314.アリア≠アリア
離宮のアリアの部屋で、アリアはテーブルに並んだチョコレートを食べていた。
今朝、理由は分からないが、『今日から暫く学院を休むように』という兄からの言伝を持った侍女が来た。
勉強なんてなんの価値もないと思っているアリアにとって、兄からの言伝は願ったり叶ったりだった。
『!?』
「どーしたのぉ?」
突然何かに驚いた様子の相棒に、のほほんと問いかけたアリアが、また1つチョコレートを頬張る。
『結界に囚われたわ…しかも多重結界!?』
「結界?そんなのいつも城に張られてるじゃない。小煩い家庭教師が言ってたわ」
『あんな結界とは比べ物にならない結界よ!アナタもあたしもここから出られないのよ!1歩も!』
「え〜?別にアリアはチョコレートがあれば出なくてもいいわ。レオナルド様が来るわけじゃないし」
この短い会話の間にも、テーブルのチョコレートは次々とアリアの胃袋に消えている。
母であるアリシアに太ったと言われてから、さらに肉付きが良くなっている。
『あたしが困るのよ!ちょっと調べるから、代わりなさい』
「え〜、嫌よ。まだ食べてるもの」
『そもそもアナタだってその身体は借り物じゃないの。それに、それ以上太ったら、麗しのレオナルド様に捨てられるわよ?』
「なっ…もう!わかったわよ!貸せばいいんでしょ、貸せば!早めに終わらせてよ」
『ええ、代わるわよ』
アリアのダークブルーの瞳が、瞬時に赤みを帯びた。
「結界の魔力の感じからして、3人分、かしら?…これはマズイわね。解くには骨が折れそうだわ。あの子たちには一応指示は出しておいたけど…」
『まだぁ?』
「盗聴が怖いけど…念話を送るしかないか…っ!念話もダメなの!?どんだけよ、この結界!あー!ムカつく!」
『アンリ〜?』
「煩いわね、今戻るわよ!」
アリアの瞳がダークブルーに戻り、忌々しげに歪んでいた顔に笑みが浮かぶ。
その視線の先の焦げ茶色のチョコレートに、またアリアの手が伸びた。
「ふふっ、美味しい!」
『ムカつくくらい呑気よね…』
アリアとしては今日からは大嫌いな学院に行かず、大好きなチョコレートを延々と食べれる生活が続く事に、満足しかない。
「だって、甘くて美味しいのだもの。アンリも代わった時に食べたことあるでしょ」
『あたしは美貌に響く食事はしないのよ。あなたと違ってね、ミモザ』
「もう、その名前で呼ばないでって言ってるでしょ」
ミモザと呼ばれたアリアが、口を尖らせたが、目の前に睨む相手が居ないため、すぐにまたチョコレートを口に放り込む。
『とりあえず、貴方が寝たらまた借りるわよ』
「はいはい。寝てる間なら御自由にどーぞ」
アリアは手を伸ばした先にあったチョコレートが、残り1つと気付き、侍女を呼ぶためにベルを鳴らした。
『(そういえば、ミモザの身体に保管していたアリアの魂はどうなったかしら…まぁ、もう輪廻の輪に戻ってるわね、きっと…)』
「なに?考え事?」
『何でもないわ』
部屋のドアが開き、侍女が来た。
その手には既にチョコレートが載せられたプレートがあった。
「さすがクレアね!ついでにホットチョコレートもお願い!」
満面の笑顔で言われたクレアは、感情のない声で「かしこまりました」と言うと、すぐに出ていった。
ようやく、この話を書くまで来ました!
長かったよー。




