第11話 「二人の悪党」
蜜の楽園の入り口。ガンダス・ジルガリオは意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がった。体の節々が痛い。ガンダスは状況を確認し始めた。
アイズの隊員2人と戦って。
黒色の長髪の隊員の攻撃を食らって。
気づいたら地面に倒れていた。
「あ、あの2人は!?」
ガンダスは慌てて周りをキョロキョロと見渡したが、誰一人としてそこにはいなかった。ガンダス以外は。
「くそっ! 足止めし損ねたか!」
任務失敗だ。サジェッタは上手く任務をこなせただろうか。
落ち込むガンダスの元に向かって、遠くから走ってくる一人の女がいた。
ガンダスはそれに気づいて目を細める。
「誰だ?」
その解答は、すぐに明らかとなった。
「ガンダス! テメエ、アイズのクソヤロー共を取り逃がしてんじゃねーよクソッタレ!」
ガンダスの腰くらいの高さしかない小さな身長。それに相応しい貧相な胸。鋭く大きな目。赤い三つ編みのポニーテール。年齢にそぐわない童顔。汚い口調。
紛うことなく、サジェッタ・ナリエシルだ。
サジェッタはガンダスの近くまで来ると、小さい足でガンダスの膝を蹴った。
「痛っ!」
「ケッ、雑魚が。テメエみてーな役立たずがイーヴィル・パーティーの一員だと思うと寒気がするぜ」
「そういうサジェッタはどうだ。上手くいったか」
「思い出させてんじゃねぇぞヒゲ! ああそうだよ! 任務失敗して無様に逃げ出したよ! 馬鹿にすんなら馬鹿にしやがれ!」
ガンダスは困り顔をしながら顎の髭を触った。
サジェッタはサジェッタなりに失敗を反省しているのだろう。
自分より年上のサジェッタが可愛く思えた。恐いけど。
「サジェッタは悪くない。俺も失敗したからな」
「悪党の言うセリフじゃねぇな。ふざけてんのか? それともイヤミか?」
サジェッタはさらに機嫌が悪くなったようだ。
サジェッタらしい、とも言える。
「ハルバート家のお坊ちゃんに邪魔されたんだよ。アイツさえいなけりゃ、アタイは上手くやれたのによぉ!」
「ハルバート家!? 超人ばかりがいるというあの貴族か! そんな奴がアイズにいるとは……。厄介だな」
イーヴィル・パーティーが悪事を続ける限り、アイズは敵として立ちふさがるだろう。そのハルバート家の男は、ガンダス達にとって強敵となることは間違いない。
サジェッタは、スタスタとどこかでへ歩き出した。
「サジェッタ、どこへ行く」
「ボスがお呼びだ。近々、ドデカイことをやらかすらしいぜ。ほら、行くぞ」
大きくて小さい男と、小さくて大きな女が、荒野を歩んでいた。