしかないか?
プロメンテの農耕地区は広大である。ここから、一人を1個中隊で探すのは不可能である。
とりあえず、周辺を捜索していなければ、“住民を置いての逃亡扱いにしろ”と総指揮官から命令も出ている。 指導者が、仲間を見捨てたと分かれば、奴の支持者も落ち着くだろう。
しかし、いやな仕事だ。収奪法案時の農耕地区暴動の時には、一切の出動もさせず、暴動が起きていない状況で出動とは。
≪隊長。ネス邸クリアです。司令部の設営を開始します≫
≪了解だ≫
わずか1時間余りで農耕地区の中心部の制圧が完了する。
「順調だな」
電撃的でありその手際は、プロの戦争屋と言っていいだろう。
「あとは、指揮官殿の樹林帯部隊を待つだけか――」
隊長は青い空を見上げながら。そのあっけない幕切れに手持ちぶたさを感じていた。
--- プロメンテ樹林帯侵攻
偵察隊は、樹林帯のプロメンテ大橋を監視している。
対岸の橋の向こうでは、多くのコンテナが置いてありベースのようなものが作られている。 おそらくコンテナをバリケード代わりにしているのだろう。
例の報道があってから、プロメンテの農耕地区の住民が反対の基地を作り、連日シュプレヒコールを上げている。 周辺では、住民がプラカードを挙げて進軍の不当性を訴えている。
血気盛なものもいるようで、本気て対戦をする準備が見受けられる。
その基地内で準備をしている人間は、おおよそ300人いるだろうか?
≪隊長。プロメンテの賊が、大橋の樹林帯側におおよそ300程。川を挟んでデモ隊がいます。おそらくあのベースが、徹底抗戦派の拠点と思われます。 ちなみち交戦部隊は、全員白いローブを身に着けいます≫
≪……300人で5倍を相手するのか。白のローブとは、決死での交戦との意味合いか――司令官に報告だ≫
≪了解です≫
*
下士官からの情報が、中佐に届く。
「司令官殿、偵察隊からの情報です。農民部隊は300程度、白装束の決死隊のようです。 大橋の手前にベースが作られており、河向こうにはデモ隊がいるとの情報です」
「決死隊と来たか――それにしても300しか集まらなかったとは情けない。 土地を守る気概が足りんな」
その顔に冷笑が、浮かび上がる。
自軍の圧倒的な優位性とゆるぎない勝利から何とも言えない感情がこみあげてくる。
「司令官殿、私は他の分隊でなくてよろしいのですか?」
「大佐は、私の分隊で指揮を頼む。実戦を潜り抜けた経験者は重要だからな」
大佐は階級こそ上だが、現在中佐の配下の部下になっている。
そして中佐は、現在、大佐 と同じ権限を持っており、鎮圧軍の指揮権を任されている。
野戦任官の制度を悪用して、ヒューリがごり押しで通したらしい。
軍務庁内部でも軍の私物化への反発が大勢を占めていたが、民意の象徴たる執政官への反抗はできず、高級将校も認めざるを得なかった。
結果、プロメンテ鎮圧作戦のみ中佐は、大佐と同等の地位が与えられている。
グルジョが、布陣の質問をする。
「司令官殿、この布陣でただの民間人を一方的な殲滅なさらるおつもりですか? 彼らはただの住民。 ここまでの作戦は必要ないでしょう 」
「賊軍は死しかない。プロメンテの自由と正義のもとに殲滅を実施する」
「ただの住民でも――ですか? 威嚇で十分ではないでしょうか? 」
「反乱の芽を残せと大佐は、言われているのか?」
司令官が、威圧する視線で大佐を射抜く。
この作戦にヒューリの息が掛かっていることは、公然の秘密であり、この男の背後には、執政官がのもまた軍内部では周知の事実。
正直どうにもできない状況に陥っている。
「いえ……出過ぎました」
「大佐は、私の元上司、私が出世したら相応の地位を約束しよう。本部隊での戦果を期待する」
「……了解しました」
各街道に約500人の部隊を3つ分けて進撃している。総動員おおよそ人数1500名 になっている。報道で正確な人数を知らせる必要もない。
兵士を守る歩兵輸送車や戦闘車両の総計300両程度あるため、各部隊にはおおよそ100両程度が割り当てられている。それらで各部隊の約500人を輸送している。
中央の部隊は、新兵を当てている。
明らかに囮だ。攻撃を受けたらひきつけつつ退却せよ。そんな指示が受けている。
そのため車両感覚が広くとられている。
そして樹林帯での接敵を考量して既に車両から降りての行軍になっている。
--- プロメンテ農耕地区の義勇軍
戦闘予定地域には、橋向とは別にカーゴで作られた戦闘用の陣地がある。
これが、セレンからのメイン回線の中継地になるため、今回の作戦の肝のエリアになる。
全員が白いローブで身を包み、見ただけでは、下に何を装備しているのか、わからない状況である。
「……さて戦闘開始だ。セレン準備は? 」
『絶好調よ! 』
セレン代用トークンが返答する。
―― テンションたけーな。
「アルプ。敵の状況は? 」
『中央分隊の車列が、長距離になっています』
「最後尾は?」
『……最後尾確認できました。センサー網の中です。』
「了解だ。 状況開始。 各ポイントのスピーカを大音量で流せ。 敵の聴覚に障害を与える。伏兵のトークン隊は、中央分隊最後尾への攻撃開始だ」
『了解です』
アルプに指示を出したのち、タツマが出発の合図をする。
「さて、プロメンテの勇気ある兵士諸君、1か月間の訓練の成果の見せ所だ。行くぞ!!」
1ヵ月で兵隊が出来上がるか?
コンバットスーツには、戦闘プログラムがあるため新米兵士でも戦場での判断や銃火器の操作方法を支援可能なシステムがある。
陣地に準備された50台の運搬車に白いローブの戦闘員が、乗車して戦地に向かう。
敵にも斥候がいる。 コンバットスーツ隊300が現れたら、農民相手じゃないと素人でも勘づかれ、警戒レベルが上がってしまう。
そうなるとただの一般市民と侮ってもらえる状況が覆る可能性すらある。
あくまでもローブを脱ぐのは最後にしないといけない。
≪タツマさん。上手くいくでしょうか? ≫
不安になるな。副指揮官。
≪君達が身に着けているのは最新のコンバットスーツだ。プロメンテ軍は、3世代前のものを使用している品質は保証できる。
それに全軍1,200名以上だが、3分隊に分かれているが、1部隊の人数は、こちらが優位だ。機動力で圧倒できれば数的優位も確保されている。勝機はあるさ。それに少しばかりの細工もしてある≫
タツマが副司令の肩を叩く。 車両は樹林帯の奥深くに進んでいく。
--- プロメンテ軍 中央分隊
森中では大音量かつ高音域の音が響きわたっている。
「何なんだこの音は、高音で耳障りだ!!誰か発信元は分からんのか!! 」
司令官の檄が飛ぶ。無線機にも音が入りよく聞こえないが、発生源が特定できないとのこと。
「クッソ農民風情が! 」
中央分隊は、高い音域での爆音で動揺している。新兵が多すぎたのがまずかった。
突如として最後尾の歩兵戦車に攻撃が加わる。戦列が長くなることで最後尾への支援が遅れる。
爆発音と大音量で周囲の状況判断ができなくなる。兵士達は、背後や上からの攻撃を推測し銃を向けて警戒している。
しかし、続いて脇の地面が盛り上がる。上部や背後に気を取られているため、気づくのが遅れることになる。
地面からは、事前に仕込んでいたトークンが、這い出てくる。まるでホラー映画のワンシーンのように一つ目のカメラが光る。
もちろんコンバットスーツ仕様だ。突如として脇から現れる敵兵。
トークンのため、赤外線サーチでも引っ掛かるはずがない。中央分隊は突如側面からの弾幕により輸送車両の被害が、発生する。
装甲車や歩兵戦闘車が反撃の準備をしている最中に今度は、ジャガーノート・トークン部隊による20mm徹甲弾の銃撃が加わる。
家屋の中の人間をまとめて排除する威力のため歩兵戦闘車や装甲車程度の装甲では、心もとない。
中央の部隊はパニックになっており反撃が満足に行えていない。 そこにタツマの本体が合流する。完全に挟撃になる。
「よーし、トークン達が上手くやっているようだ。全部隊、飛行準備!!」
コンバットスーツのからジェットエンジン音がうなり始まる。中距離であれば飛行できる最新スーツだ。
「トラックは乗り捨てろ、中央分隊の頭を抑える!! ジャガーノート隊とトークン隊は東側に戦線を移動、中央分隊を食い破れ!! こちらは中央分隊の残党に対応する!! 」
トラックから全部隊が飛び立つ。
部隊は木々の間を縫いながらの高速移動を実現してる。
1ヵ月間の情報収集で樹木位置登録しているため、自動回避プロブラムが実行しており、素人であっても衝突による離脱はない。
先頭のトラックは、敵の歩兵装甲車の攻撃を受けて大破するが、同時にそれが障害となり道を塞ぐことになる。50台の輸送車の群れに道が完全に塞がった。
『りょうかーい』
セレンからの返答は相変わらず軽い。
プロメンテ軍からすると正面から真っ白なコンバットスーツを先頭に新手がやってくる。
加えて空を飛んでくるコンバットスーツの部隊であるため、狭所であっても機動力が圧倒的であった。
地上のトークン部隊。頭上には白いコンバットスーツ部隊。
中央は囮とのことで新兵を中心に部隊を構成したことで指揮系統が完全に混乱に陥っている。
この状態では、プロメンテ軍の反撃は不可能に近い。
タツマ達の7.62mm弾により次々とプロメンテ正規軍が倒れていく。
携帯ロケット砲に歩兵戦闘車への攻撃、プロメンテ軍に上空からの攻撃。
カービン銃のサイトのロックに応じてコンバットスーツが、肉体を支援するため標準の精度が素人でも命中精度が格段に向上する仕組みになっている。
高速に飛び回る義勇兵と地上脇からのトークン軍団の群れに、プロメンテ中央の隊列崩壊は思いのほか早かった。
「歩兵戦闘車に集中。 使える歩兵戦闘車は鹵獲しろ! 逃走した兵士は追うな!
我々には次の戦闘が待っている! 」
≪了解!!≫
敵からの反撃が、弱くなくなったのを見計らって、次の指令を飛ばす。
「2~5番隊は、トークン部隊と合流し東側分隊の掃討にかかれ!! 各集合地点はバイザーに投影されているマーカ位置! 戦闘は東側司令官の指示にしたがえ!! こちらは細工した後向かう!! 」
やはり戦争だな。こちらも被害が出ている。
≪アルプ。東側の敵部隊はどうだ? ≫
≪中央分隊が攻撃を受けたとの知らせで浮足立っています≫
≪作戦指揮は手筈通り、今しがた、そちらに2~5番隊が向かった。準備次第、背後からの攻撃の後、側面と正面からの一斉攻撃だ。頼むぞアルプ指揮官!! ≫
≪了解です≫
さて、鹵獲できた歩兵戦闘車は3台か。中に乗り込む。状態はいい。
ケーブルを接続し、端末を繋げ問いかける。
≪セレン。こいつの遠隔操作は?≫
≪大丈夫……同期完了。西側分隊が来たら打ちまくるのね≫
≪そうだ。 頼むぞ! 我々の今からそちらに向かう! ≫
--- 東側分隊
「相変わらず音が耳障りだ!! 何なんだ!!」
≪隊長、音源を見つけました。破壊しますか?≫
≪やれ!!≫
音量が落ちる。しかし、まだなっている。くっそ農民風情が。何台仕掛けているんだ!!
≪隊長。中央分隊からの戦闘に入ったとの連絡後、応答がありません≫
≪わかった。警戒を厳として前進しろ≫
≪了解です≫
何なんだ一体。農民が、こんなことできるのか?
突如として後方より爆発音が発生する。
≪どうした! ≫
≪敵襲です! ≫
≪赤外線モニターには温度上昇は検知されてないぞ!! ≫
≪トークンのようです! 大量のトークンだ! コンバットスーツを着ている! なんなんだこいつ――≫
通信が切れる。
(トークン?……メイドの木偶の坊が? )
爆発音が響く、東側分隊の歩兵戦闘車も次から次へと破壊されていく。
東側分隊長のバイザーメットに部隊の状況が示されている。交戦の連絡の後、味方の数が減っていく。
(嘘だろ! それにバックアタックとは)
注意が後ろに向いてる。
2~5番分隊は、飛行オプションのコンバットスーツにより空を切って飛んでくる。
ジェットパックにより機動力がけた違いになっている。
スピーカの音でジェット音もかき消され、かつ後方の攻撃音も相まって気づかれていない。
≪2番隊 側面現着≫
≪3番隊 側面現着≫
≪4番隊 敵正面現着≫
≪5番隊 敵正面現着≫
義勇軍からの報告がアルプのもとに届けられる。
≪よろしい。 斉射!! ≫
プロメンテ軍東側分隊の進行方向の正面、そして側面から東側分隊に弾幕が襲い掛かる。
三方から攻撃に分隊は、徐々に崩壊していく。
≪撤収だ。東側に撤収だ。東側の平原まで撤収しろ!! ≫
分隊長が指示を出す。
(侵攻が早すぎる! クッソふざけやがって。 とにかく、一度戦場から離れて部隊を立て直す時間を確保しないと)
隊長が苦虫をかみしめている。
不意に隊長の肩に手を置かれる。振り向くと一つ目のトークンがいる。
周囲の兵士は、気絶かケガでうめいている。
『あなたが、この部隊の隊長さん? ちょっと一緒に来てくれませんか? 』
--- 西側分隊
接敵の知らせと援軍要請により西側分隊は、中央分隊に合流した。
いや着いたというべきか。すでに戦闘は終わり兵士の骸が転がっている。
「司令官これは……」
まさに地獄との言葉が相応しい。楽勝と見ていた戦闘に対して1個分隊の壊滅だ。
「何がおきているんだ」
大音量は続いている。現状の確認もままならない。
司令官は現状を受け入れることができず、ただただ立ち尽くす。
≪司令官! 東側分隊が猛攻を受けています。 至急応援をとのことです! ≫
次から次への問題が出てくる。それも致命的な問題ばかりである。
通信兵からの情報が入る。
「……」
大佐が司令官を視線を向ける。
コンバットスーツで表情は見えないが、唖然としている状況は感じとれる。
(思考が停止しているか――)
大佐が檄を飛ばす。
「直ちに向かいます。 司令官殿! 東側へ向かいます! 」
「ああ」
「全軍東側へ前進、東側分隊の応援に向かう。 進め!! 」
東側に向かう隊列の後ろから、突如して歩兵戦闘車が火を噴き、分隊に襲い掛かる。
咄嗟の攻撃に反撃もできず。損害が発生。
≪敵の生き残りか!! 状況報告!! ≫
≪歩兵戦闘車3台からの砲撃です≫
≪破壊しろ!! ≫
ロケット砲や歩兵戦車の20mm砲で応戦し、ようやく沈黙した。
兵士が近寄っていく。
“くっそ、農民風情がどんな奴だ”
“尋問して情報を聞き出してやる”
沈黙した歩兵戦闘車に近寄りハッチを開ける。
ハッチを開くとそこには誰も座っていない座席のみがあった。
「……」
(何なんだこれは? )
西側分隊も奇襲攻撃で損害が出ている。
全てが想定外だ。
誰もが何が起きているか、分からいまま、その場で立ち尽くしている。
急に爆音が止まる。
森の中は、いつもの静かな森に戻った。
爆音により鳥はいないが、風が吹き抜ける音は聞こえる。静寂。
スピーカから突如爆音以外の音が流れる。
<聞こえますか? こちらはプロメンテ義勇兵団。中央街道にいる西側の分隊の兵士の方々。現在戦闘続けているのは、あなた達だけです。
武装を解除して投降すれば、※1エリシウム戦時協定にのっとり捕虜としての対応を実施します。もちろん逃亡するなら追撃はしません。速やかに決めて行動をお願いします>
……嘘だろ? 農民に負けた。
「司令官。 対応は、対応はどうしますか? 」
大佐が話しかける。
返事がない。もはや情報が処理しきれていないのだろう。
農民兵の一人の死体を調査している兵士からの連絡が大佐に入る。
≪大佐聞こえますでしょうか?≫
≪どうした? ≫
≪奴らの遺体があったんですが、コンバットスーツが変なんです! ≫
≪変? ≫
要領を得ない発言のため、大佐が、場所に向かい調査に加わり、遺体の確認をする。
「見てください! この死体。 我々のコンバットスーツより上等のように思うのですが、どうなのでしょう」
兵士の一人が、骸を示す。 大佐が各パーツを確認していく。
「……最新のコンバットスーツだ……ジェットパック付き……高速高機動モデル。 カナベラルロボティクス……テラ(地球)産だ。 なぜこんな場所に……それに農民風情が、なぜこんな高級装備を……。
PMC……。PMCか!! やられた!! 」
農民で対応できなければ、PMCを雇う。 何故こんな簡単なことに。
奴の背後には惑星間貿易商がいる。 何故可能性を考えなかったのか。愕然とする。
惑星間貿易商を経由してコンタクトを取ることぐらい想像できたはず。
作戦の根本を間違えた。戦う敵の戦力を大きく見誤ったのか。
ネス・ビャーネ。 あの温厚な人柄に騙されたのか。
まずは司令官のところに状況報告をする。
「司令官。完敗です。相手は最新装備のPMCの可能性があります。本部隊は500名程度です。相手の戦力は未知数。投降しか道はありません。」
その言葉にようやく司令官が反応する。
「はっ? ふざけるな! ふざけるな! ふざけるな! ここまで来て負けましたでは、示しがつかない。全軍突撃だ」
「玉砕されるおつもりですか!」
「我々が負けるはずがない。 正規軍1,500が農民風情に負けるはずがない! 」
相手はPMCと言っているが聞く耳を持たない。
「全軍に突撃命令をだせ! ここで奴らを殲滅するんだ! 」
「……」
兵の士気も低い。相手が農民でなくPMCの可能性。加えて最新型の装備であり2つの部隊が壊滅させられている可能性がある。少なくとも組織は維持できていない。 ここで突撃しても死しかないことを悟る状況になる。
「……わかりました。因みに司令官? 戦場での死因の2割は何だと思います? 」
「何を言っている!! 突撃だ!! 」
一発の銃声が響く。
「司令官は、敵の銃弾により、絶命した。これより投降する」
--- プロメンテ大橋
両手を挙げて森から兵隊がでてきた。
タツマは、カーゴ車両の上に座って状況を待っていたが、意外な結果に少し驚いている。
―― あの中佐なら交戦すると思ったが、降伏とはね
「我らプロメン軍に戦う意思はない!! 」
「了解だ。各員武装をチェックして、解除後に対岸の捕虜施設へ向かうといい」
タツマが指示を出し、そのまま部隊の責任者の所在を聞き出す。
「司令官はどこにいる?」
「私だ」
発言者がバイザーメットを脱ぐと、知らない顔が見える。
「……? 司令官は? 」
再度聞き直す。報道では見た風体をあまりに違い過ぎる。
「戦死した。お前らの銃弾に倒れたのだ」
――なるほど。 投降した理由が分かったよ。 まぁいいさ。
兵員が次々に橋向こうに渡っていく。
司令官と名乗る男は、こちらに向かって煽ってくる。
白いコンバットスーツから、直ちに義勇軍の司令官とわかるのだろう。
「ここで我々を打ち取っても、貴様らの雇い主の首は我々の手の内だ」
流石、軍人さん。折れない闘争心。
「……連れていけ」
義勇兵に連れられて川向うに行く。
こちらの情報を与える必要はないからね。とりあえず、現状確認だ。
≪セレン。現状被害は?≫
『
トークン修理不能20体
トークン損傷103体
義勇兵死亡26人
義勇兵負傷109人
戦闘不能258
部隊の再編戦が必要ね 』
住民にも多くの血が流れて命も消えてしまった。戦闘となればこれだけは避けられない。
≪……了解だ。 動けるものに第二作戦の指示を出せ。 今夜でケリをつける≫
『了解よ』
※1エリシウム戦時協定: マールス(火星)内にある都市国家間で結ばれた、戦争のルール。




