第26話 第三勢力
彦根からしばらく湖沿いに南下していたが、それまで陽気にはしゃいでいたノブの顔つきが急に険しくなった。取り立てて目立つ物もない、廻りには田んぼの多い地域だ。
「ここなのか?」
俺の問いかけにノブが無言で頷いた。ここがノブの目的地。
「ミー助、俺はこれからどうすればいいと思う?」
不安そうにノブに聞かれるが、正直わからない。でも、この地を探すために俺たちは積極的に何かをしてきたわけじゃない。思うように行動してきただけだ。
「この辺りでしばらく留まって、情報を集めよう」
そう言って近くの河原まで移動すると、痩せた黒猫が蹲っているのを見つけた。
「おい、どうしたんだ?」
「ぅわっ!! 驚かすなよ。なんでもないぜ、オイラ泣いてなんかいないさ」
(肩をブルブル震わせて、絶対泣いてたじゃん)
「そうか、悪かったな。なにかあったのか?」
「別に~ キングさんにやられたとかじゃないし~」
「キング?」
「やべっ!」
ちょっとおかしな猫だが、トウキチという名前の地猫だと言う。
「俺たちは流れ猫なんだが、この辺りの猫の様子はどうなんだ?」
「ここはさ、関西や東海、北陸、いろんな所から猫が流れてくる。地猫と流れ猫、流れ猫同士、ギスギスしてるぜ。言わば猫のるつぼさ。」
風来坊のフウタが言っていた土地はここのことかもしれない。
「でも、お前はいいヤツそうじゃないか」
「オイラは争いごとが嫌いだからな。強い猫には逆らわないようにしてひっそり生きてるんだ。弱い猫はみんなそうさ」
「弱い猫は大変だな。さっき、泣いてただろ?」
「泣いてなんかいないさ、でも、キングさんにちょっとね…」
「そのキングってやつは強いのか?」
「あぁ、この町で一番強い。絶対に逆らっちゃいけない猫だ」
ノブがこの町に腰を落ち着けるのだったら、強い猫は避けては通れないだろう。
「他に強い猫はいるのか?」
「ずる賢いのはブライ。こいつは本当は強くないんだけどさ、ヤスケって強い猫を味方につけてるんだ」
トウキチの話を整理すると、この町はキング派とブライ派が二大勢力で、他の猫は日和見的にどちらかに寄せているということらしい。ちなみにトウキチはキング派だ。
「よし、俺がこの町の第三勢力になってやる。トウキチ、お前は俺の見方だ」
「ひぇ~っ!」
自分のする事が見えてきたノブの顔が生き生きとしてきた。
「面白くなってきたじゃな~い!」 (天海祐希風に)
もちろん、俺もランマも付き合うつもりさ。




