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7-11

こんにちは森山実留です。

両手に華とは言いますが両手に起爆剤と言うのはどうなんでしょうかね・・・。



 ☆



グリンバーグを目指して出発して早1ヶ月、未だに魔王領を出ていない。

一応、勇者に会えたら会うを目的としているが

明確に決まっている訳でもないのでほぼ物見遊山だ。


魔王領が広いと言う事もあるのだが

ルエラがこの世界を知りたい!

ロージーが自由は久々だ!

と真っすぐに進むわけでもなくアッチコッチと移動する。

更には行く先々でハッスルしてしまい時間がとられてしまう。


ルエラとロージーは当初の事なんて無かったかのように馴染み

宿場に泊まれば毎晩のように飲み歩いている。

俺が付き合わなくても俺を置いて2人でだ。

因みに付近に何もない野宿なんかの場合は良く手合わせをしている。


どちらもタイプが違うが美女と美少女なので勿論絡まれる事が多い。

しかも魔族領なんだから魔族が大半でその身体能力は人族を大きく上回る。

と言っても全く心配する事はないんだけどね。


ルエラは容赦なく殴り飛ばすし力の大半を置いて来たロージーも

その戦闘技術は数百年に渡って磨かれた物だ。

体術だけでも1流の冒険者達を圧倒出来るレベル。

もっとも残った魔力だって普通のレベルを明らかに超えている感じがする。

そんな2人が酒でベロベロになったとは言えそこらの奴に負ける訳はない。


まぁ俺が居ても2人が喜んで突撃していくから俺は何もしてないんだけどさ。

妙にウマが合うようで酒場での喧嘩も醍醐味の1つなんだそうだ。

殴りあった後は相手と酒で乾杯とかどこの漫画の主人公だって話だ。


一応、まだ死人は出てない・・・・らしい。

しこたま飲んでも翌朝にはケロッとしてるのは凄いとしか言いようがない。


旅の資金は俺やルエラが持ってる素材等は売れるかどうかも分らなかったので

売る訳にはいかず魔王城からこっそりと魔道具やら素材やらをガメ・・・もとい融通してもらい

それらを売って相当な資金となった。

ロージーの紐になってる気もするが

代わりに裏迷宮や管理迷宮で入手した食材は売らずに全て食べさせろとの事。

なので野宿等で食べる機会がある際は俺が作っている。


そんなこんなででグリンバーグへ続く大きな街道を進んではいるのだが

あっちへフラフラ、こっちへフラフラと色々な町や村を経由してるので

まだまだ時間が掛りそうだった。


 ~


結局、グリンバーグの王都に辿り着りつくのに更に3ヶ月ちょっと掛った。

グリンバーグは迷宮を幾つか抱えている上に

貴重な薬草や人気のある魔獣素材等が取れるエリアなんてのもあって冒険者達に人気のある国だ。


活気があるのは良いけど神が意図して何かをしているのかなとも勘ぐっちゃうような立地だ。

冒険者達には経験も積めて金も稼げる良い国なんだろうけどさ。


因みに俺達はサイラスで換金ついでに身分証も作って貰ったので入国等は問題なしだ。

持つべきモノは権力を持つ仲間だな。

ってか魔王本人が書いた書類を提出しただけなんだけどね。


なんやかんやと楽しい旅も一段落し王都まで辿り着いた俺達は

適当な飯屋に入り食事がてら今後の行動について話していたが決めあぐねていた。


「で、勇者に会えると思う?」


「私が直に行けば会えるとは思うが正体を明かす必要があるだろうな」


「それ大丈夫?」


「間違いなく問題になるだろう・・・な

 身分を偽って入国してるわけだし

 それ以前にこの身体で魔王と識別してくれるかもわからん

 下手したら身分詐称で拘束されるだろうな」


「正面から殴りこめば良いのではないのか?

 我らであれば止められぬ者は少なかろう」


「うん、ちょっとルエラは黙ってて」


「う・・・うむ、そうか・・;」


ルエラって意外と脳筋なとこあるよな。

最近ではルエラの扱い方も分って来た。


それはさておき正攻法で勇者に会うには幾つかの方法があるが

俺達は冒険者でも商人でもないので胸を張って会う理由がない。

曖昧な内容で申請した所で間違いなく許可は下りないだろう。

かと言って魔王の身分を利用して会おうとすれば国際問題だ。

俺達の身体能力を生かして忍び込むってのも可能だとは思うが

どう考えても良いようには取られないだろう。

奇襲か強襲かって話になっちまうしな。


とりあえず落ち着ける宿でも探してじっくりと考えるかって事になった。

行動に移すのは情報を集めてからでも遅くないだろう。

飯屋のおばちゃんにお勧めの宿を聞いたので先に寝床を決めてしまおう。


 ~


飯と酒の評判が良いと勧められた宿で無事に部屋が取れた。

一応は俺の部屋は別でルエラとロージーが一緒で2部屋だ。

夕方までは自由行動にしたら早速2人は出かけて行った。

俺はとりあえずのんびりするかと寝具に横になる。


「うーん、やっぱりアリスは呼べないか・・・

 神システムも繋がらんしなぁ」


試しに繋げてみようと意識をしてみる。


> 神システムは現在オフラインです

> 再リンク開始します・・・・・異常発生、再リンクを停止します。

> 重大なエラーが発生しています。

> エラーを回避してください。


となり激しい頭痛が襲ってくる。

以前よりはマシだが何度も経験したくない痛みだ。


「やっぱり駄目か・・・」


ここに来るまでに何回か試してはみたんだけど何時も同じ結果だ。

世界神の加護が受けられてるかは不明だが

神システム自体は与えられているのは間違いない。

今の体に神システムの恩恵があれば相当に強いと思うんだけどな。

繋がらない原因も今の体っぽいけど。


創造神ラカリスティンと弟神である次元管理神グラバスティス。

次元管理神グラバスティスと世界神グラバス。

胡散臭いと言うか絶対に何かあるよなぁ・・・・。


考え事をしていたらウツラウツラとし久々にゆっくりと昼寝としゃれ込んだ。


 ~


「で、2人で出かけて何かあった?」


晩飯を宿に併設されている酒場で食べながら聞いてみる。

前評判通りここの料理は値段の割に美味い。

グリンバーグは様々な種族が集まっているだけあってメニューも雑多だ。

この店ではエスニックに近いと言うか暑い地方で食べられるような

香辛料が効いた味付けで食が進む。


「軽く周囲を見て回ったけどサイラスよりも活気があって・・・・良い街だな

 悔しくないと言えば嘘になるって位にはね」


ロージーも知識や情報としては知ってはいるが

実際に自分で見たのは初めてだろうしな。

元敵国の王都となると色々と思う所があるんだろう。


「様々な種族が居るのには驚きだな

 我の知識には無い者も多いので独自に繁栄した者達も居るのだろう

 かくも生命とは偉大なものよ」


ルエラの着眼点はもっと別だった。

確かに原初の種族しか知識にないならそう見えるよな。

長い年月を掛けて環境に適応し血が混じってきた結果だろう。

魔王領でも魔族と一括りにされる中でも色々な種族が居ると面白がってたし。

ルエラの知っているままの変わってない純粋な種族は何処かに居たりするのかな。


2人が見た事や感じた事を踏まえてどうするかを話し合うも

実現可能な手は思いつかない。

とりあえず王城の手前には検問所があり謁見申請が出来るらしいので

駄目元で理由をでっち上げて申請をしてみるつもりだ。


まずは王都見学と情報収集で数日間費やすかとなり

本格的に飲み始める2人。

片っ端から食い物を注文し浴びるように飲みだす。

ここまでずっとこんな感じだったけど全く体型が変わらない2人が怖い。


ルエラとロージーが外を通り掛って売り込みを掛けた屋台の物売りを買いに行く。

この地域の珍しい肉を使った串焼きのようだ。

屋台側は安い価格設定で店と客に営業し店は持込料として少しの金を得る。

こんなシステムが出来るのも活気がある故だろう。


「ちょっと良いかな?」


そう言って俺が残るテーブルに声を掛けて来たのは

酒杯を片手にした陽気そうな青年だった。

チラッとみた感じでは革の軽鎧に長剣を下げている。

他に荷物は無いが鎧も剣も使い込んでいるのがわかる。

若く見えるが醸し出す雰囲気は熟練なモノだ。


「何か用?」


「いや、聞き耳をする訳じゃなかったんだけど

 ちょっと話が聞こえてね」


「それで?」


「悪いとは思ったんだけど随分な内容だったんでね

 多分だけどこの国に来たばかりだろ?」


酒場で多少、声が大きくなってしまっていたのかもしれないな。

話す内容としては王に会いたいってだけだし不穏な感じでも

殺伐とした雰囲気での無かったハズだ。

念の為に誤魔化しておくか。


「あぁ、この国の王である勇者様に憧れて来たばっかりなんだ

 駄目元で謁見申請してみようかなとね」


「確かに勇者様に憧れる者は後を絶たないからね

 最近は式典等にも余り顔を出さないし顔をみる機会も少ない

 だが申請しても正式な理由がなきゃ認可されないよ」


改めて他人から言われるとその通りだよなと思う。

勇者は人気が高く憧れる者達も多いので会いたいと考える奴も多い。

だが此処は戦場でもないし今は一国の王だ。


そう簡単に会える訳がないってのは理解できるが一応申請してみるってのも

この国に来た者がやるお決まりの行動なんだそうだ。

実際に会えるのは極一部だけらしいが窓口が広く開かれているのは良い事だと思う。


「そこでだ・・・・実はちょっとした伝手があってね

 勇者様に直接会う仕事があるんだが人が足りなくてさ

 それに一噛みしないかって話なんだ」


青年はニヤリと笑うがどう考えても胡散臭い。

こんな酒場で近くの席の奴がたまたま話を聞いて

これまた偶然に王に会える伝手と仕事があり人を探してると。

改めて考えるまでもない。


「おっとそんな顔しないでよ

 俺が騙そうとしてるって思ってるだろ?」


「まぁね、話が美味すぎる」


「疑うのも無理はないけどね

 だが正式に検問所で手続きもするし武具の携帯も認められているし

 勿論、当日は一緒に行くし手付金なんかも貰わない」


うーん、こりゃどういった事なんだ?

そこまでちゃんとしてるとなると本当の事なのか?


「本当の事を言うとこっちも困っててね

 この国じゃ似たような話で騙そうって話がゴロゴロしててさ

 だけどギルドを通して話しをしてても良いしちゃんと書簡だってあるんだ」


そう言って胸元に手を入れ・・・・・・青年の首には気配も無くナイフが当てられていた。


「ミノル君、何をしてるんだい?

 こいつは勇者だよ」


「ちょ!待て!待てって!

 敵対する意はない!」


青年は両手をあげ小声で降参のポーズだ。


「勇者?」


「正確には勇者君の操る1人かな?

 かなり自然に近い操作をされているようだが

 ・・・と言うより本人に限りなく近いだろ?」


青年は焦りつつも素直にそうだと認める。

ルエラは後ろで面白そうに見ながら串焼きを食べてた。


 ~


以前に勇者に操られた者に殺された経験がある俺としては

正体を明かした青年に対して妙に警戒してしまう。

人気のない奥のテーブルに移って全員が座り話しを続ける。


「そう警戒しないで欲しいな

 君達が僕に会いたいって言うから直に誘いに来たんじゃないか」


そう気軽に話す青年は先程から変わらずだ。

手にはルエラから貰った串焼きがあって緊張感の欠片も無い。


「勇者君の憑依は精神体を張り付けて行うから素体の影響が大きく出ると聞いた

 が、コレは勇者君の本来の地のような気もするね」


こっそりと聞いた俺にロージーが教えてくれた。


「それで勇者本人・・で良いのかな?

 直に連絡を取ってくれた理由は何だい?」


「・・・・・・勇者と言うか本体は・・・今不味い状況に居るんだ

 それを助けて欲しい」


「不味いとは?具体的に聞いても?」


「勇者は・・・俺は・・・・・壊れかかってる」


「壊れかかってる?

 よくわからないな?

 だってお前は直接操っているんだろ?」


「勇者が身体を操っているのは精神を分裂させて憑依させる事により可能としている

 憑依させられた側は気が付かぬまま行動と意識を誘導させられる

 勿論、出力を上げれば強制的に行動の上書きも可能だ

 性格や言葉使い等は素体の影響が強くでると言う所は難点だね」


余りに簡単に勇者の御業の一端を話す青年、そしてそれを信じるのであれば

本体をそのままに気付かぬままに誘導し操るとは寄生と言った方が近いのかもしれない。


青年が言うには本体の管理下に置かれ役目が終われば本体に戻るが

分離した精神体は役割に準じた意志を持ち独立している。

独立とは言っても意識や行動は完全に把握され管理下に置かれてはいるし時折修正も入る。

精神体同士はある程度、横の繋がりもあるらしい。


青年に憑りついている精神体は初期に分けられた古参だそうで同一人格と言っても良いレベルらしい。

本体の異常に気が付いてはいたが本体に戻れば吸収されるだけだし

直接に会おうにも勇者が自分の精神体を利用して国を管理調整している事は

独断で秘密裏に行われているのでソレを理由に会いに行くわけにもいかない。

そもそもが分離した精神体が上位の本体に対して何が出来る訳でもない。


「他にも異常を感じた精神体と連携して正式な仕事として城に入る事は可能なんだ

 だがその先の手がない・・・・」


「ちょいと質問なんだけど

 君達って言うか精神体は本体の管理下にあって思考も筒抜けなんだろ?

 この状況もわかってるんじゃないのか?」


「・・・・・あくまでも予測なんだが本体は既に状況を理解出来てない節がある

 またはそれに近く身動きが無きない状況かだ」


私からも1ついいかい?そう告げてからロージーが発言する。


「何故、私達に・・・ミノル君に声を掛けたんだい?」


「私達の中に神の加護を受けているかどうかを判断できる者が居る

 そこでその女性に目星を付けたって流れだ」


正確に言えば加護を受けているかは判断出来るが神が誰なのかも分らないし

受けている加護もある程度の大きさでしか計れないらしい。

要は神の力、超常の力を感じ取れるって事だ。

国に入ってくる能力のある者を抑えておく為って事だろうな。


今回はルエラの大きな加護が引っかかっただけで俺達の正体はバレてない。

向こうにしても世界神の加護を持つ勇者に対して何が出来るかもわからないのだろう。


これは一考の価値はあるのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新おつかれさまです!!!
[一言] いったい何が起きてるんだろう
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