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夕方の話し合い―1―

宿屋に泊まれません。


 さて、学園都市は平和なところだと思っていたんだけどな。


「なんだ?」


 オレは今、数人に取り囲まれている。

 

 歩いていたら、いきなり馬車が止まってそこの中から人がぞろぞろと出てきたのだ。


 ご丁寧なことに、貴族っぽい格好をして、人の良さそうな笑みを浮かべて。

 瞳の奥には何かを狙っている鋭い光がある。



「スカイ・リーデルだな?」


 髭をたっぷりと蓄えたいかにも偉そうな人が、オレの名前を呼び捨てた。

 ……初対面の人に呼び捨てにされるなんていつぶりかね。

 まあ、オレを初対面で呼び捨てにしたのなんてあの幼馴染だけだからな。


 名前はなんて言ったかな。


「誰、ですか」


 使い慣れない敬語を使いながら、ここに集まっている貴族っぽい人たちを観察する。


 ほんとはこんな人たち相手に敬語は使いたくないが、万が一、本当に貴族だったら困るからな。


「すまない、こちらが名乗っていなかったな」

 そうオレに詫て、男は名乗る。

「アッシュ・オスフェリアだ。コアの父親でオスフェリア王国の王をやっている」


 まさかのコアの父親登場か。


 なんだ?オレをどうにかしに来たのか?それともコアを自分で連れ戻しにきたか?


「君には二つ、用がある」

「コアの父親……わかりました」


 話をする価値はありそうだな。


 そういうことになって、オレはコアの父親の馬車の中で二人きりで話を始めた。


 周りの貴族っぽい人たちは無理やりついてきたコアが大好きな親衛隊の皆さんだった。

 驚くことに、貴族だけでなく、平民も親衛隊にいるそうだ。


 見ていると心配になるよな、コアって。



「それで、二つの用とは?」


「そんな、敬語じゃなくていい。普通に話してくれ、そのほうがこちらも気が楽だ」

 

 アッシュさんが告げた。


 無理に敬語を使っているのがわかったのか?

 とにかく、敬語じゃなくていいという許しを得たんで、オレは敬語を外した。


「わかった」


「ああ、それでいい。じゃあ、一つ目は質問だ」

 そう言って、アッシュさんは懐から絵を取り出した。


「……フェーラー……?」


 つい、口にしてしまったが、その絵はフェーラーの似顔絵だった。

 ひと目でわかる。


「やっぱり、知っていたか。一つ目の質問というのはフェーラーのことだ」

 あまり明るい話ではなさそうだな。


「フェーラーの、か」


「私はフェーラーに、コアを連れ戻しに行けと命じた。しかしだ、フェーラーは連れ戻しに行ったあと、一度戻ったっきり戻ってこないのだ」


 フェーラーは……、リーデルの命令を聞いて、それで、オレとコアのところへ来たからな。

 城に戻らないというのは予想してはいなかったが、ありえないことじゃないな。


「なにか、知っていることはないか?フェーラーは大切な執事なのだ」


「オレが、完璧に把握しているわけじゃないからすべてを信じはしないでくれよ?」


 オレはそう前置きをして、あの夜のことをアッシュさんに話した。

 

 話した内容も。全部。


「……まさか、フェーラーがそういうやつだったとは……」


 主の命令を無視するやつだったとは?

 普通の人はそう思うよな。


 リーデルの怖さを知らない人たちは。


「言ってくれれば、暇を出したのに」


 予想外だった。

 この人、寛大すぎるよ。


「それくらいだな。フェーラーのことは」

「うむ」


 アッシュさんは頷くと二つ目の用に入った。


「コアと、コアの兄であるカイルについて話しておこうかと思ってな」


 ……。


 気になってはいたけど、俺に言うべきことか?


「君は、常人ではないだろう?魔力も技術も、何百年も修行を積んだみたいだからな」


「……そう、感じますか」


「ああ。じゃあ、すこしながくなるけどいいか?」


 まだ、月が上り始めた頃。時間はたっぷりある。

 いいじゃないか。


「もちろん」



 一日遅れてしまい、すいません。

次の更新は予定通りに更新できると思います。


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