山神と獅子~馬は最後の知らせ~
むかしむかしのはなし。
近くで人拐いが"噂"になった。
ある昼間。
いつもの様に山仕事から帰っていると、
目先の方で何かが動いている。
それは段々遠くから近付いて来て、
すぐさま悲鳴が響く。
「人拐いだ!」
何かが目の前を通るが、何も見えない。
"アレ"が目の前を通り過ぎようとした。
私は咄嗟に嫁さんを抱き寄せ、背中を向けた。
一瞬見えたその顔は、獅子の面の様な顔をしており。
ニヤニヤとしながら近付いた。
私は嫁を強く抱く。
それは、私の直ぐ側に落ちていた木の枝を拾った。
空中で横に回転する様に枝を回すと、
「馬だ!」
と、言って、走り去った。
同時に、次は大きな猿が現れた。
嫁は、「馬だって!」と、猿に告げる。
大きな猿は"ありがとう"と言うかの様に、
コクりと頷いて道の先へと走って言った。
「何だったんだ、」
放心と同時に『逃げなくては、』と言う恐怖に刈られ。
私は嫁の手を握って走ろとすると。
「あれ、」
私達は、道ではなく、道を外れた草木の方へ。
まるで頭から突っ込むかの様に。
でんぐり返しをする様に。
引き込まれて行った。
堕ちてる。
堕ちる。
地面に着く頃には、逆さまだった身体は、
地に足が着いていた。
「ここは、、」
目の前には、大きな橋の様なものの上に建物があった。
『ここは、この世の世界では、ない。』
恐怖と、その世界の美しさに身体と心が離れてゆく。
「行きましょう?」
手を引く嫁は、若返っていた。
「え。」
手を見ると、どうやら私も若返っている様だ。
呆気に取られていると、船があった。
霧の先は建物までしか見えない。
嫁は船に跳び乗る。
「それに乗ってはいけない!」
引き返そうと嫁の手を引くと船は出た。
船には先客が居て。皆。下を向いていた。
ギィ、、ギィ。。
船頭に導かれ、霧の中に進むと、
私の名前を呼ぶ嫁が居た。
「かんじろうさん、?」
頬を赤らめ、嫁は私の唇を奪う。
それを楽しむかの様に、
さっきまで下を向いていた女達は、私を囲む。
「ウフフフフ、」
私は味わった事の無い快楽に溺れた。
まるで生暖かいきめこまやかな泥に沈む様だった、
「あの夫婦が人拐いにやられちまったってよ?」
「そいつは、可哀想に。」
「おめえさんも気を付けるこったあ。」
「おめえさんも。な?と。
、、?あれっ。何だ。ありゃ、、」
『馬!』
こうしてこの付近では
【馬】
とは言ってはならないと。
語り継がれて来たそうな、




