せっちゃんの顔
男友達1「あいつ。まぢキショイわ」
男友達2「な?4んで欲しいわ。」
いっちょまえに煙草を吹かして、
【未成年の主張】を振りかざす。
今なら
『一発アウト!』
な、事も。
昔はだいぶ白寄りのグレーだった。
【中学生】と言う初めて経験する、
"縦社会の洗練"を。
親に相談出来る訳もない現状を。
あの頃の俺達はこうして過ごした。
言葉遣い。
態度。
身嗜み。
何かと言われれば、叩かれ。
怒鳴られ、否定され。
【教育】と呼ばれるモノが。
そういうモノなのだと、常々思い知らされた。
そりゃぁ、"反抗"もするよ。
担任。体育教師。生徒指導員。
この羅列だけで、大体分かるだろう。
男友達3「だから。今日からシカトな?」
男友達1「分かるよな?やらなかったら?」
同い年なのに。皆仲間なのに。
その中でも【秩序】は存在する。
やる事は、大した事じゃない。
話を聞かない。
物を隠す。
これだけ。
やってる事は、"虐め"だ。
担任の。
弁解する余地は無かった。
それだけの事をしているのだ。
体格差。地位。
どれを比べても、大人に勝れるモノなんて無い。
刑務所何て経験した事の無い自分達は、
刑務所の事を何ひとつ知りもしなかったけれど。
学校は、刑務所でしかなかった。
担任「何シカトこいてんだ!!?
誰だ!俺の物を盗んだ奴は!!」
皆黙って居た。
懸命に目の前の恐怖に耐えていた。
何故なら、それよりも恐ろしい恐怖が。
そこには在ったからだ。
担任は何も変わらなかった。
それよりか、より酷くなった。
担任「おい!お前、舐めてんのかっ?!!」
男生徒「ぃぇ、、」
担任「お前!こっち来い!!」
女生徒「嫌だ。放して!」
学校に来なくなる者も居たが。
学校以外に、行く場所は無かった。
"居場所"
が、無いのだ。
【居ても良い場所】が無かった。
周り近所の目。良くも悪くも。
"監視の目"があった。
男友達2「あー!!ムカつく!!!」
男友達1「次は何すっか?お前、案。ね?」
「ネタ切れじゃね?」
男友達2「まあ、大体やったからな。」
男友達3「、、鍵は?」
男友達1「鍵!それがあったわ!」
毎朝、当番の奴が朝一で鍵を取りに行く。
教室の窓を開け。都度、黒板を綺麗にする。
帰りは掃除と日誌を書かされる。当番だ。
男友達2「明日からやるべ。」
男友達1「明日当番誰?」
男友達3「真面目デブ」
男友達1「あれ。お前と同小じゃね?」
「あぁ。」
男友達2「上手くやる様言っとけよ?」
「あぁ。」
コイツ等とつるむのは、嫌いじゃない。
けれど。好きでも無かった。
ただ、流されて居ただけだった。
夕方。俺は教室に残った。
「久しぶり。」
男友達「ぅん。久しぶりだね。」
顔を合わせる訳もなく会話をする。
「せっちゃんさ。こういうの嫌いだろ。」
せっちゃん「まぁ。ぅん。」
せっちゃん。そう、呼んだのも久しぶりだった。
小学生の頃は、横も下も無く。
皆で遊んだ。
上は在ったけど。こんなんじゃなかった。
せっちゃん「どうして。あの子達と居るの?」
「ぅん。。ノリ、?」
夕暮れで染まった教室の天井。
ガラスで通したオレンジ色の光を落とし、
夜の暗闇を連れて来る。
せっちゃん「日誌と鍵。どうしよう。」
タイミングが悪い事に。
せっちゃんは、
日誌と鍵を失くさなくてはならない。
日誌は、直接担任に渡す。
鍵も。だ。
震える声に顔を落とす。
せっちゃんの顔は、緊張と恐怖で強張っていた。
せっちゃん「僕が。やらないと。だから。」
苦笑いしたその顔に。俺の何かが締め付けられた。
日誌を手に取り。破く。
ビリビリビリ、
「俺がやるよ。」
失くしたら。怒られるのは、せっちゃん。
やらなくて、当たられるのもせっちゃん。
綺麗な黒板に、汚い字でこう書いた。
『バーカ!先公!!
by 悪ガキ』
「行こうぜ?」
せっちゃん「、ぅん。」
安堵と心配そうな眼差し。
その帰り。久しぶりに公園に寄った。
いつもとは違うルーティーン。
せっちゃんとこうしたのは、小学生ぶりだ。
「懐かしいね、」
ブランコの錆びた音が、
暗闇が落ちる間際の世界に響く。
ギィ、ギィイ、
せっちゃん「うん。」
「時間。大丈夫?」
せっちゃん家の親は厳しい人だった気がする。
だから、せっちゃんもちゃんとしてる。
せっちゃん「付き合うよ。」
ギィイ、ギィ。ギィイイ、
「そっか。」
何だか嬉しかった。
久しぶりの2人に話す事は沢山あったけど。
その時は話さなくても話している様だった。
「あーぁ。」
ダルい。めんどくせえ。
明日は、まだ学校がある。
「行きたくねぇ、」
腕で瞼を覆っても。
月明かりの光は、俺の部屋を照らした。
心臓の音はデカくて。
どうにも寝れそうには無かった。
母親「あんた!学校だよ!」
「休むわ。」
母親「は?!!ふざけんじゃないよ!!
誰が金払ってやってると思ってんだい!?
制服に!教科書だって!!タダじゃないんだよ!?!」
「あーぁ!!もう、うっせーなぁあ!!!」
未成年に居場所は無い。
選択肢は無いのだ。
昨日の公園へ行くも。
せっちゃんの姿は当たり前の様に無かった。
「はぁーあ。」
重い足を引き摺って、学校に着いた。
門は閉まっていて。
格好つける様に、カバンを投げ入れ。
門をよじ登る。
「ぁーぁあっ!!
門くれえ開けとけやアホが!」
下駄箱で靴を履き替えてると、
聞き慣れた怒鳴り声が響いた。
担任「鍵を何処にやったか聞いてるんだよおっ!!」
俺は急いだ。
階段を上がり。職員室の扉に手を掛ける。
「はぁ、はあ。はぁ!はあ!」
担任「何遅刻してんだ!!?」
目の前には、泣いているせっちゃんの顔があった。
担任「お前は後だ。早く教室へ行け!」
「ぅっせぇ。」
担任「ぁ。?」
「うっせんだよ?
鍵も。日誌も。俺だバーカ!!
糞先公が!!」
親指を下に降ろし、ここぞとばかりに舌を出す。
さっきまで泣いていたせっちゃんは、
俺を見て少し笑った気がした。
それはまるで、
『おせえよ、』
とでも言わんばかりに。
担任「てめえ!!何してんだぁあああ!!!」
男友達2「お疲れぇ!」
男友達3「ウェーイ!!」
男友達1「お前、やるぅう!」
「おっ。」
涙の跡に痛み。殴られ、引っ張られ。
何処が痛いのか分からない。
男友達2「にしても。
あのデブも"災難"だったな。」
男友達3「まあ、でも何もしてねえじゃん。
あの"デブ"は。」
男友達1「"真面目ちゃん"には、無理っしょ。」
俺は、さっき火を着けた煙草を3人の方へ投げた。
視線は、鋭く向けられた。
『お前等みてえな糞よりは、全然良いだろうが。』
せっちゃん「大丈夫?」
広い空から声がした。
「、大丈夫そうに見えるかー?」
視界の端からせっちゃんの顔が覗く。
もう、身体はボロボロだった。
せっちゃん「、ゴメンね。」
「何で謝るんだよ、、」
立ち上がろうとする腕をせっちゃんが支える。
せっちゃん「だって、、」
せっちゃんは何とも言えない顔をしていた。
「授業は?」
せっちゃん「サボって来ちゃった。」
久しぶりに見た彼の笑顔だった。
「やーるぅう。イッ、」
せっちゃん「格好つけすぎ。」
「まぁ、な?」
格好良くなんて無かった。
流されて殴られて泣いて。
それでも後になって振り返ると。
間違いじゃ、無かったって思えた。
「煙草。吸うか?」
せっちゃん「どうやって吸うの?」
「ヤンキーィ!イッタ、
あの。吸うの」
せっちゃん「吸う?」
「うん。スーって」
せっちゃん「それ吐いてない笑?」
「吐いてどーすんだよ笑」
せっちゃんは今でも俺の親友だ。




