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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
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第43話 「拐われた赤子を探せ」

 お待たせしました。連載復活です。

 カインズとの模擬戦闘から一週間後。

 ラトニアに住む女性から、任務の依頼が来た。

 「息子が誘拐されたので、探しだして欲しい」と。

 人口が少なくなったこの時代では、誘拐の件数が多い。性奴隷を求める富豪や、社員を求める企業などが誘拐に手を染めるのだ。ユリーナだって、私立娼館に誘拐された。人さらいは至るところに存在するのだ。

 今回の任務では、ファティオは休みだ。ファティオは家族と一緒にピクニックに行く約束があるという。ファティオは2児の父親だ。父親たるもの、家族サービスを大事にしないとな。

 俺は快く休暇を受け入れた。

 別にファティオが役に立たない訳では無いが、ファティオがいなくてもクロム隊は動ける。一人抜けたぐらいで、任務に支障は無い。

 という訳で。

 俺、エリック、ユリーナ、カインズ、ミミの5人は、依頼主の住む家へと向かった。


 依頼主の家は、一言で言えば大きな屋敷だった。

 一般の住宅が十個以上すっぽり収まりそうな程の広い敷地に、高級感溢れるお屋敷が建っていた。俺達のアジトなんか比べ物にならない程大きい。だが、その全貌は拝めなかった。お屋敷の上部が見えるだけである。何故なら屋敷は2メートルぐらいの石壁で囲まれており、外からは内部がよく見えないようになっているからだ。石壁を一周してみたが、随分時間がかかってしまった。

 現在俺達は、屋敷の正門の前に立っている。

「金持ちのお屋敷って感じだな。カインズの実家もこんな感じか?」

 俺はさりげなくカインズに聞いた。

「雰囲気は似てますね。ハルバート家のお屋敷はこの五倍くらい広いですが」

 カインズの口調に、自慢気な様子は無い。


 俺は正門にあるインターホンを押した。数秒後に、インターホンから若い女性の声が聞こえた。

『はい、どちら様でしょうか』

 多分この人が依頼主だろう。

「アイズの者です。依頼を受けて来ました」

『ああ、少々お待ち下さい』

 正門がゆっくりと内側に開き、俺達が屋敷に入れる状態になった。

『どうぞ、お入り下さい』

 遠隔操作で扉を開けたのか。俺達は正門を通り、屋敷の庭に足を踏み入れた。

 俺達5人が全員入った後に、扉が閉まって元に戻った。

「うわー。広ーい」

 ユリーナが声を漏らして辺りを見渡した。確かに、広い庭だった。よく手入れされた芝生や、小綺麗な石の道や、謎のオブジェが目に映った。

 正門から玄関までが遠いな。歩いて3分はかかりそうだ。

「うーむ……」

 エリックが思案顔で石壁の辺りを見ていた。

「どうした、エリック」

「いや、随分立派な防犯装置使ってんなー、って思ってよ」

 防犯装置?

 石壁の上部を見ると、謎の小さな機械が置いてあった。黒い箱のような形だ。

「あれは結構高価だからな。一般住宅にはまず使われねぇやつだ」

「どんな機械なんだ?」

「目に見えない光線を張り巡らせて、それに誰かが触れたら警報を鳴らす物だ。あのタイプなら、俺達の真上に張り巡らせてあると思うぜ」

 俺は上空に顔を向けた。今、目に見えない光線が上を覆っているのか。

 もし、今カインズが大ジャンプをしようものなら、その光線に当たって警報が鳴るということか。


 玄関に着くと、一人の女性が出迎えてくれた。エプロン姿の若い女性だ。使用人とかメイドとかだろうか。それとも主婦か。

「皆様よくいらっしゃいました。わたしが依頼者のソフィー・クロシアです」

 インターホンの声と同じ声だ。ソフィーは薄い黄色のロングヘアーで、まだ二十代くらいに見えた。女らしい顔立ちで、美人の部類だろう。

「どうぞ、おあがり下さい」

 ソフィーは玄関扉を開けて、俺達をいざなった。

 ソフィーの案内を受け、客間に俺達が集まる。高級そうなテーブルと椅子がある、これまた広い部屋だ。ソフィーとクロム隊メンバーは、席に着いた。

 俺達は軽く自己紹介を済まして、本題に移った。

「あなたの息子さんが誘拐されたそうですが」

 俺が話を切り出すと、ソフィーは悲しそうな顔をした。

「そうなんです……。息子のリオンが、知らない男に連れ去られたんです」

 ソフィーは当時のことを思い出したのだろう。目にうっすらと涙を浮かべ、辛そうな表情だった。

「詳しくお聞かせ願えますか」

「はい。あれは昨日、リオンと庭に出ていた時のことでした。半年前生まれたばかりのリオンに、庭の景色を見せてあげようと思ったんです。でも少し目を離した隙に、知らない男がリオンを奪い去って行きました。慌てて追いかけましたが、駄目でした。警察にも相談したんですが、まともに相手してくれません。そのうち見つかるだろうって。リオンがいまどこにいるのか……心配でなりません」

 ソフィーは顔を手で覆って、泣き始めた。

「赤ちゃんを拐うなんて、許せないです!」

 ユリーナが怒りの表情を浮かべた。確かに赤子を母親から奪うとは、悪質だな。ユリーナは誘拐された経験があるから、余計怒りが湧くんだろう。

「ソフィーさんとリオン君の他には、どなたが住んでるんですか?」

 ソフィーの涙が収まった頃に、カインズの質問だ。

「わたしと、リオンと、あと6人の子供達がいます」

「他には? 旦那さんとか、使用人とかは」

「いえ、いませんけど」

 この広い屋敷に8人で暮らしてるのか。30人は住めそうだが。

 いや、それより7人の子供を一人で育てていることに驚くべきか。

 それと、旦那がいないことも気になるな。複雑な家庭の事情か?

「ソフィーさんってお金持ちなんですか?」

 ユリーナが無遠慮に聞いた。ソフィーは戸惑いながらも、答えてくれた。

「いえ、わたしではなく、父が資産家でして」

 父親が屋敷に住んでいないってことは、父親はもうお亡くなりになったのか?

 その辺りは深く聞かない方が良さそうだな。

「では、俺達は屋敷内を見て回ろうと思います。犯人の侵入経路などを調べたいので」

「はい、構いません」

 ソフィーの許可が得られたので、捜索開始だ。屋敷での捜査が終わり次第、街に出て聞き込みを行おうと思う。


 リオン君誘拐事件の捜査。

 任務開始だ。

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