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第89話 王都に戻ってランクアップ!・・からのフラグ・・

更新が遅くなってすみません・・。

(また出張等で長期間多忙でした・・。)

 先を行く商隊と護衛の冒険者達は大騒ぎの様相である。


 ただ、魔物の姿は確認できない。

 いったい何が原因なんだ?


「クロロ、前方の商隊の様子を上空から見てきてくれないか?」


 とクロロを前方に飛ばす。


 素早くクロロと視界を共有すると、商人や冒険者達が茶色い何かにまとわりつかれて大騒ぎしている。


 なんだあれは?


 クロロが商隊のほぼ真上に到着すると、茶色い何かの姿が明らかになってきた。


 茶色い大きな水滴のようなものに人も馬車も絡みつかれている。


 ああ、これはあれだな。

 異世界定番のスライムだな・・。


 ただ、定番の透明な体ではなく、泥水というか、柔らかい粘土といった感じである。


 おっと、スライムに取り付かれた馬車の車輪や、冒険者の靴がジワジワと溶かされているぞ!


 男の冒険者の一人がズボンのお尻の部分に取り付かれて大騒ぎしている!

 

 このままではズボンが溶かされて見たくもない部分が見えてしまう!

 

 うーん、このカオスな状況が拡大する前に助け舟を出したほうがよさそうだね。

 護衛の冒険者には女性もいるようだから、服を溶かされてしまったら目も当てられないぞ(汗)


「みな!前方の商隊は茶色いスライムに襲撃されているようだ!

 どうやら馬車や服を溶かす能力を持ったスライムだ。

 このままだと怪我人がでるかもしれないから介入して助けよう!」


「「「「はい!」」」」、「バウ!」「ワウ!」「ピィ!」「・・!」


 と、皆(クロロ以外)が返事すると同時に前方に駆け出す!


 さあ!異世界定番の?スライム退治だ!


◇◆


 商隊に駆けつけた頃には、馬車3台と商人そして護衛の冒険者全てが程度の差こそはあれ茶色いスライムに粘着されていた。


 剣で刺したり、足をブンブン振り回しているが粘着力が強いらしく、なかなか取れないようだ。


 どの人も皆ギャーギャーと叫びながらスライムを引っ剥がそうと必死である。


 まさに阿鼻叫喚といったところだね(汗)


「大丈夫か?助けは必要か?」


 と声をかけると

「た、助けてくれー!

 こいつら一度引っ付いたらなかなか取れないんだ!

 しかも体が泥団子みたいな固さで刃が通らないんだ!」


「わかった!」


 と答えたものの、どうすりゃいいんだ?


「ねえチャロン、そもそもスライムってどうやって倒すんだい?」


 と初歩的なことを聞く。


「そうですね。普通は体の中央にあるコアを叩き潰せば楽勝で倒せるんですが。

 そもそもこんなスライム見たことないですね。」


 おっとチャロンでも知らない魔物がいたなんて。


 どうやら先にこいつらのことを調べる必要がありそうだぞ。


 僕は素早く「目利き」スキルを発動させると茶色いスライムのステータスを確認する。


 すると、


 種族:マッドスライム

    出身地 東の森林地帯

    状態 若い個体

    特徴 東の森林地帯の魔力をたっぷり吸収した土を

       取り込んだスライム。

       取り込んだ土でコアを覆っているため、防御力は極めて高い。

       取り付いた獲物を溶かして吸収する。

       毛、繊維、木材などを溶かすのが得意。


 と表示された。 

 おお! なんかやばそうなやつだ!


「みな!こいつに直接触れられないように気をつけるんだ!

 溶かされて食べられてしまうぞ!」


 と僕が言ってる間にも商人と冒険者達がマッドスライム達にどんどん取り付かれている。


 なんかマッドスライムの数が増えてない?

 なんか気がつけば20匹くらいいるんだけど?


「キャー!助けてー!」


 と猫獣人のお姉さんが叫んでいる。


 どうやらマッドスライムが上半身に取り付いてしまったようだ!


 このままではお姉さんの服が溶かされて上半身があらわになって、けしからん果実が白日の下に晒されてしまうぞ!


 いいぞ!もっとやれ、マッドスライム!

 GOGO! マッドスライム!


 エロいスライムに粘着されていろいろされるのが異世界ものの見せ場だぞ!

 テンプレ展開を所望します!


 などとバカな事を考えていたら亜季ちゃんにジト目で見られてしまった(汗)


 うん、真面目にやろう(汗)


 試しにマッドスライムを剣で突き刺してみたが、泥団子のような体に勢いを消されてズブーっと刺さって行くだけである。


うん、無理だね、これは。


「タクさん! このスライム達は中に泥が詰まっているみたいな感じで剣でも切れません!」


 とチャロンもお手上げのようだ(汗)


 そうこうしている間にも猫獣人のお姉さんの服は徐々に溶かされているようだ!


 いかん! 早くなんとかしなくては!


 いや、でも、スライムを止めるとけしからん果実を見ることができない!


 いったい僕はどうしたらいいんだ!


 異世界に来て以降、こんなに判断に迷ったことはないぞ!


「タク先輩、何かよからぬ事を考えていませんか?

 変な事を考えてる暇があったら早くスライム達をなんとかして下さい(ジト)」


 おっと、亜季ちゃんに心を読まれてしまうところだった(汗)


 とはいえ、なんとかして下さいと言われてもね〜。

 倒すのが難しければ、なんとか奴らを止める事ができればいいんだけど・・。


 うん? 止める?


 と僕は何かをひらめく。


 そういえばマッドスライムを「目利き」した時に「土をたっぷり取り込んだ」って言ってなかったっけ?


 土を含んでいるなら、土の成分を固めてしまえばよいのでは?


 スライムの体内に均等に分散している土を固めてしまえば、残りのゼラチン質?とコアが分離するはずだ。


 ここは物は試しでやってみよう。


 マッドスライムに直接触れたくないので、最寄りにいた奴に片手剣を突き刺してから、「物体作成」を発動する。


 発動時のイメージは土の成分を立方体に、コアはその外側に弾き出す感じだ。


 「物体作成」発動後にキラキラエフェクトに包まれたマッドスライムは、見事に土とコアとゼラチン質が分離されていた!


 見た目は一言で言うと、「茶色い立方体のコア添え。ゼリー包み」といった感じだ。


 なんかちょっとオシャレなチョコレート菓子みたいな姿になってしまったぞ(汗)


 マッドスライムはそんな姿になっても動こうともがいているが、体内の立方体が邪魔で上手く動けないようだ。


 僕は片手剣を振りかぶると、体内のコアに向かって無慈悲に振り下ろす!


 僕の片手剣はスライムのゼラチン質ごとコアを切り裂く!


 コアを砕いた瞬間にゼラチン質が溶けて消えてしまった。

 残ったのは土の立方体だけである。


 うん、どうやら討伐できたようだ。


「みな! マッドスライムの倒し方がわかったぞ!

 土とコアと分離させるからコアを砕くんだ!」



 と指示すると、手当り次第にマッドスライムを「物体作成」で分離して行く。


 その後をチャロンと女子高生チームが付いて回ってコアを叩き潰す!


 亜季ちゃんが

「女の敵は地獄の番人が無限地獄に送ってしんぜよう。合掌・・」

 

 と言いながらコアを切りまくっている・・。


 君はいつから地獄の番人になったんだい?

 どんどんキャラが濃くなってきてない?


「タク先輩! 私も土魔法のバールを使ったら同じように分離できましたよ!

 若干形は悪いですけど。」

 

「おお!すごいよ楓ちゃん!

 この際、形はどうでもいいから女性の冒険者さんに貼り付いているマッドスライムを無力化してくれるかい?」


「了解です!」


 楓ちゃんの参加でマッドスライムの分離・硬化作業のスピードが倍になったので、気がつけばあっという間に無力化が終わってしまった。


 マッドスライムの粘着から解放された冒険者達も反撃に参加する。


 特に上半身に粘着されていた猫獣人のお姉さんは


「このエロスライムめ!」


 と、猫なのに鬼の形相でマッドスライムのコアをたたき潰していた(汗)



 ちょっとばかりマッドスライムを応援していたことがバレれば、僕も叩き潰されてしまうにちがいない(汗)

 ここはなんとしてでも黙秘せねば!


 反撃のターンが終了すると後に残されたのはスライムの残骸である立方体の土の塊だけである。


 どうやら商人と護衛の冒険者達には怪我は無かったようだ。


 先ほどの猫獣人のお姉さんはシャツの裾を溶かされたようでヘソ出しルックになって、うっすら割れた腹筋があらわになっている。


 それにブラっぽい何かがチラチラと見えてセクシーじゃないか!


 クッ! もう少しでいけない果実があらわになったと言うのに!


 努力が足りないぞ!マッドスライム!

 スライムの矜持を示せ!


 はっ!いかんいかん。

 バカな事を考えていたら亜季ちゃんに怒られてしまう(汗)


 ここはパーティーのリーダーらしく振る舞わないとね。


「皆さん大丈夫でしたか?」


 と商隊と護衛の冒険者に声をかける。



「ああ、なんとか怪我なく乗り切れたよ。手助け感謝する。」


 と護衛のリーダーらしき男が答える。


「無事で何よりです。

 どうやら馬車も荷物も大丈夫そうですね。」


 と馬車の異常の有無を確認する商人達を見ながら更に答える。


「ああ、車輪が多少溶けたようだが王都まではもつだろう。

 王都の工房で修理すれば問題ないさ。

 それにしてもどうやってスライムの中身を分離させたんだ?」



「まあざっくり言うと土魔法の応用ですね。

 中身が泥っぽかったので、土だけ固めればコアを分離できるかと思いまして。」


「なるほど。そんな格好してるから剣士かと思ったけど魔法使いだったんだな。」


「まあ、そんなところですね。」


 冒険者の能力は商売のネタですから、細かいことは言えないんですよ。

 そこはご容赦願いたい。


「ところで本来なら倒した魔物の素材は倒した者に所有権が発生するんだが、相手がスライムだと何も残らないからな‥。

 助けてもらってこんな事を言うのも何なんだが、何も得るものがなくてすまない。」


 とリーダーらしき男が申し訳なさそうに謝ってくる。

 うむ、なかなか律儀な男のようだ。


「困った時はお互い様ですから気にしないでください。

 何処かで誰かが困っていたら、助けてあげてくれれば十分ですよ。」


「そうか・・。さすが王都の周辺の冒険者は人間ができてるな。

 じゃあそうさせてもらうよ。

 そろそろ商隊の人達の支度が整ったようだからこれで失礼するよ。」


「ええ、それでは残りの道中もお気をつけて。」


 と言ってリーダーと握手を交わす。


 リーダーは護衛の冒険者達に号令をかけると、商隊を護衛しつつ颯爽と去って行った。


 うん、護衛慣れしてるって感じでいいね!


 と彼らの後ろ姿を見送る。



「タクさん、お疲れさまでした。

 怪我は無いですか?」


「ああ、大丈夫だよ。皆も怪我は無いかい?」


「はい、女子の皆さんも従魔達も大丈夫です。」


「ならよかった。でもスライムは倒したら溶けて消えてしまうんだね。」


「ですね・・。さっきの人も言ってましたが素材頑張って残らないのでお金にはなりませんね。

 まあ、助けた対価ににお金を求める冒険者もいますが、タクさんはそんなことされないでしょう?」


「ははは、そうだね。大した戦いでもなかったし、みな無事だったからね。

 しかし残ったのは土の塊だけか・・。これって何かに使えないかな?」



「さあ、こんな土を含んだスライムなんて初めて見ましたので・・。

 「目利き」スキルを使えば何かわかりませんか?」



「おお、その手があったね。ちょっと見てみよう。」


 と答えると、僕は「目利き」スキルを発動する。

 すると、


・東の森林地帯の魔力をタップリと吸収した土。

 長期間高い魔力に晒されていたため変質し、魔力の保持性能に優れる。


と表示された。


「どうでしたか?」


「うん、東の森林地帯の土で、魔力の保持性能に優れるらしいよ。

 魔導具の素材にできるかもしれないから持って帰ろうかな。

 まあ、使えなければ捨てればいいし、野営するときの土壁の材料にでもすればいいさ。」


 僕はとりあえずアイテムボックスに土の塊を収納する。


 結局全部で30個近くあったが収納できた。

 結構な数のスライ厶に襲われてたんだね(汗)

 僕たちが通りかからなければ危なかったのではなかろうか?

 少なくとも猫獣人のお姉さんのシャツの裾が溶けただけでは済まなかったのでは?(汗)


「さあ、みんなお待たせ。出発しようか?」


 と皆に声をかける。


 皆の元気な返事を確認すると、僕たちは王都に向かって歩みを再開する。


 もう戦闘は十分だから早く帰ってゆっくりしたいね。(汗)


◇◆


 帰りの道中は平和であった。


 フラグメーカーの楓ちゃんは、「次に余計な事を言ったら猿ぐつわをかける!」と亜季ちゃんとアカネちゃんに脅されて黙らされていたのが功を奏した?らしい。


 何事もなく城門を通過して王都に入ったら、女子高生チームはみな安堵の笑みを浮かべていた。


 やはり気を張っていたのかな?

 無事だったとはいえ、なかなかの強敵との戦闘を繰り返したしね。


 これはアカネちゃんの提案のとおり、道中の警戒監視の負担を軽減する魔導具の開発が必要だ。

 明日は休養日にして魔導具作りに専念しようかな?


 まあでもその前にギルドに寄って素材の売払いと情報収集だね!


◆◇


 冒険者ギルドに到着すると、ちょうど夕方の混み合っている時間だった。


 護衛依頼を終えたと思われる冒険者パーティーや、採取した薬草が入ったカゴを背負った採取専門のソロ冒険者達で溢れている。


「ちょうど混み合っている時間帯に帰って来ちゃいましたね。」


 と亜季ちゃんが呟く。


「商隊の到着時刻と重なってしまったから仕方ないですね。

 まあでも王都のギルドの職員は仕事が早いですから、そんなに待たないでしょう。

 まずは狩りの獲物を売り払いに行きますか?」


 とチャロンが答える。


「そうだね。まずは売り払う物はさっさと売り払っちゃってます身軽になろう。

 それに例のゴブリンの件も報告しないといけないしね。」


 僕達はいつもの買い取り窓口に並ぶ。

 従魔達をモフモフしながら待つことしばらく、


「次の方どうぞ〜。」


 と買い取りブースの奥から声がかかる。


 皆でゾロゾロとブースに入ると、いつものお姉さんがいた。


「こんにちは。買い取りお願いします。」


 と声をかけると


「こんにちは、タクさんとお仲間の皆さん(汗)

 もしかしてまた大量にありますか?(汗)」


 と聞いてくる。

 うん、どうやら慣れてきたようだ。(汗)



「ええ、多分。今日はいろいろありますが、まずは動物の獲物からでいいですか?

 結構な量ですけど。

 あ、でもちょっと控えめに狩りをしてきたので、前回よりは少ないですよ(汗)」


 と一応補足説明しておく(汗)。


 お姉さんの「ええ、そうですか・・。ではこちらの台の上にどうぞ・・。」という返事を確認すると、台の上に獲物をドサッと並べる。


「また今日も大量ですね・・。」


 とお姉さんは呆れ顔である。


「実は今日は大事な報告がありまして。

 また例の特殊なゴブリン達を倒したので、一応持って帰って来ました。」


 と言いながら、黒ゴブリン3匹と、青ゴブリンの一部、電気を帯びていた触手を並べる。


「こ、これは!みなさんが倒されたのですか!?」


「ええ、青いのはレッドウィングに向かう街道沿いで、黒いのはレッドウィングの野営地で倒したのですよ。」


「すごい!青も黒も被害報告があがってきてたんですよ。

 特に青は電撃にやられて担ぎ込まれた冒険者もいたくらいですから。

 討伐時の様子を聞かせて頂いてもいいですか?」


「ええ、もちろんです。ちょっと長くなりますけどね。」


 と言って、青ゴブリンと黒ゴブリンの討伐時の様子を簡単に説明する。


 ついでにギルドのレッドウィング支部職員のモーリスとその手先の冒険者の所業についても報告しておく。


「なんと、そんなことがあったのですか!?

 ギルド職員が大変ご迷惑をおかけいたしました。すみません。」


 と、買い取りカウンターのお姉さんが僕たちに頭を下げる。


「お姉さんが悪いわけではないから謝らなくていいですよ。

 ギルド内部で周知しておいていただければ結構です。」


「わかりました。ギルド職員に周知しておきます。

 ところでこの黒ゴブリンと青ゴブリンの一部も買い取りしてよろしいですか?」


「いいですけどゴブリンなんてお金になりますか?」


「普通のゴブリンなら買い取る価値はないですが、この新種は研究対象として需要があると思われますので、査定のうえ買い取りしますよ。」


「それでは是非買い取りをお願いします。」

 

「魔石はどうしますか?魔石も売っていただければ買い取り価格は高くなりますけど。」


 うーん、魔石か。どうしようかな?

 売ってもいいけど、青ゴブリンも黒ゴブリンも特殊な属性だったから、魔導具の加工に使えそうなんだよね。


 僕は皆に

「ちょっと気になることがあるから魔石は売らずに引き取りでもいいかな?」


 と尋ねると、亜季ちゃんが


「タク先輩が狩ったようなものですから、タク先輩の好きにされてください。」


 と答えてくれる。


 他のメンバーも頷いているので異論はなさそうだ。


「すみませんが魔石は持ち帰りますね。」 


「わかりました。黒ゴブリンはまだ魔石を取り出されていないようですが、ご自分で取り出されますか?

 有料というか買い取り価格から多少手間賃をいただければこちらで取り出して受付カウンターでお渡ししますよ?

 あ、もちろん誤魔化したり他のゴブリンのものと入れ替えたりしないからご安心ください。信用と安心の王都のギルドですから!」


 皆の顔を見渡したら、とても疲れた表情で、魔石の取り出しなんてやりたくない!と顔に書いてある(汗)


 この状況で皆に仕事をふるほど空気の読めない男ではないぞ!


「では、取り出しをお願いします。」


「わかりました!

 買い取り査定と取り出し作業が終わるまでこの札を持ってお待ち下さい。」


 といつもの札を受け取る。


「ありがとうございます。」


「あ、もしかしたらですが、皆さんレベルが上がるかもしれませんよ?」


 と買い取りのお姉さんがこっそり教えてくれる。


 僕も思わず小声で


「え! 僕達はFランクに上がったばかりですよ。」


「そうは言っても、普通のFランク冒険者はたとえ5人でもこんなに獲物を狩れないですし、ましてや最近話題の特殊なゴブリンなんてもってのほかですから。

 Dランク冒険者でも被害にあってますからね。」


「そ、そうなんですね。まあ、期待せずに待ってますよ。」


 と買い取り担当のお姉さんとの話を終えると、皆で受付カウンターに戻る。


 さてさて、査定結果を待ちながら情報収集でもしますかね。


◇◆


 受付カウンターは混み合っているので、他の用事をしつつ呼ばれるのを待つことにする。


「僕は従魔の登録に行って来るから、チャロン達は情報収集しておいてくれるかな?」


 と言い残すと、クロロを腕に乗せて例のカウンターに行く。

 今日もいつものお姉さんであった。

 相変わらず魔物というか仕事に興味がなさそうである。


「すみません。従魔の登録をお願いしたいのですが・・。」


 と声をかける。 


 お姉さんはこっちをちらりと見ると、「またお前かよ」みたいな表情を浮かべつつ、


「今日はどんな魔物を登録するのですか?」と聞いてくる。


 うん、面倒なのはわかるけど、もうちょっと丁寧に対応してくれると嬉しいな(汗)


 これはきっと、「愛想の悪い対応で客を寄せ付けない」作戦に違いない。

 あんまりあからさまだとギルドにおける評価が下がっちゃうよ!

 給料やボーナスを下げられても知らないからね!


「実はこの黒いフクロウなんですけど・・。種族は良く分からないんですよね。

 ただのフクロウじゃない気はするんですが‥」


 と腕に乗って大人しくしているクロロを見せる。


「うーん、そうですね。ただのフクロウなのか魔物なのかはよく分からないですね。

 まあかわいい顔してるし、大人しそうだから問題ないでしょう。

 従魔登録するのでこの子の名前を教えて下さい。

 あとギルドカードをお渡しください。」


 と、相変わらず適当な感じである。

 もうちょっとしっかり確認しなくても大丈夫ですか?


 もしかしたら危険な魔物かもしれませんよ!


「名前はクロロです。あとギルドカードです。」


 と、クロロの名前を教えつつギルドカードを渡す。


 お姉さんは面倒くさそうにカードを受け取り、手元の作業台で機械に通して書き換え作業をすると、「はい、できましたよ。」とギルドカードを返してきた。


 カードには

・従魔:クロロ(フクロウ(黒))


 と記載されていた。


 なんか適当な感じだけどまあいいかな(汗)


「手続きありがとうございました。」


 と言ってカウンターを離れると、次は依頼ボード前で情報収集するチャロン達と合流する。


「なんか情報はあったかい?」


「あ、タクさん。例のゴブリンの情報は特に更新はないですね。」


「まあ、これから情報を整理して更新されるんじゃないかな?」


「だといいですね。緑も手強かったですけど、青とか黒はもっと強かったですからね。

 奴らの特徴を知ってるかそうでないかで遭遇したときの対処が違ってきますからね。」


「そうだね。特に青は手強かったしね。

 あの電撃攻撃を不意打ちでまともに受けてしまったらかなりヤバイと思うよ。」


「ですね。」



 などと話していたら、カウンターから、「番号札◎◎番の方〜」と声がかかる。


「お!僕達の番が来たよ受付に行こう!」


 と皆に声をかけると、受付カウンターに向かう。

 どうやら今日もいつものお姉さんのようだ。


「冒険者タクさんとそのご一行様ですね?またお会いしましたね。

 本日も何件か用件があるのですが、まずは買い取り査定結果からお話しましょう。」


 と言って、査定結果の書かれた紙を見せてくれる。

 

 なんと本日の買い取り価格は800,000エソもあった!


「こんなにたくさんの金額でいいのですか?今回は納入した獲物の量が前回より少なかったですが?」


「ええ、肉の需要は相変わらず高いですし、皆さんが狩った獲物は痛みが少ないというかほぼ無いので、毛皮の価値が高いから買い取り価格も高いのですよ。

 あと内訳としては、獲物の買い取りが500,000エソ、黒ゴブリンと青ゴブリンの一部の買い取りが300,000エソとなっています。」


「ゴブリンの買い取り価格がそんなに高いのですか?」


「ええ、新種と思われるゴブリンの初討伐ですからね。

 研究用の標本として利用できるでしょうからね。

 研究機関や物好きな貴族なんかが買い取ってくれるでしょう。

 あとは初討伐のご祝儀も含めた価格となっていますので、気にせずにお受け取りください。」


「わかりました。そういうことであれば遠慮なく頂いておきますね。」


 と答える。

 女子チームの皆の顔をチラリと見渡すとウンウンと頷いている。

 どうやら異存はないようだ。

 特に亜季ちゃんは『いいからもらっておけ!』といった表情で僕をジト眼で見ている。


 うん亜季ちゃん、分かってますよ・・・。

 稼げる時にしっかり稼ぐのは冒険者の基本ですからね(汗)


「次の用件は、レッドウイングのギルド支部の職員の不始末の件です。

 当方のギルドの職員が大変なご迷惑をおかけしました。

 誤ってすむ話でないのは重々承知していますが、当方からも謝罪させていただきます。

 どうもすみませんでした。」


 と言って、お姉さんが僕達に頭を下げる。


「いえいえ、お姉さんが悪いわけではないので、どうか頭を上げてください。

 多少の時間は取られましたが、結果として実害はなかったので問題はないですよ。

 買い取りブースのお姉さんにもお願いしましたが、ギルド内で周知して頂いて、再発防止に努めていただければそれで結構ですよ。」


 お姉さんは頭を上げると、

「そう言っていただけると誠に助かります。

 本件はギルドマスターにも報告済みですので、今後ギルドを上げて再発防止に努めさせていただきます。

 因みに今回の件では慰謝料として皆様1人あたりに200,000エソをギルドからお支払いしますので、どうぞお受け取りください。」


「え!、慰謝料ですか?」


「当然です。ギルド職員の立場を利用して善良かつ有望な冒険者を騙そうとしたばかりか、その将来を閉ざしてしまうところでしたからね。

 ギルドのけじめとして慰謝料をお支払いすることは当然です。」


「5人分で1,000,000エソになっちゃいますけど、高すぎないですか?」


「いえ、皆様に与えた損害と、ギルドが失うかもしれなかった将来の利益を考えれば安いくらいです。

 なんと言っても皆さんは王都のギルドの有望株ですからね。」


「え、有望株なんですか?」


「もちろんですよ。毎回常識外れの数の獲物を持ち込まれますし、他の冒険者が手を焼いている新種のゴブリンも討伐されていますからね。

 もうそのあたりでウロウロしている冒険者よるよっぽど稼いでいますし、ギルドにも貢献されていますよ。」


「そうなんですか(汗)。もしかして目立ってます?」


「他の冒険者にはバレてませんけど、ギルド内では期待の超新星として認識されていますよ(笑)」


「そうなんですね(汗)。でも目立つのはちょっと困るので、他の冒険者に情報が漏れないようにお願いしますね(汗)。」


「もちろんです。ギルド職員には守秘義務がありますのでご安心ください。

 慰謝料が問題なければ3つ目の用件です。

 例の黒いゴブリンの魔石についてはこれになります。」


 と言いながら、お姉さんが手のひらくらいの大きさの革袋をずいっと差し出してくる。


「かなり大きな魔石でしたね。ちなみの属性は風属性の魔石でした。

 魔道具のいい素材になるので、売れば結構な金額になると思いますよ。

 大切に管理されてくださいね。

 あ、ちなみに魔石の抜き取り費用は差し引き済みです。」


 と教えてくれる。

 

 僕は小声で「ありがとうございます。」と回答する。

 

 誰かが聞き耳を立てているといけないからね!


「それでは最後の用件です。皆さんのレベルの件です。

 本日までの成果を考慮するとEランクへのランクアップが可能ですが、手続きなさいますか?」


「買い取りブースでもちらっと聞きましたが、Eランクへのレベルアップはまだ早くないですか?」


「普通に考えれば早いですが、今までの成果を考慮すれば皆さんは余裕でEランク冒険者への昇格条件を満たしていますよ。

 能力に見合ったランクに上がって頂いてよりレベルの高い仕事をしていただくのは、ここ王都のギルドの方針ですから。」


「わかりました。皆もそれでいいかい?」


 と一応女子チームに確認する。

 皆頷いているので問題はなさそうだ。

 てゆうか亜季ちゃんはニヤニヤしているぞ

 レベルアップがうれしいのかな?


「では手続きを実施するので、皆さんのカードをお願いします。」


 お姉さんは僕達のギルドカードを受け取ると、魔道具でササッと情報を書き換えと、


「はいどうぞ。ランクアップおめでとうございます。」


 と言いながら僕達にギルドカードを返してくれる。


 僕達はEランクにランクアップしたギルドカードを見ながら「おお〜!」と思わず小声で呟いてしまう。

 まあ、ランクというか評価が上がるというのは嬉しいことだよね!


「では本日の用件は以上となります。

 報酬と慰謝料はそれぞれ分けてお支払いでよろしいですか?」


「ええ、それでお願いします。」


 僕達は買い取り報酬と慰謝料の合計で1,800,000エソ、一人あたり360,000エソを受け取ると受付カウンターを離れる。


 慰謝料込みとはいえ、今日も儲かっちゃったね!

 

 意外に冒険者も悪くないかも?


◆◇


 受付カウンターを離れると、


「ようやく買い取り手続きが終わりましたね。」


 と、亜季ちゃんが話しかけてくる。


「そうだね。さすがにいろいろあったから疲れたよ。

 皆も疲れただろうから、今日は早く切り上げて王城にもどろうかな。」


「ですね。でもせっかくですからEランクの依頼ボードを覗いていきませんか?

 明日以降の仕事の段取りの参考になるでしょうから。」


「それもそうだね。」

 

 と答えると、皆でEランク以上の依頼ボードを見に行く。


 ボードにはそれなりの数の依頼が貼ってあったが、そのほとんどは商隊の護衛であった。


 王都のギルドは魔物討伐とかはほとんど無くて、採取と狩猟以外は王都に行き来する商隊の護衛がほとんど、という話は本当らしい。

 

 しかも冒険者の数が少ないのか、依頼は余り気味である。


「たしかEランクだとDランク以上の冒険者と一緒なら護衛依頼を受けることができるんだったっけ?」


 とチャロンに確認する。


「ですね。まさにこれなんてそうですよ。」


 とチャロンが依頼書の一つを指差す。

 

 それには「▲▲行きの商隊の護衛。Dランクは募集終了。Eランク冒険者募集中。残り枠6名。成功報酬100,000エソ/人。食事付、野営2泊、宿1泊の予定。」と簡潔に記載されていた。


「なるほど。こんな感じなんだね。」


「ええ、これを受付に持って行って、条件にマッチすれば依頼受付完了ですね。」


 とチャロンが教えてくれる。


「そうなんだね。じゃあ次の依頼は護衛依頼を受けてみようか?

 何事も経験だしね。それに皆と従魔達の能力を駆使すればなんとかなりそうだしね。」


 と皆に声掛けする。


 皆も「ですね!」「我と力王号マイティの探知能力をもってすれば余裕です。」「私の気配察知能力にお任せください!」とチャロン、亜季ちゃん、アカネちゃんが答える。


「でもきっと、Eランクになったばかりの冒険者が護衛依頼を受けようとしたら、ベテラン冒険者にからまれて難癖つけられるんですよね?

 Eランクになったばかりで調子に乗ってんじゃねえ!とかって言われるんですよ!」


 と、何を思ったか楓ちゃんが真横からいきなりフィニッシュブローのストレートパンチをブチ込んでくる!!

  完全にノーマークだった僕達はノーガードで食らってしまった!(汗)

 

 いかんですよ!ここは冒険者のたまり場、ギルドの中ですよ!

 そんなフラグメイキングなワードをぶちかました日には、イベント発生は不可避ですがな!


 それを聞いた亜季ちゃん達が、「それはフラグ・・!」と楓ちゃんを止めようとした瞬間、それはやって来た。


 いや、奴らはやって来たのだ!

 そう、最も関わりたくない種類の人間であるヤツらだ!


「おうおう!、この前のヒヨッコ冒険者達じゃねーか!

 ここはEランク以上専用の依頼ボードだぞ!

 てめーらのようなヒヨッコが来る場所じゃねーんだよ!

 とっとと失せやがれ!」


 そう、耳障りの悪い下品な声とともに目の前に現れたのは、冒険者活動初日に絡んできた自称1流Dランク冒険者達であった。


 は〜、なんてこったいって感じだね(汗)


 よりによってこの面倒な奴らか(汗)


 疲れたから早く帰りたいんだけどね(汗)


 いったいどうなることやら・・(汗)

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