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ふたりで灯す、やさしさのかたち  作者: 流浪の旅人
第2章 ふたりで、ゆっくり歩き出す — “やってみたい”が、芽吹いた日
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29.キャラと心がつながる瞬間 ― 新しい“表情”での撮影

土曜日の午後。


カーテン越しに差し込む、やわらかな陽の光が

部屋の空気を、ゆっくりと包んでいた。


尚人は、机の上にウィッグと小道具を並べると、

深呼吸をひとつして――ゆっくりと衣装に袖を通す。


(今日は…“キャラの気持ち”を、ちゃんと表情にのせてみたい)


鏡を見て髪を整え、スマホを三脚に固定し、カメラを起動。

インカメラに映るのは、

いつのまにか“凛とした目”をした自分の顔だった。


(今日のテーマは――“信じる笑顔”)


ポージングは、あえて控えめに。

でも、“表情”には、いちばん心を込めた。


眉をほんの少しだけ下げ、

目元を優しく細めて――

口元は、静かにふわっと上げるだけ。


「きっと、君なら大丈夫だよ」


アニメのワンシーンで、キャラがそう言ったときの

あの声、あの目、あの“想い”。


(この子なら、きっとこんな目をする。

誰かを励ますときは、安心させるように――そっと笑うんだ)


カメラのシャッター音が、

その“想い”をそっと切り取った。


撮影を終え、ソファに腰を下ろした尚人は

スマホを手に、撮った写真を一枚ずつスワイプしていく。


そして――ある一枚の前で、ふと指が止まった。


そこに写っていたのは、

ただポーズを取る自分ではなく、


“キャラとして、誰かに言葉を届けようとしている自分”だった。


静かに、けれど確かに。


「あぁ、俺、今…

“演じるのって楽しい”って思ってるんだ」


尚人は、ノートのすみっこに、そっと書き添えた。


「演じるって、

“自分がその子だったら”って想像することなんだね。

だから、すごくやさしくて、すごく幸せなんだ」


そして、スマホを胸元にそっと抱き寄せた。

それは、心で撮った写真のぬくもりを、

そっと抱きしめるような時間だった。

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