第1話 うちの子
「大将、坊が炭焼き窯を作れ言うんやが」
「へ?なんやそれ」
「木炭が欲しいて」
「三吉、おめえ炭焼きを教えたんか?」
「うんにゃ、独り言で・・・粘土があった場所でつい、それ聞いてたかも」
「和言葉で?」
「へえ」
「そんなに教えとらんのにな、テキアンノにべったりだと思ってたんに」
「あちこちで誰彼のう聞きまわっとる、大陸言葉も通じとるみたいやで」
「坊は天才やないか?」
「猪之助もそう思うかや」
「ああ」
「で、どうしまっか?」
「カラプトのコタンでもやったんや、越冬なら煙の出ない木炭は欲しいで」
「う~む、テキアンノも動けなくなるしのう、三吉、何人欲しい?」
「10人ぐらいあればすぐできるわい、去年は粘土も見つけたわい」
「ならすぐに取りかかってくれや」
「へい」
(ワイは安倍傳二郎、安東氏の庶流で若狭海賊の次男や、敦賀湊の高嶋屋伝右衛門に雇われ護衛任務の小早の大将やった。
5年前、僚船を逃がすために海賊2隻を足止め、かろうじて撃退したんやけど、舵も帆も失い沖の海流に流されよったわ。
こときれた3人は泣く泣く海に流し、生き残った8人と辿り着いたのはカラプトモシリの海岸やった。
親切なアイヌのコタンに助けられ、ワイは長の末娘テキアンノとできて息子が生まれ、他の奴らもや、そこで暮らしをたてると決めた。
伝手を頼ればカラプトモシリの北端から大陸に渡れる。
大陸出のホンジや王寧に薦めたが、一生ワイについていくと嬉しいことを言ってくれたんやわ。
アイヌ人はワイのことをウタリアンと呼ぶ。
多くの仲間がいる男という意味や。
妻のテキアンノは織物が上手で手先が器用な女という意味や。
ちょっと力が強くてたくましいがいい女や。
修理の終わった船やコタンの船で交易に力を入れ、ヤウンモシリ(本島)に我らの拠点を探してオタ・オル・ナイに良い天然湊を見つけたのが去年のことや。
今年は妻子も連れて3隻25人で遠征してきた。
アイヌ交易を独占している蠣崎の目を盗んで敦賀の高嶋屋伝右衛門を引き込もうと考えているが・・・)
「チセ(家)も作らなくちゃだけどな」
「坊が泥でなんかつくってやしたよ」
「へ?」
あまりアイヌのことを知らないのに書いてしまいました。
至らない表現もあるかも知れませんがご容赦ください。