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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
1章 揺蕩星間
2/53

惑星間貿易商

彼の名は、タツマ・ヒルベルト。惑星間貿易商ヒルベルト商会に努める2代目になる。

会社経営者の息子である。 会社といっても同族経営の中小企業であり、主に雑用を任されている。


そして今、“ウェヌス(金星)”からの商品を“テラ(地球)”に向けて輸送中なのだが、


「クッソ、敵が多すぎる! 」

目下、宇宙海賊の襲撃を受けているまっただなか。

タツマが、遠隔でドローン戦闘機を操作している。


「右舷に海賊の強襲舟艇 5隻が近づいて来る! 接舷されるぞ! 」

副社長も同様にドローン戦闘機遠隔操作組である。


海賊の 戦闘機・母艦(中型艦)・小型戦艦2隻を相手しているのだ。

商船一隻には、厳しい状況だ。


この船の乗組員は全員で6名。


バルティス(副社長)(エンジニア)、そしてタツマが、遠隔でドローン戦闘機を駆使して小型戦艦の排除を担当しているが、強襲舟艇まで手が回らない。


社長である親父は、高射砲や魚雷で海賊の母艦を攻撃している。

操舵士は、海賊の猛攻を回避しながら、船を操舵している。


そして、本船の砲撃・武装運用のスペシャリストであるシップマスター・セレンは、護衛の海賊のアタッカー(有人戦闘機) と 敵母艦 の排除と 我々の支援が担当になる。


セレン(シップマスター)の担当が多いって? AIだからこの程度してもらわないと困る。 


ちなみにセレン(シップマスター)は、我が母船ラッキースター号のAIの名前で、その名の通り船長でもある。


親父曰く、特注のAIでスーパー高性能とのこと。


海賊のアタッカーは有人機だが、こちらのドローン戦闘機は無人機である。

その無人機15機をセレン(シップマスター)が操り、戦闘を均衡に持ち込んでいる。


有人機は臨機応変・即時対応が可能なためドックファイトに向いている、反面人が乗るため加速、旋回速度運動に制約が発生する。


一方、無人機のドローン戦闘機は、そのような制限が掛からいが、遠隔操作であるためどうしても動きが緩慢になる。


そのため、ドックファイトには向かず、船など巨大な的への対応が主流となっている。

その差を埋めるのが、弊社のセレン(シップマスター)になる。


当初、数的有利と思われた海賊機のアタッカーであるが、シップマスターの操るドローン戦闘機の機動力と連携により、敵も深刻な被害に陥っている。


想定を上回る被害率に海賊たちが浮足立っている様子が、外部からも見て取れる。


ドローン戦闘機に次々に海賊側が落とされるため、徐々に攻撃圧力が弱まってきている。

しかし、逃げようにも、彼らの母艦への被害も甚大になっており、戦域内の選択肢が限られてきている。


こっちは、落とされても次の戦闘機を出すだけなので人的被害がなく、セレン(シップマスター)の働きにより、海賊のアタッカー排除 と 母艦 への攻撃は優勢になっている。


と言いつつも、海賊の数が多すぎる。多勢において寡兵では、当然きつくなってくる。

こちらのドローン戦闘機も徐々に落とされていく。


「周囲の小型艦の沈黙を確認! 」

タツマが声を上げ報告する。


エンジンへの攻撃への効果があったようだ。こっちは小型艦を止めるのに2人がかりだ。

セレン(シップマスター)からの現状の報告がはいる。


『戦果を報告します。


海賊の母艦航行停止を確認。

周囲の小型艦2隻 航行停止を確認。

海賊の航空戦力 無力化を確認。

総合評価海賊戦力被害甚大


被害を報告します。

ラッキースター号外壁損傷率50%超

ラッキースター号魚雷弾数残弾20

ラッキースター号ドローン戦闘機残機5

総合評価ラッキースター号戦力被害甚大


海賊の強襲舟艇。右舷後ろ側のハッチに接舷。

これより白兵戦が予想されます』


セレン(シップマスター)! いつのもの準備だ! 」


高射砲の制御台から立ち会がり、親父(社長)が叫ぶ。


『了解です。コンバットスーツ隊には、カービンとショットガンをジャガーノートには局地制圧兵装を準備します』


セレン(シップマスター)からの状況分析より白兵戦用にカービン銃とショットガンが準備される。


タツマ達は、制御コンソール席から立ち上がり、脇に置いてあるバイザーメットを被りブリッジから出撃することになる。


いつも通りの、ピンチな状況だ。

戦闘指揮所の外には、火器が準備されており。 それらを手に取り火器装備を整える。


艦隊で襲ってくるとは。さすがにこの船でも3隻はきつい。


通常戦闘員にはコンバットスーツ、パワードスーツの戦闘バージョンになる。通信機器と強固なプレートで覆われている。


我々の仕様は軍使用の高級品だ。カービン銃のサイトにバイザー画面への同期や味方との連携など多くの作戦遂行アプリが付いている。


切込み隊にはジャガーノートと呼ばれる重装備型のコンバットスーツを装着している。

ジャガーノートは弾幕に耐える仕様になっており、弾除けになることが目的だ。


両腕に盾を装備しており、ランドセルのウェポンラックは、ミサイル・カノン砲・バルカン砲等が装備可能だ。状況によって換装ができる。


重量がかさむ為、機動性が落ち、的になりやすいが、局地制圧や防御陣地の突破の能力が高いことが特徴だ。運用には、コンバットスーツの部隊で、敵を殲滅するコンビネーションが求められる。


『敵戦力が侵入しました。戦力数104。船内の全ての武装人型トークンを出撃させます。

敵のマーカーをセット。 自軍のマーカーをセット 』


シップマスターの情報が、各員のバイザーメットに投影される。

船体の図面とそこに丸と三角の光点が映し出される。 ホームゲームでの最大の利点である。


社長の親父もコンバットスーツとショットガンを装備している。


人型トークンは、いわゆるロボットになる。 船内の雑用から戦闘までを担当してもらっている。武装とついているのは、銃器を装備させた状態で出撃させているからだ。


うちの全人型トークンは、80体。数では負けている。しかし、攻撃を受けても人のように行動が著しく低下しないのが利点ではある。欠点といえばプログラム通りの行動しかできないこと。


この欠点を克服するため、我が船のトークンは遠隔制御が可能である。制御をAIに任せることで、柔軟な対応ができるはず。つまりは、うちのAI頼みだ。


副社長はジャガーノートで装備を整えている。操舵者は引き続きブリッジに残り操舵に専念。

エンジニアと私はコンバットスーツを装備している。


4人での迎撃となると人手不足が悔やまれる。幸いにも人型トークンがいることで、防衛線が構築できそうだ。あとは、トークンでどこまで、敵戦力が削り切るかが、生存への分岐点になりそうだ。


ラッキースター号内の各員の士気も高い。


「海賊御一行様の到着だ。派手に迎えてあげないとな!!」

副社長が吠える。


「テンション上がるぜー」

(エンジニア)が呼応する。


そして社長(親父)の檄が飛ぶ。

セレン(シップマスター)。無力化した海賊船を拿捕しとけよ。地球で売りさばく!! 」

『了解です』


続けざまに、

「さて、ヤロー共。ここからが最後の仕事だ!! こっちも壊滅状態だが、敵さんも壊滅状態だ。この一戦が生死の分かれ道だ!! ぬかるなよ!! 」


『社長。 海賊はこちらの誘導に従って向かってきています』

セレン(シップマスター)が、船内の隔壁を操作して、海賊を自分たちの有利な環境に誘い込んでいるようだ。


「これで3回目だよ。 襲撃が多すぎない。 それになんで、艦隊なんだよ」

タツマがつい弱音を吐いてしまう。


「俺たちの熱心なファンがいるんだろ? モテモテじゃねーか」

副社長(バルティス)が、ノリノリで応えてくる。


むさい宇宙海賊にモテても、嬉しくない。


『隣接ブロックまで侵入してきました。 人型トークン、接敵。 交戦に入ります』


銃撃音が聞こえてくる。爆発音、銃撃音と気勢が交じり合っている。

隔壁越しにも激しい戦闘だと分かる。


よりにもよって商品倉庫で戦闘になる。


もちろん商品は、宇宙での運送を考えているため、頑丈なコンテナに入れられており、カービン銃ぐらいでは破壊できない。が気持ちのいいものではない。


しばしの時間の経過の後、トークンが現状報告を伝えてくる。

『トークンの損耗率10%を超えました。敵戦力の損耗率30%を確認。押しています』


「よーし。 頃合いだ。 討って出るぞ!! 気合い入れていけ!! 」


「了解!! 」

全員の声が重なる。


トークン部隊が、敵を押し始めている。

ここでジャガーノートによる強襲を畳みかけ、敵の交戦意志をへし折る好機だ。


「作戦はいつも通り、ジャガーノートを先頭に敵の陣形を崩壊させる。四散した敵を各個撃破しろ!! 開扉!! 」


社長(ダイゴ)の合図と共に隔壁が開き、ジャガーノートの制圧ミサイルが撃ち込まれる。

「突撃!! 」


爆発音と煙に乗じてラッキースター号の強襲部隊(4名)が、スラスターにより鉄火場に飛び込むことになる。


無重力の中での白兵戦。スラスターや姿勢制御に慣れていないと即死亡の特殊な戦闘空間になる。


先に打ち込まれたミサイルは、爆発してダメージをあたえるのではなく、一定の距離で爆発し、ベアリングが前方に散弾するタイプの局地制圧仕様になっている。


小型ミサイルの使用により、海賊の戦線が崩れて行く。活路が見いだせてきたか?

惑星暦でも弾幕はパワーだ! レーザーガン? ビームソード? あるわけないでしょ。


鉛玉よ、鉛玉。7.62mm弾で生存の道を切り開く。


コンバットスーツを着ているため敵らの発砲を受けても、直ちに戦闘への支障はない。

着弾しすぎるとやばいけど。


敵もコンバットスーツを着ているが、こちらの装備は、軍仕様ため品質で勝っているようだ。

加えて無重力空間での戦闘は嫌と言うほど潜り抜けているため、姿勢制御技術もこちらが上だ。


「敵の装甲はもろいぞ!! 一気にけりをつけろ!! 」

社長(ダイゴ)の気勢と共に戦場の銃撃戦は一層激しくなる。


コンテナを盾にしながらの銃撃では、手榴弾や榴弾が飛び交う。

至るとこで爆発音が響き、銃撃の硝煙で周囲に靄がかかる。


銃弾でなくとも榴弾の破片で間接的にコンバットスーツにダメージが入る。

「クソッ」

スーツを装備せずに戦闘した場合は、即死確定の戦場になる。


無線が飛び交う。


≪バルティス! 制圧ロケットだ≫

≪了解だ。 範囲を転送する! 巻き込まれるなよ! ≫

バイザーメットに制圧範囲予測が投影される。


暫くすると爆発音が響く。


『敵!更に減少! 』

セレン(シップマスター)からの報告が入る。


≪タツマ! そっちはどうだ! ≫

親父からの連絡が入る。


≪こっちは精鋭だ! 援軍を寄越してくれ! ≫

タツマもかなり苦戦している。よりによって敵の精鋭部隊を引き当てたようだ。


(エンジニア)! いってやれ!≫

≪こっちも手一杯だ! トークンが薄すぎて手が回らん! ≫


≪了解だ! 俺が行く! バルティス。 マーカーを投影する。場所を頼む! ≫

バイザーメットに親父の位置の光点が一層強く光る。 この位置を守れとのことなのだろう。


≪忙しいな! 了解だ! ≫


気勢を上げての白兵戦が続く、被弾による悲鳴や死亡して浮いているだけの者、血液が空中に漂う地獄の風景が作り出される。


トークンも破損し停止していく。セレン(シップマスター)からの現状報告が入ってくる。

『味方損耗率50% 敵損耗率70% いぜん交戦中』


≪いい加減降伏しろよ!!こっちがもたないぞ!!≫

無線から副社長の怒鳴り声が聞こえてくる。


『降伏勧告をやっていますが、聞く気がないようです。』


≪了解だ。弾薬を温存しての交戦だ。敵も限界点がくる。そのときまで気を抜くな!! ≫

親父が落ち着かせるように、言い聞かせてくる。


敵戦力は押されており、時間の経過とともに敵からの圧力が弱くなって来る。

向こうの行動限界か近い。


≪ 総攻撃を仕掛ける! 俺に続け! ≫

親父の合図と共にヒルベルト商会が、一斉に襲い掛かる。


より激しい銃撃戦が繰り広げられる。無煙火薬であっても弾幕の多さにあたりに靄が掛かる。


コンバットスーツを着ているので音の伝わりを抑えられているが、生身で聞いていると聴覚障害を起こしそうな騒音であろう。


前後左右に上下に繰り広げられる最終決戦。無重力ならではの戦闘になる。

≪組織抵抗を無力化完了! ≫

『トークンの損耗甚大! 援護を』


≪了解だ! ≫

ギリギリの戦闘が続く。


『残存戦力10名! 』

セレン(シップマスター)からの言葉が響くと同時位に敵からの降伏があった。



船内の掃除はトークンに任せる。戦闘後の清掃は生々しい。

カチコミをされると常に後始末が大変になる。


そのままにしておくと、体液から伝染病の発症も考えられるため清掃活動は必須になる。

生き残った海賊は、艦内の海賊を10程度を確保。


加えて母艦や小型艦の中に海賊の残党がのこっている程度である。

海賊船は航行不能な損傷を受けているため、曳航を開始する。


海賊艦は、それなりにダメージを負っているが、修理は可能そうであり、買い手はそれありに探せそうだ。


戦利品を売りさばいてこれでラッキースター号の装備の補充や修理をせねば、この被害の対応ができない状況になる。


事実ラッキースター号は、その古さとあまりの襲撃率の多さに、保険会社から保険が結ばせてもらえない状況になっている。


船内の清掃が終わり、利用できるもの、出来ないものを選別する。


排出区画にそれらをまとめるが、その中には戦闘で倒れた海賊の死体もある。

宇宙は厳しい生存競争でなりたっている。


惑星間貿易商の船への攻撃はご法度になっているが、この広い宇宙、目の届かないところも多い。加えて撃沈され、見つからなければ放置が多い。


救難信号を受け取って近くの船が救助に向かうことも多いが、海賊の場合があるので厄介だ。騙し討ちなど日常茶飯事の状況だ。


各惑星で宇宙艦隊を保有はしているが、貿易商の船程度で動くことはない。


よほどのVIPが乗っているか、動かざるを得ないとき以外は。

基本、自力で何とかするしかないのが現状である。


エアロックの開放時の警告音が船内に鳴り響くと、排出区画の様々なものが宇宙に放出される。

この瞬間は、例え相手が誰であっても何とも言えない気分になる。


戦闘時には、それなりの恐怖と襲われ理不尽な戦闘に対しての怒りがあるのだが、命が消えた者に対しては、それなりの畏敬念すら生まれて来る。


そのため、散っていった者への追悼を込め、放出時に胸の前で手を合わせる。


(エンジニア)が怪訝そうに話しかける。


二代目(タツマ)、またですか? 毎度、毎度、放出時のその対応――相手から突っ掛ってきて、俺達が放出される側になってもおかしくなかったんですよ?」


「まぁね。 でもさ――死体に対してまで敵意を向ける必要もないし。 最後ぐらい敬意を払ってもいいだろ? 」


「まったく。 命をやりあった相手に対して甘すぎるんじゃないですかね? 」

「かもね――でも。 死人に罪はないだろ? 」


「死ねば全てが許されるとか。 勘弁してくださいよ。変な宗教じゃあるまいし 」

「そこまでは思ってはいないさ。 この行為だって、ただの自己満足だよ」


(エンジニア)が呆れたように言う。


「外道ばかりの相手に礼儀とは――奴らが死んでもラッキースター号の被害は変わらないんですよ! 魚雷の99%の損失。ドローン戦闘機26機の損失。外装甲の損傷50%。


今、海賊に襲われたら、すぐに白旗です。礼儀もないとおもいますけどね。 加えて、艦内は傷だらけ。まったく、また修理の日々ですよ。 二代目(タツマ)も手伝ってくださいよ! 」


それなりにおかんむりであるが、(エンジニア)さんの気持ちも納得できる。


副社長(バルティス)も口を開く。

「外道ばかりでしょうが、死人への最低限の礼は必要か……」

黙とうを捧げている。


(エンジニア)さんもやれやれといった感じのようだ。


常に宇宙のどこかで、海賊と商船との攻防が繰り広げられている世界。

今日もヒルベル商会は、逞しく仕事をこなしている。


※シップマスター:船長

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