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アスティー、実力の片鱗を見せる訳で

程なくして全隊員が集まり、ロギスがやって来る。そして【警備第5隊】のミーティングが始まった。

警備任務の詳細はこうである。

警備隊は1から30まで編成され【ブラインドエリア】をブロックで分け、決められたブロックを担当すると言う物だ。

その他に攻撃隊と言う物が10隊編成されており、こちらは要請を受ければ何処にでも駆けつける所謂遊撃隊である。

「攻撃隊ってつまり強い人達の集まりなんですか?」

アスティーがミルドに小声で尋ねる。

「そうだな、各警備隊から更に厳正された奴らの集まりさ」

「そうなんですか・・・会って見たいですね」

「ハハッ、会う機会が無い方が良いんだけどね」

「まぁそうですよね」

彼等と会うと言う事はつまり戦闘に成ると言う事に他ならない。

ロギス率いる【警備第5隊】の編成は20人。内訳は前衛が隊長を入れた10人、スカウトが4人、残りが魔法職である。

「で、だ。オイ!新入り前に。」

ロギスがアスティーに声を掛ける。

「ハイ」

アスティーは席を立ち、ロギスの隣に立つ。

「アリアスティリア・ホワイトオウルです。宜しくお願いします」

そして一礼をする。

「彼女は、まぁ色々訳在りでな」

「知ってんよ。いけ好かない貴族のぼっちゃん殴ったんだろ?」

「え?」「おいおい・・・マジかよ」「じゃじゃ馬か・・・」

ロギスの説明の途中、既に理由を知った隊員が茶々を居れ先程居なかった隊員達が沸き立つ。

「お前ら~静かにしろ~。でだ、アリアスティリアの配置なんだが」

『配置』と言う言葉を聞き、隊員達は一様に脱力する。こう言った場合の相場は決まっている。

貴族の、しかも女。『後方支援か雑務だろう・・・』と、その場に居た全員が思っていた。

事実、ロギスも後方支援程度に止めようと思って居る。

(穀潰しを養う以上の物資援助は貰ったからな)

ロギスは率先し、自らの隊にアスティーを招いていた。

その代わりの物資援助を要望してだ。中々に抜け目が無い人物である。

そんな皆の考えの中、アスティーが口を開く。

「あの~・・・私も前線に出たいんですけど」

「「「「「・・・・・は?」」」」」

アスティーから発された言葉に全員が呆気に取られた。

「オイオイ、無茶言うな。第一お前さん経験有るのか?」

呆れながらロギスが嗜める。しかしアスティーは、

「魔物退治なら向こうでもしてましたから。それに事務とか雑用とか苦手なんですよ」

そう言いつつ申し訳無さそうにポリポリと頬を掻く。

「・・・・・・ハァ、言い分は判った。だが「よし、じゃあ来い」とは言えん」

「まぁ。それはそうですよね」

ロギスは顎に手をやり暫く考え、

「・・・ではこうしよう・・・」





それから30分程経過し、【パイオニア・メインベース】内にある訓練場に【警備第5隊】全員が居た。

ロギスの提案は、まぁ【良くあるパターン】其の物。

「部下に勝てたら考える」

である。

既にロギス側の準備は完了している。屈強な前衛職ばかりが10人程だ。

手に持つのはバスターソード、バトルアクス、ヘビーランス・・・など、どれも破壊力重視の装備ばかり。

ロギスは口出しをせず、この模擬戦の作戦を隊員達に任せていた。

「やっぱ、力押しで行くようですね」

ミルドがロギスの隣に立つ。

「だろうな。普通に考えればそうだな」

(ん?)とミルドが引っ掛かる。

「それって如何言う意味ですか?」

ミルドはロギスの方を見るが、ロギスは何も言わずニヤリと笑うのみ。

(はてさて、見せてもらうぞ。使えるか如何かをな)

すると男達の逆側からくだんの少女が歩いて来る。

その姿を見た一同は『ギョッ』とし、目を疑う。それ程アスティーの装備は独特だった。

左手にはタワーシールド、その腕には篭手に取り外し出来るバックラーを装着、

右も同様にバックラーを篭手に付け、手には中型メイスを握る。

盾3つに武器1つ・・・余りにも見たことの無い組み合わせに言葉を失った。

「お待たせしました」

「オイ」

「はい?」

「本当に何時もソレなのか?」

流石のロギスもこれには驚き、声を掛ける。

「はい、何時もコレですよ?変ですかね?」

キョトンとアスティー。

(((((変に決まってんだろ!)))))

その場に居た全員が心の中で突っ込むが口にはしなかった。

「そうか・・・なら良いんだが」

「何時でも良いですよ。こっちは」

盾を構えつつアスティーが言った。

「判った。だが、本当にこれで良かったんだな?」

「勿論です。コレ位じゃなきゃ認めてもらえないでしょ?」

多数対1人のこの状況はアスティーから示された条件であった。

「10対1位で」

この発言に流石の隊員達もキレた。

「ハッ!良い度胸だ・・・女だからって手ぇ抜いて貰えるなんざ思うなよ!?」

そう言いつつ広間を出て行く隊員達がミルドの印象に残っていた。

(心臓が強いとは思ってたんだが・・・毛まで生えてるんじゃないか?)

と思いつつ、経緯を見守る。

「では・・・始め!」

「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

ロギスの合図と共に一気に突撃する男性陣。5人で正面から押し潰す作戦らしい。

残りの5人はバックアップをしつつ裏へ回る動きをする。

それに対しアスティーはその場から一歩も動かない。

「足でも竦んでいるのか!?」

ミルドが自分の事の様に焦る。

傍から見れば180cm付近の屈強な男5人の突撃と165cm位の少女1人の防御。結果なぞ判り切っている。

「・・・・ハアァッ!!!!」

アスティーが気合を入れタワーシールドを横に構え直す。その刹那、

ガキィィィィィィィィン!!

金属と金属のぶつかり合う音が響き、

ギリッ!、ギギッ!

力と力のぶつかり合いによる金属の軋む音が後を追う。

「・・・・嘘だろ・・・」

ミルドが呟く。周りで見ている他の隊員達も呆気に取られる。

何故なら男5人の突撃を、真正面から見事に受け止めるアスティーの姿が其処に在ったからだ。

しかもその場から一歩も動いていない。

突撃した男達はその違和感を如実に感じていた。

(な・・・んだこりゃ!?まるでデカイ岩にぶつかったみてーだ!!!)

そのまま力の押し合いが続く。と思われた次の瞬間、フッ!と一瞬アスティーの力が抜ける。

「うぉ!?」

すると全力で押し込んでいた5人の男の体勢が僅かに前のめりになる。バランスが崩れたのだ。

アスティーがそれを見逃す筈も無く、間髪入れずに一歩踏み込み体全体を使った『シールドタックル』を繰り出す。

ドズン!

踏み込んだ左足から砂埃が舞う、放たれる音はまるで鉄球を思い切り地面に叩き付けたかの様だ。

「グァ!!」「っ!」「うぉっ!」

正面5人はそれをまともに喰らう。元からバランスを崩していた為、一様にそのまま地面にすっ転んだ。

アスティーは盾を持ち直すと、垂直に地面に突き立て、

『アースバインドフィールド!』

『トリガーワード』と共に魔法を発動。盾を端とした円形の束縛領域を前方に形成する。

もちろんその領域には先程倒れた5人も入っており、

男達の体は強力な磁石に鉄を近づけたかの様に、地面に吸い付き動きを封じられた。

「巧い。転ばせてからバインドを喰らわせてる」

ミルドが感心する。周りで見ている隊員達も、

「中々やるな」「あぁ、場馴れしてる」「ふむ」

と、感心し始めていた。

「あぁ、地面に触れている面が多ければ多い程、効果が強くなる」

ロギスは腕組みをし推移を見守る。

だがアスティーが『アースバインドフィールド』を使った理由はそれだけでは無かったのだが、ロギスでも気が付いて居ない。

それに気が付いたのは他でもないミルドだった。

「自身の盾にも効果を反映させているのか!?」

それを聞いた見学組みが一斉にミルドの方を向き、直に模擬戦に目を戻す。

ミルドの言った通り、タワーシールドにもバインドの効果が反映されており、アスティーが手を離しても直立していた。

「・・・しかし、何でそんな事を」

「そうか、自身の背中を守る為だ」

ミルドの疑問にロギスが答えた。

「成る程、幾らバインドしているとは言え、相手から目を切るのは自殺行為ですね」

「あぁ、だがあれならバインドの効果中であれば、背中を気にしなくて済む。そしてこうなると・・・あのダブルバックラーが効果を発揮する訳か」

「最初は「何であんな装備」って思ってたのに・・・しっかり使いこなしてますね・・・驚きです」

ミルドが感心しつつアスティーの方に目をやる。現在は残りの5人と戦闘中だ。

カン!キィーン!!ガキン!ギンッ!!

タワーシルドと『アースバインドフィールド』の所為せいで、残りの5人は攻め手をアスティーの正面に集中せざるを得ない。

そのアスティーは正面からの攻撃をことごとく弾き、受け流す。

ガッ!!!

不意に1人のバスターソードを右バックラーで受け止めると、

「シッッ!!」

次の瞬間、バスターソードをガイドとし、バックラーを滑らせつつ相手の懐に飛び込む。

バスターソードを選択したのが仇となり、男の対応が遅れる。その隙に左腕を振り被りバックラーの側面を右腕に叩き付けた。

「ぐぁぁ!!!」

強烈な痛みで右手がバスターソードから離れる。瞬時にアスティーがその体勢からサイドキックを左手首の内側に叩き込んだ。

ガシャァァーーン!

バスターソードが地面に落ちる。

アスティーは直に落ちたバスターソードの柄に蹴りを入れ、彼方へ蹴飛ばすとタワーシールドを背にする位置へと戻る。

男達は破壊力重視の為、盾持ちが居ない。それが仇となり、攻め手に欠け始めて居た。

「すげ・・・」

ミルドの口から思わず言葉が出た。成人したての、しかも少女が完全にまさっていたからだ。

それと同時に疑問も湧く。あれだけの猛攻を凌いでいるのにも関わらず、一向に体力が衰えていないのだ。

(打たれれば多少なりとも体力は削られて行く筈なのだが・・・)

不可思議そうな顔をしていると、ロギスが口を開いた。

「・・・【受け止める者】。【タンク】だ、あのむすめは」

「「「「「!!!」」」」」

全員がロギスを見た。【タンク】、ネットゲームをする人ならお馴染みだろう。

全ての攻撃を受け、味方を守る。アスティーの適職は正にソレであった。

「完全に失念してた・・・」

ミルドがそう言うのも無理は無い。あれだけ小柄なのだ、その彼女が耐久&防御力重視の職種な訳が無いと思い込んでいた。そこへロギスのげきが飛ぶ。

「・・・【ブラインドエリア】での最も大事な基本 概念がいねんを忘れたのか?お前ら!?」

「・・・・・・・『見た目に騙されるな、騙されれば死だ』ですよね・・・」

「その通り。現にあのむすめの外見に「ヘビー系の職ではない」と、思い込んであの装備だ」

「しかし、それでもあれは変ですよ!体力が減ってる様相がまるで無いなんて!」

ミルドが食い下がる。と、

「【祝福されし者】かもな」

其れを聞き更に回りがざわついた。

【祝福されし者】。【潜在能力】が例え多くとも、その能力が全て有益になるとは限らない。

そんな中、稀に能力が全て本人に有益になって生まれる子が居た。

その子らを周りは【祝福されし者】と呼ぶのである。

【祝福されし者】であれば、例え【潜在能力】が3つで有っても、4つ持ちや5つ持ちにすら勝る事も有るのだ。

事実、アスティーは【祝福されし者】である。しかも【潜在能力】が5つの。

最早、そこらの男では勝ち目が無いのは明白なのだ。

そうこうしている間に、模擬戦は決着がつきそうである。

有る者は打ち疲れ動きにキレが無くなり、有る者は彼方へ弾かれた武器を息を切らせつつ取りに走る。

そうこうしている間に男達はへたり込み動かなくなった。

「・・・勝負アリ・・・だな」

ロギスが模擬戦の終わりを告げる。

こうしてアスティーの【ブラインドエリア】での初戦が終わった。

少し修正&加筆

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