深夜の話
「スカイさん、少しよろしいですか?」
夜、コアは寝てしまって俺が見張りをしているとき、フェーラーに声をかけられた。
コアのことだろうな。
「ああ。大丈夫だ。」
「コア様が起きていると、話しづらいので今はなさせていただきますね」
フェーラーは俺の隣に座ると、こう前置きをして話しだした。
「恐らく、コア様は自分の名を名乗らなかったでしょう?」
「名乗らなかったが、それが?」
フェーラーの自己紹介のときに、オスフェリア家に仕えていると、言っていた。
つまり、コアの家名はオスフェリアだ。
コアは、お兄さんが見つかってから話すと言っていた。だから、余計な詮索はせずにいくつもりだったんだがな。
人間言いたくないことなんてたくさんあるんだし、オレにも言えないことはたくさんあるから当たり前というか。
「スカイさんは知らなかったので、何もわからなかったようですが、オスフェリアは、有名な家なのです」
有名なのか。だからあのとき、聞いたことあるような気がしたんだ。
「それで?」
有名だから何なのだ。
「有名というか、オスフェリアは一国の王家なのですよ」
「王家、か。だから?不敬罪?誘拐罪?」
時間はいくらでもあるんだ、捕まっても数十年すれば出れることだしな。
「違います、オスフェリアが王家と聞いて他に何か、感じられませんでしたか?」
フェーラーはなにを俺に求めているんだ?オスフェリアと聞いて、王家と聞いて?他に何を考えろって、感じろっていうんだ?
……した……。した?
頭が締め付けられるように痛くなって、記憶がフラッシュバックする。
なんなんだ。オレの昔と関係があるのか、そうなのか。
そして、フェーラーはそれをわかってのことか…。
「フェーラー、なんなんだこれは。フェーラーは何か知っているのか?」
オレがフェーラーにそう問うと、フェーラーは嬉しそうな顔をして答えた。
「スカイさん、いえ、スカイ様。貴方は、思いだされかけたのです。昔のことを」
フェーラー……?フェーラーは俺を知っている、なんで。
エルフだから、昔のオレを知っていたりするのか、それにしてもどうして今なんだ。
しかも、スカイ様って、オレは何者だったんだ、そして、オレは不老不死に近いからだなんて、オレは何者になってしまったんだ。
オレは何がなんだかわからなくなってきた……。気持ち悪い、頭が割れる。
「貴方の帰りを待っている方はたくさんいます。はやく、できるだけ早く思い出してください。」
フェーラー、痛い、痛い。頭をかき混ぜられているようだ。
なに、ただ見ているだけなんだよ。
「スカイさん?朝ですよ?」
コアの声とともに朝日が顔にさす。
俺はいつの間にか、気を失っていたようだ。
「フェーラーは?」
フェーラーがあのあとのことを知っているはず。詳しいことも知っているはず。
もしかしたら、オレがしねる方法のことも。
「フェーラー?誰です?」
「え……。昨日、いたじゃんか」
コアは、フェーラーを知らないというが、オレはしっかりと覚えている。
コアの昨日の反応は、フェーラーと親しいなかだったはずなのに、今のコアはそうだったという片鱗すら見えない。
コアの記憶の中に、フェーラーというエルフはいないとでもいうふうに。
「なんのことを言っているんですか。昨日は、なんにもなかったですよね?」
「……そうだな」
昨日のことは本当にあったんだと信じられなくなってしまう。何か信じられることがあればいいのに。
「そうですよ、ごはんの用意、してきますね」
そう言ってコアは、食料のところへかけて行った。
「とにかく、起きないとな」
そういえば、オレが気を失ってから誰がここまで運んだのだ。フェーラー以外に誰がいる?
毛布代わりの毛皮のマントからはい出ると、何かが手に当たった。
「なに、これ……」
それは、巻かれた羊皮紙だった。
その中身は……。
今日の朝ごはん
製作者:コア
材料:魚の干物 二枚
美味しい木の実 たくさん
作り方
まず、魚の干物を焼きます。
次に、美味しい木の実を煮込みます。
煮込んでドロっとした木の実を焼き上がった魚の干物にそえます。
完成!
本日の朝ごはん
魚の干物の木の実ぞえ