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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
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第20話 「ドラゴンの死体」

「ドラゴンを復活させた方法については、ご存知ですか?」

 トーマスはパソコンをいじりながら俺達に質問した。

 そんな専門的な知識知ってる訳ないだろ。誰もが首を横に降った。トーマスは解答を述べた。

「極秘のルートで入手したドラゴンの死体から、DNA情報を手に入れたんです。それを解析し、複製しました。世間一般では、クローン技術と呼ばれるものです。厳密に言えば、少し違うのですがね。元のDNAを多少いじくってます。簡単に言えば、このブラッドドラゴンは、大昔に生きていた個体の分身みたいなものですね」

 なるほど。半分くらい理解できた。

「ドラゴンってすっごく強いんですよね。逃げ出したりしないんですか?」

 ユリーナが挙手して質問した。トーマスはブラッドドラゴンの首輪を指差した。

「あの首輪で繋がれてる限り、大丈夫です。特注品の頑丈な首輪ですから。このガラスも、強化ガラスなので」

 トーマスがコツコツ、とガラスを手の甲で叩く。ガラスに囲まれているブラッドドラゴンは、逃げ出す素振りも見せなかった。

「ブラッドドラゴンは火を吐きますが、ガラスを溶かせる程の量は出せません」

「血を操る竜だと聞きましたが、具体的にはどのように操るのですか?」

 ファティオも挙手して発言した。

「いい質問ですね。ブラッドドラゴンは、体内の血液の物質の濃度を操れるんです。例えば、一瞬にして鉄分の多い血に変えたり、酸素を多くしたりできます。また、ブラッドドラゴンの血液は、空気に触れると急激に固まります。怪我で出血しても、すぐに傷口が塞がるんですよ。熱に触れるとまた流動体になるんですがね」

 トーマスはすらすらと説明する。やはりプロの研究家の知識は深い。

 なんか質問を続ける流れだったので、俺も気になることを一つ尋ねた。

「この研究所には、監視カメラは無いのでしょうか」

 ルクトシンの街に入ってからずっと、監視カメラが無いかを調べてたのだが、一向に見当たらない。機密情報を扱うのなら、あってもおかしくないはずだ。(もちろん監視カメラがあって困るような行動をするつもりは毛頭無いが、周りを警戒する癖があるので、気になってしまった。)

「ありますよ。ただ、天井と一体化してるので、分かりづらいです」

 よくよく天井を観察してみた。ああ、確かに。天井の一部分に違和感がある。パッと見れば他の天井と全く変わらない見た目だが、その部分だけ小さな黒い球体が付着していた。あれが監視カメラか。きっと、最新の技術を用いたものだろう。

 監視カメラを見つけられなかったなんて、俺の警戒力も大したものじゃないな。ユリーナに偉そうに言った割には、修行が足りない。

 最後に、カインズが質問を投げかけた。

「ドラゴンの研究を行っているのは、ここだけですか?」

 トーマスは少し間を開けて、「はい、そのはずです」と答えた。

 その回答に、微かな嘘の臭いが感じ取れた。


 今日は襲撃者は現れなかった。夜になって、研究員が寄宿舎に帰りだした時、俺達も寄宿舎に案内された。寝食の場として、寄宿舎の一部を貸してもらえるそうだ。

 野宿の準備はしてきたが、必要なかった。ありがたい。

 部屋は殺風景で質素だったが、ベッドなどの必要アイテムはきちんと揃っていた。

 使える部屋は2つだけだったので、女子部屋と男子部屋に分けた。

 俺、ユリーナ、ミミが泊まる女子部屋。

 エリック、カインズ、ファティオが泊まる男子部屋。

 俺が女子二人と一緒に女子部屋に入ろうとすると、男性研究員に不審な目で見られた。俺が男だと思われてるからだろう。

 今頃その男性研究員は、妄想逞しくしているかもしれない。

 誤解は解……かなくていいか。面倒臭い。

 ユリーナが一緒のベッドで寝ようとしつこく誘ってくるので、それを断るのがまた面倒臭い。

 「大人しく一人で寝てろ」と言ったら、「そうですよね。ミミさんが見てる前なので、やめときます」と返された。

 一方ミミは、いち早くすやすやと寝た。

 俺は辺りを警戒しつつ、ベッドに潜った。


 今日は何事もなく一日が終わったな。任務終了まで、トラブルが起きないといいんだが。


 そんな俺の淡い期待は、翌朝に打ち破られた。

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