7-16
皆様こんにちわ森山実留です。
懐かしの街に懐かしの城ですね。
まぁ自由に行動出来た事なんて殆ど無かったんで
記憶にあるのは大通りとか主要部分だけですけどね!
☆
城への入場はスンナリと通りそのまま馬車は進んだ。
広い馬車止めに止まると降ろされて扉を潜ると石造りの通路が続いている。
狭くは無いが薄暗い通路で随分と使い込んだ感じがある。
進むと大きな扉があり広間に辿り着き幾つかある扉に案内され
中は質素ではあるが掃除も行き届いた小部屋になっていた。
「此処と隣の部屋を使って良い
後で担当の者が来るから詳しい説明があるハズだ
広間までは出て良いが他の部屋や場所には行かないでくれよ」
「此処で何をするんだ?」
「すまん
此処に連れてくるように言われただけで
詳しくは聞かされてないんだ
だが・・・ここは・・・・」
「闘技場の待機場所に似てるな?
この先は城に併設されている闘技場なんだろ?」
「あ・・・・うん、まぁそうだな
大よそ見当は付くと思うが無理はしないでくれよ」
「相手次第だけどまぁ注意するよ」
「此処を出たら詰所を訪ねてきてくれ
昨日の酒の礼に一杯奢らせて貰う」
「あぁ、楽しみにしてるよ」
挨拶をすますと申し訳なさそうに隊長は広間を出て行く。
「で、何か分った?」
城に入ってからずっと無言のロージーに声を掛ける。
「不穏な気配は無いけどずっと監視されてはいるね
それに近くにかなり強そうな気配が幾つかある・・・ね」
「そうか・・・・・やっぱ戦う事になるのかね」
「それは担当者とか言うのに聞けば良いさ
丁度来たみたいだしね」
俺達が入ってきた扉とは反対側から歩いて来た人影が2人。
先頭は中年と言って良いか分らないがある程度の年齢にさし掛かったように見えた
ある種の雰囲気を漂わせる獣人の男で後ろに細身の若い女の獣人が付いている。
「悪い、待たせちまったかな?」
「いや・・・・今、案内された所だ・・・・・ディズ?」
「ん?俺の名前を知ってんのか?
現役は随分前に引退したし・・・・って今回は当たりか?」
「当たり?」
「そう言えば何も知らされてないハズだろ?
聞きたい事はあると思うが軽く何かを用意させるから
食いながら説明しようか・・・・酒か何か飲むか?」
「水で良い」
「私は酒を・・・・強いのがいい」
「ハハ、見た目からは逆な気もするけどな
わかったちょっと待ってな」
ディズが細身の女性に言付けを頼むと近くにあるテーブルと椅子にドカっと座った。
「さぁ、話をしようか・・・・ミノルよ」
ディズはそう俺の名前を呼んだ。
~
「お前、アレだろミノルだろ?
生まれ変わったとか何とか」
女性が運んで来た軽食、と言うか肴を摘まみつつ
酒を飲みだしたディズがストレートにぶっこんで来る。
俺にはパンに具材を挟んだ軽食を摘まみながら聞いた。
「・・・・・・何の話だ?」
「まぁそっからになるわな
あの魔道具で反応が出る奴を探していただろ?
アレってなミノルの魔力波だかなんだかに反応するって物でな
そうは言っても反応する幅が割とあるってんで
時折連れて来られる奴らを俺が見てるって訳だ」
「凄い簡単な説明だな」
「おいおい、良いのか?
それで驚かないとか意味が通じる時点で
本人だって言ってるようなもんだぜ」
そらそうだな。
まぁ隠すつもりもないからどうでも良いんだけが。
どうせ此処に居るって事はミガにもつながっているんだろうし。
「・・・・・・・久しぶりですね、教官」
「ってマジでミノルなのかよ!」
「あの魔道具で判定してるんじゃないの?」
「だからそれはある程度っつったろ
可能性がある似てる魔力波を探知するってだけだしよ」
「でもなんか確信ありそうな話し方だったし
何か根拠でも?」
「まぁ勘だな」
「ップ、ハハハハ」
「おい!笑う事ねえだろう」
「ハハハ、アレからどれだけ過ぎたと思ってるんですか
確か10年以上と聞いてますよ、変わらないですね」
「お前は随分と変わりやがったな
そんなにヒョロ長くも無かっただろ
と言うか種族すら違うって方がおかしいだろ」
「それこそ生まれ変わりって奴ですよ
教官こそ歳はとったけど元気そうで」
「おう、お前に治して貰った所も調子が良いしな
今は現役じゃぁないが国に雇われてこんな事をしてる」
「こんな事って言うのは俺を探すって事ですか?」
「それもあるし時折、兵士の訓練なんかもみてやったりもするが
基本的には王に仕えて裏方だな
裏方つっても悪い事じゃ無くて細々した奴や秘密裏に動く手駒ってとこだ」
「なんで自分を探してたんですか?」
「それは知らんな
俺も王様に雇われた身で色々と聞かれただけでよ」
ミガには俺に協力してくれるように頼んでおいたから
向こうから探してくれていたって事なんだろう。
つうか俺が生まれ変わったとか
「それによ俺と王様以外にもミノルに面識がある奴が国に居てよ
色々と話したんだがどうにも話しが食い違ってな
ソイツが言うには戦ってみればわかる話だって事でよ」
「・・・・それがこの場所に繋がると」
「まぁそう言うこった
こっちの準備が出来次第、一戦してもらう予定ではいるんだが
別に強制って訳でもないがどうする?」
チラッとロージーを見るが好きにしろって顔だ。
どうやら完全に俺任せにすると決めたらしく本腰を入れて飲み始めた。
それにしても俺を知ってる人物って誰だ?
「流石に此処までの移動で疲れたから一晩休みたい
ロージーも酒が入ってるしな
万が一の事を考えて万全な状態にしておきたい」
「わかった、此処は出れないが必要な物は何でも言ってくれ
相手側にもそう伝えとく」
~
まだ話したそうなディズではあったが事が済むまでは俺達との接触は限られるらしい。
少し経つと頼んだ物が届いた。
とりあえず一晩は此処で過ごす事になりそうだ。
窓や外の様子をうかがえる様な作りにはなってないが環境的には悪くはない。
掃除も行き届いているし水場も寝具もあるし狭苦しい訳でもない。
「明日のミノル君の戦いは何かあれば助けてあげるから安心すると良いよ」
「流れ的に命を賭けた張ったってのにはならなそうだけどな」
「相手を確かめる手段に闘いって手段を選ぶような輩が
滾る気持ちを抑えれるとは思えないけどね」
「・・・・・おっかない事言うなよ」
「今のミノル君と互角以上にに戦える存在がそう居るとは思えないけどね
もっとも私の知らない強者もまだまだ世界には多いだろうし、今の私以上の者もきっと居るだろう
先程捉えた気配も今は収まってるけど随分と強者な感じがするよ」
「安心して良いのか良くないのかわからん」
「なに、ここまで丁寧な扱いを受けているんだ命までは取られないさ」
弱体化したとは言え魔王本人ですら勝てない強者がそうそう居るとは思えないが
わけがわからんレベルの化物が居るってのもこの世界だ。
こんな時に確実に世界でも最強の類であろうルエラが居ないのが痛い。
別れてから連絡はないがどうしているのだろうか。
何だかんだと言って静かで居心地も良く
出された料理も美味く量も有り快適に過ごす事が出来た俺達は
ぐっすりと寝て翌朝を迎える事となった。
~
久しぶりにゆっくりと寝てしっかりと食べた朝食も消化し
身体が万全の状態になった頃に呼び出され通路の先を進み扉を潜った。
其処には来た事が無いのに懐かしさを感じる風景が広がっている。
「やはり闘技場か・・・・・設備のしっかりしてるし随分と広いな」
「作りは違うが私の城にも似たような設備はあるな
様々な催しモノにも使えるし兵の鍛錬にも使える」
「まぁ確かに王城で開催されるのもあるとは聞いてたけど来た事は無かったからな」
過去に自分が戦ったどれよりも広く大きな闘技場に足を踏み入れた。
中央部分にはディズが待っていて早くこっちに来いと言っているようだ。
「ミノル君、私達の反対側の出入り口から昨日と同じ気配があるね」
「ここまで来れば俺にも何となく分かる
・・・・けど妙に違和感がないと言うか殺気のようなモノはないな」
「単純な戦闘馬鹿なだけかもしれないね
一先ずは安心して良いんじゃないかな」
「だと良いがね」
警戒しつつディズの元まで向かう。
「よう、良く寝れたか?」
「えぇ快適でしたよ」
「そうか、そりゃ良かった
んじゃ戦えそうか?」
「問題ない」
「んじゃルールを説明するから合わせて準備してくれ
先方さんはやたらとヤル気でな呼べばすぐに戦いになるだろう」
相手がこの場に居なかったのは俺に準備をさせる為か。
ルールは何でもアリの1対1で闘技場の防御結界は最大レベルで動作させてくれるらしい。
「要は思いっきり全力で戦えって事ですよね?」
「まぁそうだな
一応、相手側にも何かあった場合の補助と言うか支援を1人連れているから
最悪の場合になりそうな時は相手を止めてくれる手筈になってる」
「だそうだ、俺の方も頼むよロージー」
頷いて肯定するロージーを見つつ武具を取り出して装備していく。
表に出てきてからは目立つとの理由で使ってなかったが裏迷宮産の一番性能の良い奴にする。
武器は使い慣れた短槍に予備として短剣を腰に差し盾は持たない。
「なんて物をもってやがる・・・・・それ普通の武具じゃないだろう・・・・」
近くで見たディズが息を飲むがお構いなしだ。
多少、もとい性能自体は壊れっぷりも半端ないが
所詮は超高性能な通常武具で神器のような出鱈目な能力がある訳でもないしな。
「準備は出来た様だな?」
「あぁ、何時でも良い」
ディズが確認し合図をすると反対側から人影が2人現れた。
男女だと思うがどちらも目線を隠すかの如く深くバイザーのようなモノで顔の上部を覆っている。
装備品と言うか服装もこの国では見かけないというか妙に近代的と言うか何というか
全体的に鈍く光る金属系で作られた防具でシルエットは直線的でシンプルで機能美を感じる。
男性の方は長身で鍛えられた体だと言うのが良くわかる。
武器は背中にある大剣なんだろうが妙にゴツイ作りで防具とは違う印象だ。
女性の方は男よりも金属部分が少なく布地が多いな。
武器の杖で此方もゴツイ作りだ。
途中で女性の足が止まり男性だけがこっちに歩いてくる。
どうやら俺の相手はこっちのようだ。
こちらに害意があるようには見受けられないが受ける圧力は強者のソレだ。
間違いなく出来る、それも相当な部類だろう。
「よう、今回はどうなんだ?」
近寄ってディズに話し掛けた声は何処かで聞いた事があるような気がする。
「自分で確かめるんだろ?」
ディズに言われ「それもそうだな」と俺に振り向きバイザーを上げた。
「初めましてでいいのか?よくわからんが
俺の名はゼノーヴァ、とりあえず一発やっとくか」
そこにはかつて一緒に迷宮を攻略した仲間が居た。




