第92話 ケン君との商談?
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「で、どうして格闘技大会なんだい?」
と、ケン君に尋ねる。
「タク先輩もご存知と思いますが、元の世界では商品の宣伝をするのにスポーツイベントのスポンサーになったり、看板を出したり、ということは一般的でしたよね?」
「それはそうだね。ユニフォームにロゴを入れたりは当たり前だったしね。」
「そうです。同じような手法を取りたかったのですが、残念ながらこの世界にはプロスポーツであったり、大きな興行といった既存のフォーマットが無く、広告の機会がありません。」
「うん、わかる気がするよ。」
「そこで、フォーマットが無いなら作ってしまえばよいと考えました。」
「それで格闘技大会ってわけかい?」
「そうですね。」
「でもどうしてわざわざ格闘技を?」
「それはですね、昨日の冒険者ギルドでのタクさ先輩と自称一流冒険者とのやり取りを見て思いついたのですよ。」
「昨日のやり取り?
僕は1mmも手を出さなかったけど?」
「ですね。ですが見ている限り冒険者の中には彼らのように腕っぷしを試したくて仕方のない連中がいるようです。
それに周りで見ていた他の冒険者達もケンカが始まらないかとウズウズして見ていた者もいましたからね。」
「そうなんだ。よく見てたね。」
「冒険者という人達は、本質的には力試しをしたい人達なんですよ。
ただ、ここ王都では商隊の護衛が主な収入元なので、皆さん社会的信用を無くさないように暴力的な行為は自制しています。」
「確かにそうだね。」
「そこで格闘技大会です。
腕試しをしたくて仕方のない人達に、一定のルールの元で暴れられる場を提供するんですよ。
しかも賞金と賞品付きで。」
「なるほど。腕っぷしを自慢したくて仕方のない冒険者は喜んで参加しそうだね。」
「そのとおりです。
元の世界でも同じように、格闘技大会は商品の宣伝にはうってつけの場所ですからね。
メインスポンサーとして大会に名を冠する事ができますし、リングガールにタクさんがデザインしたカワイイ衣装を着せておけばよい宣伝になります。
それにスタープレイヤーが着用している服は皆が欲しがりますからね。」
「なるほど。大会の運営やルールはどうするんだい?」
「ふふふ、運営についてはこちらのクリスさんが手配を整えています。
お城の調達部のスタッフを中心に、お城の各工房や商業ギルドの関係者の協力を得る計画です。
ちなみに皆さんとても協力的で、既に準備に着手していますよ。」
「そうなんだ(汗) 手際がいいね(汗)」
「ええ、優秀なお世話係さんのおかげです。」
と言って、クリスさんの方を見る。
クリスさんは何を言うわけでもなく、そっと微笑み返している。
うん、こういう出しゃばらないところに、できるビジネスパーソンの雰囲気を感じるぞ?
「ところで、格闘技大会のルールや会場なんかはどうするの?」
「はい、その点も既に冒険者ギルドと調整済みです。
場所はギルドの訓練場を借用します。あと、審判もギルドが実施してくれます。」
「冒険者ギルドがやけに協力的だけど、彼らには何かメリットがあるのかな?」
「表向きには優秀な人材の発掘でしょうね。
活きのいい冒険者が出てくればギルドも嬉しいでしょうし、彼らを護衛に雇う商人にとってもよい話でしょう。」
「だろうね。表向きということは裏向きの理由もあるのかな?」
「もちろんです。1つはガス抜きですね。
先程も言いましたが、王都の冒険者達は普段は大人しくしているというか、させられているので、合法的に大暴れする機会を与えてストレスを発散させることはギルドにとっても良いことですから。」
「フムフム。」
「2点目は副次的に収入が増えることですね。
今回は会場を我々が借りる代わりに入場料収入の10%をギルドに支払います。
加えて、飲み物や食べ物はギルドに併設の食堂が利用されるでしょうから、そこからの収入も期待できるでしょう。
加えて、ギルドが元締めになって勝敗予想の賭けを実施するそうです。
その賭けのあがりと、賭けに勝った冒険者が食堂で落とすであろう飲み代で更に儲かるという訳ですね。」
「なるほどね。そういう話を聞けば納得だね(汗)
冒険者ギルドにはメリットしかないよね。
まさに場所を提供するだけで儲けが転がりこんで来るわけだからね。」
「そういうことですね。」
とケン君は悪い顔をでニヤリと笑う。
「とは言うものの、出場選手はどうやって集めるんだい?
多少は腕っぷしが立つと言っても、本職の格闘家なんてそうはいないと思うけど?」
「そこはルールと賞品と賞金でカバーします。
まずルールですが、アマチュアの大会ということをアピールして、3分間1ラウンド制にします。
短時間決戦にすることで参加のハードルも下がりますから、『俺でもできる!』と考える活きのいい冒険者が手を上げるでしょう。
それに短時間なら番狂わせが起きる可能性も高まって、会場も盛り上がるでしょう。」
「なるほどね。」
と、僕は元の世界でもあったケンカ自慢が集まる大会を思い出す。
腕に自信のある素人を集めて格闘技のルールの元で対戦させるイベントだ。
選手選考の過程も含めて何かと話題の大会だったね。
まあ、ケン君もあの大会をイメージしているのだろう。
「次に重要なのは賞品ですね。」
とケン君がニヤリと笑う。
「高価で手に入りにくいもの、付加価値の高いもの、便利なもの等、所有欲をくすぐるような賞品を用意すれば、火に誘われる虫のように出場希望者が集まってきますよ。」
とケン君がまたまたニヤリと笑う。
「それはそうだけど、どうやってそんな賞品を入手するんだい?
何か目星でもあるとか?」
と尋ねる。
ケン君は更にニヤリと笑うと
「ええ、ありますよ。
例えばですが・・、タクさんとチャロンさんが胸に付けているバッジとか、腰に付けているポーチとか・・。
冒険者なら所有欲をくすぐられると思いませんか?」
と小声で呟く。
僕は努めて冷静に
「どうしてそう思うんだい?」
と尋ねると、ケン君は
「一応、これでも交渉人を名乗って商売の真似ごとをしていますからね。
商品の目利きはできるつもりですよ。」
と、ニヤリと笑って言う。
僕は冷静を装ったまま、
「うーん、その話をするなら続きは場所を変えたほうがいいかな。
あまり人に聞かれたくない話なんでね。
少なくともここでは無理かな。」
と答える。
「ですね。誰が聞いているかわかりませんしね。」
とケン君も同意する。
「では、場所を変えようか。
本当は王都の外がいいんだけど、外出するのも大変だしね。」
と言うと、席を立って皆を先導して歩き出す。
ケン君はただ者ではないと思っていたが、まさか僕の作った魔道具の価値に気づくとはね。
さすがは交渉人、油断ならないね(汗)
さてさて、どうやって話を進めようかな?
◆◇
残念ながら内緒の話をする場所は一つしか思いつかなかった 。
そう、アカネちゃんの訓練場である、お城に隣接した森の中である。
もちろん道中で「気配察知」スキルを発動して周囲100m以内に誰もいないことは確認してある。
大きな木の木陰に「土いじり」の生活魔法で椅子を作ると、皆でそこに腰掛ける。
「さて、ようやく内緒の話ができるね。
早速本題に入ろう。
その前にケン君とクリスさんは秘密の保持を約束できるかい?」
とケン君達に話しかける。
「もちろんです。私も商人の端くれですから商品の入手経路などの秘密は保持しますよ。
秘密をペラペラとしゃべってビジネスチャンスを失う愚はおかしませんよ。
ご安心ください。」
と、今度は真面目な顔で答える。
「なら安心かな。
単刀直入に言えば、ケン君のお察しのとおり、僕はいろんな便利アイテムを作る事ができる。
このバッジやチャロンのネックレスもその1つさ。」
とさらっと説明する。
「どんな道具か概要を伺っても?」
「うん。」
と言うと、バッジやポーチの概要を説明する。
「ざっとこんな感じかな。
あ、もちろん製造方法は企業秘密だから不開示だよ。」
「もちろんです。それにしてもすごい魔導具ですね。
バッジもポーチも冒険者や商人にとっては喉から手が出る商品でしょう。
ただ、スペックが高すぎて値段がつけられないですね。下手をすれば国宝級ですよ。」
とケン君が呆れた顔で答える。
「その通りさ。なので機能を限定したものを販売用に作りたいと思ってたんだよ。
一般の冒険者たちの手に届く範囲でね。」
「なるほど。国宝級の魔導具なら買い手がつかないどころか、下手したら王家に献上させられてしまいますからね。」
「そうなんだよ。
なので程よい性能に調整する必要があるんだよ。」
と答える。
「あとは僕が作った魔導具だというのがバレないようにする必要があるね。
服やキャンプ道具のデザインなら問題ないけど、魔導具が作れる事が王家の主要スタッフにバレると、お城の工房に軟禁される恐れがあるからね。」
と説明する。
「それはわかりますね。
でもご安心ください。
魔導具はお城にバレないように私が取り扱いますから大丈夫ですよ。」
とケン君が説明する。
「どうやって取り扱うんだい?」
「実は私が自分の商会を立ち上げる予定です。
私が仕入先を秘匿しておけば問題はありませんよ。」
「そんな事ができるのかい?」
「ええ、もちろん。
商人にとってよい仕入先は商売の生命線ですからね。
例え豪商や国家権力であってもその開示を強要することはできないのですよ。
もしそれをしようとする人がいれば、その人は商業ギルドから取引を停止されるなどのペナルティがあります。
そうなると事実上商売ができなくなり、商人として終わってしまいますからね。」
「なるほど。僕から内緒で仕入れて、あとは上手く売り払えばよいってことか。」
「そういうことですね。
ここで本日最後の相談なのですが‥」
とケン君がニヤリと笑って話を続ける。
「タクさんのブランドである【8番格納庫】の販売代理店として、私の商会と専属契約しませんか?」
「ええ!専属契約?
そんな事ができるのかい?」
「ええ、実はお城の調達部と各工房とで話し合いをしたのですが、タクさんのデザインする服や道具は確実に売れるでしょうからお城の専売にしたいという意見が多かったのですよ。 確実に利益が期待できますからね。」
「まあそうかもね。」
「ですが、お城が直接商売をすると商人達の反発というかやっかみが予想されましてね。
どうしたものかと話し合った結果、ダミーの商会を立ち上げることにしたのです。」
「もしかしてそれがケン君の商会とか?」
「ふふふ、そのとおりですよ。
タクさんと同じ召喚勇者が商会を立ち上げたほうが、タクさんもビジネス上のやり取りをしやすいだろうという話になりまして。」
「では、ケン君の商会がお城の工房に作らせた商品を他の商会や個人に売り払うというわけかい?」
「そうですね。ちゃんと利益の10%はタクさんにお支払いするのでご安心ください。」
「それは問題ないんだけど、魔導具はどうするんだい?
流石に僕が直接ケン君の商会に卸していたら、僕が魔導具を作ってる事がお城にばれちゃうからね。
その状況は最も避けたいんだよね。」
「ご安心ください。そこもよいアイデアがありますよ。」
「よいアイデア?」
「はい。タクさんもご自分の商会を立ち上げるんですよ。そして雇われ商会長を代表に設定しておくのです。
その商会から私の商会に魔道具を納品していただければ、タクさんが表に出てくることはありませんよ。
知り合いの商会を通じて入手した魔導具を、私の商会が【8番格納庫】の名義で販売する、ということにしておけば問題ないでしょう。」
「なるほど。雇われ商会長ね。それって誰でもいいのかい?」
「タクさんの信頼できる方なら大丈夫ですよ。
欲を言えば、お城の関係者と接点がない方なら問題ないでしょう。
あと、あまり目立たず、普段は連絡があまり取れない人ならなお良いですね。」
「なるほど。魔道具の納品に関するスキームはそれで良いとして、雇われ商会長になってくれる人を探すのが難しいかな・・。
こちらの世界ではお城の外に人脈が全く無いからね・・。」
と言おうとした時に、僕の左腕に巻き付いていたヤトノが体を少しキュッと締め付けつつ念話で話かけてくる。
『ご主人様、私が雇われ商会長になりますよ!
私なら都合の悪い時は蛇になって隠れることができますし、多少は魔法も使用できますから怪しまれないでしょう。
お城の関係者と接点も無いですしね!』
『おお、そうだね!
ヤトノに商会長になって貰えばちょうどいいね!』
と念話で返す。
僕は再びケン君に意識を戻すと、
「・・、と思ったけど、ちょうどいい知り合いがいたのを思い出したよ。
どうすれば商会を設立できるんだい?」
「はい。そのお知り合いの方を連れて商業ギルドに行けば窓口で登録できますよ。
一番簡単な行商人クラスで登録すれば簡単に手続きできますよ。」
「分かったよ。次に王都の街に外出する際に商業ギルドに行ってみるよ。」
「よろしくお願いしますね。
さて相談の続きなのですが・・、計画中の格闘技大会の賞品にちょうど良い魔道具はありますか?
先程説明を伺ったポーチやバッジではスペックが高すぎますので。」
「そうだね。これなんてどうだい?」
と言って、「点灯」「点火」「放水」の棒状の魔道具をポーチから取り出す。
本当は空間魔法のアイテムボックスから取り出しているのだが、説明が面倒なのでポーチから取り出した体にしておいた。
「こうやって魔力を流せば誰でも点灯、点火、放水の生活魔法が使えるのさ。」
と実演する。
「おお!これはすごい!これは便利ですね!
僕は生活魔法を使えないので、この魔道具の有用性はよく分かりますよ!
これは魔法を使えない冒険者は欲しがりますよ!」
と、ケン君はいつものクールキャラを忘れたように興奮している。
ケン君の横ではクリスさんが大きく目を見開いて興奮した様子でウンウンと頷いている。
「これだけだと魅力が少ないかもしれないから、バッジとポーチの魔道具の廉価版なんてどうだい?
バッジは『汚れ除去』のみ、ポーチは容量50リットル、くらいでちょうどいいかな?
冒険者が手ぶらで行動できて汚れも気にしなくていい、となれば皆欲しがると思うんだよね?」
「それはいいですね!それでお願いします!
勝者には賞金と魔道具詰め合わせを提供することにすれば参加者には困らないでしょう。
」
「そうだね。参加の応募がたくさんくるといいね。」
「ふふふ、何を他人事のように仰ってるんですか、タクさん?」
「え、僕は賞品の魔道具を用意すればいいんじないのかい?
「何を仰ってるんですか。もちろんタクさんも参加するんですよ。
王都のギルドで最短でEランクに昇格した、新進気鋭の冒険者としてメインイベントで登場していただく予定ですよ!」
「えええ!どういうこと!」
なんかケン君がぶっ込んできましたよ!
◇◆
「何で僕も出場することになるんだい??」
「それは当然ですよ。いくつか理由を列挙するならば、
・お城の騎士ですら軽くあしらってしまう格闘技の使い手
・ブランドの名付け親にして影の開発者兼デザイナー
・王都の冒険者ギルドで最速でEランク冒険者に昇格
・話し合いだけでDランク冒険者を撃退してしまうクレバーさ
・実はお城のメイドさん達には「夜の勇者様」として大人気
と言ったところでしょうか?
私がお城と冒険者ギルドでざっと情報収集しただけでも、かなりの情報が集まりましたよ。
特に謎の新進気鋭の冒険者として話題を集めていますね。
そのタク先輩が格闘技大会に参加するとなると間違いなく盛り上がりますよ。」
「そうなのかい?王城はともかく冒険者ギルドでは情報の秘匿がなされているはずなんだけど(汗)?
あと、「夜の勇者様」は全く関係ないと思うんだけど・・。」
「ふふふ、人の口には戸は建てられませんからね(笑)。
面白い噂はあっと言う間に広がるものなのですよ。
特にできる冒険者の噂はね。
既に例の新種のゴブリンを討伐したのはタクさん達のパーティーだと言う噂は冒険者ギルド内でまことしやかに広まっていますよ。
それにタクさんたちに助けられた冒険者が、タクさん達を称賛していましたからね。
なんでも新種のスライムに襲われて危なかったところをタクさん達に助けられたとかで。
冒険者としての腕も心も素晴らしい、と褒めていたそうですよ。
あと、お城の中は娯楽が少ないですから、お城のスタッフさん達の楽しみといえば、いろんな噂話くらいなんですよ。」
「なんと(汗)。新種のゴブリンとスライムの件まで噂になっているのかい?」
「ですね。ギルドからの公式発表はないですが、恐らくギルド職員の会話から情報が漏れたのでしょうね。でも事実なのでしょう?」
「まあ、事実なんだけどね(汗)」
「では問題ないのでは?
むしろそれを売りにして注目度をあげてしまいましょう。
格闘技大会が盛り上がりますよ(笑)」
「そんなので盛り上がるのかい?
新種と言ってもたかがゴブリンだよ?」
「大丈夫ですよ。例のゴブリン達にはDランク冒険者達も手こずっていたらしいですから。
それをEランクに昇格前のタクさんが倒したとなれば、注目度も断然上がりますよ。」
「それはいいけど、参加者のランクの上限はどうするんだい?
流石にAランクやBランクの冒険者が出てきたら僕では相手にならないかもしれないよ。」
「ご安心ください。今回は比較的低ランク冒険者に賞品を配布して、商品の口コミをさせるという目的もありますから、参加の上限はDランクとします。
応募者多数の場合は冒険者ギルドと調整のうえ、盛り上がりそうな選手を人選してマッチメイクする予定です。」
「それならまあいいか。じゃあ、大会に向けて訓練もしないとね(汗)
ところで大会はいつ開催されるんだい?」
「はい、3日後の夜を予定しています。」
「3日後?えらい早いね!」
「ふふふ、善は急げですからね。
【8番格納庫】の展示会の開催と同時に格闘技大会の告知も実施しますよ。
冒険者ギルドでは出場者の受付も開始する手はずです。
ちなみに、格闘技大会の名称は私の独断と偏見と趣味で決定済みですのでお任せください(ニヤリ)。」
「わかったよ(汗)
ところで格闘技大会の試合数はいくつなんだい?
賞品の準備もしないといけないからね(汗)」
「はい。試合数は10試合を予定しています。
そのうち2〜3試合は女性冒険者の試合を予定していますよ。
タク先輩の魔導具は女性にも人気が出るでしょうから、しかっりと口コミしていただかないといけないですしね(ニヤリ)。」
「さすがケン君、ぬかりがないね。
じゃあ、僕は格闘技大会本番までトレーニングと賞品作りに力を傾注するけど、特に問題はないかな?」
「ええ、お願いします。
何か必要な物はありますか?」
「そうだね。魔導具を作るのにいくつか素材が必要なんだけど・・、いつもは武器工房とかでもらっているんだけど、今回はそれをすると魔導具を作っているのが僕だとばれてしまうから、仕入れを頼んでいいかい?
代金はもちろん支払うよ。」
「わかりました。材料の手配はクリスさんにお願いしておきますのでご安心ください。
今日中には部屋にお届けするようにしますよ。
あと、代金は格闘技大会の諸経費で落とすので問題ありません。」
「え、大丈夫なのかい?」
「はい、問題ありません。
イベントの入場料やその他の商会の広告料等で運営経費は十分に賄える見込みです。
今回の格闘技大会への広告料の大小で今後の【8番格納庫】の商品の卸量を決めると告知する予定ですので。
どの商会も我先にと広告料を支払うことでしょう。」
「ちゃっかりしてるね(汗)さすがは交渉人だね。」
と関心しながら、僕はクリスさんが渡してくれた紙とメモ用紙に必要な材料を記載する。
材料といっても真鍮、鹿革、黒樫の炭、革細工用の裁縫道具、革紐、丈夫な糸など、一般的なものばかりなので、魔導具作成の秘密がばれることはないだろう。
「これでお願いするね。」
と書いたばかりのメモを2つ折りにしてケン君に手渡す。
ケン君はちらっとメモを見て、それをクリスさんに手渡すと、
「承知しました。材料の手配はお任せください。
ところで、タクさん達は展示会には興味がありますか?
私達もこれから会場の下見に行くのですがご一緒にいかがですか?
明日からの展示会本番は混雑が予想されますので、本日中に見ておかれたほうがいいですよ。
もし欲しいものがありましたら、早めにオーダーして頂いても結構です。」
と答える。
「本当かい?
ちょうど、チャロン達の服の予備が欲しかったのでオーダーしてよいかな?
先日デザインした衣装の仕上がりも気になるしね。
是非おじゃまさせてもらうよ。」
「では早速ご案内しましょう。」
とケン君が動き出そうと腰を上げたところで、僕は重要なことを思いだす。
こんな楽しそうな話に女子高生チームを誘わなかったらえらいことになりそうだ(汗)
後でイヤミをチクチクと言われ続けるのは間違いない(汗)
「あ、亜季ちゃん達も誘っていいかい?
彼女達も僕の冒険者のパーティーメンバーだし、衣装のデザインの際はいろいろとアイデアをもらったからね。
彼女達も展示会を楽しみにしているんだよ。」
「もちろんOKですよ。
女子チームにとっては衣装の展示会も娯楽の一つですからね。
もう昼前になってしまいましたから、昼食を食べたあと、午後から皆さん一緒に是非お越しください。」
「ありがとう。では午後からおじゃまするよ。
場所はさっきもらった地図を見れば分かるから大丈夫だよ。」
「承知しました。ではお城のほうに戻りましょうか?」
「ああ、そうしよう。」
と言うと、僕たちは訓練場の森から王城に向かって歩きだす。
ケン君とこんなに長く話をしたのは初めてだったけど、ほとんどが商談みないたものだったから疲れたね(汗)
僕にもメリットのある話とはいえ、結局はケン君の話に乗せられてしまったからね(汗)
3日後の格闘技大会に向けた準備も大変だけど、まずは亜季ちゃん達に事情の説明かな?
どんな反応をするかちょっと気になるね(汗)
◆◇
お城に戻ったのはいいけれど、一つ困った事に気がついた。
今日は僕達はそれぞれ自由行動をする予定だったので、女子校生チームが何処にいるのかがわからないのだ。
元の世界ならスマホを使ってSNSでメッセージをやり取りすれば解決する話なのだが、ここは異世界のセントラル王国、スマホなんてあるわけがない。
スマホ代わりの魔導具を作れるときっと売れるにちがいない。
それはともかく、今は女子チームをさがさなければ(汗)
お城が広いとは言っても今は昼時、何処かの食堂にいるにちがいない。
「内勤者用の食堂に行ってみる?それとも屋外勤務者用の食堂に行ってみるかい?
女子高生チームがどちらかにいると思うんだけど。」
と、チャロンとヤトノに話しかける。
「そうですね。二択といえば二択ですが、後者のほうが可能性は高いでしょうね。」
とチャロンが答える。
「だよね。アッシュやマイティもいるから、屋外勤務者用食堂だろうね。
そっちに行ってみよう。」
と僕が答えた時に、ヤトノから念話が入る。
『クロロちゃんに屋外勤務者用の食堂に皆さんを探しに行ってもらえばいいですよ。
アッシュ君かマイティ君がいれば、私に念話で伝えてもらいましょう。』
「そんな事ができるのかい?」
『ええ、私の魔力が回復しましたので、念話の範囲が広がりました。
今なら半径10kmくらいの範囲内なら念話の受信が可能ですよ。』
「おお!すごい!
じゃあ、クロロは屋外勤務者用の食堂に行って亜季ちゃん達を探してきてくれるかな?」
と言うと、クロロは「ホゥ!」と一声鳴くと、音もなく飛んで行った。
僕達がクロロを見送って2〜3分過ぎたころ、クロロからヤトノ宛に念話が入る。
『あ、どうやら亜季さん達がいらっしゃるようですよ。
ちょうど食堂に着いたところらしいです。』
「おお、もう分かったのかい? すごいね!
じゃあ、みんなで屋外勤務者用の食堂にいこうか?」
「はい!」「バウッ!」「・・!」
と皆の元気な返事を聞いてから食堂に向かって歩きだす。
「それにしてもヤトノの念話の受信範囲は広くてすごいね。
何かコツはあるのかい?」
『そうですね。イメージとしてはごく細い魔力の線を対象者と常に結んでおくイメージですかね。それだけで相手方の存在を常時確認することができますよ。
念話をしたり、感覚共有する際は必要に応じて線を太くしたりする感じです。
念話の使用者の魔力が少ないとこの魔力の線を太くできなくて、伝達できる情報量が少なくなります。逆に使用者の魔力が多いとスムーズに会話できます。」
「なるほど、ヤトノが復活してから念話が流暢になったのそれが理由なんだね。」
『ええ、そうですよ。そして念話のスキルがアップすると複数の対象者と同時に念話で会話することができます。
私がいまタクさんとチャロンお姉さんの両方に話しかけているみたいな感じですね。』
「おお、それはすごい! それはとても便利じゃないか!」
『ええ、そうですね。
というか、タクさんは既にできていますよ。
既に私とスノーちゃん、クロロちゃんの4者で同時に念話ができていますからね。
あとは相手方が流暢に話せる人であれば、念話で同時に会話をすることが可能です。』
「なんと!そう言えば今朝起きたら『感覚共有[マルチ](中級)』と『念話(中級)』っていうスキルが増えていたんだけど、もしかしてこれらがそうなの?」
「ええ、そうですね。『念話(中級)』で複数対象者と同時に念話ができます。
『感覚共有[マルチ](中級)』で、複数の従魔の感覚を共有できます。
感覚共有[マルチ]の中級は共有できる情報量の大小のことですが、冒険者の活動程度であれば十分な情報量ですね。
その2つがあればタクさんと複数の従魔達の間の感覚共有と念話が可能になりますよ。」
「おお!そうだったんだね!
昨日も何気なく使っていたけど、そうやってスキルの解説を聞くとよく理解できたよ。
ありがとう。」
『ふふふ、どういたしまして。』
「この念話を他のメンバーとも実施できれば、行動中の意思疎通が便利になるんだけどね。
皆もスキルを取得できないないかな。」
『うーん、固有のスキルにもよるので、他のメンバーの皆さんがタクさんのように念話のスキルを入手できるかどうかはわかりませんが・・、タクさんなら別の方法で実現できるかもしれませんね。』
「別の方法?」
『はい、タクさんの魔導具を作るスキルを使って、念話の魔導具を作ることは可能かもしれませんよ。』
「おお!その手があったね。
試してみる価値はあるね。」
『ですね。付与魔法を使えば何とかなるかもしれませんよ。』
「了解だよ!後で試してみよう。
まあ、まずは女子チームと合流して昼食が先だけどね!
さあ、ちょうど食堂に着いたよ!」
「はい!」『ですね!』「バウッ!」
と言って僕達は食堂に入っていく。
さあ、またやりたい事が増えちゃったね。
まずは食いしん坊の仲間たちと一緒に腹ごしらえかな?
最後までご覧頂きありがとうございました。
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(更新頑張ります・・。)




