第31話 魔道具作りに初挑戦!
いつもご覧頂きありがとうございます。
3人で服飾工房に到着すると、既に楓ちゃんが待っていた。
「楓ちゃんはもう来てたんだね?遅くなってごめんね。待たせちゃったかい?」
「いいえ。私もさっき着いたところですよ!
でも戦闘服のオーダーが楽しみだったので、テイムの訓練とお馬さんのお世話が終わったらすぐに来ちゃいました!」
と元気よく答えてくれた。
やはり住む世界がかわっても女子は服飾には興味があるんだね。
「じゃあ、早速工房に入ろう。」
と皆で服飾工房にお邪魔する。
「チーフデザイナーお邪魔します。
今朝お願いした戦闘服を受領に伺いました。もうできてますか?
あと、こちらの楓ちゃんも戦闘服が欲しいらしくて、追加でお願いできますか?」
「ええ、朝の分はもうできてるわよ。うちの工房の新人チームが頑張って仕上げてくれたわ。
彼女達にもよい刺激になってるみたいね。
あと、追加も大歓迎よ。
なんか他のスタッフも新しい服を作りたがってるのでちょうどよかったわ。
あちらの採寸部屋で採寸してもらって。
ついでにそちらの弓術士の勇者様の分も奥で試着してみたら?
うちのスタッフ達も勇者様が実際に着ている姿を見たがってたから。
防具工房に頼んであった靴とかベルトはこっちで預かってるわよ。」
「「はい、ぜひお願いします。」」
と亜季ちゃんと楓ちゃんが奥の採寸部屋に消えていった。
興味があることには反応が早いね。
「あと、朝の内緒のオーダーの件は明日の夕方には仕上がりそうだから、今日の戦闘服の追加オーダーと一緒に取りにきてくれるかしら?」
「はい、わかりました。無理を言ってすみません。」
「いいのよ、さっきも言ったけど未知のデザインだから作るのも楽しいのよ。
それにチャロン用の服はなんとも言えない可愛らしさがあるしね。
デザイナーの強い思いを感じるわ。」
「はい、100%僕の趣味です。こだわりしかありません。」
「あらあら。勇者様にそんなにこだわってもらえるチャロンは幸せね。」
「はい・・。幸せです・・。」
と、チャロンが真っ赤に照れてしたを向く。
ここは更に弄られる予感しかしない。話をそらさねば(汗)
「あ、それとなんですが、戦闘服と同じ素材の生地を少しいただけませんか?
裁縫の練習がてらちょっと作ってみたいものがあるんです。」
「いいわよ、好きなだけ持っていってちょうだい。
何か面白いデザインなら見せてちょうだいね。」
「ええ、もちろんです。」
と、お願いがてら雑談していたら、亜季ちゃん達が帰ってきた。
亜季ちゃんは出来立ての戦闘服を着て嬉しそうだ。
うん、いいね!
美少女に戦闘服、最高の組み合わせです。
ミリオタとしては心が燃えます、萌えます。
「あら、いいじゃない!
なんか女の子らしい体のラインを見せつつも逞しく見えるデザインだわ。
お城の女性スタッフにも着せたいわね。」
とチーフデザイナーも喜んでいる。
亜季ちゃんもチャロンほどではないが、それなりにメリハリボディーだしね。
あまりガン見すると怒られそうだが・・。
「うん、よく似合ってるよ、亜季ちゃん!
その格好で弓をバシバシ使ってたら、きっと歴戦の戦士のように見えるよ。」
「そんなに誉められると恥ずかしいですけど・・。
とても動き易いので野外で行動する時はこの服がいいですね。
足元もしっかりしてますし。
チーフデザイナーと工房の皆様、どうもありがとうございました。」
と、亜季ちゃんも喜んでくれて何よりだ。
「私も楽しみです!」
と、楓ちゃんもテンションがあがっている。
「ではまた明日の夕方にまた伺います。」
と皆でお礼を言って服飾工房をお暇した。
ついでに防具工房によって、楓ちゃんのコンバットブーツ、弾帯ぽい革ベルト、ポーチをオーダーしてから帰る。
ブーツ等も明日の夕方にできあがるそうだ。
「楓ちゃんの戦闘服は明日の夕方にできあがるみたいだからまた皆で取りにこようね。」
「はい、楽しみです。亜季ちゃんみたいにかっこよく着こなせるといいな。」
「きっと似合うさ。」
やはり女子はおしゃれ好きだから服の話しは盛り上がるよね。
この後は皆で別館に戻って部屋に荷物を置いてから4人で夕食を食べた。
男子チームには楓ちゃんも僕たちに加わっているのが驚きだったようだ。
ヒソヒソと何か言っている。
楓ちゃん狙いのボーイがいるのかな?
ちなみに僕は楓ちゃんを狙ってないから安心してほしい。
本日の夕食のメインはビッグバードの唐揚げでした。
ちなみに、本日の昼食であんなにたくさん肉を食べたにもかかわらず、女子3名はバクバク食べてました。
さすがに育ち盛りの女子達である。
「私もたくさん食べてチャロンさんのようなメリハリボディーに・・」
と楓ちゃんがよく分からないことを呟いていたが、只の食べすぎではお腹にしかハリが出ないから気を付けようね。
チャロンはともかく亜季ちゃんと楓ちゃんも肉食系女子なの?と突っ込みたくなる食べっぷりでした。
きっとチャロンもたくさん食べて元気復活だから、今夜のサービスも激しくなる予感・・。
◇◆
夕食後にチャロンに魔道具の件で質問してみた。
「そういえば、チャロンが最初に生活魔法を教えてくれた時に小さな杖を持っていたけど、あれも魔道具の一種なの?」
「うーん、あれはどちらかというと魔法の発動を補助するもので、特定の魔法が付与されているわけではないので、魔道具ではないですね。
でも、素材は黒樫でできているのですが、黒樫は魔力を溜めやすい性質を持っているので、魔道具の素材として使用されることもありますよ。」
「魔力を溜める?」
「はい、黒樫は魔力との相性がよく、空気中に漂っている魔力を吸収して溜め込む性質があるんです。
黒樫製の杖を使うと魔法発動時の魔力消費を補助してくれるので魔術士自身が持つ魔力消費が減るんです。
なので大体の魔術士は何かしらの杖なり発動を補助する道具を持ってますよ。
むしろ何も持たずに魔法を発動できるタクさんが少しおかしいです。」
「え、そうなの?生活魔法の発動時にまったく違和感なかったけど。」
「それだけ保有している魔力量が多いのでしょうね。
もしかして、今日の魔道具工房で学んだことのお試しですか?」
「そうなんだよ。僕はレン君と違って多少の魔法を使えるから、付与魔法で生活魔法を道具に直接付与できるんじゃないかと思ってね。」
「そうですね。その前にスキルの確認をしてはいかがですか?
付与魔法スキルが取れてるかどうかが確認できますよ。」
「それもそうだね。では「ステータス」」
と、僕はステータスの確認を発動する。
するといつもの文字盤が浮かんでくる。何度見ても不思議だよね。
ふむふむ、レベルには変化はないけど、サブスキルはいろいろ増えているようだ。
(サブスキル)
・【鑑定系】:「目利き」
・【生活魔法系】:「点火」「点灯」「洗浄」「放水」「乾燥」「汚れ除去」「吹き付け」
「吸引」「氷結」「氷粒」「土台」「石粒」「空気研磨」
・【弓術系】:「弓術(上級)」「魔力誘導(中級)」「測距(中級)」(←UP)
「照準補正(中級)」(←UP)
・【テイマー系】:「テイマー(初級)」(←New)「生き物係(高学年)」(←UP)
・【料理系】:「解体(小型)」「焼き加減」
・【剣士系】:「片手剣士(初級)」、「侍(初級)」
・【生産系】:「デザイナー(中級)」(←UP)「型取士(初級)」「お針子(初級)」
「革細工(初級)」「武器作成(各種)(見習い)」(←New)
・【錬金術系】:「物体作成(見習い)」「物質生成(見習い)」
「薬品作成(見習い)」「付与魔法(見習い)」(←All New)
うん、今日の訓練に関係するスキルはちゃんと習得できているようだ。
弓術系のサブスキルはやっぱりレベルアップしていたね。
「測距」と「照準補正」がそれぞれ中級になってる。
錬金術系スキルも見習いだけどちゃんと取れてるね。
テイマー(初級)も取れてたね。お馬さんと仲良くなれたのがスキル取得に繋がったようだ。
これで旅のお供にモフモフを加えることができるかも!
どんなモフモフと出会えるのか今から楽しみだ。
できれば狼とか犬とかの忠誠心の高い動物がいいのだが。
それよりも今は魔道具だな。
「うん、「付与魔法(見習い)」を取れているよ。魔道具作りができるかも。
黒樫の枝とかって貰えるのかな?」
「あまり大きな塊は難しいですけど、端材なら少しくらいなら分けてくれますよ。
あと、杖の先端は魔力を流しやすい金属で被うとより発動効率があがります。
普段使いなら銅とか真鍮で十分ですね。
まだ工房にスタッフがいると思いますので、もらいにいきませんか?」
「そうだね、ささっと行ってもらってこよう。」
◆◇
魔道具工房に2人で訪れると、まだ工房内は結構な数のスタッフが作業をしていた。
チャロンに聞いてみると、夕方までは与えられた仕事をして、夕食後は自分のスキルアップや研究のために工房を使っていいらしい。
魔道具工房で働く人たちは基本的にもの作りが好きな人が多いので、皆さんあれこれやっているようだ。
さすがは城勤めに雇用されるだけあって、モチベーションが高いのかもしれないね。
その辺にいた若いスタッフに声をかけて、黒樫の棒の切れ端を20本くらい(長さは1mから10cmまでいろいろ)と真鍮や銅や鉄の薄い板を分けてもらうことができた。
一応、必要理由を聞かれたが、生活魔法用の杖を作ってみたい、と言うと何も言わずに納得してくれた。
きっとチャロン用の杖を作ると思ってくれたんだろう。
誰も僕が生活魔法を使えるとは思ってないだろうしね。
なんと言っても公式にはただの「お手伝い」だからね。
◇◆
部屋に戻ってきて早速魔道具作りに取りかかる。
初めての魔道具は「点火」と「点灯」にしてみよう。
きっと旅の途中の夜営では最も必要になるだろうからね。
まずは「点火」から。
長さ15cm、直径1cmくらいの黒樫の棒を選んで、今日もらったナイフで表面のでこぼこを均すように削りとる。
それができたら先端を鉛筆削りの要領で2cmほど円錐状に削ってとがらせる。
ここでようやく新しいスキルの発動だ。
真鍮の薄い板を手にもって、さっき削った黒樫の先端にぴったり被さる円錐状のキャップを作るイメージを頭の中に描く。
そして、「物体作成」、と唱える。
すると、手に持った真鍮の薄い板の一部がなくなり、その代わりに鉛筆のキャップのような物体ができあがっていた。
うん、まさに鉛筆キャップだね。
できあがったキャップを黒樫の棒の先端に押し込むように被せる。
若干サイズがきつかったので黒樫の棒を少しけずりながら押し込んだらぴったり被さった。
うん、これで第1段階の終了だね。
次に黒樫の棒を手に持って、「点火」の魔法を付与するイメージを頭に描く。
さっき被せたキャップの先端からライターの火が出るイメージを描いたまま、「付与魔法」と呟いて、付与魔法を発動しつつ手のひらに魔力を流す。
すると、黒樫の棒が一瞬だけキラキラと輝いたかと思うと元に戻った。
これだと成功したかどうかわからないな。
「うまく行きましたか?」
とチャロンに聞かれたので、
「多分大丈夫だと思うけど、見た目ではわからないから、「目利き」で調べてみるね。」
と言って、久しぶりにサブスキルの「目利き」を発動する。
すると、
・「点火」の魔道具:魔力を流すと「点火」の魔法が発動する。
繰り返し使用可能。
と表示される。
おお!どうやら成功したようだ!
「うん、ちゃんとできたみたいだよ。」
「すごいですね!試してみていいですか?」
「もちろん。魔力を流すと「点火」が発動するみたいだよ。」
「ではやってみます。」
チャロンは僕から出来立ての点火の魔道具を受けとると、先端を何もない方に向けて魔力を流してみる。
すると、魔道具の先端からちゃんとライターのような火が出た!
「おお!成功だね!」
「はい!通常の「点火」の魔法と遜色ないですね。これはすごいですよ。
生活魔法が使用できない人には必須の道具かもしれません。
街で販売すれば売れると思いますよ。」
「こんなシンプルな道具でも。?」
「はい、魔法が使えない人は着火するのに火打ち石を使ったりするしかないですから。
特に家事に忙しい女性には需要があると思いますよ。」
「なるほど。じゃあ、亜季ちゃんも欲しがるかな?」
「ええ、きっと。でも今はこれをタクさんが作ったって言えないですよね?」
「そこが問題なんだよね。まあ、それは後で考えよう。とりあえずは魔道具をいろいろ作ってみよう。
亜季ちゃんにわたすかどうかはその後で考えても遅くはないしね。」
と言って、次の作業にとりかかる。
次は長さ10cmくらいの黒樫の棒を同じように削って、同じようにキャップを被せる。
そしてまた同じように今度は「点灯」の魔法を付与魔法で黒樫の棒に付与する。
「目利き」スキルで確認してみると、
・「点灯」の魔道具:魔力を流すと「点灯」の魔法が発動する。
繰り返し使用可能。
「うん、これも大丈夫みたいだ、ちゃんと魔道具になってるみたいだよ。
これも試してみてくれる?」
「はい、わかりました。」
と、チャロンが「点灯」の魔道具に魔力を流す。
すると、魔道具の先端が発光を始めた。普通の発光の魔法と同じくらいの明るさである。
夜営時にテントの周辺にいくつか設置したくなる明るさである。
「このまま、黒樫の棒の中の魔力だけでどれくらい発光が続くか試してみよう。」
と言って、机の上のガラスの小さな花瓶にさして放置しておく。
ちなみに、この世界の時間と暦は何故か元の世界と同じなので、元の世界から着用している腕時計はそのまま使えている。
時差の分だけ時刻を手動で調整はしたが。
「もう1つ試してみたいことがあるんだけど、今日もらった弓の材質って何かわかるかい?」
「弓の素材も黒樫ですよ。というか、道具に使われる素材はほとんど黒樫ですね。
魔力との相性もよく、強度もあって、たくさん森で生えているので入手もしやすい、と3拍子そろっているんですよ。」
「ということは、今日もらった弓にも魔法が付与できる可能性はあるね。」
「何の魔法を付与するんですか?」
「魔法というよりはスキルなんだけどね。「測距」と「照準補正」を弓に付与できないかと思ってね。」
「タクさんは既にそのスキルを取得済みでは?」
「僕の弓にというよりは、チャロンの弓に付与できれば、と思ってね。
ちょっと試してみたいアイデアがあるんで、まずは僕の弓でやってみようと思うんだよ。
透明なガラスがあれば素材として使用したいんだけどあるかな?
割れたグラスとかで十分なんだけど」
「あ、多分ありますよ。ちょっと待っててくださいね。洗い場に行って探してきます。」
というとチャロンは部屋を出ていった。
「今のうちにパーツを作ってしまおう。」
というと、僕は机の上にあったメモ用紙に作りたいパーツのイメージを書く。
ざっくりいうとL字型の金物かな。
L字の長い方が長さ6cm×高さ4cm、短いほうが長さ4cm×高さ4cm、厚みはちょっと丈夫に3mmにしよう。
短い方には中心に3cm×3cmの四角い穴をあける。
ここに、チャロンが持ってきてくれるであろうガラスを加工してはめ込む予定。
次に長さ2cm、太さ1mmの細い板が十字に直角に交差した金物の図を書く。
これはガラスの中央に埋め込む用の部品だね。
何を作るかというと、簡易的な照準窓かな。
元の世界でいうところの、アサルトライフルに取り付けるドットサイトのようなものを作りたいんだよね。
L字型の長い方の辺には直径3mmの穴を4箇所あける。正方形の各頂点に配置するような感じで。
金物の固定用のビス穴だね。
当然ビスもないので直径2.5mm、頭の直径5mm、長さ20mmのビスの図を書く。
ビスの頭はマイナスにする。
当然ドライバーもないので、短めのマイナスドライバーの芯の部分の図を書く。
持ち手は黒樫の木で作ろう。
真鍮の板を「物体作成」の魔法で加工する。
この時、図面を見ながら魔法を発動したらイメージどおりの部品ができた。
次に真鍮でビスを同じように作る。まあまあうまくできた。
最後に鉄の板を「物体作成」で加工してドライバーの芯を作る。
もらってきた黒樫の短い棒の中心に直径6mm、長さ3cmくらいの穴をあける。
駄目もとで「物体作成」で加工してみたらうまくいった。
「物体作成」便利だな。加工の手間が全く必要ないじゃないか?
「ただいま戻りました。ちょうどよさそうなのをいくつかもらってきましたよ。」
と、ちょうどチャロンが帰ってきた。
手にもつカゴの中にはガラス瓶とかガラス板の破片のようなものがいくつか入っていた。
これだけあれば十分だろう。
「ありがとう、ちょうど準備が終わったところだよ。
ガラスもこれだけあれば十分かな。」
ぼくは早速透明なガラスの破片をいくつか手にとって、そのうえにL字型の金物の短辺と十字の金物をのせる。
「このL字型の金物の開口部に厚さ5mmの平らなガラス板をぴったりはめる。
ガラス窓の中央に十字の金物を直角に埋めこむ。」
というイメージを強く持って「物体作成」を発動する。
するとイメージどおりにガラスがぴったりとl字金物の開口部に隙間なくはまった。
また、ガラスの中央には十字の金物がぴったりと収まっている。
これは簡易照準器と呼ぼう。
「うん、いいね。あとは取り付けと魔法付与だね。」
というと、僕は簡易照準器を自分の弓の持ち手部分の10cmくらい上部、ちょうど矢をつがえる部分の3cmくらい上部に簡易照準器の下端がくるように直角に弓に当てると、さっき作ったドライバーを使って、真鍮のビスをねじ込んで固定する。
最後にビスの上に黒樫の切れ端を置いて、その上から手を当てて、
「ビスと弓本体の隙間を黒樫の繊維で充填して完全に固定する。」
とイメージしながら「物体作成」を発動する。
キラキラのエフェクトがかかったので、きっと上手くいったと信じておこう。
「次は付与魔法だ。」
ここで僕は、魔法発動の条件をイメージしながら付与魔法を発動する。
・弓に付与するスキルは「測距」と「照準補正」
・弓の使用者が弓に魔力を通した時にスキルが2つとも発動する。
・距離や照準の表示は簡易照準器のガラス板上に表示する。
・スキル発動時に簡易照準器の十字部分と重なっているものがスキルの対象である。
昼間にレン君が魔方の付与は実行ファイルを直接書き込むようなものだ、と言っていたので、発動条件も直接書き込めるのではないかと思うんだよね。
イメージが十分に固まったところで、「付与魔法」と唱える。
すると、キラキラエフェクトが弓全体にかかった。
多分上手くいったのかな?
引き続き「目利き」スキルで確認する。すると、
・洋弓(魔道具):魔力を流すと「測距(中級)」「照準補正(中級)」が発動する。
発動対象はスキル発動時に簡易照準器の十字部分と重なっているもの。
距離や照準の表示は簡易標準器のガラス板上に表示される。
繰り返し使用可能。
と表示された。
おお!狙ったとおりにできているぞ!
「チャロン、どうやら思ったとおりにできたみたいだよ!」
「そうなんですか!すごいですね、タクさん!」
「うん、ちょっと試してみるね。部屋の中だけどお試しくらいはできるだろう。」
そう言うと僕は弓を持って部屋の四隅の1つに行く。
そして対角線上の反対側の隅にある花瓶のようなものに簡易照準器の十字をあわせる。
その状態で弓を左手で持って魔力を流す。部屋の中なので矢はつがえない。
すると、ちゃんと「測距」と「照準補正」が発動されたようで、簡易照準器のガラス板上に小さな文字で「10m」と表示される。
そして上下左右の矢印も、照準が合ったときの赤丸もちゃんと表示される。
どうやら大成功のようだ。
「うん、問題なく発動できているよ!チャロンも試してごらん。」
「はい!やらせてください!」
チャロンは弓を受けとると早速部屋のあちこちに簡易照準器を向けては魔力を流してスキルを試している。
「これはすごいですね。ちゃんとスキルが発動しています。
実際に試射してちゃんと命中すれば、最上級の魔道具の認定を受けることができるかもしれませんよ。」
「あんまり目立ちたくないから認定はいいかな。
まだ魔力源の問題とかもあるしね。
弓本体に蓄える魔力だけだと連続使用には限界がありそうだし、もっと魔道具として完成度を高めないとね。
それに僕が作ったのがばれたらそれこそ城内に軟禁されて魔道具作りを死ぬまでやらされそうだしね。
旅に出るまでは秘密にしておくよ。
さっきの簡易照準器も魔力さえ流さなければ見た目はただの覗き窓だからね。
元の世界の道具を参考にした単なる照準用の道具です、ということにしておこう。
ダミーでレン君に同じものをいくつか作ってもらうよ。」
「それがいいですね。でも一度私にも試射させてくださいね。」
「もちろんだとも。明日の朝一番で目立たないように試射しに行こう。
じゃあ、今日の仕事はこれで終わりかな。」
といったところで、点灯試験中の「点灯」も魔道具の光が消えた。
どうやら黒樫の棒の中の魔力が尽きたようだ。
「うーん、ちょうど1時間ってとこだね。
野外の夜間で使用するには12時間くらいは連続で使用できるようにする必要があるよね。
夕方から翌朝の日の出くらいまでは。」
「そうですね、それぐらい連続で使用できると助かりますよね。」
「まあ、何かいい方法を考えてみるよ。でも表だっていろいろ作れないのが困るよね。
城の外に活動拠点をつくるのもありかな。」
「ですね。狩りや野営の訓練をする建前で森に籠るのもいいかもしれませんね。」
「それはいいね。もう少しいろんなスキルを覚えたら外での活動も選択肢にいれよう。」
「はい。でも今日はもう夜遅いですからお風呂に入って休まれては?
働きすぎは体によくないですよ。」
「そうだね、今日はもう終わりにしよう。一緒にお風呂に入ろう。」
「わかりました・・。でも今日こそ「防音」の魔法を忘れずに先にかけておかないと・・。」
というと、チャロンは杖を持って「防音」と唱えた。
部屋中に風が吹いたような気がしたが、これでもう発動しているのかな?
「これでもう発動しているの?」
「はい、風魔法の応用なのですが、部屋の内側を薄い風の膜で包んで音が外に漏れないようにしているんですよ。
朝までは効果が続きますのでお務めで音が出ても大丈夫です・・。」
「そうか、じゃあ、いろいろ楽しんでも問題ないね。」
それからはいつもの展開です。はい。
昼と夜に肉をたくさん食べたチャロンはとても肉食だったとだけ申し上げておきます。
いろいろエネルギーを消費してほどよく疲れたので今日もよく寝れそうです。
おやすみなさい。異世界。
最後までご覧いただきありがとうございました。
感想など頂けると励みになります。
引き続きよろしくお願いいたします。