昔話―森の中―
「カイルとコアは、一年の間が空いたが、二人とも無事にうまれてきたんだ……だが」
アッシュさんは幸せそうな顔をしながら今まで語っていた。
しかし、急に険しい顔になる。
♢ ♢ ♢ ♢
あれは、コアが五歳のとき。
コアはカイルとともに森へ出かけていった。
森はオスフェリアの庭みたいなもので、危ない場所じゃなかった。子供が普通に遊びに行けるような場所だったのだ。
コアとカイルが出ていったのは朝食が終わってすぐ。帰ってきたのは二日後の昼。
「父上、ただ今帰りました……」
「……」
コアはカイルに抱かれて帰ってきた。
齢では一歳しか変わらない、体の大きさもほとんど変わらない。
それでも、一生懸命抱いていた。
コアに意識はなかったのだ。
「ど、どうしたのだ。二日も……帰らずに!」
アッシュは叱るというよりも、帰ってきてくれたことが嬉しくて、声がかすれているようだった。
「カイル、コア。無事でよかった……!」
ワイテールは、その場に崩れ落ちてしまった。
「この二日間、僕とコアは、森の中の洋館にいました」
それから、カイルは二日間の出来事を細かく語った。
森に遊びに行って、帰ろうとしたとき、コアが予兆もなくくずれ落ちた。
呼びかけてみても、何も反応がなく、どうしようもなかった。
それから、なにんもできずにどうしたらいいのか、と考えているときに人が二人現れた。
その人たちは、成人するかしないかくらいの少年と少女で、少女がカイルに声をかけた。
「君たち、どうしたの。もう、暗くなるのに、帰らないの?」
「コアが、コアが目を覚まさないんだ」
やっとのことでそう言った。
「その子?……あら、危険じゃないの」
「ちょっと、そんなこと言ったら!」
少女の発言に少年のほうが止めようとするが、時すでに遅し。
カイルは聞いてしまったのだ。そして、幼い頭でもわかってしまった。
「う、うわぁーん……!」
カイルは一人でどうしたらいいのかわからない不安が、少女の言葉であふれ出してしまったのだ。
「うわぁ、ど、どうしよう!」
「どうしようって、とにかくだ。屋敷に連れて行こう。わかるかもしれない」
少女と少年は少しの間話し合って、とにかくカイルとコアを彼らの屋敷に連れて行くことにしたようだ。
カイルも、このままじゃどうしようもなかったため、この二人についていくことにした。
少し歩いたところに屋敷はあった。
「こんなところに屋敷なんでなかったと思う」
先程泣きやんだカイルが不思議に思い、口に出す。
「ここは、いつもは魔法で隠しているんだよ」
「すごいね。お兄ちゃんたち」
自慢気に話す少年にカイルは目を輝かせて笑顔を浮かべた。
「まあ、ようこそ。リーデル家へ――」
まだ、続きます。
あと一、ニ話くらいだと思います。




