記憶の海―1―
結構間が空いちゃいましたね……。
オレは、リーデル家に長男として生まれた。そして、五年後に弟ができた。
オレの名前はスカイ。弟の名前はクラウド。
オレとクラウドには幼なじみがいた。男女の双子で、二卵性だというのにそっくりな顔をしていた。
名前は男の子ほうがオリヴァー、女の子のほうがアイビーといった。
幼いときというか、昔のオレは今みたいな性格はしていなかった。今は固まってしまった、と表現するべきか。
昔は自分で言うのもなんだけど、困っている人を放っておけなくて、手助けするために走り回っていた。毎日がたくさんの色で溢れていたんだ。
クラウドとオリヴァーとアイビーとオレとの四人でよく遊んだのを覚えている。
毎日のように街に遊びに行ったり、お互いの家に遊びに行ったり。ときにはいたずらを仕掛けられたこともあった。
もちろん遊ぶだけじゃなかった。
遊んでいいのは毎日の勉強が終わってから。
オレはリーデル家の長男だから、次の当主になることは滅多なことがない限り確実だ。
当主としての常識、マナー、帝王学など……学ぶべきことは当然だが溢れていた。
遊びで得ることができる充実感などは文句のないものだった。が、しかし。それ以上に次期当主としての勉強、周囲からの期待。ときにはクラウドたちの何気ないオレに対する言葉すらが重く感じた。
それはどうしようもないことだった。
だからなのか、オレは逃げ出したいと考えてしまった。
逃げ出したいなんて今までは考えたこともなかった。考えてはいけないことだった。
だって、オレはリーデル家の次期当主なんだ。
その重みにオレはなんとか耐えきった。そしてオレはリーデル家当主になった。
当主になって、いくらかは楽になった。
オレに対する期待は相変わらずだけど、その分やりがいがあったから。
オレが頑張ればその分だけオレのところに返ってくるんだから。それがなかった昔は嫌だったんだ。
クラウドも自分の仕事を見つけて頑張っていた。オリヴァーもアイビーもクラウドの仕事を手伝っていた。
それはごく当たり前のことで、仕事をしなければ生きていくことは難しいのだから。幼なじみのことを手伝うのは別におかしいことではない。
なにも変じゃない。
でもオレは、おいていかれたような気がしてしまった。
仕事の業績だけを見れば、オレのほうが上だ。なのに、あちらの方が楽しそうに見えて、急に自分がやっていることがくだらないと感じてしまう。
隣の芝生は青く見えるというが、そうだったのだろう。
そのときのオレは正確な判断をできなかったんだろう。
もっと仕事を増やせばちゃんと充実感を得ることができる。もっと……もっと……。
そうしようとすれば、身体が持たないのも当たり前で……オレは倒れてしまったんだ。
だけど、それでやめようとは思わなかった。そんなことより、丈夫な身体、倒れない体力、若さを求めた。
そうすると、それを実現するために、実現できる魔法を創り出そうとした。
その魔法はできてしまった。
今考えれば恐ろしい魔法だ。
"強奪"というもので、オレがほしいと思ったものを相手から奪い去ってしまうのだ。
奪い去るものは、物だけではない。若さ、体力、健康という概念のようなものも奪い去ることができるのだ。
オレは"強奪"を使って、色んな人間から色んなものを奪い去った。
それを当主がやっているとは言え、リーデル家の人間が放っておくわけがなかった。
そして、オレは――
メリークリスマス!




