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地球さんはレベルアップしました!  作者: 生咲日月
第12章

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12-4 短期間訪問と空の旅

投稿が遅れました!

本日もよろしくお願いします。


 命子たちは上陸用の船に乗り込み、タウィワンの地に上陸した。


 これから乗員乗客の魔力が回復するまで休憩に入るので、その間、観光をするのだ。


 魔力を空にしているわけではないので、大体8時間後に出発となるうえに寝る必要もあるため、観光できる時間は4時間程度とかなり短い。

 ご飯を食べて、夜の街を見学して終わりといった感じである。


 さすがに世界的な英雄だけあって、命子たちの人気は凄まじかった。


 命子には言葉はわからないけど、自分たちの名前がそこかしこで呼ばれ、中には自分たちと同じ装備を着て見に来てくれている女の子もいる。


 もちろんタウィワンにあるダンジョンで得られる装備を着ている人も多く、ダンジョンマイスター命子は、それらを見るだけでも飽きなかった。


「ドオシャーリー!」


 命子は覚えたてホヤホヤの外国語で『ありがとう』とお礼を言った。

 すると、歓声が上がった。


 むふぅと気を良くした命子は、シュバッと香ばしいポーズを取りながら、目元に置いた指の隙間からギンッと【龍眼】を光らせた。

 すると、さらに歓声が上がって、命子はさらに気持ち良くなった。


「これが陽キャなのれすね」


 アリアが勉強になると頷いた。


「でもお姉ちゃん、自分は陽キャじゃないって思ってるよ」


「じゃあ、ファッション陰キャなのれすね?」


「そうとも言えるかも。私、お姉ちゃんの陰キャ要素とか見たことないし」


 そんなことを噂されているとは知らず、命子が陽キャ筆頭のルルと共に意味もなく【龍脈強化】や分身するその姿は、圧倒的に陽キャであった。


 それから命子たちは予約されていたレストランに入った。

 1室が貸し切りになっており、親もいるため席数は多い。


 異国情緒あふれる店内で、命子たちはお膝の上に手を置いて借りてきた猫の構え。


「1年も経つのに、お姉ちゃんたち凄い人気だったね。タウィワンにも大活躍している人いるのに」


 萌々子がそう言うと、命子たちはテレテレした。

 これに馬場が答えた。


「強烈な憧れはやっぱり残るものよ。自分が魔法を使えるようになってもそれは同じ。あの日、命子ちゃんたちが無限鳥居から帰ってきた姿は、それだけみんなの心に残っているのよ」


 その言葉に、命子はささらのわき腹をこちょこちょした。

 ささらも身を捩りながら顔を赤らめて、命子のわき腹をもきゅもきゅして反撃した。


 馬場の言葉を補足すると、命子たちの活躍のいくつかが動画に残っている点や、ちょいちょい新しく功績を上げている点も大きく影響しているだろう。このため、ほかの人の活躍で色褪せにくい状況になっていた。


「命子様たちは凄いことをしたんじゃのう」


「ちょっとだけだよ?」


 イヨがしみじみと言うと、命子はテレテレしながら指でCの字を作った。


 話しているうちに、タウィワン料理が続々と運ばれてきた。


「わー、美味しそう!」


 チャイナドレスを着た店員さんが料理の取り分けの補助をしてくれるようで、命子は感想だけ言って、やはり借りてきた猫の構え。


 配膳が終わると、命子はささらの動きをトレースした。

 スプーンを持ち、タウィワン風フカヒレスープを上品にすくう。


 タウィワンの食事のマナーでは、お皿を持ち上げてはダメ。それはすでにネットで予習済みだった。


 命子たちは、日本人なのだから海外でも日本流でいく、というスタンスではない。可能な限りマナーを守って、海外の人に喜んでもらいたかった。


 しかし、初めて使うテーブルマナーには自信がなく、ささらの動きをトレースしているのだ。


「んーっ、これ魔物素材だね」


 命子が一口で見切った。

 舌に魔力の味『魔味』がシュピピとしたのだ。


「そちらは台北の浜辺にできたダンジョンに出現する、小型のサメが落とすフカヒレになります」


 チャイナドレスのお姉さんが日本語で教えてくれる。


「おー。ツァオハオチー!」


 命子が『凄く美味しいです』とニコパとすると、お姉さんも嬉しそうに微笑んだ。


 こんなふうに、日本だけではなく世界中で料理に魔物素材が使われ始めており、通常よりもお値段は張るが、かなりの人気を博していた。


 命子も初めて食べるフカヒレがとても気に入った。


 でも、飲みにくい……っ!


 命子は、お椀に入った味噌汁をお口にダイレクトアタックする文化圏の人なので、苦戦した。ちょっと油断するとお皿に顔を近づけすぎて、犬食いにも見えてしまう。

 これが郷に入っては郷に従えということなのか!


 でも、隣で食事するささらはとっても上品。

 どういうわけか、ささらのスプーンからは汁が垂れていないのだ。


 もしや、ささらだけ特殊なマイスプーンを持ってきている?

 んなわけあるか。


 きっとなにか秘密がある。

 命子は【龍眼】をギンッと光らせて、脳内ハムスター分析班にささらの動きを研究させる。

 すると、一匹のハムスターが、自分じゃなかったら見逃しちゃうねとばかりに、驚くべき秘術の存在を発見するのだった。


 スープをすくったら、スプーンの下部を一度スープにちょんとつけるのだ。するとどうだろう、原理は不明だが、まるで魔法のようにスプーンから水滴が落ちなくなるのである。


 この秘術を見切るのに有した時間は、わずか5秒。列の前の人からお焼香を学んできた命子の分析能力は非常に高いのだ。


 さっそく真似してみると、命子の食事マナーのレベルがペコチンと上がった。


「モモちゃん。これをね、こうすると、汁が垂れずに綺麗に食べられるんだよ」


 命子はまるで最初から知っていたかのように、さっそく妹に教えてあげた。


 しかし、萌々子は、妹界・ロリ門・ツンデレ網・クリクリ目・オテツダイ科・お姉ちゃん子属・モモコに分類される妹である。

 この程度の知識は、界門網目科属種にオテツダイ科と入っていることからもわかる通り、豊富な料理お手伝い経験からすでに知っていた。


「ホントだ」


 が、お姉ちゃん子属でもあるので、お姉ちゃんを気持ち良くしてあげた。

 一方、命子の発言に、紫蓮とイヨがすぐに真似をし始めた。


「ホントなのじゃ。命子様は細かいことをよく知っておるのじゃな」


「まあね!」


 命子は手柄を自分のものにし、紫蓮はこの技をパクッていつか誰かにドヤろうと密かに計画した。


 それからも命子はささらの動きを盗み、食事が終わる頃には上品っ娘の羊谷命子が出来上がっていた。

 ハンカチでお口を拭い、「とても美味しかったですわ」などと命子の口から飛び出る。


 郷に従いたい、喜んでもらいたい、綺麗に食べたい、楽しく食べたい——旅先の食事では、そんな相反する様々な気持ちが、命子に少しばかりストレスを与えていた。

 しかし、ささらの真似をしておけばそのストレスから解放されるので、命子はこの旅でささらの動きを盗み続けようと思った。


 それから命子たちはお店の人たちと一枚の写真を撮り、お店を後にした。




 そのあとは混雑が緩い地域を軽く観光した。

 迷子にならないように、命子とイヨは手を繋がれる徹底ぶり。命子はもちろんだが、イヨは念のためだ。


 日本とはまた違ったオリエンタルな街並みを眺めて、馬場が言った。


「やっぱり以前来た時と少し変わったわね」


「前に来たことがあるんですか?」


 手を繋ぐ命子が尋ねた。


「うん、大学の卒業旅行でね。地域によっては不思議な場所に迷い込んだような印象があったけど、ダンジョンが現れたせいか、その雰囲気が強くなった気がするわ」


「きっとそのうち、ネコミミ娘……は結構いるな。空に飛空艇……も今日来たか」


 命子が口にしようとした将来像は、すでに全部が実現されていた。

 飛空艇はともかく、獣耳や龍角をつけた人がかなり多い。それらは魔力が通ってないので作り物だとわかるが、いずれは獣耳の人が増えるかもしれない。


「キスミアの侵略だ……」


 命子がそう呟くと、ルルとメリスがチラリと振り返り、ニャンとした。

 命子は全人類猫人化計画を思い浮かべて、龍角を片手で押さえた。負けない!


「武具店や素材店がかなり増えているわね」


「日本より緩いんですか?」


「武器取り扱いは同じくらいだけど、それ以外が緩いわね。特に魔物素材の所持が緩いって聞くわ。そういう素材の売買が民間でかなり活発に行われているんだって」


「へえ、いいですね。じゃあ、ちょっと買ってく?」


 命子は可愛らしく首を傾げた。

 見に行きたいという気持ちが繋いだ手をやや引っ張っている。だから迷子になる。


「ダメよ。飛空艇の旅は関税と検疫がまだ曖昧だから、魔物素材の購入はできないわ。お土産も決められた種類しかダメだからね」


「これが国際社会! じゃあじゃあ何が買えるんですか?」


「え。えーっと、お菓子とか?」


「それいつだって買えるやつ!」


「まあまあ、キスミア土産なら大丈夫だから」


「じゃあ今回もネコミミ買って帰るかぁ。……ハッ!」


 命子は、自然とネコミミを買うと口にした自分に恐怖した。全人類猫人化計画に思考が侵食され始めていた。


 そんなこんなで、一行はそのまま港へ戻り、短い観光を終えた。




 命子たちの旅は順調に進んだ。

 初日こそ比較的近いタウィワンに停泊したが、以降の旅は16時間の運航と8時間の休憩というスケジュールが組まれ、1日の飛行距離がかなり延びた。


 命子たちの1日は、イヨの撮影のゲスト、学校の宿題、老師と瞑想、停泊地での観光とかなり充実していた。


 各国各町の訪問は毎回4時間程度と短い間だったが、元からの文化に加え、その地域でどのようにファンタジーと付き合っているのかが知れて、十分に楽しめた。


 そして、4日目。

 命子は、前日の停泊地であった国スリランクァの地へお別れを告げた。


 スリランクァはいま、かなりの発展を見せていた。

 この国はダンジョンの等級のバランスが非常によく、大きな産業が芽生えつつあるのだ。


 そんなスリランクァにお別れし、飛空艇はアラビア海へと入った。


「これからまた海だね」


 ウラノスの飛行ルートは、必要が無ければ海岸線沿いは飛ばない。

 なので、スリランクァから北北西には行かず、そのままアラビア海を横断して、紅海へと向かう。紅海からスエズ運河を越えるわけだ。


「イヨちゃん、旅で疲れてない?」


「大丈夫なのじゃ。妾はこう見えて旅慣れておるからの」


「そうなの?」


「うむ。乗り物での旅はしたことないが、ジジ様に連れられて日本のあちこちに行ったのじゃ。当時の旅は、龍道以外は徒歩じゃからの。野宿することもよくあったのじゃ。それに比べれば楽なものなのじゃ」


「そういえば、ヤマトがあった静岡と風見町も結構離れているもんね」


「あのくらいは旅の内に入らんのじゃ。巫女衆は1日で移動できたのじゃ。命子様だってできよう?」


「うーん、どうだろう。でも、1日中走り続けられるし、できるかもしれないね」


 そんなことを話しながら、みんなでストレッチをする。

 修行ができず体が鈍りそうなので、そのストレッチはかなり入念だ。

 ストレッチ講座の先生は馬場で、楽しい時間にニッコニコである。


 ついでに筋トレも始めると、ささらの筋トレを見て命子は目を見開いた。

 指立て伏せをしているのである。


「ささら凄い!」


「ん、そうで、しょうかっ! ふっ! 割と、できますわよ?」


 ささらは指立て伏せをしながら返事をした。


 マンガじゃん、と思いながら命子が真似してみると、たしかに余裕でできそうな気配。

 命子も、今度からこれにしよ、と軽いノリで己を虐め始める算段をする。


 そんな命子は、指立て伏せをするささらが手と足の着く場所に段を作って体を少し高くしている点に気づき、嘘やろ、と若干の精神ダメージを負った。


 そんな筋トレが終わろうと言う時に、それは起きた。

 唐突に、命子の胸元が光り輝いたのだ。


「目と角だけに飽き足らず、胸まで光る仕様になったデス!?」


 ルルが命子の胸を見て、のけ反った。


「違わい!」と命子は反論しつつ、首にかけていたチェーンを引っ張って、光の原因を取り出した。


 それは龍宮で空飛びクジラから貰った空色の笛だった。

 表に出された笛を見て、精霊たちがワッと集まってきた。


「むむむっ!」


 むむむっとした命子は流れるような動きで口に空色の笛を近づける。どうなるどうなる、とばかりに精霊たちは興味津々。

 そんな命子の両脇からニュッと腕が伸び、何者かに羽交い絞めにされた。


「なにがむむむか! ダメだかんね!?」


 馬場である。


 ちぇーっ、と命子は笛から手を離した。

 他のメンバーもちぇーっとした。その中には何故か片足に縄跳びを巻きつけたジャージ姿の教授もいた。


 教授は、ふむと顎を撫でる。

 その足元では、ウサギのまめ吉が縄跳びを咥えて、教授の周りをグルグルと走っている。解こうとしているのか、辱めようとしているのかはまめ吉のみぞ知ることだが、結果的に教授は片足だけでなく両足が拘束されつつあった。


「この海域は特に有名な浮遊島などはなかったはずだが、なにかあるのだろうか?」


 3月下旬に1周年を迎えた地球さんのレベルアップで、地球全体にいくつもの浮遊島が出現している。教授はそのことを言っているのだ。


 と、そこで、ルルがネコミミをピコピコさせながら手を上げた。


「でもババ殿、もうメーコのお笛、鳴っちゃってるデスよ?」


「ニャウ。鳴ってるでゴザル」


 ルルの発言にメリスも追随した。


 しかし、命子たちには聞こえない。

 別にこの笛は犬笛みたいな可聴域ではないのに、ルルたちのようなネコミミ持ちでないと聞こえない音が勝手に鳴っているという。


『フュウウウウウウウウウン!』


 だが、次第にその音が命子たちにも聞こえるようになった。

 まあ素敵な音色、と命子は心の中で喜ぶものの、馬場に引っ叩かれそうだから黙っておいた。


「素敵な音色ねー」


 代わりに馬場自身が現実逃避気味にそう言って、天を仰いだ。

 とっても気持ちのいい青い空だった。


 わっ、同じこと考えてるー! と命子も空を見上げ、みんなもそれに続いた。


 ウラノスよりも遥か上空には青い空に浮かぶ白い雲。

 その切れ間から、青いオーラを纏った巨大なクジラが姿を現した。



読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想、大変励みになっております。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
人死にがある以上は馬場さんの対応は正解だろ、神獣系の試練は絶妙なラインを狙ってくるとはいえ死なない保証はないなら準備もなく発動する訳にもいかん、国内ですらないし
知識人枠はともかくお目付け役は居なければ居ないでまじめな場面ではスイッチ入れられるしぶっちゃけいらん、邪魔、とは思う ただダンジョン推奨する上位存在の意思が明確な割に封鎖とか管理だとか出来ちゃう設定だ…
馬場さんや教授居るおかげで地に足ついたお話しになれてると思いますが。 命子たちだけだとひたすらふわっふわなりそうだし。
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