第41話 治癒魔法を学ぶ。
いつもご覧頂きありがとうございます。
チャロンに案内されて、治療院にやってきた。
僕達が住んでいる別館とはお城を挟んで反対側の木々に囲まれた閑静なエリアに建っていた。
そりゃまあ、治療院が騒がしい場所にあると患者さんも落ち着かないよね。
治療院の中に入ると何人かの治癒士さんと思われる人達が怪我人に手をかざしながらブツブツと言っている。
きっと治癒魔法をかけているのだろう。
さっきの格闘戦士ボーイは眼鏡っ娘の治癒士ガールに治療されているようだ。
椅子に座ってるから意識は戻ったのかな?
「あら亜季じゃない?こんなところでどうしたの?
あ、七条先輩と彼女さんも一緒なんだね。」
と、治癒士ガールがほんわかした声で亜季ちゃんに話しかける。
うん、やはり話し方とか雰囲気が癒し系だね。
「タク先輩が治療院を見てみたいって言うから案内してるのよ。
萌がいてちょうどよかったわ。先輩に治癒魔法を使うところを見せてあげてくれる。」
「ええ、もちろんいいわよ。
七条先輩、私は成田 萌です。
ご存知かもしれませんが、スキルは治癒士(見習い)で、今はこの治療院で治癒魔法の勉強中ですね。
あと、この怪我ばっかりして治療院の皆さんに迷惑ばかりかけてるのが同級生の一宮 剛です。
よろろしくお願いします。」
と、自分と治療中で上手く話せないらしい格闘戦士ボーイの分も合わせて自己紹介してくれた。
「僕は七条 拓です。気軽にタクと読んでください。
あと、こちらは僕のお世話係のチャロンさんだよ。
成田さんも一宮君もよろしくね。」
「はい、もちろんです。あと私のことはお2人とも萌と呼んでくださいね。
亜季ばかりがタク先輩方と仲良くしてるので、他の女子は羨ましがってるんですよ。
私も仲良くしてくださいね。」
「もちろんだとも。何と言っても同郷のよしみだからね。
ちなみに一宮君の治療中だったの?」
「はい。このバカなんですけど模擬戦でタックルされた時に口の中をたくさん切ったみたいで痛くて喋れないようなんです。
さっき意識が戻ったので今から怪我の治療をするところです。
まあ、怪我が治るとまたうるさく喋りだすので、このままでもいいんですけどね。」
と、萌ちゃんは格闘戦士ボーイの頭をペチンとはたく。
格闘戦士ボーイは口の中の怪我を刺激されたらしく、モゴモゴ言いながら悶絶している。
まあ、普段のキャラクターがなんとなく察しがつくね・・。
「治癒魔法ってざっくり言うとどんな感じなの?」
「人によって使える種類と魔法のレベルには差があるんですけど、私の場合は「治療」「治癒」「解毒」の3つですね。」
と、それぞれの違いについても教えてくれた。
ざっくり言うと次のとおりらしい。
・治療:怪我や外傷を治したり、精神的ダメージやトラウマを癒す。
外部からのダメージを癒す魔法。
ちなみに欠損部分の修復はできない。
・治癒:病気などの体の内部の異常を癒す。
風邪などの感染症や腫瘍の除去など。
ちなみに老化からくる身体の機能低下は回復できない。
・解毒:体内に取り込んでしまった毒を無効化する。
毒を持つ魔物や蛇とかに咬まれるとか、
毒を飲まされた場合の治療。
身近なところでは二日酔いの治療とか。
うん、どれもテンプレっぽいけど、きっと医療の発達していないであろうこの世界では治癒魔法使いはかなり貴重なんだろうな。
「ありがとう。よくわかったよ。
ちなみに魔法発動時のコツとかってあるの?」
「こちらの世界の人は長い詠唱文を唱えるのですが、私はイメージを魔力に乗せてそのまま患者さんに流し込む感じですね。
元の世界の生物の授業とかでいろいろ習ったじゃないですか。
例えば止血する場合は血小板が集まってきて、とか。
怪我の治療は傷ついた細胞を修復して、修復した細胞と細胞を繋ぎ合わせるイメージですね。
ちょっとこのバカを使って試してみましょう。」
と言って、まずは止血から試してくれた。
魔法の発動自体は他の魔法と変わらないみたいだね。
萌ちゃんが治療の魔法を軽くかけると、どうやら口の中の血は止まったようだ。
萌ちゃんが格闘戦士ボーイに確認すると、ウンウンと頷いている。
「続いて口の中の怪我も治してみましょう。
本当なら放置したいんですけど、タク先輩が見てるから特別にサービスです。」
と言って、治療の魔法を軽くかけると、今度は口の中の傷も治ったようだ。
萌ちゃんが再度確認すると、格闘戦士ボーイは、
「ふう、ようやく傷が塞がって喋れるようになったぜ。
サンキュー、萌。
あ、あとタク先輩よろしくっす。
おれのことはゴウと気軽に呼んでください。」
「よろしくね、ゴウ君。怪我が治ってよかったね。」
「マジっすね。
萌が治してくれるんでいくらでもけができるっす・・、イテテ!」
「バカ言ってるんじゃないわよ!治癒魔法は疲れるんだから手間かけさせないでよね。
私はあんたみたいなバカのお世話係じゃないんだからね!」
と言って、萌ちゃんはゴウ君の頭を叩いていた。
萌ちゃんも結構怖いね(汗)
怒らせないように気をつけよう。
「本当にそうよね。
ちなみにあんたを気絶させたでかい騎士はタク先輩がきっちりシメてくれたから。
楽勝でね。あんたもまだまだ修行が必要ね。」
と亜季ちゃんが補足する。
そんなに煽らなくてもいいのに。
「マジっすか?タク先輩?
あんなでかい奴をどうやって?
パナイっすね!」
「まあ、こっちを舐めて絡んできたからちょっと転がしてやっただけさ。
ほとんど自分の体重の勢いだけで自滅してたよ。
それよりもゴウ君は怪我に気をつけてね。
これ以上怪我すると萌ちゃんが治療してくれないかもしれないよ?」
「そ、そうっすね。気をつけます(汗)」
まあ、ゴウ君が無事なようで何よりである。
これで一安心だね。
「それはそうと、やはり治癒魔法は魔力の消費が激しいのかい?」
「そうですね。1日に10人も治療すれば魔力の消耗を感じますね。
患者さんの怪我の程度にもよりますけど。
あとレベルがあがると魔力が上がるらしいですけど、レベルをあげるには・・・。」
と、萌ちゃんが何かゴニョゴニョ言い出しそうだぞ。
また話が変な方向に行くといけないから軌道修正しよう。
「治癒と解毒も同じような感じなの?」
「はい。治癒は体内の細菌や悪い細胞を死滅させるイメージですね。
白血球ガンバレ的なイメージでOKです。
解毒は毒の成分を分解させるイメージですかね。
毒の分子構成をバラバラにするというか、原子レベルまで分解するイメージを魔力に乗せて流し込む感じですね。」
「なるほど。
元の世界のイメージが役にたってる感じだね。」
「はい。ちょうどそれぞれ患者さんが待ってるので見学されますか?」
「本当?いいのかい?是非お願いするよ。」
「もちろんです。
じゃあ、こちらの治療室へどうぞ。」
と、別の部屋に案内してもらって、そこで見学させてもらった。
風邪を引いてしまったメイドさんと、毒を持つ虫に刺されてしまった庭師さんだった。
城内のスタッフさんは治療院で無料で治療が受けられるらしい。
これだけでもかなりの厚待遇だそうだ。
それぞれに治癒魔法をかける様子を見学させてもらう。
なるほど確かに詠唱は無しで、イメージを固めてから魔力を注入する感じだね。
患者さんは2人とも具合がよくなったらしく、丁寧にお礼を述べて帰っていった。
「おお、治癒魔法すごいね!
初めて見たけど本当に病気とか怪我が治るんだね。
異世界物の小説では定番だけど、実際に見てみると効果の凄さを感じるね。」
「はい。でも治癒魔術の使い手はかなり少ないので、治癒魔法の恩恵を受けることができる人は限られているらしいですよ。
それに民間の治療院で治癒魔法を受けるにはお金もそこそこ必要みたいなので、一般の方々には治癒魔法ではなく、薬草を使った治療が主流みたいですね。」
ふむ。この世界でも医療費は高いということか。
まあ、健康保険制度とか無さそうだからな。
「そうなんだ。
じゃあ萌ちゃんの治療を惜しげもなく受けることができるゴウ君はラッキーだね。」
「そうなんですよ。このバカは私のありがたみを判ってませんね。
近所の幼馴染みだからと言って甘え過ぎです。
今日からは厳しく対応します。」
なんと、どうやら二人は旧知の仲のようだ。
どうりで親しげではあるが・・・、萌ちゃんには恋愛感情はなさそうだな。
ゴウ君はどう思っているか知らないが。
「ははは。
でも今日は貴重な治癒魔法を見せてくれてありがとう、萌ちゃん。
とても勉強になったよ。
また機会があったらら見せてもらってもいいかな?」
「はい!もちろんです!
あと、私もタク先輩にお願いがあるんですが・・・。」
「何だい?僕にできることなら全然OKだよ?」
「はい、実は・・・。
私にも亜季のような治癒士っぽい衣装をデザインしていただけませんか?
何時までも学校の制服を着ているのもあれですので・・・。
こっちの世界の治療スタッフさんの服も悪くはないんですが、あまり個性がなくて・・。
いかにも治癒士って感じの服が欲しいんですよ。」
確かに、この治療院のスタッフさんの服は個性がすくないな。
というか、僕ももらって着ている騎士団の人達が鎧下の上下と同じだよね。
「うん、もちろんOKさ。
ただ、治癒士っぽいと言われてもねぇ・・。」
うん、さっぱりわからん。
「元の世界の看護士さんの制服とかはどう?
あれなら色々とイメージしやすいんだけどね。」
「ダメよ、萌。
タク先輩にナース服なんてデザインさせたら、大変なことになるわよ。
きっとナース服(夜用)を着させて自分の部屋に連れ込んで、口に出せないようないかがわしい治療をしたりさせたりするつもりよ。
それでなくても今日はメイド服(夜用)をデザインして盛り上がってたんだから。
既に前科1犯よ。」
ぐふう!、なんと言う的確な指摘!
確かに、超ミニスカムッチリナース服を着て、ナースキャップをアミダに被ったイケない看護士さんに、病室のベッドの上でとってもよく効くお注射をするところを・・・、妄想していたとは言えない!
言えるわけがない!
一緒に過ごす時間が多くなって、亜季ちゃんも僕の趣味がだんだん解ってきたのだろうか?
「ははは、そんなことしたりさせたりするわけないじゃないか(萌ちゃんには)。
人聞き悪いなぁ、もう。
純粋に萌ちゃんの好みを確認しただけだよ。」
うん、嘘ではない。
ミニスカナース服はいつかチャロンに着てもらおう。
ケモミミ彼女と楽しむお医者さんごっこもきっと熱い!
「ふん、どうだか?」
と、亜季ちゃんにジト目攻撃される。
最近、本当に僕に厳しいよね?
「ナース服は好きなんですよ。
元々看護士になるのが夢でしたので。
ただ、この世界ではあの服だと汚れるというか、屋外に適していないと思うので、何か良いデザインはないものかと・・。」
と、萌ちゃんが助け船を出してくれる。
うん、いい娘だ。
君ならきっと天使になれるよ!
「そうだね~。じゃあ、よくあるゲームの白魔導士の衣装はどう?
上着はプルオーバーの細身のローブで、下はパンツスタイルかロングスカートで。
丸いツバの立った帽子も被せて・・・、と西洋の僧侶風で。
色は汚れを考慮すると、亜季ちゃんと同じ緑ベースでどうかな・・。」
と、サラサラっとデザインを紙に書く。
ちなみに紙は治療院の事務室で分けてもらってきた。
もちろん、萌ちゃんをイメージして描いたのでイラストに描かれた女の子はちゃんと眼鏡をかけている。
眼鏡っ娘の白ならぬ緑魔導士、なかなかいいね!
「これでどうかな?萌ちゃん。
ローブの下は好みに合わせて選んでもらってもいいけど、
僕はロングスカートのほうが萌ちゃんのイメージに合うと思うよ。」
「ありがとうございます!素敵ですね!
こんな感じでパッと見て治癒士ってわかる服が欲しかったんです。
どうすれば作ってもらえるんですか?」
「うん、このデザインを持って服飾工房に行けば採寸して製作までしてくれるよ。
靴は防具工房ね。
もう夕方近いから、帰りに服飾工房に寄りながらオーダーして行くかい?」
「はい!是非お願いします。」
「チャロンと亜季ちゃんもいいかな?」
「はい!もちろんです!」
「萌のためなら問題ないですよ。」
と、他の2人からもOKが出た。
今日はやたらと服飾工房に行くなぁ。
3回目じゃないか?
もうこんな事なら召喚勇者全員まとめてデザインしたほうが効率的だったな?
楓ちゃんのテイマー服もデザインしないといけないし、まだ話していないメンバーもいるしね。
ゴウ君の分もついでにデザインしておこう。
「ゴウ君も専用の服が必要かい?」
「俺っすか?なんか強そうなやつがいいっす。
一応格闘戦士なんで、動きやすくて強そうな感じでお願いします。」
ふむ、格闘する強そうな人・・・といえば、世紀末のヒーローなあの有名キャラしか思いつかないな・・。
あんな感じでいいかな。
ゴウ君の事だからどうせ格闘訓練ですぐに痛んでしまうから適当にデザインしよう。
袖のないGジャンっぽい上着とノースリーブのTシャツ、下はGパン風でいいでしょう。
色は紺色で、Tシャツは赤で。
靴は戦闘服のブーツと同じでいいだろう。
「こんな感じでどうかな?
動きやすくて強そうなのは間違いない。」
「あ、かっこいいっす!これでいいっす!」
「うん、じゃあOKだね。
さあ、皆で服飾工房に寄りながら別館にもどろうか?」
「「「はい。」」」
「うっす。」
1人だけ暑苦しい返事が気になったが、まあ良しとしよう・・・。
やっぱり一緒に行動するのは女子だけでいいな。
特に体育会系男子はちょっと苦手だ・・。
その後、皆で服飾工房に寄って萌ちゃんとゴウ君の服をそれぞれオーダーしたが、これまた斬新なデザインという事でチーフデザイナーに気に入ってもらえた。
仕事が立て込んでいるので(原因は主に僕のオーダーが多すぎるため・・)、出来上がったら萌ちゃんとゴウ君に連絡してくれるそうだ。
まあ、この2人はいつも同じ場所にいるから連絡も問題なく届くだろう。
僕のようにあちこちにウロウロしてないだろうからね。
なんか服飾工房の常連客を通り越して専属のデザイン担当スタッフになってきた気がするよ。
もうこれは「お手伝い」の範疇を越えてないかい?
最後までご覧頂きありがとうございました。
感想など頂けると幸いです。
引き続きよろしくお願いいたします。




