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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
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第58話 「レイティア流健康診断」

 園内の女子が性的暴行を受けている。

 そのことを養育園の先生達に伝えると、当然驚愕された。皆が口を揃えて、「早急に対策します」と言った。

 特に園長先生は、熱心に取り合ってくれた。

「被害にあった子供達に、カウンセリングをしてあげようと思います。子供達と向き合って、話し合わねば」

 そのためには、被害者を特定しなくてはならない。その件はレイティアに任せているので、俺は俺に出来ることをしよう。


 園内を歩いていると、女子達の黄色い声が聞こえてきた。その声の矛先には、話題のイケメン先生がいた。甘いマスクと甘美な声で、多くの女子に人気があるという、あの先生だ。『イケメン論争』とやらに巻き込まれているらしいが。

「やあ、おはよう。今日も可愛いね」

 イケメン先生はすれ違う女の子達に挨拶をしている。その度に、声をかけられた女の子はキャーキャーと騒いでいた。顔を赤らめて、踞る子もいる。

 もしかして昨日のハンカチ少年は、彼の影響を受けているのではないか。人気のイケメン先生に、自然に女性を誉める術とかを習ったのかもしれない。

 興味は無いが。


 先生達への伝達は終わったので、俺達は園内の庭に集まった。

 まずは、レイティアの報告から始まる。

「被害にあったのは計14名。いずれもラトニア養育園の女子児童でした。年齢は3歳から12歳まで、幅広いです。このリストに全員の名前と年齢を書いておきました」

 レイティアは、俺に一枚の紙を手渡した。

「僕にも見せて下さい」

 ファティオが食い入るようにリストを見た。娘のコフィンちゃんがリストに載ってないか確認するためだろう。リストの中に、コフィン・ハージの名前は無かった。

「彼女達の匂いから考察するに、犯人は健康的な大人。恐らく、同一人物です。園外を軽く走り回って見ましたが、精液の匂いは感知できませんできた。やはり、養育園の女の子のみを狙った犯行だと思われます」

「健康的な大人、か」

 カインズは手を顎に当てて思案顔をした。

「安心して下さい。兄上の精液の方が健康的でいい匂いですよ」

「……何でボクの精液の匂いを知ってるの」

 レイティアの爆弾発言に、戸惑いを見せるカインズ。

「毎朝兄上のパンツを拝借して、嗅がせて頂いてますから」

「何やってるのさ! 道理で最近パンツがなくなる訳だ!」

「兄の健康を確かめるのも、妹の役目ですから。昨日はお元気でしたね。一週間ぶりですか」

「そんな役目無いから! やめてよ!」

 衝撃の事実。カインズは妹に夢精頻度を把握されていた。

 兄妹間で疚しいことをしてないか、疑問を抱く会話である。多分してないだろうけど。


「その話はこれくらいにして、犯人探しを再開しましょう」

 ファティオが手を叩いて、話題を元に戻した。

「健康的な大人となれば、多くの男性が当てはまりますね。もっと犯人候補を絞れたらいいのですが」

 すると、ユリーナが挙手して発言した。

「養育園の子供だけが狙われたのなら、犯人は養育園の先生かもしれませんね」

「確かに。精液の匂いが残っているということは、犯行は最近に行われたということになります。短い期間に14人もの乙女が狙われたんです。外部の人間に犯行は難しいと思います」

 ユリーナの意見に、レイティアも賛同した。

 バレないように犯罪を行うには、それ相応の準備が必要だ。外部の人間が養育園の児童を狙うのなら、犯行の時間や場所などを決めるのに時間がかかるだろう。

 では、園内の先生ならどうか。先生なら、児童が一人になるタイミングも知っているだろうし、被害者の関係者にバレにくい場所も選びやすい。被害者の女子に口止めもしやすいだろう。

 短期間の連続犯行もしやすい。

「となると、怪しいのは件のイケメン先生か。彼なら巧みに女の子を騙して、犯行に及べそうだ」

 イケメン先生が「いい所があるよ。ついてご覧」と言うだけで、一目につかない場所に幼女を誘き出せるはずだ。

「園長先生も怪しいですよ。カウンセリング室は完全防音で、しかも一対一で話すそうじゃないですか」

 ユリーナの意見も一理ある。カウンセリング室で犯行に及べば、外に音を漏らさずに事を終えるのも可能だ。

 どちらにしても証拠が無い。調査を続けて証拠を掴むしかないな。


 園内に鐘の音が鳴り響き、閉園時間になった。

 すると、ファティオがキョロキョロと周りを見始めた。

「どうした?」

「いえ、普段なら閉園時間になると、コフィンとグレイブが真っ先に僕の元に来るはずですが」

 しばらく待ってみたら、グレイブ君だけがファティオの元にやって来た。

「グレイブ。コフィンはどこにいったの?」

 ファティオが尋ねると、グレイブ君は拙い発音で答えた。

「コフィンおねえちゃんなら、えんちょーせんせーのとこいったよ」

 場に緊張が走った。

 園長先生……。三歳の女子……。カウンセリング室……。

 まさか……!

 俺の思考が構築されるより先に、ファティオは走り出していた。行き先は養育園の室内……カウンセリング室。

「グレイブを頼みます!」

 そう言い残して、ファティオは走った。一切の余裕を感じさせない、猛ダッシュだった。

 俺はグレイブ君をおんぶして、残ったメンバーに言い渡した。

 最悪の不安が的中しないことを祈りながら。

「俺達も行くぞ!」

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