第48話 キャンプセットの完成
いつもご覧頂きありがとうございます。
調達部の事務所から服飾工房に向かって歩いている。
いろいろあって現在は6名で移動中だ。
ちょっとした集団である。
道中は高校生達は「服の完成が楽しみ!」とか「早く自分の服をオーダーしたい!」だのワイワイ楽しそうである。
やはりオシャレは高校生の楽しみの1つなんだろう。
突然こっちの世界に召喚されて、TVもスマホも無くなって、娯楽が激減しただろうから、食べること意外にはオシャレくらいしか娯楽がないのかもね。
気持ちはよくわかる。
高校生たちの賑やかな会話を聞きながら歩いていたら、大事な事をふと思い出してしまった。
そう言えば、例の魔法使い各種ボーイのマモル君もローブを取りに服飾工房に来るはずだ。
しかも、チーフデザイナーに頼んでいた内緒の服(男の娘セット)も今日できあがる予定である。
もしタイミングが合えば、その場でサプライズでマモル君にプレゼントすることになるだろう。
これは間違いなく服飾工房でのやり取りの時間が長くなってしまう。
これは服飾工房より先に武器工房でクッカーセットとかを受領しておくべきだな。
服飾工房の後では店じまいしている可能性が否定できないぞ。
ここはちょっとだけ予定を微修正しよう。
「みんな、お楽しみのところ申し訳ないけど、先に武器工房に寄ってもいいかな?
注文している品を先に受領しておこうかと思ってね。
そのほうが服飾工房で時間を気にしなくてよいと思うんんだ。」
と高校生達に声をかける。
「わかりました、タク先輩。
確かにこの様子だと服飾工房での調整が長くなりそうですね。
先に武器工房に行きましょう。
さあ、みんなさっさと行くわよ。」
と、亜季ちゃんが高校生チームを代表して答えてくれる。
うん、この中では亜季ちゃんが一番冷静だから助かるね。
◆◇
道中にある武器工房に皆でふらっと立ち寄ると、中で働いているスタッフさん達が皆驚いていた。
そりゃ、勇者が5人とチャロンの6人が突然やってきたらビックリするよね。
「こんにちは。勇者のタクです。武器工房長はいらっしゃいますか?
注文していた品を受け取りに来たのですが。」
と、近くにいたスタッフさんに声をかけると、すぐに武器工房長を呼びに行ってくれた。
お仕事の邪魔してすみませんね・・。
「おう、勇者様とチャロンじゃないか?
例の鍋セットとかを取りにきたのか?
もう出来上がってるぞ。」
と武器工房長が工房の奥から出てきた。
「こんにちは、武器工房長。そのとおり例の品を受領に参りました。
受け取ってもよろしいですか?」
「おう、ちょっと待ってくれ。
おーい、そこのお前達、例の鍋セットとスコップを持ってこい!」
と近くにいたスタッフさんに声をかけると、若手のスタッフさん達がワラワラと奥に消えて、すぐに木箱を抱えて戻ってきた。
「こんな感じだ。デザインのとおりに作ってみたがどうだ?
イメージどおりか?」
「手に取ってもいいですか?」
「もちろんだ。
ちゃんと出来上がりを確認してるから問題ないぞ。」
僕はクッカーセットを手にとって確認する。
鍋もフライパンもコップもフォークもスプーンも問題なさそうだ。
次に折りたたみスコップも手にとって確認する。
うん、日本で市販されているものと遜色ないね。
これなら弾帯で腰に付けておけば直ぐに使えて便利そうだ。
いざとなったらスコップは武器にもなるしね。
異世界でスコップ伝説を作れるかも?
「すばらしいです、武器工房長。イメージどおりの仕上がりですよ!
これなら野営訓練で十分に役立ちそうです。
では5セット受領していきますね。」
「ああいいよ。他に何か必要なものはあるかい?」
「そうですね・・。あ、普通のサイズの鍋があれば2ついただけますか?
野外訓練に行く人数が増えそうなので、まとめて料理できる普通の鍋も持って行こうかと思いまして。
あと、矢が欲しいんですが、矢筒とセットで30本を5人分。
在庫はありますか?」
「矢は大丈夫だ。ストックもあるし、弟子の修行がてら毎日作らせてるからな。
普通の鍋なら在庫があるから持っていってくれ。
旅の人数が多いなら必要だろう。
おーい、矢筒を5セットと普通の鍋を2つ持ってこい!」
と、また若手スタッフさんに指示してくれる。
若手の皆さん、すみません・・・。
「ああ、その鍋と食器のセットとスコップなんだが、騎士団の補給担当者に見せたらとても気に入ってしまってな。
やつらも個人装備用に作って欲しいらしいんだが、作ってもかまわないか?
本来なら著作権がどうたらこうたらの話になるんだが。」
「まあ、お城の騎士団用に作って販売しないのであれば問題ないと思いますよ。
どうぞ作ってあげてください。
お城の皆さんにはいろいろお世話になってますからね。
でも、そのうち旅の商人とか冒険者達にも需要が出てきそうですよね。
騎士団が使ってる鍋とスコップが便利そうだ、っていう話がすぐに広まりそうです。」
「ああ、そうなるだろうな。
なので先に取り決めをしておいたほうがいいと思ってね。」
「そうですね・・。
ああ、こういう時こそ交渉人の出番じゃないか?
ケン君、何かよいアドバイスはないかい?」
と僕はケン君に聞いて見る。
餅は餅屋にまかせろ、だね。
「そうですね。
まず第1にですが、武器工房長のおっしゃるとおり、これは著作権を設定したほうが良いでしょう。
こちらの世界に来てから1週間ほどしか経ってませんが、少なくとも今まで見たことはないですし、この世界の旅にはとても役立ちそうな道具ですから需要は高いでしょうね。
利益の10%が権利の使用料として権利保有者に支払われるようにすればどうですか?
この世界の相場ですね。」
ふむふむ。まあ、毎日商人を相手にしているケン君が言うならそうなんだろう。
まあ、僕も元の世界にあった品物で大きく利益を得るのは忍びないからね。
「第2に、武器工房で製作したものを騎士団や魔法士団が使用する分については権利の使用料を不要としてはどうですか?
そんなに人数もいないから生産数も限られるでしょうし、それに、騎士団や魔法士団が使用すればいい宣伝になりますからね。
使用料の免除は広告料だと思えば問題ないでしょう。」
確かに、そりゃそうだ。
「確かにそうだね。権利の設定とかどうすればいいのかな?」
「そうですね。一番楽なのは商業ギルドに手続きを頼むことですかね。
商業ギルドで著作権登録して、利益の10%を払えば誰でも生産可能としておくと、販売を希望する商会や工房からオファーがあれば商業ギルドが契約をしてくれます。
手数料として1%分は商業ギルドに取られますが、自分で全て管理するより楽ですからね。」
「なるほど、では街に出たら商業ギルドに行ってみるよ。」
「そうですね。
私も商業ギルドの人たちとは少なからず繋がりができましたので、お城のマツドの紹介で来た、と言えば手続きも早いと思いますよ。」
「そうしてみるよ。いい情報をありがとう。」
「うむ、是非そうしてくれ。
武器工房としても製作した鍋セット等を商会に卸すことができれば収入になるからな。
お城も勇者様も儲かるし、お互いいいことしかないからな。
早めに手続きしてくれると助かる。」
「わかりました。近いうちに商業ギルドに行ってみますね。」
唐突に商業ギルドに行く用事ができてしまったが、これもまた経験だろう。
チャロンにもいろいろ支援してもらおう。
鍋セット等についてアレコレ話している間に若手スタッフさん達が追加でオーダーした矢と矢筒を5セットと普通サイズの鍋✕2を持ってきてくれた。
それを有り難く受け取って、今日の武器工房での用事は終了である。
「じゃあ、次は服飾工房に行くかな?」
と、僕達はみんな揃って服飾工房へと移動する。
さあ、ここからが長くなりそうだ・・・。
◇◆
さあ、服飾工房に到着しました。
手短に用事を終えることができるよう努力しよう。
まずは、簡単な用事から・・・。
「こんにちは、チーフデザイナー。注文品の受け取りに来ましたよ。
例のキャンプ用品✕5セットです。」
と、僕は来訪目的を簡潔に告げる。
「あら、勇者さまとチャロンじゃない。
それならもう準備できてるわよ。まずはそれから引き渡すわね。
なにしろ今日はいろいろお楽しみがあるからね〜。」
と、チーフデザイナーがニヤリと笑う。
こ、これは例のサプライズ衣装の件が相当期待大な状況になっているのだろうか?
「じゃあ、まずはキャンプセットから渡すわよ。」
と、チーフデザイナーさんが言うと、スタッフさんが奥の部屋から持ってきてくれる。
それぞれ1セットずつに小分けにし木箱に入れてくれてあった。
ありがたい配慮である。
「出来上がりはどうかしら?イメージどおり?」
「はい、確認しますね。」
と、僕は1セット分の木箱の中身を確認する。
うむ、フィールドコート、バックパック、テント、寝袋、ブランケット、と全部あるね。
それぞれ概ねデザインのとおりだな。
後は使ってみてからだね。
「はい、どれもいい感じでできてますね!これで大丈夫です!
作って頂いたスタッフさんに感謝ですね!
早速近日中に使わせていただきますね!」
とお礼を述べる。
料理道具とキャンプセットが手に入ったので、早く野外訓練に行きたくなってきたぞ!
「それはよかったわ。
うちのお針子スタッフがかなり頑張って作ってくれたから、それを聞いたら彼女達も喜ぶわ。
それと相談なんだけど、騎士団の補給担当者がこのキャンプセットを気に入っちゃって、
騎士団の分も作って欲しいって言ってきたんだけど、作っていいかしら?
服はともかくバックパックやテント、寝袋なんかは権利が発生すると思うのよね?」
「ああ、それでしたら騎士団とか魔法士団の分なら気にしないで結構ですよ。
いつもお世話になってますからね。
先程武器工房でも同じ話をいただいたので、同じように回答しています。
ただ、商人や冒険者にも需要が出てくるかもしれないので、近日中に商業ギルドで著作権の登録をする予定です。」
「ならよかったわ。騎士団の補給担当者もきっと喜ぶわね。
それにうちの工房で作ったものを商会に卸すことができればお城の収入になるから、経理担当も喜ぶわ。
服飾工房のお城への貢献度も上がって給料も増えるかもしれないしね。」
「いいですね。
僕にも収入が入りますので、ぜひたくさん作ってたくさん卸してください。」
と、2人して取らぬ狸の皮算用でニヤニヤしながら話し合う。
おっと、亜季ちゃんがジト目で見ているぞ。
どうやらちょっと悪い顔をしているようだ。
ここは話題を変えてごまかさなくては!
「チャロン、亜季ちゃん、楓ちゃん、アカネちゃんはキャンプセットを1セットずつ持って帰ってね。
近日中に野外訓練に行く予定だからそれを持ってきてね。
あ、あと鍋セットとか矢筒もついでに渡しておくよ。」
と、受領した装備品を女子チームに配る。
女子チームはワイワイ言いながら新装備品を確認している。
やっぱり新しい道具を入手するとワクワクするよね!
さあ、次の仕事だ!サクサク行こう!
「次なんですが、こちらの交渉人のケン君用に服を1着作っていただきたいんです。
デザインはこちらです。」
とケン君用のデザインをチーフデザイナーに手渡す。
「これもまた変わったデザインね。
弓術士の勇者様が着てるような服の上着と、短いエプロンみたいなやつね。
それで、上着の背中とエプロンには模様を入れるのね。
木のイラストかしら?
あと、上着の襟には文字の刺繍かしら?」
「はい。ケン君の名字からとった商会の屋号と紋章みたいなものですかね。
時間がかかりそうですかね?」
「そうね。作るのはそんなに手間じゃないけど、模様の染め抜きと刺繍に時間がかかるから、3日後ってとこかしらね。」
「わかりました。
では3日後の夕方にケン君が受け取りに来ますのでお渡し願います。」
「ああわかったよ。
じゃあ、交渉人の勇者さまの採寸をしますから奥の部屋へどうぞ。」
と、チーフデザイナーはいつも通りにスタッフにケン君の採寸を指示する。
もう流れ作業だな。
さあ、次の仕事だ!どんどん行こう!
最後までご覧頂きありがとうございました。
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