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第67話 テンプレ展開の捌き方(交渉人風)

いつもご覧頂きありがとうございます。

 まさかのテンプレ展開に驚きつつも、チャロンにこそっと、


「こういう人達はいないんじゃなかったけ?」


 と聞くと、


「どうやらこの辺の冒険者じゃないみたいですね。

 見るからに田舎からやってきましたって感じの格好ですし。

 多分ですが商隊の護衛として地方から出てきた冒険者じゃないかと思います。」


「ああ、そう言えばケン君がそんなこと言ってたね。

 王都に商隊と護衛の冒険者がたくさんやって来ているって。」


「そうですね。きっと護衛の冒険者が不足気味だったので、こんな使えなさそうな冒険者でも仕事を依頼するしかなかったのでしょう。」


「どうするのが得策かな?」


「相手をする必要は全く無いので無視しましょう。

 仮に手を出してきても、見る限りはタクさんと私なら軽く返り討ちにできる感じです。」


「なら無視して先に進もう。」


 と、僕とチャロンの話を聞いていた女子高生3人に無言で頷くと彼女達もわかったとばかりに頷き返してくる。


 僕達は前を向き直すと何事も無かったかの如く受付カウンターに向かって歩みを再開する。


「ちょっと待て!!

 素人がD級冒険者の俺達を無視するとはいい度胸じゃねえか?

 どうやら〆られたいらしいな!

 てめえら一体何者だ!」


 とにじり寄ってくる。

 

 うん、汚いから近寄ってこないで欲しい。

 ここはどうやらガツンと言って分からせる必要があるらしい。


「あー、我々は受付に急ぎの大事な用件があって君達の相手をしている時間はないんだ。

 悪いが早々にお引取り願いたい。

 因みに、他人に名前を尋ねる時は自分から名乗るのが最低限の礼儀だぞ。

 そんな事はこの王都なら子供でも知っていることだ。

 君たちのような振る舞いはいかにも昨日田舎から出てきましたって言っているようなものだから止めたほうがいいぞ。

 周りからは田舎者が頑張ってイキがっているようにしか見えないからな。

 この王都で冒険者として仕事をして行くなら紳士的な態度を取ることをお勧めするよ。

 では失礼。」


 と、チャロンから事前に聞いていた情報を元に、一番先頭にいたリーダーっぽい男に抑揚のない声で冷たく言い放つと、前を向き直して歩みを再開する。


 うん、丁稚級とはいえ、交渉人スキルは役に立ってくれているようだ。


 ちらっと周りを見ると、他の冒険者が皆肩を揺らして、声を押し殺して笑っている。

 どうやら田舎者のくだりがツボにはまったようだ。


「て、てめー!俺たちD級パーティーの『オーガの鉄拳』を舐めやがって!

 俺たちゃ北の大都市センダの冒険者ギルドで1,2を争う1流パーティーだぞ!

 たとえ王都だろうがこの腕でバリバリ仕事してやるんだ!

 ヒヨッコ冒険者が舐めた口聞いてんじゃねえぞ!

 連れの女の前だからと言ってスカしてんじゃねえぞ!」


 と、3流感全開で叫んでくる。

まるで田舎のヤンキーのようだ。


 元の世界なら既に絶滅危惧種だけどね。


 もはやテンプレすぎて乾いた笑いしか出てこないぞ。


 僕は「はぁ〜」とため息をつきながら、


「君たちは本当に1流パーティーなのか?

 だったら聞くが、なぜ我々がヒヨッコ冒険者だとわかったんだ?

 それにD級冒険者ならどうして他の冒険者の仕事を邪魔していいんだ?

 何か正当な根拠や法律はあるのか?

 一流冒険者なら答えられるだろう。

 さあ、我々が納得できる理由を説明したまえ。」


 と、交渉人スキルを発動しながら問い詰める。

 バカを黙らせるには正論で問い詰めていくのが最適である。

 まあ、どうせたいした理由は無いのは分かっているが。


「な、な、何を!生意気言いやがって!

 お前達のようなチビでヒョロはヒヨッコ冒険者に決まってるじゃないか!

 どうせ登録したてのGランクだろうが!

 それに冒険者なら上位ランクの冒険者の言うことは黙って聞くもんだ!

 それが冒険者の流儀ってやつだろう!」


 と、意味不明なことをのたまう・・。

 もう、馬鹿すぎて話にならない。


「はぁ〜、呆れて言葉がないとはこのことだな。時間も無いから手早く教えてやろう。

 まず、我々は冒険者ではない 。ただの一般人だ。

 その証拠に冒険者ギルドが発行するカードを保有していない。

 疑うならそこの受付に確認すればよかろう。

 であるからして、我々は君達の言うことを聞く必要は全くない。

 例え君たちが言う冒険者の流儀が正しいとしてもだ。

 それに流儀とやらはあくまでも慣例であって冒険者ギルドの規則ではないのだろう?

 ならばたとえ冒険者といえども従う必要は無い。

 よって、これ以上正当な理由なく我々の行動を邪魔するのであれば、業務妨害として衛兵などの法執行機関に訴えさせてもらうぞ。

 状況によっては君たちの妨害行為によって生じた経済的損失を冒険者ギルドに請求させてもらう。

 君たちのような冒険者が一般人に迷惑をかけるのは冒険者ギルドの指導不足が原因の一つだからな。

 もしそうなれば君たちは冒険者ギルドから何かしらのペナルティを受けるだろう。

 仕事の受注に制限をかけられるとか、場合によってはランクを下げられるとかの状況もあるかもしれないな。

 よって結論を言うと、君たちの我々に対する行為は君たち自身にとって不利益しかない。

 今すぐに我々への関与を停止することをお勧めする。

 では、失礼する。」


 と、言うと今度こそ用は無いとばかりに前を向いてさっさと歩き始める。


  こんなバカは法や所属する組織(冒険者ギルド)からのペナルティには敏感に反応するはずだ。


 なんと言っても犯罪奴隷の制度や冒険者のランク制度がある世界だからね。

 しかもD級冒険者で田舎から出てきたばかりとあっては、所持金もあまりないだろうから、経済的損失を補償しろとか言われたら躊躇するに違いない。


 自分に社会的及び経済的不利益がある可能性があると分かれば、たとえ見た目がヒヨッコであってもおいそれと手を出せないだろう。


 まあ手を出して来たら盛大に返り討ちにしてやるけどね!


 後ろの方から自称1流冒険者達の「ぐぬぬ〜!」という怨嗟の声が心地よく響く。


 うん、交渉人スキルがいい仕事をしてくれたね!


 丁稚級でこの効果ならレベルアップがとても楽しみだ。


 周囲の冒険者達の視線を浴びつつ、一番左の受付カウンターに向かう。


 確かにカウンターの上に『冒険者登録』と書いてある。


 僕達はカウンターの奥に立つ受付嬢、いや異世界物の小説風にギルドの受付嬢と言うべきか?の前に歩み寄る。


 さっきまでの僕達と自称1流冒険者達とのやり取りを見ていた受付嬢は心なしか緊張しているようだ。


 そりゃ、お揃いの見慣れない服を着たややこしそうな集団が近寄って来たら緊張するよね。


 何を言われるのか予想がつかないだろうしね。


 そんな受付嬢の緊張を解きほぐすかのように、満面の営業スマイルを浮かべた僕は、受付嬢に元気よく申し出る。


「すみませーん!

 僕達みな田舎から出てきたばかりなんですけど、冒険者登録をお願いします!!」


 うん、嘘は言っていない。

 僕達はなんと言っても千葉県の地方都市から召喚されて来たからね。

 しかもまだ10日しか経ってないし。


 チャロンがどこから来たのかはよく知らないが、日本の東京基準で言えばこの世界の街はどこも田舎だろう。


 眼の前の受付嬢が「はい?」と言って固まると同時に、後ろの方で様子を見守っていた冒険者達が盛大にずっこける音がした。


  ◯本新喜劇じゃあるまいし、皆さんリアクションが大げさすぎるぞ?


◇◆


 ギルドの受付嬢はチャロンと変わらないくらいの年齢の少女であったが、受付を任されるだけあって流石の対応だった。


 初めこそ得体の知れない僕達相手に緊張を隠せない様子であったが、淡々と受付手続きを進める。


 冒険者登録には名前と種族だけが申告必須であったがその他の職業などの情報の申告は任意であった。

 これも勇者タケル様の指示らしい。

 必要以上の個人情報を集めるな、とのことである。


 なんでも仮に依頼中に死ぬことがあっても名前と種族が分かれば個人の特定には十分ということらしい。

 確かにそうである。


 僕達のようにどこからやって来たのかを説明しづらい人達にとっては有り難いシステムだ。

 

 受付嬢から皆一緒に注意事項の説明を受ける。


 内容は良くある話であった。

 曰く、

 ・ギルドカードを提示すれば、街の出入りの際に支払う通行税等は免除される。

 ・ランクに応じた仕事を受注できる。ただし、狩猟及び採取等の常設依頼はこの限りではない。

 ・依頼の達成率に応じてランクがアップする。

 ・パーティーを組む場合は、メンバーのうちの最も高いランクがそのパーティーのランクとなる。

 ・E級になると護衛の仕事をD級以上のパーティーの助っ人で受注することができる。

 ・D級以上になると、護衛の仕事を単独で受注できる。

 ・戦争や魔物の大規模な襲来等、非常事態が発生した場合は冒険者ギルドの招集に応じる義務がある。

 ・ランクの詐称は厳禁。もし詐称した場合はランクの降格、冒険者登録の剥奪など重いペナルティが与えられる。

 ・冒険者ギルドのメンバー同士の私闘の厳禁。ただし訓練はこの限りではない。

 

 等々。

 

 なお、冒険者ギルドカードは1種の魔道具となっており、名前、種族、ランクの他、依頼の達成状況やギルドメンバーとしての賞罰を記録できる1種の魔道具になっているとのこと。

 

 これも勇者タケル様が残した魔法の技術らしい。


 淡々と説明を聞いてから、説明を受けた旨のサインと引き換えにギルドカードを渡される。

 ちなみに、皆仲良くGランクからのスタートである。


 ギルトカードを怪しげな魔道具?のような板の上に乗せて、裏面に両手の親指を当てるとギルドカードがキラキラと光る。

 いつもの魔法が発動したときのキラキラエフェクトだね。


 これでギルドカードと個人が紐づけされて、登録完了らしい。


 馬鹿な冒険者に絡まれるトラブルはあったが、概ね順調にギルドカードを入手できた。


「手続き後は以上となりますが、何かご質問はありますか?」


 と受付嬢が聞いてくる。


 僕は少し考えてから、


「ああ、そう言えばさっき自称1流冒険者から上位ランクの冒険者の言う事には従うのが慣例だ、とか言われたのだが、それは何か根拠はあるのかい?」


「いいえ、そのような規則はありませんので無視してもらって結構です。

 ランクとはあくまでも冒険者の実力を示す尺度であって立場の上下ではありませんから命令する権利も従う義務もありません。

 護衛任務や街の魔物の攻撃から街を防衛する任務などに従事する場合は、上位ランクの冒険者が全体を指揮したり統制する場合がありますが、あくまでも仕事中の話ですから、仕事時間外まで従う必要はありません。」


「なるほど。よくわかったよ。」


「しかしながら、たまに訓練名目で新人をいたぶるのが趣味の冒険者がいますので、初めのうちは気をつけてください。特に先程の冒険者なんかはそのタイプと思われます。」


「訓練には参加義務はあるのかい?」


「全くありません。

 訓練をするもしないも各人の自由ですから、必要なければ断わってください。」


「冒険者ギルドのメンバー同士の私闘の厳禁のルールを破った場合の罰則は?」


「冒険者登録を剥奪され、傷害の罪で衛兵に突き出されて逮捕されます。

 被害者側の怪我の程度によっては犯罪奴隷として売りに出されて、その売上金で被害者の経済的損失が補償されます。」


「ありがとう。よくわかったよ。

 これで登録が終わったなら、もう依頼の受注はできるのかな?」


 と、受付嬢に質問する。


「はい。ランクに応じた依頼か、狩猟や採取などの常設依頼なら受注可能です。

 慣れるまでは採取や街の雑用など、簡単な仕事をお勧めします。

 王都の周囲には危険な魔物が少ないとは言っても、たまには危険な動物や魔物と遭遇しますからね。

 決して無理をされませんように。」


「わかりました。気をつけます。

 では早速依頼を探してみます。手続きありがとうございました。」


 と、受付嬢にお礼を言って皆でカウンターを失礼する。


「では早速依頼を確認してみよう!」


 と皆に声をかけて依頼ボードを見に行く。


 ホールの右側が常設依頼とF、Gランク用、左側のボードがEランク以上になっているようだ。


 成る程、これだと低ランクと中ランク以上の冒険者が依頼の確認時に混ざり合ってもめる事が少なくなりそうだ。


 さっきのように絡まれたら面倒だからね。


 僕達の目的である常設依頼を見てみると、各種動物の狩猟依頼が大きく貼ってある。


 ビッグバード、暴れ黒牛、山賊猪の常連3種?に加えて、ノウサギ、ヤマドリ、キジなんかがリストアップされている。

 タヌキ、キツネ、アナグマ、、リスなんかも書いてあるね。

 クマ各種ってのもあるけど、クマがゴロゴロいたら危なくないのか?


 てゆうかクマってそんなに簡単に狩れるのか?

 見つけたら逃げ出すレベルで危険だと思うのだが?


 ちなみにキジの雌は猟ってはいけないらしい。

 元の世界と同じで繁殖に影響のないように種の保存の考えとかがあるのだろうか?

 それとも単に勇者タケル様の言いつけとかかな?


 あとはフワフワウサギは高く買い取ります、と書いてある。

 そう言えば前に狩るのが難しいと言ってたね。


 薬草類は、傷薬の原料のアロエ草、体力回復薬の原料のニンニクなどの定番ものに加えて毒キノコなんかも書いてある。


 毒キノコなんていったい何に使うのだろうか?

 知らない方が良さそうだぞ(汗)


「とりあえずは、常設依頼にトライしてみる感じでいいかな?

 野営訓練が目的だしね。」


「ですね!いろいろと時間がかかっちゃいましたから早く出かけましょう!」


「だね!」「「「ですね!」」」


 と皆でチャロンの呼びかけに答えるとギルドの出口に向かって歩いて行く。


 するとまた前方から声をかけられる。

 どうやらさっきの自称1流冒険者達がまたまた絡んできたようだぞ。


「おい!てめーら! さっきはよくもバカにしてくれたな!

 1流冒険者の俺たちに恥をかかせやがって!

 やっぱりただのヒヨッコだったじゃねえか!

 冒険者に登録したのならちょうどいい。

 俺たちがいっちょ剣術の稽古を付けてやるから、訓練場までそのヒヨッコ面を出しやがれ!」


 と、田舎のヤンキー顔負けの態度でにじりよってくる。

 見た目が汚いから本当にやめて欲しい。


 僕としては出る杭は叩き込んでやってもいいのだが、今日は待ちに待った初めての外出だから、こんなバカ共の相手をしている時間は1秒もない。


 僕は気だるげに田舎ヤンキー?達に向き直ると、


「断る。我々は狩猟と採取をメインにする予定だから剣術の稽古は不要だ。

 仮に剣術を学ぶにしても、我々にも指導者を選ぶ権利はあるからな。

 指導を仰ぐならちゃんとした指導者にお願いするから余計な気遣いは無用だ。

 我々はこれから常設依頼を達成するために出かけるから邪魔しないでくれたまえ。

 では失礼する。」


 と、ズバリと言い放つと踵を返して再び歩き始める。


 すると田舎ヤンキー?達が、

「ま、待ちやがれ!」


 と追いかけてきて掴みかかろうとして来るが、再び向き直って冷淡に告げる。


「おっと、冒険者ギルドメンバー同士の私闘は厳禁だって規則を知らないのか?

 手を出したらその時点で冒険者登録を剥奪されて犯罪者として突き出されてしまうぞ?

 君達はこれから一流冒険者として王都で仕事をしていくんだろう?

 Gランク冒険者に手を出して悦に入るような冒険者は例え腕が立とうが、仕事の契約相手方としては信用されないぞ?

 王都で仕事を得たいなら自分たちの信用を下げるような行動は慎みたまえ。

 なお、今もこれからも我々は君達には用は無いから、我々に話しかけるのは今後一切止めてくれたまえ。

 では今度こそ失礼する。」


 と、一方的に告げると、5人でギルドの入り口に向かってスタコラと歩いて行く。


 後方からは田舎ヤンキー?達の「ぐぬぬ〜!」という怨嗟の声と、僕達の彼らとのやり取りを見ていた他の冒険者達の失笑の声が絶妙なハーモニーで響いてくる。


 ふう、テンプレ展開を実力行使無しで回避できて良かったね。

 今日は交渉人スキル(丁稚級)に感謝だな。


 さあ、いよいよ狩猟と採取の実践だ!

 鍛えたスキルと自作の魔道具の効果を確認しなきゃね!

最後までご覧頂きありがとうございました。


感想など頂けると励みになります。


引き続きよろしくお願いいたします。

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