その二十「空媛尊の謎」
詩織に続いて弥生も金属像の中に閉じ込められたところで、初日の儀式は終わった。金属像はよく見ると女神の姿をしていた。それにしてもミイラになった二人を抱いてよく動いたというよりも、生きているのだろうか二人は。
妙子が言うには、三十年前に裕子、六十年前に和子が金属像の中に閉じ込められたというが、今回の詩織と弥生はこれからどうなるというのだ?
「妙子さん、これからどうなるのですか? 三十年前はどうなったのですか?」
越智は妙子に詰め寄っていた。教え子二人が金属像のなかに閉じ込められている。本当は明日どうしてもはずせない用事があったが、もうそれどころではなかった。
「もうここまで来たのですからお話します。三十年前は金属像がバラバラに動いたのです。初日にわたしが閉じ込められてしまったのですが、二体目が最後まで動かなくて。それで二日目にもう一体動いたのですけど、六十年前に閉じ込められた和子さんの像が開かず、わたしが閉じ込められた像が開いて裕子が閉じ込められたのです。
今回は二体とも初日に二人の巫女が閉じ込められたから、言い伝えに寄れば二日目にこの祭りの本当の最後がやってきます。三十回目の巫女の交代・・・そして最後の巫女が閉じ込められます。そのあと恐ろしい事が起きるとされていますが、同時に世界が救われるというそうです」
「三十回? そういうことは千八百年前から続いていたというのですか?」
「そうだ、間違いが無ければ西暦215年から続いたこの社の歴史も終わるという事だ」
そういって喜多がやってきた。
「喜多先生! 先生がいわれた超古代文明ってこのことだったのですか? でもおかしいじゃないですか大和朝廷が成立するはるか前からここに社があったなんて、どうして誰も論文を発表しなかったのですか?」
「そりゃ決まっているだろう、そんな事をいっても信じないだろう。こんな山奥に超古代文明による都市国家があったなんて話を! まあそれだけ閉鎖的な社会だったからだ。今ではこんな限界集落だけど最盛期には結構人がいたそうだ。でも今じゃわすれさられているけどさ」
さらに喜多の後ろからも老人がやってきた。昭三だった。
「そうさ、空媛尊っていうのは今も生きているんだ、この地下深くの空間に。わしは三十年前に今よりも九十年前に閉じ込められた巫女から聞いたんだ。この祠の秘密を! それは恐ろしい話だったんだ。その時和子ちゃんが閉じ込められたんだが、あれはワシの姪だったんじゃ。そろそろ和子ちゃんの口が聞けるかもしれないから行こう!」
六十年前に金属像に閉じ込められたミイラが生きているというのだろうか?




