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受難続きのテラ惑星間貿易商  作者: 椎谷 急須
3章 火星着星
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新たな依頼

輩に灸をすえて、一段落した商社プロメンテ。 夏季に入り農業の自動化も順調に進んでいるように見えるが、新たなお使いがタツマを襲う。

この地に立ち入ってから18か月が過ぎた。今は夏季の入口。マールス(火星)といえども夏季は暑い。


農業も農業用アルプによって効率的かつ機械的に実施されている。全体を運営する経営用アルプも各拠点で的確な指示をだしているようだ。


人手が少なくても巨大な農機具をAIが実働を行い、経営をアルプと人で行うことで広大な地域での農業の実現と管理が出来始めうごきだす。


開発者が近くいることで無償対応なのが、何よりもうれしい。

各季節の期間が長いため、農業実施期間も長くなるので作付けと収穫が複数可能となる。


一つの季節で農作物は2回~3回程度、多くて4回もの作付け収穫が可能となる。

なので収穫量はかなり多い。


しかし、複数回の作付け収穫を実施するため、耕作地ごとに収穫時期が変動したり、育成状況が違うため複数個所の管理は、経営用アルプにより対応することで何とかなっている次第だ。


ようやく、事業が動き出した感がある。自分で道路を治したりしているので、耕作地の実りは感慨深い。 今は夏季になるので、麦系の穀物が植えられている。


青々としている穂を見ると、まさに穀倉地帯って感じになる。

上機嫌で畑を見ながら散策している最中、携帯端末の呼び出しがあった。


ビャーネ社長からだ。

<良い茶葉が、ヘスベリア(港町)から手に入ったので、お茶でもいかがですか?>

携帯端末のメッセージが、伝える。


お茶に呼ばれた感じではあるが、どうだろう。まっ、いいか。散策を切り上げてネス邸に向かうか。


サナエさんもカーゴから出ていた。体を動かしてストレッチをしているようだ。

「遅いじゃない。 待ちくたびれたよ」

彼女もお呼ばれしたようだ。


「これは失礼。 青々とした麦畑が綺麗だったので。 つい遠くまで足を延ばしてね」


アルプも遅れて付いてきており、いつもの3人になる。

商社プロメンテへのドアをノックし名乗ると“どうぞー”との返事があった。


扉を開けるとネス社長がお茶を用意しているところだった。

さぁ此方へとダイニングテーブルへ通してくれる。


ここは、夏季には風が通り抜けるため、外ほど暑く感じない。


「いい部屋ですね」

「これは、どうも。事業が進んで落ち着いてくると余裕が出てきますな」


お茶をカップに入れてもらう。甘い匂いがする。いい香りだ。一口飲むと香りが口の中に広がる一方でお茶独特のうまみと渋みが口に広がる。


悪くない――やはり、スローライフはこれだよ。これ。こうじゃなくちゃ。


「じつは、ご足労頂きいたついでに、ご相談がありまして」

徐にビャーネさんからの提案。


もーね。知ってた。ここでのスローライフなんてないことぐらい。


「私が共同経営している鉱山に物資の輸送をお願いしたと思いまして。長距離カーゴを頼みたいのですが、モノがモノだけに下手な業者に任せられない状況でして」


運送業者なんてどこもでもいるはずだが、とりあえず、内容を聞いてみる。

「どんなものでしょうか? 」


「岩盤を砕く爆薬になります。もう一人の共同経営の運送業者を利用して、今まで運び込んでいたのですが、その運送業者が廃業することが決まり運び手いなくなりまして、代役をお願いしたのです」


「……爆薬を運べと? 」

タツマが、意外な提案に目を丸くする。


「私の会社……今は 商社プロメンテ に移管しておりますが、移管の際に爆薬運搬の許可もそのまま移行してありますので書類上は問題ないはずです。


登録も庭に置いてあるカーゴも入っております」


そんな許可は出してないけど。


「私が了承したよ」

サナエさん何しているの?


「私一応役員ってことみたいだし。違う地域にも行ってみたいなーと思って」

そんな理由で……。


「そうそう、私も商社プロメンテの社員になったんだ」

得意そうに社員IDカード見せてくる。


<運輸部 運搬課 キャミャエル サナエ>

―― 何を考えているんだ……この科学者 


「因みに、爆薬自体は安定していますから安心してください。電流を流さないと爆発しませんから、事故にあって車が燃える程度では、爆発しませんよ。 もちろん、運送費は払わせていただきます」


ビャーネ社長がフォロー? っぽい助言をしてくる。

折角、事業も計画に乗ってきそうな段階でまた仕事? スローライフしたいんだけど。


「因みに場所はどこ? 」

サナエさんが嬉々として質問する。


「ここから東のシメリア(鉱山都市)地域になります」

「へーどんな場所? 」


「山岳地帯ですね。ここは平坦ですが、シメリア(鉱山都市)は周囲に山がある地域になります」


挿絵(By みてみん)


「いいじゃない。面白そう。この時季は緑が映えそう」

―― 本当に面白そうか? それにここでも緑を見ているでしょう


「ところで、鉱山経営は儲かっているんですか? 」

タツマが、ネス社長に質問する。

―― 同じ経営者として経営状況は確認したいところ。


「全くですな。しかし、鉱山労働者の生活もあります。トントンであれば存続させる方針でおります。 それに特に赤字になったとは聞いていないので」


商社プロメンテからの持ち出しが発生するようではあれば、考えないといけない案件になりそう。


--- シメリア(鉱山都市)への道中

結局、このアルプを挟んでサナエさんと私が乗車するスタイル。絵ずらは変わりなし。


爆薬を積んでいる為、護衛としてトークンを一体荷台に乗せている。通常のトークンなので特に流暢に話す訳でもなく、まさに緊急事態用としての乗車になる。


―― ラジオのDJが変わったのか? マールス(火星)の民族音楽みたいのが流れている。


相変わらずサナエさんはタブレット端末を弄っている。いじりながらアルプに質問する。

「アルプ。運転上手くなってない? 」


『農耕器具を運転していましたからね。機器を動かすだけの運転では、上手く土を耕せないこと燃費が悪いことがわかりました。


上手く土を耕せるように運転することで農耕器具は、燃費が良くなるようです。

自動車のも農耕器具に倣って運転しています』


「流石私の作ったAI。 優秀さは設計者によるところね」

『これは、私の得た経験から身に着けたものです。マスターの能力とは関係ありません』


「あなた、いい加減にマスターを敬ったらどうなの! 」

『私は事実しか言いません』


相変わらず賑やかなコンビなことで。


一頻りのサナエさんとアルプの漫才談義が終わるとタツマが会話を挟む。

「アルプ。 シメリア(鉱山都市)の情報はある? 」


『鉄鉱石を中心に亜鉛などのベースメタルを産出している地域になります。近年、産出量を減らしており、出荷、売り上げ、共に減少しています』


鉱山都市あるあるかー。

「それ以外の産業はないの? 林業とか」


『農業も多少あるようですが、土地全体が傾斜地ですので牧畜が盛んのようです』

「へー。ところで、以前依頼しておいた、共同経営者については何か分かった? 」


『共同経営者についてですが、他の事業に手を出し、失敗しています。 結果、鉱山の権利書が銀行の抵当に入っているようです』


「抵当ね。しかし、くたびれた山の権利書で対応できそうなの? 」


『鉱山自体の価値は、最盛期の三分の一まで低下しています。共同経営者自身の借金の額が不明ですが、失敗した事業規模からして、権利書の売却により借金との相殺は、厳しい公算があります。 それと鉱山会社自体も債務があるので、オーナーの借金と会社の借金のダブル借金ですね」


「なんてこった。火の車じゃん」


「オーナーは、火の車ですが、会社自体は緩やかな死に向かっている感じですかね」

―― どっちしろ良くないよ。


『銀行側としても鉱山で働いている労働者もいるので容易に閉山できないようです。 恐らく担保として引き取ったとしても労働争議などかなり面倒な手続きが発生する案件だと思います』


「……といっても担保の譲渡が無い以上、鉱山会社は利益が出ているんだろう? 」


『はい。今のところ利益は出ています。 そこから細々と会社の借金返済をしているようですが、いつ赤字になるか分からない状況です』


不良債権一歩手前の爆弾案件じゃないか。

―― 今回は爆薬を届けるだけだが、取り敢えず戻ったらビャーネさんと協議だな


タツマの心労が増える。

それを横目にサナエさんがダウナーな感じで口を開く。


「アルプ―。 因みにシメリアへは、いつ頃着くの? 」


『今が昼ですので、宿場町をいくつか経由する感じですね。 状況しだいですが、明後日ぐらいには到着する予定です』


いくら高性能なスマイル号でも休ませないとか。


「まったく遠いわねー」

サナエさんが不満の声を漏らす。


『気長に行きましょう』

アルプは素っ気ない。


「アルプ。 この辺の治安はどうなの? 」

続いてタツマが、周囲の環境についての質問をする。


商人としては、周囲の環境は気になるところ。 

『ヘスベリア(港町)に近い環境だと思います。鉱山労働者が多くいるので、多少の傾奇者もいるでしょうが、国をまたいでの犯罪組織はいないと思われます。そのような事件も表面上なさそうです』


なるほど、ならば商売の環境には適していそうだが、酪農はあまりにも畑違い。

となるとやはり鉱山経営になるが――まぁ無理だな。


カーゴは、緩い上り坂を上がっている。目の前には、青々とした空と所々に雲が見える。

こんなにじっくり空を見たのは、いつぶりだろうか?


「あっついー」


流石にサナエさんも今までのぶかぶかの服装でなく。涼しい恰好をしている。

少し露出が多いのではないでしょうか? 目のやり場に困るのですが。


「タツマーあんた何チラチラ見てるのー? 」

サナエさんの挑発的な発言もありつつ、車両は進む。


今回こそは問題が起きない旅になることを祈りながら、カーゴは上り坂を進んでいく。


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