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ーー嘘つき

 

  ☆ □ ☆ □ ☆


「それは――、太陽になることっす!」


  わたしがそう宣言すると、真人さんは何言っているのか理解していないのか、ポカーンと口を開けていた。


「え、なに? 太陽?」


  困惑げにそう聞き返してくる彼に、わたしは大きく頷き肯定する。


「そう、太陽!」


  さらに怪訝そうな目でこちらを見てくる真人さんに、わたしはチッチッチッと指をふりふり口を開いた。


「真人さんが墜落しないよう、わたしがほどほどの熱量で照らしてみせますよ!」

「ああ……そういう……」


  わたしがそう言うと、真人さんはなにか納得したかのような顔をしていた。


「えー、なんだと思ってたんすか?」

「いつもみたくまたぞろ変なことを言い出したなーと」

「いつもみたくって酷くないっすか……」

 

  抗議の視線を向けてみると、彼は悪い悪いと笑いながら頭を搔いた。


「神に太陽ねぇ……大きく出たな」

「目標はでっかく持つもんすよ」

「確かにそうだな」

「まあ、わたしはビックな女ですから!」


  ふふんと胸を張りそう宣言すると、彼は瞳に優しい色を宿してわたしをじっと見つめてきていた。


「……人のためとかじゃなく、自分のための目標も作ってみたらどうだ」

「……どういうことっすか?」


  言っていることが分からないと首を傾げると、彼はふっと短く息を吐き出しわしゃわしゃと頭を撫でくりまわしてきた。


「いや、なんでもない。ただ、……自由に生きろよ」

「……はい?」

「後悔のないように好きなことをやれ。その時は、俺も協力するから」

「いやだから、何言ってるんですか。ほら、そろそろ撫でるのやめてください」


  しっしっと追い払うように手を振ると、彼はわたしの頭から手を離して、困ったように笑った。


  ☆ □ ☆ □ ☆


「……夢か」


  懐かしい夢を見ていた気がする。

  ついさっきまで見ていたはずなのに、既に記憶はぼやけ始め何となくでしか思い出せない。


「……」


  竜舎から出ると、パチパチと音を立てる焚き火に照らされた兄ちゃんの姿があった。


「……どうした。眠れないのか?」

「いや、目を覚ましただけ」


  こちらの存在に気づいた彼が、気遣わしげに目を向けてくるのにわたしは気にするなと首を横に振った。


「……何か用があるのか?」


  無言で兄ちゃんの前に座ると、怪訝そうにそう尋ねてきた。


「そういうのじゃねーよ」


  否定の言葉だけ投げつけると、わたしは口を閉ざしてただただ焚き火をぼーっと見つめた。

  彼女が死んで、みんなバラバラになってから、わたしはそれまで以上に好きに生きた。行きたいところには一通り行ったし、やってみたいこともやった。……目標はまだ達成出来ていないけれど。


「……嘘つき」

「……」

 

  わたしの口から漏れ出た言葉に、果たして彼は反応しない。

  明るい火の周りとは対照的に、わたしの所までは光は届かず暗いまま。ゆらゆら揺らめく焚き火の形は、一度たりとも同じ形はなく消えていく。


  ――もう、なんの夢を見たかさえ思い出せない。


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