第51話 「繋がった思い出」
屋敷の庭に、一組の男女が立っていた。ソフィー・クロシアとテリー・クロシア。
一度は離れてしまった二人。だが、再びこの屋敷で会うことが出来た。
太陽が二人を照らし、温かい空気が包む。
そこは、とても静かな空間だった。
「……………………」
「……………………」
ソフィーもテリーも言葉を発しない。手が届く距離で向かい合っているのに、まるで遠く離れているようだ。
俺達クロム隊は、その様子を近くで見守っていた。
「ごめん」
先に口を開いたのはテリーだった。
「自分のワガママばかり言って、君の気持ちを考えもしなかった。リオンを独り占めするような真似しちゃって……。本当に、ごめん」
テリーはソフィーの目を真っ直ぐ見て話した。
「こっちこそ、ごめんなさい」
ソフィーもまた、口を開いた。
「最初、あなたのことを色眼鏡で見てた。この人もどうせわたしを愛してない、って。でも、アイズの人のおかげで気付いたの。テリーの本当の気持ち。あなたの愛を」
「ソフィー……」
テリーの顔がゆるやかに明るくなっていった。
「もう他の男と寝たりしない。あなただけのわたしです。だから、一緒にいて下さい」
ソフィーはペコリと頭を下げた。
テリーも同じく頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
テリーはソフィーにリオン君を手渡した。
ソフィーはリオン君を受け取り、優しい笑みを浮かべた。
「おかえり、二人とも」
リオン君は戻ってきたし、夫婦間のいざこざも解決したみたいだし、これで一件落着だろう。
「ソフィーさん。俺達はこれで失礼します」
「はい。お世話になりました、クロムさん。それに、エリックさんも」
ソフィーがエリックの方を向くと、エリックは顔を赤らめて「あ……はい」と頷いた。妙な反応だな。
俺は振り返り、クロム隊メンバーに呼びかけた。
「任務終了だ。これよりアジトに帰還する」
俺達5人は屋敷を後にして、アジトへと向かった。
* * *
アイズが屋敷を去った後、ソフィーとテリーは今度について話し合った。
まず、この屋敷は売り払うことに決まった。馬鹿でかい屋敷なので、維持費が尋常じゃないのだ。家族9人で暮らせる家を探して、そこに引っ越すことになった。
子供達の何人かは、ラトニアの保育施設に通うことになった。ソフィーは「子供達の世話は自分一人で出来る」と言ったが、テリーは「他の家の子供達と触れあうことも大切だ」と言い、幼い子供達だけ、保育施設に行くことに決まった。
ゴタゴタしながらも、充実した日々。ソフィーは今、確かに幸せであった。
新居のリビングで、ソフィーは写真の修繕に勤しんでいた。クロム達に渡した、四辺を切った写真である。
「出来た!」
テープで写真の切れ端をくっ付け、元の姿に戻った。
写真には、ソフィーとテリーが並んで立つ姿が写っていた。笑顔で楽しげな、思い出の姿が。
「ママー。テリーパパが呼んでるよ」
ソフィーの娘が、ソフィーの袖を引っ張った。まだ9歳の長女は、人懐っこくて甘えん坊だ。義理の父親であるテリーにも、すぐ馴染んだ。
「うん、今行く」
ソフィーはリビングを出て、最愛の夫の元へと歩いた。
* * *




