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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
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第82話 「不幸中の再会」

 街は悲鳴と混乱に満ちていた。

 建物を覆う炎と煙。逃げ惑う人々。焼け焦げた死体。

 誰の目から見ても、非常事態なのは明らかだった。

 俺とカインズは街を走り、最初に聞いた爆音の元へ向かっていた。

「酷い有り様ですね……これは」

 カインズが道に転がる死体を見て、表情を暗くした。


 中央都市においては、テロが起こった際にはイマジンハートの防犯システムが作動するらしい。パスポートの位置情報を特定し、犯人をいち早く捕まえるのだ。

 だがしかし、イマジンハートに異常が発生している今では、中央都市の防犯はシナリオ通りにいかない。情報通信機器は機能せず、的確な避難指示すら送れない。軍の出動も遅れたため、既に多くの人民が死んでしまった。

 テロの規模も、目的も、犯人も分からない状況だ。

 軍の戦闘部隊はもう対処に動いているだろうが、王国騎士団は当てにならないだろう。騎士団は王族の命を守るために存在している。今頃は王宮に立て込もって王族と共にテロの収束を待っているはずだ。

 街で多くの人間が死んでいると知りながら。


「うるさいな……爆音」

 先ほどから、爆発音が頻繁に聞こえる。テロの一員がやっているのか。

 高層ビルが炎に包まれ、次々に倒壊していった。

 俺達の足元には度々死体が転がっているが、王宮に近付くにつれて、死体の様子が変わっていた。

 始めは爆死した遺体ばかり見かけたが、ここにある死体達に焼け跡は無い。

 その代わり、死体はバラバラに切断されていた。切断面はあまりにも綺麗だった。

 まるで角切りにされた肉のような死体が、道路を血で染めている。

 人の死に慣れた俺でも、心が揺らぐ光景だ。いい気分では無い。


「怪しい奴がいたぞ!」

 盾と機関銃を装備した軍の部隊が、一斉に道路の真ん中に集まった。

「コイツ、血まみれだ!」

「剣を持っているぞ!」

「何者だ!」

「大人しくしろ!」

 軍は一人の人間を取り囲んで、盾と機関銃を構えた。軍の標的がの顔は見えなかったが、痩せた男なのは分かった。

 テロの犯人を見つけたのかもしれない。この場を離れて、軍に任せようと思ったのも束の間。


 軍の戦闘員達の首が、宙を舞った。


 血を吹き出しながら、地面に倒れる軍人達。首の切断面は、先ほどの死体のように綺麗だ。

 死体で出来た円の中心にいたのは、ローブ姿の青年だった。

 右側だけ大きいブーツを履き、半透明な剣を携えている。

「オレ一人に殺されてんじゃねーよ。弱ぇな、テメェ等」

 男は、血に染まったフードを取り、素顔を露にした。

 二度と見たくなかった、あの顔を。

「お前は……っ!?」

 目を疑った。『あいつ』が、何故ここにいる。

「あぁ?」

 『あいつ』は、俺の声に反応してこちらを向いた。

 右側だけ白く、左側は黒い髪。獣のように開かれた目。

 全身に殺意を血の匂いを纏った『あいつ』は、俺を認識して大きく口元を歪ませた。

「クロムちゃぁぁぁぁぁぁあああああん! 久し振りぃ! 会いたかったぜぇ!」

 『あいつ』は気持ち悪く笑い、自分が殺した人間の死体を踏んだ。

「俺は会いたくなかったぞ……セン」

 あいつは……センは……俺の前に現れてしまった。

 8年前の宣言通りに。

「クロム隊長、知り合いですか? この男」

 カインズはセンを見て、警戒の表情を見せながら尋ねた。

「ああ。こいつはセン。俺の幼馴染みだ」

 俺の脳裏に、あの時の記憶が甦る。

 死を恐れ故郷から逃げた、あの時の記憶が。


              *   *   *

○一時休載のお知らせ

 作者の体調が芳しくないため、『絶え損ないの人類共』の連載を数日休みます。

 連載復活の日付は未定ですが、すぐに復帰出来ると思います。

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