34.「この言葉を、俺も届けたい」― セリフをテーマに挑む撮影の日
週末の午後。
尚人は、机の上のノートを静かに開いていた。
そのページに書かれていたのは――
姉の投稿で見た、あの忘れられない言葉。
「あなたが疲れたときに、ふっと力を抜けるような、
そんな写真になれたらって思って撮りました。」
尚人は、しばらく目を閉じてその言葉を味わった。
(俺も…このセリフで、やってみたい)
同じ言葉を、自分の手で、違うやさしさに変えて。
“自分なりのこのキャラ”で、誰かに届けてみたい――そう思った。
衣装を整え、
メイクを丁寧に重ねていく。
目元には、ほんのり優しさを宿すシャドウを。
口元は、大げさじゃなく、そっと笑うように。
そして――
尚人は、撮影前にひとつ深呼吸をして、そっと言葉を口にした。
「あなたが疲れたときに、ふっと力を抜けるような…
そんな写真になれたらって、思ってます」
カメラのレンズではなく、レンズの“奥にいる誰か”に、
やさしさを届ける気持ちで。
視線を少しだけ逸らしながら、
シャッターを押す。
カシャッ。
尚人は、ギャラリーを開いて、
撮影した写真をひとつずつ見返していった。
そして――ある1枚で、指が止まる。
それは、完璧でも、華やかでもない。
でも、
“誰かにやさしく声をかけようとしている”、
そんな表情が、たしかにそこにあった。
尚人は、そっと笑った。
「姉ちゃんのあの写真とは、違うけど…
俺なりの“同じ気持ち”が、ここにある気がする」
ノートに、今日の気づきを書き留める。
【今日のテーマ:同じセリフ、違う表現】
・目元に、にじむような優しさを
・少しだけ口角を上げることで、“頑張って”じゃなく“休んでいいよ”に
・言葉の意味を噛みしめながら、息を吐くようにシャッターを切る
そして、最後に、尚人は小さな“祈り”をそっと添えた。
「俺の“やさしさ”、このキャラを通して、誰かに届きますように。」




