7-18
なんと皆さん!この世界の有名人であるドパール卿にお会いしました。
もう凄い事ですよ!例えて言うなら芸能人に会いました!って事ですよ。
・・・・・まぁ名前と作品が有名であって本人自体は全く知られていないんですけどね。
☆
このタイミングでドパール卿と来たか。
今迄の転生の中で幾度も名前を聞き作られた物等に触れてきたのだ。
この世界での実績と高名さは異世界出身の俺でも理解出来る。
本当であれば、国王の前でもある程度の自由な振る舞いは可能だろう。
以前にララから聞いた限りでは本人は何処かに隠れ住みつつ
自分をコピーした存在を作りだし世界を探索させてるんだよな。
となるとこの白髪の少年もその一体なのだろうか?
「ドパール卿の御名前は以前より伺っております
会いたかったと言いましたが御用件は何でしょう?」
「あぁ、僕相手にそんな話し方は要らないよ
何と言っても研究にしか能が無い世捨て人みたいなものだからね」
「それならまぁそれで・・・・で、用件はなんです?」
「単純に会いたかったんだよね
君の情報は色々と入っては来ているんだけど
どうしても僕の目で直に見たくてさ
なかなかどうしてやはり直接視るってのは違うね」
嬉しそうにするドパール卿だ。
会えて嬉しいってのは良いんだが・・・・待て・・・・直にだと?
「ミノルさん、この方は私の様な存在とは違いドパール卿本人よ」
ララが俺の思っていた事に回答をくれた。
「え?本人?本当に?」
「あぁ、なるほど
そこらへんは知っているんだね
僕自身は身体が弱くてね
外出は控えているんだ
と言うよりもかなりの制限があって外出し難いが正しいね」
そんな理由があったのか。
確かに体が弱そうな気もするもんな。
「もっとも研究と開発が好きで他に余り興味が無いと言うのもあるけどね
研究素材を手に入れるだけなら僕の作った者達で十分だからね」
本音出すのはえーよ!
「まぁ僕の事は置いといてさ
聞きたい事があったんだ
君はさ、この世を、この世界をどう思う?」
そう問いかけるのだった。
~
ドパール卿との話しが長くなりそうだったので
一先ず顔見せの場としては終わらせ後で話す事となった。
ミガも国王としての仕事があるし暇ではないようだ。
夜にでも一席設けるとの事なのでそれまでは別部屋で話しを続ける事となった。
あの短い会話だけでもドパール卿が興味のある事については
グイグイ行く性格なのだと言うのが良くわかった。
「この世界ね・・・・」
そう言われても俺には判断する基準は前の世界だ。
神にも会った事もなければ魔法もないし魔獣や魔物なんてのも居なかった。
俺も戦いとは無縁の一般市民が勇者だ魔王だの世界だもんな。
だからこそこの世界が変なのかオカシイのか真面なのかが判断出来ない。
俺にとってこの世界はそのまま受け入れるしかないからだ。
この後に俺は何と答えるのだろうか・・・・答えは出なかった
~
話し合いが再開されたのは夜も少し遅くなってからだ。
部屋には昼と同じ面子が揃っている。
俺とドパール卿は椅子に座り向き合っていて
ララはドパール卿の隣に控えてはいるが
他は特に混ざってこようとはしないようだ。
・・・・おい、ミガとセンドゥールは良いとして何でロージーや
リノン、ゼノまで酒盛り始めてやがるんだ?
ディズがわんさか酒と肴を持って来てやがる。
「それでどうかな?
君はこの世界をどう思う?どう感じる?」
隣の宴会が気になるが改めて問われて引き戻される。
「どうって言われてもなぁ」
「あぁ聞き方が悪かったね
君がこの世界と別の世界から来たのは知っているんだ
その知識と比べてどうかな?
歪な物を感じないかな?」
「歪・・・・かぁ・・・・・言われれば全部がそう思うし
それがこの世界なんだと思えばそうだと思うし」
「なるほど・・・・魔法が存在し俗に言うファンタジー世界だ
元の世界と照らし合わせても常識が違う事も多い
ならばそのままを受け入れるしかないと言う所かな?」
「そうだな・・・言葉でするとそうなるか」
「ふふ、僕もまぁ最初はそうだったしね
ファンタジー世界と言っても物理法則はちゃんとあるし
食べ物や水がなければ生きていけないのも同じだ
もっとも魔力だけで生きて行けるような生物も居るけどね」
「何が言いたい?
今一つ要領が見えないんだが?」
「仕方がない、問答するのは別の機会にしようか
そうだね・・・・・端的に聞こうか
君はこの大陸の外はどうなっていると思う?」
「大陸の外?」
「うん、今いる場所は世界の一部さ
海があってその向こうには別の大陸がある
前の世界だってそうだろ?ここだって何も違いはない
この世界は平でも何でもなく丸い惑星の1つにすぎない」
「あれ?・・・・そういや・・・そうだな・・・・・
いや・・・・?うーん・・・・・」
「ふふ、そんな当たり前の事を考えた事も無かったって所かな?」
「ん・・・そうだな
海の向こうまでは意識してなかったな」
「ここでもう少し突っ込んでみるとしようか
君はこの大陸以外の事を誰か話しているのを聞いた事あるかな?
又は情報等を入手した事はあるかい?」
「それは・・・・ないな・・・多分、無いと思う」
「魔法なんて便利で強力な物があり空だって飛べる者も居る
それなのに何故、海の向こうの情報が一切無いのだろうね」
「随分と勿体ぶるな
答えを知ってるなら教えてくれよ」
「ふふ、まぁ折角の場で結論を急ぐのは面白味に欠けるけどね
僕が調べた限りでの仮説になるけど説明しよう
この世界が惑星という形なのは間違いないだろう
そしてこの大陸以外にも勿論陸地はあるだろうが観測は出来ていない」
説明を始めたドパール卿はとても楽しそうに無邪気に笑う。
「この世界、この大陸は神の力によって隔離された世界
そう・・・・神の箱庭と言った所かな」
~
広大な大陸1つを神の力で隔離し箱庭化したのがこの世界。
外の世界を認識させない、そもそもが意識させないように
結界らしき物が張られて管理されている。
と、ドパール卿は長年の研究成果だと説明した。
ドパール卿自身も結界の外を直接観測出来た訳ではないが
長い時間を掛けて観測してきた結果からの仮説で信憑性はそれなりにあるだろう。
驚きこそするも妙に説得力があると言うか理解出来ないような内容ではなかった。
部分的には俺の経験と照らし合わせれば頷けるってのもあり
否定する情報を俺は持っていなかった。
「その結界の外がどうなってるかはわからない
何もない荒野が広がってるのか、それとも虚無で何も無い空間なのかもね
なんにせよ碌な事にはなっていない事だけは間違いないと思うけどね
それだけこの世界は歪な状態だよ」
「実際に結界まで行った事とかは?」
「調査は何度も行ったし今迄に結界に触れた人物にも色々と聞いた
結果として外には出れないと言う事が分っただけだ」
聞くと外に出ようと言う意志があればあるほど反発が強くなるらしい。
何も考えずに結界付近まで行ってしまった漁師等は何時の間にか戻ってしまい
意識もあやふやで何が起きたか覚えていない状態程度で済んでいるが
ドパール卿の先鋒として向かった者達はより酷くて
記憶障害はまだ軽い方で意識や知性の消失等も起こるんだとか。
「これは結界に近づく者に与える神の罰と言った所だろうね
より明確な意図を持つ者にはより厳しい罰がくだる
僕自身が行けば更に詳しくは調べられるんだろうけど
それだけ自分に降りかかる罰は重くなるから手出しは出来てない状況だね」
様々な対策は立てているがどうにも効果は出ていないようだ。
詳細な分析すらも出来ていないとの事なので流石は神が張った結界と行った所か。
「まぁもっともそれで何が問題あると言う訳じゃないのもまた真実ではあるね
歪だとしても世界はそれで回っているし大陸は広くまだまだ手つかずの地はあるし
生命体が生きて繁栄していくには不足はない」
あくまでも世界を遮る結界の調査や突破については
それなりに重要度は高いそうだがドパール卿の趣味と言うか
フィールドワークの一環の1つに過ぎないらしい。
ドパール卿にとっては興味深い研究テーマではあるが
俺には迷宮で見てきた事象がどうしても世界が安定しているとは思えない。
今は影響が出てないだけでも何れは何処かで何かが起こりうる気がする。
はて・・・・どうしたものか・・・・。
そもそも俺に何とか出来るような話の規模じゃなくなってきた気もする。
「うむ、結論から言えば現状は安心できる状況ではないな」
どうしたもんかと悩んでいると
何処からか急に声がするも姿は見えない。
「ルエラか?っと何処だ?」
「あぁすまない・・・もう良いぞ」
そうすると扉のすぐ脇からスゥっと姿を現したのはルエラと壮年の男だった。
武闘派の方々が一斉に動き出した。
宴会してたってのに物凄く機敏だな・・・・と、それを手で制してルエラの前に立つ。
「皆、この人は俺の連れで別行動してたんだ
安心して欲しい」
ってもう1人は知らん顔だけどな。
って・・・・流石に急に来るのは不味いだろうが!
「急に現れるから皆がピリピリしてるじゃねーか
と言うか此処は国の中枢だぞ
勝手に入って来るんじゃない」
「む?そうか?
手続きをした所で真面に取り合ってくれるかわからなかったのでな」
「俺の名前を言えば良かっただろうに・・・」
「ふむ?ミノルの名前を言った所で通じない可能性があったではないか
以前にそこらへんは行ってみないと何とも言えないと自分で言っていたであろう?」
「まぁまぁ、ミノルよ
我が名で今回は不問とさせ通行証も後で発行させよう
ミノルの仲間と言う事だが今度は注意して頂きたい」
「そちらの事も考えずに行動した事は謝罪する、申し訳ない
我の名はルエラ、こっちは・・・・・・ん?そう言えば名は何と言う?」
「名前も知らねぇのかよ!」
「ふふ、そう言えばこの体に名前はありませんでしたね
では・・・・・ガインツとでも名乗りましょうか
皆さん初めまして」
「ガインツさんね、それでどちら様なの?」
「うむ、この者は我と同じ系譜に連なる者で管理者でもある」
「君がミノル君だね、こうして会うのは初なのだから宜しくと言うべきだな
直接に見てわかったが随分と面白い存在だ」
「自分の事を知っているんですか?
と言うか管理者?え?」
「以前に見掛けたことがあったものでね
管理者と言うには権限が低くてね監視者と言った方が近いかもしれないね
私はこの地上を観察し続ける存在、君達がウッディドラゴンと呼ぶ存在だよ」
えーと確か・・・・・・アレか!
以前にグリフェリアで山の上からずっと俺を観てた気配の奴か!
・・・・・と言うかまた面倒なキーワード連発だな。
チラッと横を見ると
「今のは認識阻害?でも扉が動いた気配は無かった、まさか空間操作?
僕が気が付けないレベルで?
系譜?管理者?・・・・ふふふ面白い・・・・面白いぞ」
とブツブツ言ってドパール卿は楽しそうにしていた。




