その十九「二体の木乃伊」
全裸に近いと言っても過言でない詩織の眼は虚ろだった。動いてはいるがそれは魂の抜け殻のようになっていた。
詩織は妙子の妹の裕子だというミイラが入っていた金属像を踊りながら着始めた、それにあわせるようにもう一体の金属像が現われ、詩織と弥生と三人で剣舞をまたはじめた。このとき弥生も眼が虚ろだった。
越智は喜多に言い寄っていた。これから始る事は一体何なんだと聞くためだ。
「先生! いったいなんですか人身御供の儀式は? 先生はしっていたんですか?」
「ああ、確信は無かったが知っていたさ。昨日妙子さんに全てを聞いたんだ。本当は君の教え子を巻き込む事に躊躇したさ。でも行わないと、この四国は消滅するし、儀式に失敗するとまた三十年後やらないといけなかった。
でも、この儀式は今回で終わりにしなければいけない。だから協力したのだ」
「じゃあ、これから何が起きるのですか?」
「たぶん説明するよりも見ていた方が早く判る。これからミイラがもう一体現われたら、この儀式も半分は成功だ。あとは君の教え子がいいようにやってもらえば、全ての元凶が登場する。まあ最近の若者言葉でいえばラスボスといったところだ」
「ラスボス? それって空媛尊のことですか? あれって隕石じゃないかといっていたんじゃないですか?」
「まあ隕石のように天空から飛来してきたものには変わりないさ。でも本当はそんなものじゃないさ。この四国に超古代文明をもたらしたものさ。でも、わずかな年数で滅亡したけどさ」
「本当に存在したというのですか、超古代文明がこの四国に、その証拠はあるのですか?」
「いま目の前にある金属像はなんだ? 着用していた人間がミイラになっても動いていただろう! あの金属像がこの地に栄えた超古代文明の遺産というわけさ」
その時、金属像を完全に纏ってしまった詩織と弥生がもう一体の金属像にとどめをさしていた。するとさっきと同じように中からミイラが出てきた。そのミイラは裕子のそれよりも状態が悪く、骨に僅かな皮膚がこびりついたかのように干からびていた状態だった。
「あのミイラは記録では昭和三十年に神隠しにあって行方しえずになった橋笠和子さんです。中学卒業後に行方不明になったとされていましたが、実際は六十年間あの金属像に閉じ込められたわけです。
いままで、人身御供された巫女のミイラはひそかに安置されてきたのですが、最期の義式の時に最後から三回まで参加した巫女のうち二人がさらに犠牲になればこの儀式は成就します。
ただ和子さんと一緒に参加して戻った女性は昨年交通事故で亡くなったので、今ここにいる裕子と詩織さんと弥生さん、そしてわたしのうち二人がもう一度金属像に入れば全てが終わります。明日の儀式で誰が犠牲になるかは決まります」
越智と喜多に近づいてきた妙子はそういった。




