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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第2章 魔術研究所
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魔力許容量

僕は瞳の色に無邪気に興味を示すアリアにすっかり翻弄され、クタクタになっていた。僕は夢中になると周りが見えなくなるとチェスターによく注意されるが、アリアも同類のようだ。


「ライナス様、どうされたのですか?」


さっき顔を近づけ過ぎていたことも気づかないまま、疲れている僕を気遣ってくれた。


「いや、なんでもないよ。そういえば教授、もう一つの水晶玉は?」


僕がアリアの問いをはぐらかしたことに気づいている様子のレイドナー教授は、少し笑いながら僕の質問に答えてくれた。


「魔力許容量を測るものです。魔力量とその許容量は別物なのですよ」


「別物とは?」


「実際に見ていただくのが一番なので、アリア、測ってくれるか?」


「はい」


アリアが水晶玉に両手をかざすと……


水晶玉の底から水が溜まるように光が満ちてきて、あっという間に溢れ出した。僕は驚いてそれを避けたが、水が溢れたわけではなく、光の(もや)が水晶玉の上の方から湧き上がっているようだった。


「これは………?」


「授かった魔力がアリアの許容量を超えているということです」


「それは、大丈夫なのか?」


心配になりアリアの顔を見ると、困ったような顔をしていた。


「あまりよろしくない状態です。やはり許容量以上の力を持つことは体にも負担がかかるようですね」


「あの丘から帰る時にかなり疲れていたが、いつもあんな感じなのか?」


「できるだけ疲れが出る前に切り上げるようにしてはいるのですが…」


教授も曇った顔で話をしていたが、急に僕の顔を真っ直ぐに見て言った。


「しかし、殿下の許容量に可能性があるかも知れません」


「私の⁈」


「はい、そうです。ここに手をかざしていただけませんか?」


僕の前に水晶玉がずいっと押し出された。


先程計測した自分のわずかな魔力量を思い出し、半ば諦めのため息を吐きながら水晶玉に手をかざした。


じわっと底に光が溜まり………すぐに止まった。


「やっぱり、少ないじゃないか…」

「やっぱり、かなり余裕がありますね!」


「えっ?」


僕は湧いてきた魔力が少ないことがどうしても気になってしまったが、教授は違った。


「もしかして…、空いている部分の方が重要なのか?」


「その通りです!これだけ空いていれば、アリアの魔力を殿下に移すことができるかもしれません」


「そうなのか!それで、どうやって移すんだ⁈」


「それはまだこれから……」


今すぐにでも僕に移してもらおうと前のめりになった体勢からずっこけそうになった。


「そ、そうか。わかったら教えてくれ。いつでも協力する」


「ありがとうございます。引き続き調査を続けます」


教授との話が終わり、自分の執務室へ戻ろうと立ち上がった時、袖がつんと引っ張られた。


「ん?どうした、アリア?」


アリアはハッとして僕の袖を掴んでいた手を離した。


「ごめんなさいっ!」


無意識に掴んでいたようだ。それだけ不安に思っているということだろうか。


「不安に思うことがあれば、一人で抱え込まずに言ってほしい。必ず時間を作って聞くようにする。アリアの溢れる魔力を僕が引き受けられるかもしれないとわかって、少しでも君の力になれるかもってすごく嬉しいんだから、遠慮はいらないよ」


「……本当?」


「ああ、僕のできることなら力を貸すから、まずは言ってみてよ」


「ありがとうございます、ライナス様」


アリアの表情が少し柔らかくなった。

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