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7-13

我の名はルエラ。

世界を管理し維持する迷宮の管理者にて創造神より作られし誉れ高き古き龍。

まぁその眼と言うか現身ではあるがな。

今は世の全てを色々と見て回ろうと思う。


・・・・・・おい!待て!その酒は我の物だ!



 ☆



ルエラが勇者に、この国の王に強烈なボディブローを噛ましてから

1週間ほどが経過した。

次の日に宿屋に戻って来てからは普通に観光なりをして自由に過ごしていた。

一応は周囲に注意を払ってはいるが俺達に何かしようという動きは感じれない。


国の方はと言うと国王が久しぶりに表舞台に出てきて国民に顔を見せた。

久しぶりに観る国王の元気な姿に国民は凄く湧いたものだ。

そこら中で乾杯が繰り広げられ広場には様々な屋台が連なっていた。

やはりこの国での勇者の人気は非常に高い。


国王が元気になったと言う事は精神体達にも影響はあったと思うのだが

今の所は国の動きに変わった様子はない。

例の監視網を優先的に再構築するとの事なので上手く行っているんだろう。

神の加護を過剰に頼らない様にと負荷が軽い監視用のみの運用に切り替えたらしいので

治安維持等は大きく変化しているハズではあるのだがな。


なんでそんな事が分るかと言うと目の前に張本人が居るからだ。


「いやぁ、自由な身って本当に良いね

 僕がこの世界に来てこんなに心が軽くなったのは初めてだよ」


「その自由の漫喫が毎日昼間から酒を飲んだくれる事なのか?」


「そう言わないでよ

 この世界に来てから最初は何もわからないのに森に放り出されて生きるか死ぬかだし

 勇者として選ばれてからもずっと戦いっぱなしで回りは誰も信用できないし

 更には国王になってからは言わなくてもわかるでしょ

 僕はこの素晴らしい時間を大切にしたいんだ」


「わかるよ

 何も背負わずに居れるって事は私達にとっては遠い昔の事だったからね

 寧ろ何不自由なく好きに過ごせるなんて初めてじゃないかな」


「我も深淵で忙しくとも静かに過ごす日々だったのだ

 全てのモノに興味があり新鮮な日々よ」


何故か意気投合して真昼間から宴会をする3人。

それもこれも国王が姿を現した翌日に宿屋に訪ねてきた元勇者であるアデアの影響だ。


「それにしてもその体は普通に飲み食い出来るんだな」


「そりゃ、その為に作った体だからね

 基本的には普通の人族と変わらないよ

 能力的には多少は強化してあるしギミックもあるけどね」


聞くとコレはドパール卿の生体魔導ボディだった。

ララよりも更に発展型と言うか進化型って感じなのだろうか。

以前から計画していた折にとある伝手で作成して貰ったんだとか。


此処でもドパール卿かよ!とは思うモノの俺も何時かは会えるのだろうか。

ドパール卿についても聞いてみたが現在の所在は分らなく連絡も随分前に取れなくなったそうだ。


それが本人かどうかは分らないけど・・・・俺は違うと踏んでいる。

どうにも聞く先々で人物像がバラバラなんだよな。

アデアの語るドパール卿も俺が今迄聞いて来た人物とはだいぶ違うようだ。


「それで現状はどうなんだ?」


「国の状態は少しづつ動き出してるよ

 国王も僕自身だし各地に再度監視用の精神体は派遣してるからね

 今も情報は共有化で入って来るけど王でも無い僕が国を動かす訳にはいかないけどね

 今回のように国王を動かす事は出来なくもないけどさ直に繋がると影響が強くなっちゃうからね

 どうしてもって時以外はやりたくないね」


「今の身体だと国王の方が力は強いんだっけ?」


「力の殆どは置いて来たと言うよりは僕が抜け出た形だからね

 取込まれる事もないけど元に戻る事も無理だよ

 意識と言うか認識レベルだと僕の方が上位だけど単純な能力ならあっちだね」


「それで、扱いはどうなった?」


「やっと国王直々の食客として申請が通ったよ

 これで城にも自由に入れるし路銀の心配もしないで動ける

 多少は時間も掛ったけど良くも悪くもワンマンな国だから出来た事だけどね

 それも今回で最後で二度と同じ手は使えないと思うけど」


そう、ここ数日に昼間っから飲んだくれてたのは

別に自由に酒が飲めるのを楽しんでた訳じゃなくて・・・いや多少はそうなんだけど

アデアが自由に動ける身分を発行して貰うまで目立つ真似が出来なかったからだ。


「自分で作った国にソレを言うかね

 これからどうするの?」


「そうだな・・・・・まずはこの国を隅々まで見て回ろうかな

 今までの自分の歩んできた道を見てくるよ

 僕はこの国以外の事を、この世界の事を余り知らないからね」


「そっか、それは良いかもな」


「そっちはどうするんだい?」


「俺か・・・・」


実里に会いに行きたいけどそれは俺の目的であって

ルエラとロージーはどうしたいのだろうか。

流れで此処まで来たは良いがどうするべきか・・・・。


それに実里は扱いと言うか立場が微妙でもある。

王族であり聖神教でも高位の存在でもあり、どちらから攻めるも難儀しそうだ。


理由なしに申請しても会えないだろうし国内で多少、俺が目立った所で

実里の元に情報が届く事も無いだろう。

これが女王だとか聖神教の教主だとかまで登り詰めていれば別なんだろうがな。


「聖女に、妹さんに会いに行きたいんでしょ?」


「あぁ、そうだな

 元とは言えばこの世界に来た理由も妹を追っかけてきたからだし

 世界神の加護持ちに異変が起きてるなら確かめもしたい

 まぁ会った所でどうすれば良いかは俺にもわからないんだけどさ」


「転生を繰り返しているって聞いた時には驚いけど

 神の力は僕達が考えるよりも遥か高みなんだろう

 実際にその世界神より上位の神の力を感じた今では全てを信じるしかないけどね

 ただ、僕は勇者という立場ではなくなってしまったから直接の協力は出来ないんだ

 直接、国王を僕が動かす手もあるけど国が動く羽目になるしね」


「国単位の話しになるのは困るよなぁ」


「それに精神体は強い感情を分け与えた方が強い能力を得やすかったんだ

 作成当初は僕の中の強い気持ちを元にしていたからね

 それらが元に戻った僕がどうなっているかはね・・・・少し様子を見た方が良い」


となると以前に俺を殺しにきた奴は初期に強い怒りなんか元に作った奴なんだろうか?

今更、聞く気もないし確かめたいとも思わないけど。


ルエラの事は隠しきれないと踏んだ俺達はアデアに大筋を説明していた。

アデア自身も元勇者ではあるものの公言出来る身分でもないので仲間みたいなものだしな。


「協力を惜しむつもりはないけど今の僕じゃ情報提供位しか出来ないかな

 この国であれば多少の支援は出来るだろうけど自由に動かせる戦力も財力も君達の方が上だしね」


「うーん・・・・どうするかなぁ

 ある程度の立場があって実里に会える口実を作れそうな人っているかな?」


「・・・・・・・そうだね、1つ聞きたいんだけど

 パーセラム王国に10数年前にバリリア家と言うのが新たに興されたんだけど覚えはあるかな?」


「いや・・・その名前に覚えはあるが家がどうこうは分らないな」


「流石に他国なので詳しく掴めなかったんだけど

 どうも興した家が実際に何をしているかが不明なんだよね

 商館やギルドと連携を密にしているようだけど何か商いをしているようではないしね

 どうも特定に人物を探しているみたいなんだけど人物像がハッキリしないんだ

 もしかしたら・・・?って思ってね」


「うーん、ハッキリした事は言えないけど多分、なんらかの繋がりがあるとは思う」


これはあれか?

前に俺が約束してた居場所を作ってくれるって奴か。

ギルドに溜まっているであろう金の管理なんかも頼んだんだけど

それは実現出来ているのであろうか。


今の俺じゃ間違いなくギルドの確認システムを通り抜けは出来ないだろう。

資金に余裕が無いわけじゃないけど実里への足掛かりになるかもしれないか。

ミガとララがどうなったかも知りたいし。


「特にコレと言った目標もないし次の目標にしてみてもいいかな」


「そうか君達には世話になったね

 また何かあれば僕も協力させて貰うよ

 国を動かす事は出来ないけど色々な伝手なんかはあるしね

 それに精神体からの情報もあるし」


「頼りにしてるよ」


「今の僕で出来る事なら何でも」


アデアは笑顔でそう言った。

その後はルエラとロージーに連れ出され朝まで飲み歩いた。


 ~


それから更に1週間が経過した。

グリンバーグからパーセラムに向かうには王国南方領グリフェリアを通る必要がある。

以前よりも国交が盛んになり街道の整備も進んだとは言え未だに未開エリアには違いない。

寧ろ魔族との和平が進んだ事により弾き出された者やどちらかの陣営に追われた者等が

入り込んでいるのは当然だし実際にその被害も多発しているとの事だ。


襲われてどうなる俺達でもないが面倒には違いないので用意はしておく事は大切だ。

因みに王国南方領の周辺には国境線や砦はあるものの村や町は結構な手前にしかない。


それは広大な未開エリアであり一切の公的ルールがない王国南方領の影響だ。

人の手が入っていないだけにそこから取れる果実や薬草や獲物は質も量も良く周囲の人々に糧と富を与えてくれる。


何といってもパーセラム王国の領土ではあるのに出入りは自由な上に

納税等の義務もないってんだからな。

その分、近寄る分には自己責任で他国からの侵害も防いでくれるって訳だ。


ルエラは未開エリアには興味が、ロージーは昔に縁があった場所もあるようで

急ぐわけでもないので少し寄り道をしていく予定ではある。

何といっても俺以外の2人は全くと言って料理は出来ない上に味には煩い。

そして浴びる程に酒を飲むからな。

事前準備は大事だろう。


他にも武具の手入れや野宿に必要な物等を色々と購入し準備をする以外にも重要な事がある。

それは情報を集める事だ。

ロージーとアデアと言う国の長が居るので普段では入手出来ない情報も多々手に入るが

逆に言えば市井の情報等は手に入らない。

それらは時として重要な事だったりもするもんだ。

なので準備を進めるのと並行して情報を集めロージーとアデアと共有し補完した。


 ~


そんなこんなで時間はあっという間に経ちこの国を出る日を迎えた。


「君達には世話になったね

 僕は王では無くなったけどこの国に来た際には何かと融通させて貰うよ」


「こっちこそ色々とありがとうな

 何か分かったらギルド経由で連絡してくれ

 あそこなら魔道具か何かで早く連絡出来るんだろ?」


「王が使える魔道具ならもっと短時間で連絡も出来るから

 そっちが使えれば良かったんだけどね」


「それは言っても仕方がないだろ」


「まあね、でも僕が出来る事は可能な限り手助けはさせて貰うよ」


アデアから渡されたのはグリンバーグから発行された正式な身分証だ。

これがあれば各ギルドを利用する際等に身分証として使える。

魔王領の身分証もあるが信用度で行けばグリンバーグの方が上なのは間違いない。

もっともどちらも王印の入った身分証ではあるので

魔王領のを提出して断る場所はそう無いとは思うけどね。


「これからの旅を考えると勇者印の身分証は助かるよ」


「まぁコレぐらいはね

 自分が言うのも何だけど勇者の名声は役に立つと思うし

 魔王と勇者の両方から身分を保証されるなんて相当だね」


「王印と国印だとやっぱ違うの?」


「信用が全く違うね

 国印だと国として審査をし認めたって事になるけど

 王印は王が直々に認めて保障するって意味だからね

 相手も無碍には出来ないし使う時は心して使うようにね」


王直々の保証となれば使い方を誤れば王に責任を追及する事にもなりかねない。

便利ではあるが使い所を間違えないようにしないとな。


因みに勇者が俺達に目を付けたのは魔王直印の身分証だったからと言うのも要因の一つらしい。

それで登城手続きをしようものなら問題になりかねなかったようだけどね。

そりゃ長年争ってきた相手が直に認める奴が来たら怪しいわな。


「当面の目的はパーセラムに向かって例の家とコンタクトを取るんだよね

 道中は・・・・まぁ問題ないか」


酒場で出発前の最後の宴会と称して何時の間に出来た飲み仲間と

ワイワイやっているルエラとロージーをチラッと見る。


「まあね

 何時の間にか飲んべぇになっちまったけど2人とも俺より強いし

 途中で食い物と酒が切れる方のが怖いよ」


「君も相当に強いと思うけどね

 なんにせよあの魔王にあんな楽しそうな顔をさせる君となら僕も一緒に行きたいよ」


「アデアならこっちも歓迎するよ」


「この国を見て回った後ならお願いするかもね」


「その時が来るのを楽しみにしてるよ

 出来れば敵対はしたくないな」


「それはこっちも同じさ

 道中が楽しく、そして望む結果になる事を祈ってるよ」


「あぁ、またどこかで」


笑顔で握手を交わし勇者、いや元勇者のアデアと別れる。

勇者は今でも国王として君臨しているんだからな。


 ~


最終確認をしてから宿を引き払い市場に寄って食料を手当たり次第に買っていく。

以前の様に容量が無制限ではないが膨大な量が入るので問題ない。

余るなら途中の村などで売ったり取引に使ったりも出来るしな。


そう言えば前のは容量無制限なんだっけか?

ポイント拡張はしたものの容量は気になった事がなかったけど。

・・・・・まぁ良いか。

どちらにせよ困った事がないならどちらでも良い事だな。


さて、次の国はパーセラム王国だ。

ミガの国はどうなってるのかね。

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[一言] また更新だとww
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