第01話 旅の始まり
通りに面した道の駅。
俺は、駐車場の端に掲示されている観光案内の看板を眺めていた。辺りはすっかり暗くなっていたが、ライトに照らされた要所のイラストや道などは、文字の読めない俺でもわかる。今まで来た道を、このまま東へ向かえば大丈夫そうだ。
俺は出雲で生れ落ちたノラ猫。
しかし、なぜかわからないが前世の記憶が残っていた。前世…それは、富士山の見える土地で、飼い主に看取られながら寿命を全うした、茶々丸という名前の柴犬。
『俺は一生を懸けてでも、飼い主の日和に会いに行く』
それが、前世の記憶が蘇った瞬間に心に誓ったことだった。
- 犬が猫に生まれ変わって、それで元の飼い主に会いに行くって?
ー 人間にそれを伝える術も持たないくせにっ!
誰かに話せば、きっとそんなことを言われるだろう。そもそも、転生したなんてこと、信じてもらえるはずもない。だから、俺はその決意を誰にも話さないまま今日まで過ごしてきた。
ただ、日和に会いに行くとイキったところで、歩くのもおぼつかない身体で冬越えの旅はさすがに無理ゲーだ。そう思っていたところに、運よくひかりちゃんに出会い、今日まで飼ってもらっていたんだ。
そう、今日まで…
今日、俺はひかりちゃんファミリーにはお別れを言わないまま、町で出会った仲間たちに見送られ、家を出てきた。
生まれてからひかりちゃんの家に飼われ、町の猫たちと出会った話は『出雲編』に詳しく書かれています。まだご覧になっていない方は、先に読んでいただくことをおすすめします。




