21.名前をつけるということ ― 自分の“好き”に、名札をつける夜
夜、パソコンの前。
尚人は、SNSの「新規アカウント作成」ページを開いたまま、
しばらく画面を見つめていた。
「ユーザー名を入力してください」
「後で変更できますが、覚えやすい名前をおすすめします」
(…覚えやすい名前、か)
尚人は、これまで自分が使ってきたカメラ系のサブアカや、
ゲームのハンドルネーム、そして姉の「RINA_cos」のような
レイヤー名を思い出していた。
(“nao”は入れたいな。カメラやってたし、ベースはそのまま使いたい)
「nao_cos」
(…なんか、そのまますぎる)
「nao_frame」
「nao_silver」
(キャラの髪色とか雰囲気から連想…?)
「n.t_relay」
(推しのセリフ“僕の役目はバトンを繋ぐこと”から、relayって入れてみたり…)
頭の中に、いくつもの案が浮かんでは消えていく。
でも、どれもまだ“しっくり”とはこなかった。
(…名前って、ただのIDじゃなくて、
“自分がこの世界に存在する証”なんだよな)
ふと、姉のSNSを見返す。
「RINA_cos」という名前。
いつも笑顔で、どこか誇らしげで、
何より“自分らしさ”をまとっていた。
(姉ちゃん、かっこいいな…
俺も、そうなりたい)
尚人は、ふとメモ帳に新しい案を書き始めた。
【ユーザー名候補】
・nao_relay
・quiet_n_cos(静かな尚人、から)
・silver_reverie(銀髪+夢想)
・hikari_frame(光と写真のフレーム)
・trace_nao(キャラの“足跡をなぞる”から)
・silent_cos(物言わぬけど、伝わるような)
(……どれも悪くないけど、まだ、
“俺にしかつけられない名前”には届いてない)
でも尚人は知っていた。
この“悩んでいる時間”自体が、もうすでに大切な一歩だってことを。
その夜、ノートの端に小さく書いた。
「“名前”は、“好き”と“自分”の間にある、一番やさしい橋」
まだ未定。
でも、いつか決まったときは――
それを胸を張って名乗れる自分でありたいと思った。




