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7-12

自由に歩けると言うのはそれだけで素晴らしいと思わないかい?

あぁ、元魔王のロージーだ。

元と言っても私の同体が魔王を続けていはいるがな。

それにしても自由に動けると言うのは素晴らしい!

・・・・・・・もうこんな時間か・・・・・今日は何処の酒場に行くかな。



 ☆



詳細を聞き3人で検討の結果、俺達は青年に協力する事にした。

流れとしては正式に登城し謁見後、城内に宿泊。

その後は限られた者達との打ち合わせに参加する事になる。

まぁそれは定期的に開催されている精神体同士の会合なんだけどな。

今回は城内に居る者達によって開催される。


謁見の内容としては王の指示で行ってきた依頼の直接報告と言う形で

俺達は青年のパーティーメンバーという扱いだ。

当然、依頼自体の中身は何もないのだが流れ的に報酬を貰う事になるのでそれを今回の成功報酬として欲しいとの事。

報酬内容についての査定は別部署が行っており本体も精神体も関わって居ないので

何が貰えるかは不明ではあるが謁見まで行うような場合は相当に期待しても良いそうだ。

因みに依頼内容は国内の害する魔物退治と貴重素材の提出となっている。


 ~


「それでどうだった?」


謁見後に部屋に通された俺達は小声でルエラに聞いた。


「ロージーと同様の神の加護を感じたが魂の力が弱すぎる

 アレでは自我が残っているか怪しいぞ」


「確かに普通じゃないような気はしたけどさ・・・・」


青年に返事をした2日後に俺達は登城し謁見を果した。

一応はちゃんと正装っぽい恰好をして行ったんだよ。


王座に座る勇者は赤茶色の少し長めの髪が特徴の若者だった。

いや、若者に見えると言った方が良いのかもしれない。

見た目は大人びた高校生か大学生位に見えるんだが纏う雰囲気は

誰が見ても若者とは言えないだろう。

熟練の戦士、老獪な政治家そんな印象を抱くのではないだろうか。

加護者は年を取らないと言われるが実際にはこうなるのか。


だがその目は何か遠い所を見ているようで簡単な返事をするのみで

近くに居た偉そうな人が進めていた。

名前も知らないハゲたおっさんがね。


青年は精神体だし俺達の正体はバレていないとは言っても

頭抜けた魔力量や加護を感じれないとも思えない。

更に言えば精神体からの情報も上がってきているハズなのに

碌な反応もなく「あぁ、計らえ」位しか発言しなかったんだ。


「私達からの呼び掛けにも返答も指示も無い

 実際に会ってみても同様だ」


青年が直に見てもやはり異常事態なのは間違いないと言う判断だ。

ロージーも同様の判断をしている。


即ち勇者は既に壊れていると。


その後に行われた城内に居る他の精神体と打合せでも

その事を裏付ける状況が出てきただけだった。

現状では王国の運営は要所に配置されている精神体が上手く回してはいるが

本体がそんな状況では何時まで精神体が存在して居られるかの不安もある。


「ルエラはロージーの時のように何とか出来る?」


「我にも判断が付きかねるな

 あの時と違い神の力による支障とは言い切れぬのだ

 神の力を利用しても己を分けるなんて事は精神負荷はかなり高いと言える

 その源を抑え込めば改善するやもしれぬがな」


「そんな事して大丈夫なの?

 なんかヤバそうなんだけど・・・・」


「私からみても勇者君が元の状態に戻るかはわからないね

 そもそも自分を分割するって考え自体がおかしいんだよ

 彼は昔から心の奥底では自分しか信じてない節があったしなぁ」


ロージーの意見も同様だ。

世界神の加護を抑え込んだ所で勇者の精神が元に戻るかは分らない。

加護が無くなったら精神体達がどうなるかも不明だし

そもそもが現状の原因が精神体の作成に依るモノか神の加護に依るモノか

それ以外に依るモノかも分ってないんだからな。


これ以上、症状が進む前に何とかしたいと言うのが精神体達の意見ではあるが

俺達がそこまで踏み込んで良いモノかも悩む所だ。


ルエラがラカリスティンの神気を叩き込めば世界神の加護を抑え込む事が出来る。

分割した精神体達がどうなるかは不明で最悪消滅もありうるが

それにより一時的に神の力から外れる事により影響下から抜け出せる。

世界神が弟神かどうかは確定出来ないが世界神よりも上位の神の力だと言う事は間違いない。


だがそれを第三者に知られるのは厄介な事になりかねない。

何とかしてあげたいけどどうしたものか・・・・。


「それなら私にとっておきの秘策があるよ」


そうニッコリと笑うロージーが居た。


 ~


不味い・・・・非常に不味い・・・・・。

今、俺の心の中を占めるのはこんな思いだった。


俺達は今、最低限の明かりを灯した城内の廊下をロージーの【隠闇】を使用しながら進んでいる。

これは夜の闇に紛れる魔法で極端に気配を消して見つかり難くするらしい。

夜&光源の乏しい場所でしか使えない魔法だが効果は抜群との事。


なんでそんな魔法まで使って移動しているかと言うとロージーの言葉で説明すると


「夜中に忍び込んで勇者君をぶっ叩けば良いじゃないか

 彼の周辺には人気はないハズだよ

 守りや監視については勇者君が自ら行っているからね

 その監視網は相当に綿密で密度が濃いが今は状況が状況だから薄いと思うよ」


となる。

簡単に言えば勇者は周辺監視も自分で行っていたそうだ。

これは魔王と戦争していた頃からで有名な話でもあるらしい。

そりゃ世界神の加護を持つ勇者ならそこいらの監視なんて

範囲も精度も目じゃないだろうしな。


そもそもが城内どころか国内中に勇者の目が光っているんだから

国全体が監視網って事なんだけどな。

他にも城自体を高度な魔道具として強固な作りにしており自室を

城の中心部に置く事で空からの進入や爆撃に関しても対処をしている。


とまぁ普段なら城に入るのにすら苦労するハズではあるが

勇者本人(のような者達)からの手引きで内部に入れていた俺達は苦労も無く進んで行く。

まぁ精神体達には内緒ではあるけどな。

現に深夜にこっそりと魔法まで使って深部まで侵入してるんだし。


因みにロージーのこの魔法は他の同系魔法に比べて格段に効果が高い。

夜のみしか使用できず光源がある程度以上あると効果がない他にも

維持に魔力を消費し続けるとか接触していないと同行者に効果が無い等の使用条件が厳しい。

なので俺達は今、コソコソと手を繋ぎつつ進んでいるって訳だ。


城内部は複雑な作りになっているだけで罠やトラップ等はないので

人に見つかりさえしなければ内部で暗躍する事は思ったよりも難しく無く

俺達は勇者の部屋まで辿り着く事が出来た。


と、何処からか声が聞こえた。


「ようこそと言った方が良いかな?

 扉はボクが開けるから入ってくると良い」


そして俺達は中に招き入れられた。

忍び込もうととした部屋の主に。


 ~


声がしたかと思うとスッと開いた扉の中は

シンプルな調度品で最低限に飾られた部屋があった。

広さはあるが逆に王の寝室と言うには寂しい部屋だと感じてしまう。

その中で一際大きく目立つベットの上で声の主は優しく微笑んでいた。


「ふふ、良く来たね

 こんな夜中に一国の王の寝室に忍び込もうとするとはね

 あぁ、別に怒ったりしないから気楽にして貰えると嬉しいね」


「意識はあるのか?」


どう反応して良いか困っているとロージーが声を掛ける。


「今は、と言うか深夜は辛うじてね

 他が寝静まれば僕の負荷も減るからね

 来てくれたのが今で丁度良かったよ」


「やはり精神分割の影響か?」


「以前はそれ程でもなかったんだけどね

 ここ数年でどうも急に意識を維持出来なくなって来たんだよね

 困ったもんだよ」


身体も満足に動かないしと勇者は続ける。


「その割には嬉しそうだな」


「まぁ悪い事ばかりじゃないしね

 ようやく君とこうして話せる機会も出来た事だし」


勇者はロージーを見てスッと真顔になる。


「・・・・・・・すまない」


「ふふ、君の口から直接謝罪の言葉が聞けるとはね

 何かとは言わないけどそれで全部流す事にするよ」


柔らかく微笑むその姿からは以前から聞いていたような苛烈さは感じないし

以前の精神体の1人のような急にキレて殺しに来るようにも思えない。


「えーっとロージーが誰だか分ってるようなんだけど・・・」


「僕の情報網を甘く見ないで貰いたいね

 君がミノル君でそちらがルエラさんだね

 意識が朦朧としていても情報だけは各地の僕達から入って来るんだよ

 もっとも全ての情報を管理出来る力はもう無いけどね」


「それで俺達を招き入れたと」


「いや、あくまでも招き入れたのは僕以外の僕達の考えだよ

 今、この時だって僕の意識があるタイミングで君達が来ただけだ

 もう僕に国に関わる仕事は無理だろうね

 以前には意識をこの国以外にも広げる事が出来たけど今は意識を保つのもギリギリさ」


精神体自体は独自に動くから良いとしてもそれを管理制御出来てないって事か。


「分身体?精神体?正確な呼び方はわからないけど

 管理出来てないってのは大丈夫なの?

 要職にも結構居るんだろ?」


「分身体は魔王の技だよ

 僕のはね魔王軍と1対他数の戦いの中で編み出した技術でね

 自分の意識範囲を拡張させて様々な情報を取得し状況を判断するんだ

 それの発展系が精神体の作成って所かな

 管理は出来なくても意志の疎通はある程度出来るし

 普段は表に出てない者も多いしね」


「そんな事まで話していいのかな?

 今は和平が結ばれているが私と再び戦う事になるかもしれないのだよ?」


「ふふ、良いさ

 もう僕は戦いたくないんだ・・・・それ以前に戦える身体でもないけどね

 最近は意識だけじゃなくて体も満足に動かなくなってきてね」


柔らかな物腰の勇者からはどこか疲れ絶望しているような雰囲気を受ける。

どことなく寂しい影のある笑みだ。


「それで、ルエラが近くで直接見た感じではどうだい?」


触っても良いか?と勇者に了承を得てルエラが診断する。


「状況としては相当に悪いように見えるが

 世界神とやらの力を強く感じる以外はわからん

 精神の分割が相当な負荷のようではあるが」


「そこら辺の自覚症状は?」


「数年前から急に神の加護が強くなると言うか濃くなると言うかね

 その頃から少しづつって感じかな」


「私と同じような状況って事ね」


「なら世界神の加護を抑えつけるしかないって事か」


「ん?それはどういった事だい?

 魔王から神の加護が感じられないのと関係があるのかい?」


俺達は今迄の事を説明する。

地下迷宮から出て来た事や魔王の事まで。


「世界神が世界神じゃない・・・・か・・・・

 繰り返される転生に同じ神の加護持ち同士を争わせる

 この話が本当なら神の目的は何だろうね」


「俺には楽しませて欲しいって言ってたけどね

 それも本当か嘘かはわからないけど」


「ふふ、まぁそれは後で考えるとしようか

 それで神の加護を分離するってのはどうすれば良いのかな?

 出来れば僕も自由になってみたいんだけどね」


「ルエラに神の加護を抑えつけて貰い私が開発した技術を使って一時的に分離する

 私はその隙に分身体を作り出した」


「なるほど・・・・僕はそこで精神体を作り出してしまえば良いのか

 何時ものような下位じゃなくて主となるような」


「ん?精神体って世界神の加護の力で作りだしてるんでしょ?

 それを無くした主体じゃ精神体の管理とか出来なくない?

 つうか精神体だと誰かに憑りつく必要があるような・・・・」


「そうだね、それについてはある程度の考えはあるんだ

 以前から似たような事が出来ないかと色々と手を打ってきたからね

 それに僕は戻れなくても残った僕の体はちゃんと仕事をしてくれるさ」


「この国を捨てるのかい?」


「主人格ではないけれど僕は残るんだし捨てる訳じゃない

 僕の中の国を思う気持ちは置いていくしね

 今の中途半端な自分よりもよっぽど上手く国を回してくれるさ

 それに僕もこの長き呪縛から逃れたいのさ・・・・・君と同じでね

 1人の人間に只の平民上がりのアデアに戻りたいのさ」


問い詰める様な口調にも関わらずロージーは柔らかく微笑んだ。

長く争ってきた2人には色々とあるのだろう。


「それが君の本当の名かい?

 確かに私達のコレは呪縛と言っても良いモノかもしれないね」


「それじゃぁ早速やって貰おうかな

 僕の意識がある内じゃないと分離も出来ないしね

 で?どうやるんだい?」


「えーと、確か強い衝撃を肉体に与えてショック中に

 創造神の力で抑え込むって感じかな」


「・・・・・・えーと・・・具体的に言うと?」


「我が殴って力ずくで抑えつける」


「え?ちょ・・・・ちょっと・・・・

 じょ、冗談だよね?」


ドン引きの勇者にルエラがズカズカと近寄って行く。

うん、ルエラは空気が読めないよね。

動かぬ体で引くつく勇者にルエラが神の力を宿し薄く光る右手を振りかぶった。


無事に勇者は健やかな・・・・若干苦悶を浮かべながら意識を手放した。

後は勇者がどう判断しどう行動するかだ。

俺達はコソコソと部屋に戻り翌日には城から解放された。

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― 新着の感想 ―
[一言] お帰りなさい!
[一言] 復活おめ 内容完全に忘れたから読み返してくるね
[一言] 久しぶりだと思って更新日時をチェックすると…w
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