表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/52

34.完成

 いつもの『騎士団』クランホーム隅の研究棟は、それこそいつも通り閑散としているが、自分には都合がいい。


 机いっぱいに広げる宝の山は、待ちに待った重精と陰精の力を含む素材の数々。


 無意識に両手の平を擦り合わせながら、何から手をつけるか品定めをしてしまう。


 そんな姿をじと目で見られているとも気がつかずに……。


 「おい!さっきからずっとその状態だが、新しいフィルムケース作るんじゃないのか?」


 「うおっ!なんだ急に現れて声かけられたら驚くだろうが!」


 「何が急にだよ!もう10分はここにいるわ!お前が落ち着くの待ってたのに、ずーーーーーーっとニヤニヤして、偶に顔を上げてもどこ見てんだか分んないし、なんかに取り憑かれたのかと思ったぞ」


 全く、人が折角一仕事終えて、本来の仕事兼趣味に没頭しようと言うのに、いつも狙ったように邪魔しに来るのが、おなじみ白い騎士だ。


 しかし、ついこの前何にもないタダひたすら暑いだけのサバンナにつき合せてしまったし、ここはグッと堪えて、愛想良くして置くのもやぶさかではない。


 「そりゃ悪かったな。待望の素材を前にちょっと正気を失ってたかもしれん。だが、これでやっと一揃いだと思うんだよ」


 「<錬金>の素材になる精霊の種類だろ?でも木精は無いじゃないか?」


 「アレは何か特殊だからノーカウントだ。いずれ<錬金>のクエストで出てきたら扱うつもりだが、取り敢えずはこれで一揃いで問題ない」


 「ふーん?何でそう言い切れるんだか?」


 話しながら、自分の<錬金>道具を机の上にセットしていき、同時に重精用と陰精用を別けていく。


 「さて、まずは重精からと行きますか~」


 「なぁ?」


 「何だよ!作業しながら話してるんだから、スパッと聞いてくれよ」


 「いや、重精と陰精って別々なん?」


 「そりゃ別々に素材があるんだから別々だろうよ?」


 「いやまあ、他ゲーだから当てはまらないのは分るけど、闇の力と重力の力って一緒って感じしないか?」


 「陰と重だからいいんだよ!相反する陽と陰が光と闇だろ?そして地と石が類似で、相反するのが風と重なんだよ!そんなエレメント的なものなんて、ゲーム側がこじつけるんだから、そういう世界なんだよ!」


 「まぁまぁ、そう興奮するなって、俺は世間一般の感情を代弁したに過ぎないんだからさ。つまりアレだろ?コレで火と重とか、雷と重とか、水と重とか、氷と重なんかに変身できるんだろ?変身って言うか変色だけど」


 「うるせぇな。変身でも変色でもねぇわ。そうなっちまうんだから仕方ないだろ。文句あるならサイーダに色変わらんように言ってくれよ」


 「いやっ文句なんて何もないぜ、俺は面白いと思ってるし、ただな……ブラックフェニックスのブラック感が薄いな~と」


 「だ~か~ら~それも大会に参加した時に勝手に付けられたリングネームなんだって!夜間に目立たない様に黒くしてるだけで、別に黒じゃなきゃいけない理由なんて無いんだよ」


 「ふーん、てっきり陰精を使えば黒くなるから、喜んでるのかと思ったぜ」


 「いや、何でそう思うんだよ?」


 「回避や隠蔽系のバフがつく装備って大体黒だからかな?」


 「そうなのか?俺はあまり普通の装備は詳しくないからな……それにしたって、陰精のフィルムケースは今の所使う予定はないから、あくまでコレクションだな」


 「いやなんでだよ!高い金を出して素材集めたんだろ?それをコレクションって!」


 「現状、陽は手に持って直接精神力を流す以外に発動する方法がない。ベルトにしても剣にしてもコントロールできない。簡単に言うと超光ってそれだけ」


 「超光るって……ちょっと見せてくれよ」


 「まあ機会があったらな。いっても手に持って精神力を込めた時と同じだ。目を開けないほど全身光って、目潰しにはいいかもしれないが、何のバフにもならん」


 「でもベルトに挿すって事は他のフィルムケースも使うんだろ?どうなるんだ?」


 「陽の力の方が強すぎるのか、打ち消しちまう。何を挿そうが超光るな」


 「ふーん、何か前に混ぜてみた事もあったんだっけか?」


 「ああ、火と混ぜたが反応はいまいちだった。という訳で陰も手に持って発動するしか使い物にならんだろう。現象も出来てから実験するしかない。でもそれで十分俺の好奇心は満たされる」


 そして一旦、作業が集中する段階に入ったので少しの間沈黙が場を支配する。


 道具を擦り合わせる少し高い金属音だけが鳴り響き、慣れた行程を手早くこなす。後は一旦抽出待ちという所まで進めて再び話を始める。


 「ふぅ……一旦ここまでか」


 「お疲れさん。何か集中力が必要そうだし、大変なんだな」


 「まあな~ゲームの割りに随分と複雑な工程を求められるな。って言ってもここまで出来るようになるには段階を経てるから、今はもう慣れでなんとかなるけどな」


 「俺は普通に戦闘してる方が気楽でいいや。集中はするけど、こういうへんな疲れ方はしないし」


 「俺にとってはこいつが切り札で、唯一の武器だからやるしかないだろ?お前みたいに自分の戦闘能力が強けりゃこんな金も時間もかかる事してない」


 「まぁ、でもその一撃の爆発力は俺には出せないしな。使ってみたいが、俺には使いこなせそうもないし、やっぱりお前専用の力なんだろう?俺はフェニックスフレアボムでいいや」


 「ああ~この前のタイミングは助かったぜ。いつの間に<投擲>なんか身につけてたのか知らんが……あっ!」


 「そりゃお前が何とかしてあの危険爆発物を使いたがってたからだな!」


 「そういや、あの仮面なんだったんだ?」


 「なんだよ?何かお前も顔を隠してるし、ヒーロー達は言わずもがなだし、敵もそんな感じなのかな?って思って引っ張り出してきたんだよ!」


 「そうなのか?銀色にやたら凝った白い模様が入って、何か貴公子みたいだったけど、そういう趣味なのかな?って」


 「違うっつーの!アレでも陽精の力がかかってて、姿を見えづらくするバフがかかってんだよ」


 「姿が見えづらくって、陰精じゃないのか?」


 「知らねーよ!お前の目潰し的なアレじゃねーの?何かユニオン級ボスを倒した時に手に入れて、そのまま使わずに鞄の肥しになってたんだよ。お前が隠れて待っててくれって言うから、使ったんだろ?」


 「だから、フロリベスも見つけられなかったのか。ちなみにあのフロリベスの腹を貫いた針みたいなのは?」


 「俺の術だよ。はじめは火精を取って火力を上げるか、風精でスピードを上げるか迷ってたんだけど、何の因果か知らんが陽精取っちまって、剣からビーム出るようになったんだよ」


 「剣からビームって……お前もヒーローだったんだな?」


 「うるせーよ!お前だって光る剣使ってるだろうが!」


 「まあな~銀仮面の白い貴公子は剣からビーム出るのか~ヒーロー時間とはちょっとズレたキャラ立ちだな~」


 「まあ、いいけどよ。あの術のお陰で近距離から中距離までいけるし、ダメージ量もまあまあ。近距離なら技量でやれる自信があるけど、離れられた時の術があるのは俺としては助かるしな」


 「ふーん、俺は元々中距離で戦うのが当たり前だから、距離詰められる方が怖いけどな」


 「それでまた武器アップデートするんだったか?」


 「ああ、今は武器防具まるっと預けてるから、改人や敵幹部と戦うのは当分無い予定だ」


 「何か孔雀の羽集めてたけど、どうなるんだろうな?」


 「知らねーよ。俺は俺で目の前にこれだけの素材があるし、場合によっちゃ混ぜるタイプのフィルムケースも作りたいし、やる事は幾らでもある」


 「でもアレだろ?ベルトに挿すなら混ぜてない奴の方が効果が高いんだろ?何で今更混ぜたやつを作るんだよ?」


 「現状俺が持ってる混ぜ物は3つ雷火、土石、氷水、風雷だ。これは最初、近似がバフになると踏んで作った物の延長って事になる」


 「そういや、そうだったな。風重でも作って、近似4種でも揃えるのか?」


 「そうだが?いいか?反する物じゃなきゃ効果は発揮するんだ。つまり、雷火土石なら反応速度攻撃力物理防御生命力精神力の底上げになる。氷水風重なら全耐性に回復に移動速度プラス何かがつく。つまり複数のバフ効果を自分に掛けた状態で戦えるんだ」


 「氷水土石なら術も物理も対応しつつ生命力精神力が高い上にオート回復だから相当硬いし、雷火重風ならかなり攻撃的にシフトできる可能性があると、そういう訳か?」


 「だな。しかも混ぜものなら石の重量増加に関しても動ける範疇に収まるし、必ず火と一緒に使う必要も無くなる」


 「バフが強すぎる事がデメリットになる場合もあるのか……はっ!」


 「どうした?」


 「ブラックフェニックスらしく黒のまま戦えるじゃないか!」


 「だからそれはどうでもいいっての。バフこそ色々かかって戦いやすくはなるが、代わりに俺の切り札であるキックは使えなくなるし、どこかで変身だか変色だかしなきゃなんねーんだから」


 「でもこの前、蹴り封じられてたろ?別の切り札も用意しないといけないんじゃないか?」


 「言ってすぐ作れるようなら苦労しないっての。でもまああの術はなんとでもなる。焦らなきゃな」


 「そうなのか?それならいいが……。まっお前がやられて気落ちしてるわけじゃなくて良かったわ。俺は狩りでもしてくるぜ」


 「ああ、見てるだけじゃつまらんだろ。行ってきたらいい」


 「おう!実験は訓練場でな」


 「今日は完成しないっての。いいから行って来いよ。あとこの前は助かったありがとうな」


 「はっ!いいっての。なんだか知らんが悪党と戦うヒーローの手伝いができるんだから、十分面白いっての」


 「だからヒーローじゃないっての。一応上司には手伝ってくれた仲間がいる事は報告してるから、報酬貰える様なら持ってくるから」


 「え~?いらねーよ」


 「俺より金欠なんだから、貰っておけよ。言ったらクエスト報酬なんだからさ」


 「あ~分かった。その時は預かってくれ。んじゃな!」


 何だかんだいつも気にかけてくれる数少ない知り合いは、メリットを考えずに仲間を助けるいい奴だ。


 他人の事をヒーローヒーローと弄るが、本当のヒーローはそういういい奴だろう。


 そんな奴をこれ以上後ろ暗い世界に浸からせる訳にも行くまい。


 まずは目の前の重精と陰精の抽出、自分の持てる力を使いこなし、次こそは手を借りずとも四天王を倒す。


 「おい!届け物だってよ!」


 出て行った筈の白い騎士が、小脇に荷物を抱えて戻ってきた。


 折角、気持ちが入って集中した所だって言うのに……。


 「届け物って何だよ?」


 「中身はしらねーけど、お前に小包送ってくるのは一人だろ?」


 「ああ、サイーダか」


 いつも通り一応女性の趣味らしく綺麗に包まれた箱には、何だろう小さいファン?


 一対の排気装置みたいなのが入ってるんだけど、どう使うんだコレ?


 中に入ってる手紙には、


  -説明書-


 お前の無茶振りを形にしてやったぞ!感謝しろ!


 風精で空を飛ぶ装置だ。


 ベルトのバフとは別に風精の強力なノックバックで、瞬間的な加速装置として使う事が出来る。


 今のアーマーの背中にファンを仕込む隙間があるから確認してみろ。


 風精のフィルムケースは付属のアタッチメントでベルトに装着しつつ、使う時にスイッチを切り替えると術士の石から精神力が供給されるようになっている。


 風精バフがなくとも瞬間的に高速移動できれば、きっともっと有利に戦える筈だ。健闘を祈る!


 追伸

 研究費は多めに振り込んでくれていいぞ!この前の闘技で色々アイデアが浮かんでしょうがないのでな!  -サイーダ-


 先を越されたと言うか、何と言うか。自分ももっと頭を柔らかくして、アイデアを形にしていかねばな。

次週予告


 ようやく一揃いの精霊の力を手に入れたブラックフェニックス

  しかし手に入れた力を使いこなす事は容易ではない

   一度手も足も出なかった敵『キジン』が再び立ち塞がる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ