エピローグ お別れかも
次の日、目が覚めると、やはり顔つきも身体付きも変わっていた。
別にその時は何とも思わなかったが、寝る前はマジで吐きそうになるくらい祈った。
「変わらないでくれ」
これで、アミアにも忘れられてしまんだろうな……。
な~んて事を考えてると、ちょうどよく彼女が俺の部屋に突撃してきた。
せっかく討伐の報酬金で、あん時の宿屋に泊まれたのに、プライバシーは一切無いのか。
「タクミぃ! 今日も一緒に買い物に……ってあれ?」
「どう……されました?」
「す、すみません! コチラにスズキ・タクミという方が泊まっていないでしょうか?」
泊まってる。が、俺はタクミであっても、アミアの知ってるタクミではない。
「さ、さぁ? もしかしたら、今朝チェックアウトされた方かな?」
「え!? 出てっちゃったんですか?」
「はい。急用が出来たらしくて、“突然空き部屋になっちまったし、一日無料で泊めてやる”と言われたので」
な~んて、全部う・そ。
「そうなんですか!? それはラッキーでしたね」
「貴女が部屋に突撃してきたので、全然ラッキーじゃないでがね」
「あはは! またまたご冗談を~! では、失礼しました!」
……えっと、何が冗談なんだ?
一日中遊んだが、まるで減らないな、この報酬金。
始まりの町って言われるくらいだから、物価は安いとは思ってたが、これ程とは……。
しばらくは食う寝るには困りそうもないな。
さて、明日は何処に行くか。
「あ! それ、私があげた服!」
「え!」
あ、アミア~?!
やっべぇ! そうか、うっかりしてた。
よくよく考えたら、この服そうか! 思い出の品じゃん!
「えぇ? なんの事ですかねぇ?」
もうこうなったら、知らないふりするしかねぇ。
「一緒なんですよ! 貴方の前に泊まってた人と服が! こんな偶然あるんですね!」
お、おぉ。偶然でまとまってくれたか……助かったぁ。
これだから、運命キュンキュン系女子はチョロいぜ。
「お~いお前らぁ! 飯出来たから、食堂に集まりな!」
ふぃ~。満腹満腹。
やっぱ、あの親父は頑固だが、飯の腕前はピカイチだな。
たとえ皆に忘れられても、全然寂しくねぇや。
「やっば、晴れた月夜は屋根に登らねぇと」
こんなに澄んだ夜空は、何年ぶりに見たかな。
そういえば、こんな世界に来る前は、太陽の光すら浴びずに暮らしてたんだもんな。
感慨深い。
「いいですよね。ココからの眺め」
「そうだな……落ち着く、とはまた違うけど、心が洗われる……って、アミア!?」
「どうも~! あ、別につけて来たわけじゃ無いですよ? 夜はこれくらいしか楽しみが無くて」
それは俺も納得。
テレビもゲームも漫画も無いんだしな……。
「ちょっと恋バナしません?」
「え」
ほれ来た。思春期女子特有の恋バナ来たね。
つっても、俺とアミアは面識があんま無いって事になってるしな……。
生々しいの言ってもなぁ。
まぁ、コイツが俺の事覚えてたら、それはそれで本人に言えるわけないんで却下だけど。
「じゃあ! まずは私から」
もうお前が言いたいだけじゃん。
「私、好きな人がいたんです。その人めちゃくちゃ強くて~、カッコよくて~、優しくて~」
出たでた。王道なやつばっかり来た。
マジで、悪い男に捕まんなよ……。
「でも、その人、ある日突然いなくなっちゃったんですよ! お別れも言わせてくれなくて!」
「そりゃ酷い奴もいたもんだ! そんな奴忘れちゃいましょ!」
「イヤです!」
おっと、俺お得意の“イケメンの足を引っ張る攻撃”がかわされたか。
なぁに、まだチャンスはあるさ。
「でね、その人、私の事めちゃくちゃ考えてくれて! 束縛しすぎなとこもあるんですけど、ソコもまた愛されてるなぁって思えて!」
「えぇ! 束縛が激しい奴なんて忘れましょ!」
「イヤです!」
おっと、今度は上手くかわされたな。
流石、俺の見込んだ女。
……何やってんだ俺。
「……んん。でもまぁ、アミアさんが惚れ込むくらいなんだから、そりゃあもう、凄い奴なんでしょうね」
「凄いなんてものじゃないですよ! ほんと、話してるウチに“わぁ! コレが運命か!”って思えて来ちゃって!」
「ははは」
はぁ。楽しそうだな。この子。
「だって、聞いてくださいよ! その人、大きなドラゴンを一撃で倒しちゃったんです!」
……え。
「ドラゴンって……」
「火をぶわぁって吐いてぇ、翼の先っちょまで硬い鱗がぶわぁって! 知ってます?」
「……もしかして、そのドラゴンって、前この町を襲ったっていう」
「はい!」
ぁ、俺じゃん……。
「……なんだよ。俺だったのかよ……」
「ん? どうしました? 泣いてますか?」
「……あぁ、気にしないでください。それより、ソイツ、どこに行っちゃったんですかね」
「……私も丸一日探したんですけど、何にも手がかりがなくて……」
そりゃ見つかるわけねぇよ。
ココにいるんだから……。
「私の予想では、彼もまた旅に出たんだと思うんです!」
「……旅、ですか?」
「はい! アレだけ強いんなら、魔王を討伐しに行ったんじゃないかと」
残念……俺はこの町から、出ることすら出来ません。
「なので、私も、明日の朝早くにこの街を発とうかと思うんです」
「え」
……マジか。
「はい! 彼の背中を追いかけて、ゆくゆくは共に魔王を倒し、真の平和をこの世界に取り戻したいんです!」
「……は、ははは。立派ですね。貴女は」
「えへへ、そうでしょ?」
あっという間に夜は明け、彼女は、あの日と同じ大きなリュクサックを背負っていた。
「必ず魔王を倒し、想いを成就させてきます!」
「うん、いってらっしゃい」
「はい! 行ってきます!」
彼女は手を振りながら、どんどんと遠ざかって行った。
やがて、影も見えなくなると、無性にもの寂しさが込み上げてくる。
この敷居となる壁や門が、もしココに無くて、この世界が、一つの国だったのなら、俺は彼女を追いかけられるのに。
そんな馬鹿げた事を考えながら、俺は宿へと戻った。
『転生したら【RPGゲームの最初の街で美少女に絡む系のモブ】になってました~それでも俺はチートなりに達者です~』をご愛読いただきありがとうございました。今後の続編、新連載もお楽しみください。
また、ぜひ下の☆マークの評価欄から評価いただけるとありがたいです!




