第30話 いよいよ魔道具作りを学ぶ!
いつもご覧頂きありがとうございます。
チャロンに案内されて魔道具工房なるところにやってきた。
「工房長こんにちは。魔道具作成の見学に来ました。」
とチャロンが魔道具工房長に挨拶してくれた。
「ああいらっしゃい。話は聞いてるよ。
好きなだけ見ていってもいいよ。
ちょうど召喚勇者様の1人も魔道具作成訓練に来てるから、彼に案内してもらえばいいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
と僕たちは答えてから工房内を見渡すと、確かに高校生ボーイが1人机に向かってブツブツ言っている。
確か彼は錬金術士ボーイのはず。
見た目は既に学者の彼だ。
「なによ、白井じゃない。あなたここで訓練してたの?」
「うん? ああ風早か?
見ての通り今日は魔道具工房で付与魔法の練習さ。
魔力で水を出せる水筒を作る訓練をしているんだよ。」
「なによそれ、便利そうじゃない?
できたら私にも一つ渡しなさいよ。」
「そうしてあげたいのはヤマヤマだが、どうも魔道具の配布はクレア王女の許可が必要らしい。
魔道具は高価だし秘密性も高いからおいそれとは渡せないらしいよ。」
「えーそうなの? 残念ね。」
なるほど、魔道具は高価なのか。
そりゃそうだろうな。便利だし。
作り方は特許みたいなものだろうから、下手に知られちゃうと儲けのネタが無くなっちゃうしね。
他の召喚勇者はともかく、僕はクレア王女には使えない勇者認定されているから、魔道具を配布されることはないだろう。
自力で準備できるように魔道具作りは是非覚えておきたいね。
「はじめまして白井君。僕は七条 拓。
すでにご存じと思うけど、「お手伝い」スキル持ちの召喚勇者だよ。
できれば白井君の錬金術スキルについて少し教えてもらってもいいかな?
あ、僕の事は気楽にタクと呼んでほしい。よろしくね。」
「こちらこそはじめまして。僕は白井 蓮です。
錬金術士のレンと覚えていただければ。
タク先輩のことはいろいろと女子チーム、主にそこの風早から伺ってますよ。
なんでも高校生の頃はいろんな部活で大活躍だったとか?」
「いやー、昔の話だよ。ここではただのしがないお手伝いさ。」
「そんなことはないのでは?
騎士団員を模擬戦で打ちのめしたとか、弓の腕がすごいとか、いろいろ聞いてますよ。
主にそこの風早からですが。先輩のファンらしいですよ?」
「もう!余計なことを言ってるんじゃないわよ!さっさと先輩の質問に答えなさいよ!」
と、亜季ちゃんが顔を真っ赤にして怒っている。
亜季ちゃんを下手に怒らせると大事なところを狙い撃ちにされるからやめたほうがいいぞ。
ちなみに亜季ちゃんはただの部活の後輩ですから。
「ふむ。そうですね。錬金術スキルですが、ざっくり言うと、物作り全般に役立つスキルですね。
大きく幾つかの分野にわかれるのですが・・。」
と、前置きしてこの世界の錬金術スキルを説明してくれた。
大きくわけると次のような感じらしい。
・物体作成:素材を使ってイメージした物体を作成・加工できる。
素材無しでも作ることができるが、大量の魔力を消費する。
・物質生成:2種類以上の素材を合成して新たな物質を生成できる。
・薬品作成:薬草などから治療に役立つ成分を抽出し、薬を作成できる。
・付与魔法:道具などに魔法やスキルの効果を付与することで魔道具を作成できる。
ただし、自身が魔法やスキルを使用できなければ魔法の付与はできない。
この場合は昔から伝わる魔方陣を道具に書き込むことで魔道具を作成できる。
「まあ、元の世界でいうと、物理、科学、薬学に関する知識と技能が一纏めに合わさった感じですかね。
いろいろとスキルの効果を試している最中ではありますが。
でも、自分が魔法を使えないと付与魔法を対象の道具に直接書き込めないんですよ。
自分は魔法は使えないので、魔方陣の形状を覚えてそれを対象に書き込む訓練をしていますよ。」
「書き込みの手順ってきまってるの?」
「自分の頭の中で魔方陣のイメージを固めて、そのイメージを魔力に乗せて手のひら経由で対象に流し込む感じですね。
元の世界のアニメとかでよくあるエフェクトを想像しながらやるとできるようになりました。」
「それはすごいね。でも魔法陣の形状を覚えるのも大変だよね。
魔方陣の書き込みがプログラミングなら、魔法の書き込みは2進数化された実行ファイルのデータを直接書き込むって感じかい?」
「あ、そんな感じですね。
なので、魔法を直接書き込んだ魔道具のほうが道具の動作も早いし、魔力の消費も少ないらしいですよ。」
「そう言えば魔力の供給ってどうしてるの?」
「主な魔力源は魔物から取れる魔石だそうです。
まあ、異世界小説でよくあるパターンですね。
魔道具に魔石を入れるとそれを魔力源にして道具が発動します。
元の世界の乾電池みたいな感じですね。」
「もう一つは大気中に漂う魔力を集めて使用するパターンですね。
特定の種類の木とかは魔力を吸収する効率が高いので、それらを道具の素材として使用しておくと、魔力を自動で供給してくれるようです。」
「なるほど、とても参考になったよ。ありがとう。」
「タク先輩も錬金術を訓練するんですか?」
「まさか、ぼくのスキルは錬金術とは無縁だからね。
旅に備えてどんな魔道具があるかどうか見学にきたのさ。
邪魔にならない程度に見せてもらうね。訓練中にいろいろ教えてくれてありがとう。」
と、白井君にお礼を言ってからその場を離れた。
その後チャロン案内で工房内を見て回ったが、主に建物内で使う照明や水の魔道具がメインで、旅先で使用できるポータブルなランタンとかはなかった。
まあ、生活魔法とかが普通にある世界だからわざわざ魔道具を作らないのかな?
亜季ちゃんのように魔法が使えない人には需要があると思うのだが、このあたりがクレア王女が言うところのこの世界の発展性の欠如なんだろうな。
とはいうものの、工房スタッフが魔方陣を書き込んだりしている様子を見ることができたので、「お手伝い」スキルが発動して見よう見まねできるようになっているだろう。
魔方陣はさすがに覚えられなかったけど、魔法が使えるからまあ問題ないだろう。
部屋に帰ったら試しにいろいろ作ってみよう。
薬のコーナーでは薬草などから薬効成分を抽出する工程を見ることができた。
この世界には傷薬、解熱薬、整腸薬等の元になる薬草があるらしく、それらの素材がたくさん工房にあった。
これらの植物を乾燥させて細かく砕いてから飲んでも効果はあるが、成分だけ抽出してから服用したほうが効果が高いらしい。
製薬スタッフさん達がこれらの薬草を魔力を込めながら乳鉢ですりつぶし、出てきた液体を集めて試験管のようなガラスビンに詰めていた。
見るからに苦そうだが味は大丈夫なのだろうか?
チャロンに聞いてみたら、味は最悪らしいが液体のほうが治りは早いらしい。
あと、飲んだら一瞬で傷が治るわけではないとのこと。
この世界では重症の怪我や病気は聖女や治癒士が使う治癒魔法のみとのことである。
なので治癒魔法の使い手は重宝されるらしい。
スキルのレベルによっては国家専属として雇用される場合もあるとか。
うん、早めに治癒魔法も習得しないといけないな。
近いうちに亜季ちゃんに委員長女子を紹介してもらおう。
「いろいろ見せてもらって参考になったけど、旅に便利そうなポータブルな道具はなかったね。」
と僕が亜季ちゃんに話しかけると
「そうですね。元の世界のキャンプ用品にようにいろいろ便利なものがあれば良いのですが、なさそうでしたね。」
と亜季ちゃんも同意する。
「さっきのレン君にアイデアを伝えて作ってもらうのもありかな。」
「ですね。」
と頷きあう。
元の世界の住人のほうが話しも伝わりやすいしね。
彼の訓練にもなるだろうし、彼も魔法が使えないようだから彼自身の利便性向上のためにもよいだろう。
彼にとってはまさに一石二鳥である。
「じゃ、次にいこうか?」
「「はい」」
と、魔道具工房の見学を切り上げた。
次は亜季ちゃんと一緒に弓術の訓練だな。
◇◆
ということで、弓術場にやってきた。
せっかくなので、午前中に武器工房でもらった自分用の弓を使ってみよう。
亜季ちゃんと一緒に射場に並んで立って新しく入手した弓で矢を射っていく。
何度か弦を調整しながら繰り返したらいい感じに安定してきた。
うん、自分専用っていい感じだね。
ついでに先日入手したスキルの復習をしておく。
「測距」、「照準補正」を発動しながら矢を放つ。
うん、便利だね。中・近距離ならほぼ必中だよね。
「照準補正」は上下の補正だけではなく、左右の補正もできるようになったみたいだ。
横風の影響も補正してくれているらしい。
またスキルレベルが上がったのかな?
続いて「魔力誘導」を発動して矢を放つ。
これもすごいよね。長距離でも視界にとらえてさえいればほぼ必中だからね。
「うん、いい感じに馴染んできたよ。亜季ちゃんはどう?」
「はい、私もいい感じです。先日習得したスキルの発動も問題ありませんね。」
「この弓術系のスキルってめずらしいの?」
とチャロンに聞いてみる。
「はい、弓術士や狩人などのスキルがないと、「測距」などの派生スキルは入手できないようですね。
なので私も弓は使えますけど弓術士ではないので派生スキルはありません。」
「派生スキルが付与された魔道具の弓とかはないのかな?」
「噂では過去の召喚勇者様方が作った魔道具があるらしいですけど、国宝級なので各国の王家が管理しているようですよ。
普通の騎士団員や冒険者が持つことはないでしょうね。
それこそ国家の一大事に騎士団の上級の弓術士やA級以上の冒険者に貸与されるくらいだと思います。」
「そうなんだ。まあ、レン君の話だとそもそも付与魔法使いが弓術の派生スキルを使えないとスキルを付与できないしね。」
「そうなんですよ。それに魔道具の発動に必要な魔力の確保も問題ですね。
使用者本人の魔力量が多ければそれで供給できますが、少なければ魔石を確保する必要がありますしね。
魔石も良質なものは入手が難しいのですよ。良質な魔石は強い魔物の体内にしかないですからね。」
「なるほど。魔道具は便利な分だけ作るのも大変ということだね。
魔道具があまり普及してないのには理由があるんだね。」
「ええそうですよ。ちなみに、このお城の中には魔道具はたくさんありますが、街の普通の宿屋とかにはありませんから、生活魔法かそれに代わる手段が必要になってきますね。」
「え、そうなんですか? じゃあなおさら魔道具の準備を急がないと。
私は生活魔法とか使えないし。」
と亜季ちゃんが心配しはじめる。
「そうなんです。なので過去の勇者様にはお世話係になったメイドさんをそのまま旅に連れていった方もいるんですよ。」
「ああ、その気持ちはわかるわ。特に女性は旅の途中の服や身体の手入れを考えるとね。
お風呂や洗濯ができないと困るしね。タク先輩はチャロンさんがいてくれていいですね。」
「そ、そうだね。助かってるよ。チャロンがいないと厳しい旅になりそうだ。」
亜季ちゃんにはサブスキルのことは内緒だからね。
僕が既に生活魔法の一部を習得していると知ったら「何ですか?そのチートは!」と怒られそうだ。
「まあ、いざとなったら私もタク先輩とチャロンさんと一緒に行きます!
かわいい部活の後輩のお願いなら聞いてくれますよね?」
「え、ええ? 僕と一緒に? 僕と一緒だといつ日本に戻れるかわからないよ?
チャロンと一緒にのんびりこの世界を旅する予定だし。
それにそもそもまだ魔王に会う方法も細かく説明を受けてないからね。
旅のプランはクレア王女からそのあたりの説明を受けてからでいいんじゃないかな?」
と、やんわりと問題を先延ばしにする。
「まあ、そうですね。意外にあっさりと帰れるかもしれませんし。
1ヶ月の訓練が終わってからですかね。」
と納得してくれる。
どうやら先延ばしできたようだ。
僕と一緒に行動するとなるとサブスキルのことも説明する必要があるけど、今はちょっと内緒にしておかないと亜季ちゃんを余計なトラブルに巻き込んじゃう可能性があるしね。
それにチャロンと2人きりじゃないとイロイロするのに気を使うからね。
夜の営みが他のパーティーメンバーのストレスになって、パーティー崩壊とか嫌だしね。
「そうそう、その時になったら考えよう。
そろそろいい時間だから服飾工房に戦闘服を取りに行こうか?」
「「はい。わかりました。」」
と、チャロンと亜季ちゃんがそろって答える。
君たち最近息が合ってきたよね?
最後までご覧頂きありがとうございました。
感想など頂けると励みになります。
引き続きよろしくお願いいたします。




