第3話 そんなにいいものじゃないらしい
「うっ、酒くさ……」
死ぬ間際に嗅いだ部長の口臭を思い出す。
《なんだお前もう……のか?酒弱いなぁ!》
《今日はオークを3体も……やったぜ!》
《俺はほんとは上位魔法が使えて……なんだよ》
この世界にも、こういった感じの人達っているんだな……
よくは聞こえないがおそらく”自慢”だろう
「あー!リルア帰ってきたんだ!!」
ギルドの受付のお姉さんが、金髪娘に向けて大きく手を振っている。
「別にー、てかなんか今日うるさくない?」
「あーっ、今日はゴルドさんが帰ってきてて宴になっちゃったとこ!」
「えー、ゴルドいるの……?あいつ、◯ー◯ーのくせに暑苦しいから苦手なんだよね」
ミーハー?
なんて言ったかうまく聞き取れなかったが、きっと悪口なのだろう。
「あ、それでさ、クエスト帰りにこの子が襲われてて相手が雷化した狼だったの」
「え?そんなのDランク相当じゃない。いまのあなたじゃ倒せないでしょ?どうしたの?」
「あー。それはこっちの男の子が倒してくれたからいいんだけど雷化してたってのが気になって」
驚いた表情をしたのち、俺の方をチラ見。
すぐに視線を戻し彼女は続けた。
「そうね……その辺りで狼も珍しいけどサンダーウルフは初めて聞いたかも……」
あいつサンダーウルフっていうのか、俺のカミカミ……
「でしょ?誰か冒険者が、襲われて食べられたってことだから、それも情報集めてほしいの」
えっ?魔物って人間喰うのかよ!?
そ、そうですよね?あの牙と爪ですもんね……
「あとは、緊急で討伐しちゃったから報告ってところかな。この男の子、冒険者登録してないみたいだから、お願いしていい?」
「おっけー、任せといて!じゃあ白髪の僕、こっちにきてくれるかな?」
おいおい、このお姉さん金髪娘より子供扱いしてくるんだが?
まぁ、お姉さんは許してやろう。絶対俺よりは歳下だけど。
「登録って何すればいいんだ?」
「このカード渡したら終わりー!これで登録できるよ!」
なにこれ、真っ白で何も書いてないんだけど?
「このカードに魔力がある人が触れると、勝手に名前とか持ってるスキルとか、色々浮かびあがるの。とりあえず受け取って」
そんな便利なものがあるのか。
言われるがままに俺は受け取る。
名:ヒロト=ペイシェンス(12)
スキル:誇示超越
ランク:E
ぺ、ぺいしぇんすぅー?何それ美味しいの?
それに、誇示超越……何度か聞いてるやつだ。
って待てまてまて!!12……?俺、12歳ってこと!?
道理でガキ扱いされる訳だ!
どうりで目線が低くなってる訳だ!!
目を背けていたのにカードのせいで強制的に理解させられた。
理解した瞬間、ついでに声が高くなっているのにも気付いた。
このことには今気づいた。うん、バカなのかなぼく。
「なにこれー?誇示超越だって!固有スキルかな?とにかくレアなスキルだよねきっと!」
受付のお姉さんはキラキラとした目で俺の目を見てくる。
「まーた、新人か。しかもまだ子供じゃねぇか」
「げっ……きた」
近くに褐色の大男が近寄ってくる。
大きく盛り上がった筋肉だけで50キロはありそうだ。
リルアの反応を見る限りこの男がゴルドだろう。
「悪いことは言わねぇから冒険者になるのはやめときな」
「それにお前さんの為にも言ってるんだぞ?さっきの話も聞こえたんだが、雷化狼もいたんだろう?ときどき出てくるんだよ人を喰う魔物がな」
うんうん、確かにそれはごめんだ。食われたくはない。
「あとは、俺達自身の為でもある。雷化は能力だからまだいいが、そいつらがもっと人を食い魔力を持つと知能を得る。そうなりゃ、通常の冒険者じゃ太刀打ち出来ん」
知能まで持つだと?怖すぎる無理むりムリ。
「冒険したい訳じゃないのでそれなら遠慮しときます。クエストとかもよく分かんないんで」
いや、待てよ……?今の俺は世界最強だった。
どんな魔物がきても無双できるはずだ。
「その判断は間違ってな……」
「やっぱなります冒険者」
大男の言葉を遮って俺は続ける。
「その雷化狼だか、サンダーウルフだか知らないっすけど倒したのは俺です。仮に知能を持ったとしても倒せます。何せ一撃だったので」
「お前さんが雷化狼を一撃で……?」
「冗談はよしてくれ、俺ですら倒すのに3発は必要だ。そんなに自信があるなら、俺と手合わせしてくれよ」
来た……
お約束ってやつだ
俺が力を発揮して、ここにいる全員が「まじかよ……」って流れに違いない。
「さて、早速やるか」
大男は、変わった構えを見せる。
足は相撲取りのように開き、左手はやや前に出している。
《やれやれー!》
《本気は出すなよー!》
《本気だしてギルドごとぶっ壊しちまえー!》
「実際はな……有望な冒険者が増えるならそれは嬉しいことだ。ただな、お前さんみたいにヒョロいガキは死ぬだけだ。それを何度も見てきてる」
あれ?もしかして意外とこのおっさんいいやつなのか……?
「ちょっとだけ痛い目見せるが泣くんじゃないぞ?」
俺は身構える。
技は今のところ短剣のしか使ったことない。
武器はない、どうする。どうすればいい。
「ふんっ……!!!見ろこの筋肉、昔はこれで魔物を素手で倒したもんだ」
ーーオートスキル発動ーー
誇示超越
身体が熱くなる。
背中から熱い液体を流し込まれたかのように内側から熱を帯びる。
熱い、ただ嫌な感じはしない。
みるみるうちに俺の身体が大きくなっていく。
筋肉が肥大化していく。
だんだんと、ボロ雑巾とも区別がつかない服がきつくなっていく。
「あっ……ちょっとまって」
パァンッ!!!
服が弾け飛んだ。
その音に反応し、周りの人間の注目を更に浴びる。
受付嬢は手で目を覆い、リルアは軽く顔を背け、幼女は指をさしながらケラケラと笑っている。
あっやべ……ちょっとなきそ。
「……」
「…………」
えっと、あの……誰か俺のスキルもらってくれませんか?




