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見感語  作者: 紀希
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28/60

代償



冷たい壁の先に。


俺の弟は立っていた。



弟「、、久しぶり。」


「あぁ。


元気そうで、何より。」


弟「、、ごめん。


兄ちゃん、、」



その面影に。


嘗ての姿は無かった。



「ふざけんなごらぁあああ!!!」



また始まった。


「やめて、、やめてぇ、!!」


母さんの泣き叫ぶ声。



ドン!、ガシャン!


何かが壊れる音。



「偉そうに!


何。言ってんだ、よおっ!!」


父さんはいつも怒っていた。


母さん「ごめんなさい。ごめんなさい!!


痛い!やめてぇ、、」


そして、母さんはいつも謝っていた。



何に父さんが怒っているのか。


その時には分からなかった。



いや。


知りたくも無かった。



俺はただ、クローゼットに隠れていた。



"母さんを助けよう"



何て、思わなかった。


自分で自分を守るのに、必死だった。



「やめろよ父ちゃん!!」


弟は、母さんの間に入った。


父さん「うっせぇ!!


退いてろっ!!!」



母さん「やめてっ、!!」


その時。


鈍い音がした。



弟「、ってぇええなぁあああ!!」


母さん「やめてぇえええ!」



俺が間に入っていれば。


父さん「、、ぅうっ。。」


あぁは、ならなかったのだろうか。



母さん「いやぁあああああ!!!!」



弟はその日。


"犯罪者"になった。



家は美容室を営んで居た。


『あははは。』


昔は、楽しかった。



よく、出掛けた。



父さんも母さんも。


弟も俺も。



よく笑った。



『あははは。』



みんな。幸せそうだった。



母さん「ぃゃっ、、ぃゃぁあ、、」



ギィイイ。


鈍い音と共に。


目の前の扉は、ゆっくりと開いた。



弟「、、兄ちゃん。


俺、、」


そこには真っ赤な弟が居た。



俺は。受話器を取り。


番号を入力した。


110。



受話器「事件ですか?事故ですか?」



俺は通報した。



一人しか居ない兄弟を。


警察に引き渡したのだ。



『あぁ。


元気そうで、何より。』



どの口が言っているのだろうか。



弟『、、ごめん。


兄ちゃん、、』



謝るのは、俺の方だ。



「飯でも、


食いに行くか。」


弟「、、うん。」


「食べたい物、あるか?」



母さんは、言葉を発しなくなった。



連日。メディアが押し寄せ。


そのせいか、近隣住民からの嫌がらせが始まり。


俺は学校でも虐められた。



解放されたハズの母さんは日に日に窶れ。


俺を取り巻く環境は、悪化した。



どうすれば正しかったのだろうか。


何が"正解"だったのだろうか。



父さんが悪いのか。


母さんが悪かったのか。



「今、美容師やってるんだ。


良かったら、一緒に働かないか?」


弟「うん。」



弟が。悪かったのか。



善悪は難しい。


そうなってしまった原因を。


誰かの【責任】で片付けるには。



都合が良すぎた。



女の人「お待たせしました~」


「ありがとうございます。」


女の人「ごゆっくりどうぞ~」


「食べよう?」


弟「頂きます。」


「いただきます。」



誰かのせいに出来たら。


どれ程、楽だろうか。



弟「御馳走様でした。」


「ごちそうさま。」



俺は一生背負って生きて行かなければならない。



母さんも。弟も。死んだ父さんも。



あの時の俺が逃げていたばかりに。


俺は、死ぬまで払い続けなくてはならない人生を歩む。



「今度、母さんに会いに行こうか。」


弟「ぅん、、」



俺のせいで。



家族が壊れた。



望んではいない結果を。


受け入れるしかない現実。



『運命を呪う』



とは、よく言ったものだ。



必然的な未来だったのだろうか。



違う。


はじめから分かっていた。



近い内に訪れる未来を。


俺は何処かで知っていたんだ。



「家に、帰ろうか。」


弟「うん。」



俺達が幸せになる為には。


それが不可欠だったのだろう。




















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